不動産投資を始めたばかりの方から、「管理会社に任せるべきか、自分でやるべきか分からない」という声をよく耳にします。家賃回収やクレーム対応を自力で行えばコストを抑えられる一方、時間と労力がかかるのも事実です。しかも2025年の法律改正で管理業務の責任範囲が明確化され、判断材料が増えました。本記事では「賃貸管理 自主管理vs委託 最新」をキーワードに、両者の特徴、費用、リスク、そして法規制までを整理し、初心者でも自分に合った選択肢を見つけられるよう解説します。
自主管理と委託管理の基本を整理する

まず押さえておきたいのは、管理業務の全体像です。国土交通省の分類では、賃貸管理は入居者募集、契約締結、家賃回収、建物維持の四つに大別されます。自主管理はこれらをオーナー自ら行う方式で、委託管理は宅地建物取引業者や賃貸住宅管理業者へ外部委託する方式です。
2025年12月時点で施行中の賃貸住宅管理業法では、200戸以上を管理する業者は国交省への登録が義務付けられています。つまり委託先は一定の基準を満たしたプロであることが保証され、業務内容の透明性が向上しました。一方で、自主管理には登録要件がないため、自由度が高い反面、法的責任を自分で負う覚悟が要ります。
実は国交省「令和6年度住宅市場動向調査」によると、2024年時点で集合住宅オーナーの66.3%が管理を外部委託しています。この数字は五年前より約4ポイント増えており、法規制強化が委託を後押ししていると考えられます。しかし、残りの三割強は自主管理を継続しており、すべてのオーナーに委託が最適というわけではありません。
コストの違いとキャッシュフローへの影響

重要なのは、管理方式が毎月の手取りをどう変えるかです。委託管理の一般的な管理料は家賃の3〜5%で、繁忙期の広告料や更新事務手数料が別途かかる場合もあります。たとえば家賃10万円の1Kを10戸所有し、管理料4%で委託すると、月4万円、年48万円が経費として差し引かれます。
一方で、自主管理なら管理料はゼロです。ただし、家賃回収の遅延リスクやクレーム対応の時間コストを見落とせません。東京都住宅政策本部のアンケートでは、オーナーが自己対応に費やす平均時間は月15時間と報告されています。時給換算で3,000円を想定すると月4万5,000円の機会損失です。つまり数字上のキャッシュフローだけでなく、時間価値を含めると両者の差は縮まる、または逆転するケースもあります。
さらに、修繕費の先払いが生じた場合、管理会社はファイナンス機能を兼ねることがあります。2025年度の住宅金融支援機構のリフォームローン金利は年1.8%前後で、管理会社経由の分割払いと大差ありません。しかし管理会社は手続き代行と業者選定をセットで行うため、現金を温存したい投資家には魅力的です。
トラブル対応と法規制:2025年の最新ポイント
ポイントは、法改正がオーナー責任を重くした点です。2023年の民法改正で、賃貸人は設備不具合を知ってから直ちに修繕する義務が明文化されました。委託管理の場合、24時間コールセンターが受電し即時対応できる体制が一般的です。自主管理では夜間対応を自力で行うか、外部の駆け付けサービスを契約する必要があります。
また、入居者からの預り金を適切に保管する「分別管理」が業者に義務づけられたことで、敷金トラブルも減少傾向にあります。自主管理オーナーは同様の基準に従う義務はありませんが、トラブルを防ぐため同レベルの帳簿管理が求められます。
2025年度には、国交省が賃貸住宅メンテナンス支援事業を拡充し、登録管理業者を通じた長期修繕診断に補助を出しています。補助率は診断費用の2分の1(上限10万円)で、委託管理を選ぶと利用しやすい制度ですが、自主管理オーナーでも登録建築士に直接発注すれば申請可能です。期限は2026年3月末で、早めの計画が必要になります。
オーナーの時間とリスク許容度をどう考えるか
まず自分のライフスタイルに合わせて、時間の余裕とリスク許容度を数値化してみましょう。平日日中に会社勤務を続ける投資家にとって、入居者対応の電話が突然鳴る精神的負荷は計算外のコストになりがちです。一方、リタイア後に地元で物件を見回れるオーナーなら、自主管理でメリットを最大化できます。
資金計画の観点では、金利1%の違いが数百万円の差になる融資環境下、管理料で月数万円を節約する意義は相対的に小さくなっています。また、保険加入状況も判断材料です。家賃保証会社を利用すれば自主管理でも滞納リスクを抑えられますが、保証料は年間家賃の0.5〜1ヶ月分が目安で、管理料と合わせて考えると費用負担は拮抗します。
つまり、時間と精神的ストレスをコストとして評価し、融資条件や保険料と合わせて総合的に計算することが、最終的な意思決定を左右します。
実例で見る選択の分かれ目
実は私のクライアントで、自主管理から委託管理へ切り替えたケースがあります。都内ワンルーム15戸を保有するAさんは、当初毎月の管理料を惜しみ自主管理を選択しました。しかし築12年目に漏水事故が発生し、夜間対応と保険請求に追われ、結果的に本業での昇進試験を逃す事態に。そこで管理会社に委託したところ、月4万円の費用増に対して空室期間が短縮され、年間手取りはむしろ18万円増えました。
一方で地方にRCマンションを持つBさんは、建築士の資格を生かし自主管理を継続しています。管理会社に見積もられた年間70万円の管理料を節約し、余剰資金を太陽光パネル設置に回しました。その結果、共用部の電気代が年間12万円下がり、入居者にも環境配慮をPRできたため、長期入居率が向上しました。Bさんは専門知識と時間を武器に、自主管理の強みを最大化しています。
両事例が示すのは、管理方式が収益だけでなくライフプランにも影響するという点です。自分の強みと弱みを客観視し、必要なら段階的に管理方式を変更する柔軟さが成功につながります。
まとめ
本記事では「賃貸管理 自主管理vs委託 最新」をテーマに、基礎知識、コスト構造、法規制、そして実例を通じて比較しました。自主管理はコスト削減と自由度が魅力ですが、法的責任と時間コストが増大します。委託管理は費用がかかるものの、専門知識と24時間体制でリスクを低減できます。最初は委託で経験を積み、知識と時間に余裕ができたら自主管理に挑戦する段階的アプローチも有効です。自分の目的とリスク許容度を数値化し、2025年の法制度や補助金も踏まえて、最適な管理スタイルを選びましょう。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅局「令和6年度住宅市場動向調査」 – https://www.mlit.go.jp
- 国土交通省「賃貸住宅管理業法 基本方針」 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku
- 東京都住宅政策本部「民間賃貸住宅実態調査2024」 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp
- 住宅金融支援機構「リフォーム融資金利情報(2025年12月)」 – https://www.jhf.go.jp
- 消費者庁「改正民法による賃貸トラブルQ&A」 – https://www.caa.go.jp