家賃収入で将来の不安を減らしたいと考えつつ、「本当に目黒区でアパート経営は成り立つのか」と迷う人は多いはずです。都心部で物件価格が高い一方、人口流入が続くエリアゆえに空室リスクは低いのか、数字だけでは判断しづらいのが現実です。本記事では、初心者が押さえるべき収支シミュレーション、物件選び、融資、そして管理のコツを最新データに基づいて解説します。読み終えるころには、目黒区でのアパート経営が自分に合うかどうかを具体的に判断できるようになるでしょう。
目黒区の賃貸需要を読む

まず押さえておきたいのは、目黒区の需要構造です。総務省の2025年住宅・土地統計調査速報によると、目黒区の単身世帯比率は52.4%で23区平均より4ポイント高く、ワンルームや1LDKのニーズが根強いと分かります。
東京都都市整備局の人口推計では、2025年時点の目黒区総人口は前年度比1.1%増で、5年連続のプラスが続いています。この増加分の7割が20〜39歳の社会人層で、通勤利便性と街のイメージが支持を集めています。つまり、家賃設定が適切なら空室リスクを抑えやすい環境と言えます。
一方、国土交通省の全国平均空室率は2025年10月時点で21.2%ですが、東京23区は11.5%、目黒区は推計9%前後です。全国値だけを見て悲観する必要はありませんが、競合物件が多いエリアゆえに差別化が不可欠である点も見逃せません。
収支計算の基本とキャッシュフロー

重要なのは、表面利回りだけで判断せず実質利回りを試算することです。表面利回り8%でも、管理費5%、修繕積立2%、空室率想定5%を差し引くと実質は5%台に下がります。さらに固定資産税や火災保険を加えると、手元に残るキャッシュはもっと減ります。
たとえば、土地30㎡・延床120㎡の木造アパート(築浅・6戸)を2億円で購入し、借入1億6,000万円、金利1.4%・期間25年とします。年間家賃収入は1,300万円、空室損5%、管理関連費10%で差し引き、税引き前キャッシュフローは約450万円です。この数字が生活費や将来の修繕に十分かどうかが判断基準になります。
実は減価償却を使うと、購入から7年間は所得税・住民税を年間100万円程度抑えられるケースも珍しくありません。2025年度税制では建物部分の定額法償却が継続しているため、収入と税金のバランスを踏まえたシミュレーションが欠かせません。
物件選定で失敗しない視点
ポイントは土地値と入居者ニーズの両立です。目黒区の場合、駅徒歩8分以内で容積率が高い第一種住居地域なら、土地の流動性が高く出口戦略を描きやすい傾向にあります。逆に駅から15分超えの低層住居専用地域だと、土地値は安くても家賃を維持しにくくなります。
物件の間取りも要注意です。ワンルーム規制の地域では25㎡以上の1Kや1LDKが中心になりますが、在宅勤務ニーズを取り込むため、ロフト付きやテレワークブース付きの物件が人気を得ています。都心居住意向調査(2025年、東京都)でも「仕事専用スペースがある賃貸を選ぶ」が34%に達し、設備投資が早期の満室経営につながります。
さらに、購入前に近隣の貸し出し賃料をヒアリングしておくと、楽観的な数字で試算するリスクを減らせます。不動産仲介会社3社以上に平均賃料を聞き、オンラインポータルの募集賃料と照合する作業は地味でも効果が高いです。
融資と税制を味方に付けるコツ
実は、2025年度もメガバンクより地方銀行や信用金庫の方がアパートローンに前向きというデータがあります。金融庁の業況判断調査では、都内地銀の不動産向け貸出姿勢DIがプラス5と報告され、金利は1.1〜1.5%が主流です。一方、メガバンクは自己資金3割以上を求める例が増えています。
融資審査では「返済比率50%以下」「自己資金1〜2割」が目安です。自己資金を増やすほど金利や融資期間が有利になるため、預貯金と合わせて株式など換金性資産の提示も検討するとよいでしょう。
税制面では、所得が900万円以下の個人なら不動産所得と給与所得を合算することで、青色申告特別控除(現行65万円)が家賃収入から引けます。また、小規模宅地評価減や相続時精算課税など、長期視点での節税策も押さえておくと出口戦略が柔軟になります。
管理と空室対策で長期安定へ
まず押さえておきたいのは、管理会社選びが収益を左右するという事実です。目黒区で実績のある会社は家賃設定や入居者属性に精通しており、家賃滞納率を1%以下に抑えるケースもあります。手数料3%の差より、空室期間1カ月短縮の方が収支には大きく効きます。
さらに、共用部の清潔感とネット環境は若年層の満足度に直結します。Wi-Fi無料化にかかるランニングコストは戸当たり月900円前後ですが、家賃に1,500円上乗せできることも珍しくありません。結果として純収益の底上げにつながります。
なお、修繕計画は購入時点で20年スパンを描くと安心です。外壁塗装は15年以内、給水管更新は20年以内を目安に積立を計画し、年間家賃収入の10%を修繕積立に回すと大規模修繕時の資金ショックを避けられます。
まとめ
目黒区でアパート経営を成功させるには、需要の強さを過信せず、実質利回りを丁寧に計算する姿勢が欠かせません。土地値と入居者ニーズを両立させた物件選び、地銀や信金を活用した有利な融資、そして入居者満足度を高める管理が三位一体で機能すると、長期的に5%超のキャッシュフローを確保できます。まずは信頼できる仲介会社にヒアリングし、手元の資金で無理のないシミュレーションを作成することから始めてみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省住宅統計 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省統計局 住宅・土地統計調査速報2025 – https://www.stat.go.jp
- 東京都都市整備局 人口推計2025 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp
- 金融庁 業況判断調査2025 – https://www.fsa.go.jp
- 国税庁 タックスアンサー(青色申告特別控除) – https://www.nta.go.jp