不動産の税金

品川区で始めるアパート経営入門

都心に近く利便性の高い品川区でアパート経営を始めたいものの、「物件価格が高そう」「空室は大丈夫か」など不安を抱える方は多いはずです。実際には、交通網の充実や再開発の進展が追い風となり、初心者でも着実に収益を積み上げやすいエリアといえます。本記事では、2025年12月時点の最新データをもとに、物件選定から資金計画、税制優遇までを具体的に解説します。読み終えるころには、品川区でアパート経営を始めるために必要な判断軸と行動手順が整理できるでしょう。

品川区が投資エリアとして注目される理由

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ポイントは、品川区が持つ「人口流入の強さ」と「再開発による需要創出」です。これらは安定した入居ニーズを支え、長期運用において空室リスクを抑える要因となります。

まず総務省の住民基本台帳によれば、品川区の人口は2025年1月時点で41万人を超え、2015年から約6%増加しました。都心5区の中でも増加率が高く、単身世帯の割合も53%と賃貸需要に直結する構成です。さらに、JR品川駅周辺では国際ビジネス拠点の形成を目的とした再開発が続き、2027年のリニア中央新幹線開業を見据えたオフィス需要の伸びが期待されています。

一方で、全国アパート空室率が21.2%(国土交通省住宅統計・2025年10月)という数字だけを見ると不安になりますが、東京23区全体では16%台、品川区に限ると最新区調査で14%前後にとどまります。つまり、全国平均と比べて約7ポイント低く、需要と供給のバランスが良好です。

加えて、区内には山手線・京浜東北線・東急目黒線など9路線が走り、羽田空港へも15分程度でアクセス可能です。通勤・出張ニーズが高いビジネスパーソンにとって魅力が大きく、家賃相場が安定しやすい背景があります。こうした交通インフラと人口動態を総合すると、品川区は初心者が安心して第一歩を踏み出しやすい区と言えるでしょう。

物件選びでまず押さえておきたい視点

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重要なのは「敷地形状」と「エリアミスマッチの回避」です。表面的な利回りだけで判断すると、後々修繕コストや稼働率で苦しむケースが少なくありません。

はじめに敷地形状を確認しましょう。品川区は戦前からの住宅地が多く、間口の狭い敷地が点在しています。間口が2メートル未満だと再建築不可となるため、金融機関の評価が下がり、融資条件が厳しくなります。敷地図と建ぺい率・容積率を照合し、増改築や建替えの余地があるかを確かめることが欠かせません。

また、単身者ニーズが高いと言っても、駅徒歩15分以上で築古となれば競合物件が豊富です。実際、区内の空室広告データを分析すると、最寄り駅徒歩10分以内の築20年以内は平均空室日数が23日、徒歩15分超かつ築30年超は同48日と、2倍以上の差が生じています。家賃を下げて埋めるよりも、立地と築年数でミスマッチを回避する方が結果的にキャッシュフローを守れます。

さらに、 バス・トイレ別や高速インターネット無料など、ターゲットに合わせた付加価値が有効です。特にIT企業勤務者が多い五反田・大崎エリアでは、通信環境を重視する入居者が目立ちます。設備投資は利回りを一時的に低下させますが、回転コストの削減と家賃維持に寄与するため、中長期で見ればプラス要因となるでしょう。

資金計画と融資の最新事情

実は、2024年から続く低金利環境は2025年12月時点でも大きく変わっていません。都内アパートローンの店頭金利は変動型で年1.6〜2.3%が主流です。ただし金融機関は物件評価と同時に投資家の自己資金比率を厳しく見ており、自己資金1割では審査が通りにくい状況が続いています。

まず自己資金は物件価格の20%を基本ラインとし、仲介手数料や登記費用などの諸経費を合わせて25%を目安に準備しましょう。国税庁の「財産評価基準書」で土地路線価を確認し、購入価格と相続税評価額の差が大きい場合は、評価額を担保に共同担保設定が可能か相談すると融資枠が広がることがあります。

返済比率は「年間返済額 ÷ 想定年間家賃収入」で計算し、50%以下に抑えるプランを作成します。品川区の平均成約家賃はワンルームで月9万円前後(2025年7月 東京不動産研究所)、年間108万円です。例えば総戸数8戸のアパートなら推定家賃収入864万円となり、返済額を430万円以下に抑えれば安定ラインを維持できます。

固定金利か変動金利かで迷う場合は、金利上昇シナリオを組み込んだシミュレーションが不可欠です。仮に金利が2%上昇した場合を試算し、空室率15%でも資金繰りが回るかチェックします。こうした「保守的なキャッシュフロー表」を持参すると、金融機関からの評価が上がり、貸出条件の交渉がスムーズに進みます。

2025年度も活用できる税制・補助制度

まず押さえておきたいのは、新築賃貸住宅に対する固定資産税の減額措置です。2025年度も継続されており、1戸あたり120㎡までの床面積については3年間(一定耐火構造なら5年間)税額が1/2に軽減されます。この恩恵を最大化するには、建築コストと家賃設定のバランスを考慮し、減額期間中にキャッシュを厚くする戦略が有効です。

加えて、国土交通省の「賃貸住宅の省エネ改修事業(2025年度)」は、一定の断熱性能を確保したうえで高効率給湯器を導入すると、戸あたり最大60万円の補助を受けられます。補助率は工事費の1/3以内ですが、区内の築30年超の木造アパートを対象に外壁と窓の断熱改修を行えば、入居者満足度と光熱費削減の両方を実現できます。

所得税面では、不動産所得の赤字を給与所得と損益通算できる仕組みが2025年も維持されています。ただし過度な節税のみを目的とした投資は税務調査リスクを高めるため、実態に見合った修繕計画を立て、帳簿や領収書を整理することが前提です。

また、相続対策としての評価減も健在です。自用地評価の約8割まで圧縮できる貸家建付地の特例は、区内の土地評価額が高いほどメリットが大きくなります。将来的な資産承継を視野に入れ、家族信託や法人化と組み合わせると一層効果的です。

運営管理で失敗しないための実務ポイント

基本的に、品川区の入居者は入替えサイクルが早く、平均入居期間は約3.1年と言われます。そのため募集から退去精算、リフォームまでをスピーディーに回す体制が欠かせません。

まず管理会社選定は手数料だけでなく、リーシング力とリフォーム提案力を重視します。区内で年間100戸以上の募集実績を持つ会社は、Web広告の露出が高く、退去発生から平均20日以内で次の入居を決めるケースが多いです。一方、小規模管理会社でも地場に強いネットワークを持つ場合があり、内覧対応の柔軟さが武器となります。

さらに、IT重説(オンライン重要事項説明)を導入すると、地方在住の転勤者や外国人入居希望者を取り込めます。国交省ガイドラインに沿った形で2024年以降本格導入され、2025年には区内募集物件の約6割が採用しています。オンライン内見と組み合わせれば、内覧から契約まで非対面で完結し、空室期間を短縮できます。

修繕面では、給排水管の劣化が築20年を超えると顕在化します。定期的な高圧洗浄と部分交換により、突然の漏水事故を防げます。品川区の浸水リスクは東京湾に近い東品川地区でやや高いものの、近年は排水ポンプ場の整備が進み、保険料に大きな差はありません。それでも水災特約は付帯しておくほうが安心です。

まとめ

品川区でアパート経営を成功させる鍵は、人口流入を背景とした安定需要を活かしつつ、立地と物件スペックでミスマッチを避けることにあります。自己資金2割を確保し、金利上昇や空室悪化を織り込んだキャッシュフローを組むことで、金融機関との交渉力も高まります。さらに、2025年度も有効な税制や省エネ補助を活用し、減価償却と固定資産税の軽減でキャッシュを厚くする戦略が効果的です。記事で示したチェックポイントを順に実行し、まずは信頼できる仲介・管理会社と面談して具体的な物件を比較するところから動き出してみてください。

参考文献・出典

  • 国土交通省 住宅統計調査 2025年10月速報 – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省 住民基本台帳人口移動報告 2025年1月 – https://www.soumu.go.jp
  • 東京不動産研究所 賃料動向レポート2025年7月 – https://www.tohri.co.jp
  • 国税庁 財産評価基準書 令和7年度(2025年度) – https://www.nta.go.jp
  • 国土交通省 賃貸住宅の省エネ改修事業 2025年度概要 – https://www.mlit.go.jp/construction
  • 東京都 品川区 空き家・住宅統計 2025年版 – https://www.city.shinagawa.tokyo.jp

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