不動産の税金

年収700万でも収益物件で失敗する理由と対策

年収700万円前後の会社員が「不動産投資ならローンも組めるし、老後資金にもなるはず」と考え、勢いでワンルームや一棟アパートを購入してしまう例は少なくありません。しかし、購入後に家賃収入が想定より伸びず、手取りが減ったり、追加の資金を投入せざるを得なくなったりして悩む声も多く聞こえます。本記事では「年収700万 収益物件 失敗」という検索ワードに込められた不安を共有しつつ、なぜ失敗が起こるのか、どうすれば回避できるのかを具体的に解説します。読み終えるころには、融資の現実から物件選びのコツまで、行動に移せる知識が整理できるはずです。

年収700万と融資のリアル: 想定より厳しい審査

まず押さえておきたいのは、年収700万円という数字が金融機関にどう評価されるかです。国土交通省の「不動産投資市場調査」(2025年版)では、個人投資家の平均年収は670万円と報告されています。つまり、700万円は平均よりやや高いとはいえ、特別な優遇枠があるわけではありません。審査では勤務先の安定性や自己資金の割合、既存の借入状況が総合的に判定されます。

また、金融庁が2025年6月に公表した「地域金融機関の貸出動向」によると、投資用不動産向け融資の審査は2023年以降厳格化が続いています。特に耐用年数を超える木造アパートや築30年以上の区分マンションは、想定より融資期間が短く設定される傾向が強まりました。期間が短いと毎月返済額が増えるため、キャッシュフローに余裕がなくなります。

一方で、住宅金融支援機構の「フラット投資プラン」(2025年度)は物件の省エネ性能を条件に最長35年の固定金利が得られる制度ですが、対象物件は新耐震基準かつ一次エネルギー消費量等級5以上が必要です。要件を満たさない物件では利用できないため、制度の存在だけで安心しないことが大切です。

重要なのは、年収だけで借入上限を判断しないことです。返済負担率35%以内が目安と言われますが、将来の金利上昇や家賃下落も加味し、手取りキャッシュフローが月2万円以上残るシミュレーションを最低ラインに設定しましょう。

収益物件でありがちな3つの失敗パターン

収益物件でありがちな3つの失敗パターンのイメージ

次に、実際の失敗事例から学びます。中でも多いのは「高利回り表示に飛びつく」「空室リスクを甘く見る」「修繕費を軽視する」の三つです。これらは単独でも致命傷になり得ますが、複合すると赤字転落が急速に進みます。

まず表面利回り10%以上をうたう地方築古アパートは、空室率と修繕費を引いた実質利回りが4%に満たないケースが珍しくありません。総務省「住宅・土地統計調査」(2023年)によると、築25年を超える賃貸住宅の平均空室率は全国で19.2%に達しています。数字の裏を読まず購入すると、家賃収入はシミュレーションを下回ります。

次に区分マンション投資で見落としがちなのが管理費と修繕積立金の増額リスクです。国土交通省「マンション総合調査」(2024年)は、築30年超の物件で修繕積立金が平均1.6倍に引き上げられていると示しています。毎月の支出が増える一方、家賃は築年数とともに下がるため、収支が逆転しやすくなります。

さらに、突発的な修繕への備え不足が家計を圧迫します。屋根や給排水管の交換は100万円単位の出費になりやすく、管理組合やオーナー間での合意形成が遅れるほど機会損失が拡大します。年収700万世帯の場合、家計に与えるインパクトは大きく、心理的な負担も無視できません。

キャッシュフローを守る資金計画の立て方

ポイントは「攻め」より「守り」を優先した資金計画です。日本銀行の「貸出平均金利」(2025年10月速報)は住宅ローン変動金利が年0.47%、投資用は平均2.3%となっています。この差がある限り、自己資金を厚くするほど毎月返済額を抑えられ、将来の金利上昇にも耐えやすくなります。

まず自己資金は物件価格の25%を目安に確保しましょう。頭金10%だけでフルローン近くを組むと、空室が1カ月続いただけで返済に追われるリスクが跳ね上がります。また、購入諸費用として登録免許税や仲介手数料、保険料など物件価格の8%程度が必要です。これらを含めた総投資額をもとに、損益分岐点の家賃を逆算すると判断ミスが減ります。

さらに、予備費として年間家賃収入の10%を別口座に積み立てるルールを設けると、突発修繕にも慌てず対応できます。実はこの習慣が長期の安定経営につながり、追加融資を受ける際の信頼度も高まります。

最後に、融資タイプの選択も重要です。固定金利は金利上昇リスクを回避できますが、変動より金利が高く、キャッシュフローが薄くなります。一方、変動は当面の収益性を高めるものの、インフレ局面では利払いが増えます。シミュレーションソフトを使い、金利+2%でも黒字が確保できる組み合わせを選びましょう。

物件選びで押さえるべき数字と現地確認

基本的に、立地と賃貸需要のチェックは机上のデータと現地の両方が欠かせません。国勢調査の人口推移、最寄り駅の乗降客数、大学や病院など需要源の距離を確認し、次に平日の昼と夜に現地を歩きます。ゴミ置き場の管理状況や入居者の掲示板を見れば、賃貸管理の質が推測できます。

物件広告に載る「利回り」は表面利回りであることがほとんどです。そこで、年間家賃収入から空室損失、管理費、修繕費、固定資産税を差し引いた実質利回りを算出しましょう。目安として、首都圏の区分マンションなら4%、地方の一棟アパートなら7%を下回ると資金繰りが厳しくなる傾向があります。

また、建物の耐震性能は資産価値だけでなく融資条件にも直結します。新耐震基準(1981年6月以降)を満たすRC造の方が、木造築古より長期融資を取りやすく、金利も低く抑えられるためです。2025年度の所得税法改正で加速度償却が縮小されたため、耐用年数の長い構造を選ぶ意義は従来以上に高まりました。

最後にインスペクション(建物状況調査)の実施を習慣化しましょう。専門家に依頼すると費用は6万円前後ですが、給排水管の腐食や雨漏りリスクを事前に把握できます。後出しの大規模修繕で資金繰りが破綻するシナリオを避けるためにも、購入前の小さな支出を惜しまない姿勢が肝心です。

失敗しないための専門家とチーム作り

実は、個人投資家でもチーム戦の発想が成果を左右します。信頼できる不動産仲介、融資担当者、税理士、そして管理会社を早い段階でそろえることで、物件選定から購入後の運営までワンストップで相談できます。

仲介会社は複数社に声をかけ、同じ物件の情報提供スピードと内容を比較します。反応が早く、デメリットも包み隠さず説明する担当者ほど長期的に頼れる傾向があります。融資担当者とは定期的に面談し、金融機関の最新の審査基準を把握しておくと、次の投資機会で有利に動けます。

税理士は不動産に強いことが前提です。青色申告による65万円控除や2025年度も継続している減価償却の繰り延べ戦略を活用し、手残りを最大化します。また、管理会社は入居者募集力とトラブル対応力が命です。国土交通省の調査では、管理料が1%高くても入居率が3%向上すれば、年間手取りはプラスになる例が示されています。

結論として、専門家の助言を聞きながら自分で最終判断する「半分プロ」くらいの姿勢が、年収700万世帯にはちょうどよいバランスです。情報を丸投げせず、自分で数字を検証することで、チームの質も自然と向上します。

まとめ

ここまで、年収700万の会社員が収益物件で失敗しやすい原因と対策を見てきました。融資審査の厳格化、空室と修繕コストの過小評価、資金計画の甘さが主な落とし穴です。自己資金を厚くし、実質利回りで判断し、信頼できる専門家チームを組むことで、リスクは大幅に下げられます。まずは家計と物件情報を同じテーブルに並べ、この記事で触れたチェックリストを一つずつ検証してみてください。それが安定した不動産投資への第一歩になります。

参考文献・出典

  • 国土交通省 不動産投資市場調査2025年版 – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省 住宅・土地統計調査2023年 – https://www.stat.go.jp
  • 金融庁 地域金融機関の貸出動向(2025年6月) – https://www.fsa.go.jp
  • 日本銀行 貸出平均金利等(2025年10月) – https://www.boj.or.jp
  • 住宅金融支援機構 フラット投資プラン(2025年度) – https://www.jhf.go.jp

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