不動産の税金

今こそ知りたい生前贈与 メリットと最新税制の活用術

資産を子どもや孫にどう受け継ぐかは、多くの家庭で避けて通れないテーマです。相続税の負担が気になる一方で、「いつ、いくら、どのように渡せば良いのか分からない」という声もよく耳にします。そこで注目されるのが生前贈与です。生前に財産を移転すれば節税だけでなく、家族への想いを確実に形にできます。本記事では、2025年12月時点の税制を踏まえつつ、生前贈与のメリットと実践方法を丁寧に解説します。読後には、自分に合った贈与計画を描けるようになるでしょう。

生前贈与とは何か

生前贈与とは何かのイメージ

まず押さえておきたいのは、生前贈与が「生きているうちに財産を無償で譲り渡す行為」を指すという点です。相続と違い、贈与者自身が手続き主体となり、時期や金額を柔軟に決められます。2025年度の贈与税は累進課税で、年間110万円までなら非課税となる基礎控除が利用できます。また、相続時精算課税制度を選択すれば、2,500万円までの贈与は贈与時に税率20%で一括計算し、将来の相続時に再精算する仕組みもあります。

しかし、生前贈与と一口に言っても現金、株式、不動産など対象は多岐にわたり、税負担や管理方法も異なります。たとえば現金贈与は手数料がかからずシンプルですが、資産運用の機会を逃す可能性があります。一方、株式や投資信託を贈与すれば株価上昇益も受贈者に移転できるため、成長余地を共有できる点が魅力です。つまり、資産の性格に合わせた贈与設計が成功のカギとなります。

生前贈与の代表的なメリット

生前贈与の代表的なメリットのイメージ

重要なのは、生前贈与が節税と家族円満の両面で効果を発揮することです。まず、相続発生前に財産を減らせば、将来課される相続税の課税ベースを抑えられます。国税庁の統計によると、課税対象となった相続の平均課税価格は1億2,000万円前後ですが、年間110万円の定期贈与を10年間続けるだけでも1,100万円を非課税で移転できる計算になります。

また、贈与者が自ら意図を説明しながら財産を渡すことで、受贈者は感謝と責任を実感しやすくなります。遺産分割協議をめぐるトラブルの大きな要因は「故人の意思が見えないこと」だと言われますが、生前に話し合いながら贈与を行えば誤解や対立を未然に防げます。この心理的効果は数字だけでは測れませんが、家族の関係を長期的に良好に保つために欠かせない要素です。

さらに、贈与を受けた資金を教育費や住宅取得費に充てれば、家族のライフプランを前倒しで実現できます。2025年度も「住宅取得等資金の贈与税非課税制度」は継続しており、省エネ性能など一定の条件を満たす住宅なら最大1,000万円まで非課税枠が利用可能です(制度期限は2027年12月契約分まで)。このように、非課税特例を組み合わせることで贈与の効果は一段と高まります。

税制面から見たメリットを最大化する方法

ポイントは、年間110万円の基礎控除と相続時精算課税制度を併用し、家族全員を受贈者にすることです。たとえば配偶者と子ども2人がいれば、年間330万円を非課税で贈与できます。長期にわたりコツコツと贈与すれば、税率が高い累進課税帯に入らずに済む可能性が高まります。

一方で、多額の資産を一気に移転したい場合は相続時精算課税制度が有効です。2024年改正により、同制度を選択していても年間110万円までの贈与は相続財産に加算されないとされました。これにより、まず2,500万円の枠を使い切り、その後は少額贈与を続ける「二段階戦略」が取りやすくなっています。ただし、一度制度を選ぶと基礎控除の適用を受けられなくなるため、5年先、10年先のライフプランを見据えた試算が不可欠です。

加えて、贈与資金を成長投資枠付きの新NISAで運用する手法も人気を集めています。2024年から恒久化された新NISAは年間360万円までの投資が非課税となり、受贈者名義で運用益を伸ばせます。たとえば20歳の子どもに毎年110万円を贈与し、そのうち120万円をNISAで運用すれば、複利効果による資産拡大と節税を同時に狙えます。金融機関では贈与契約書作成をサポートするサービスも増えており、活用のハードルは着実に下がっています。

不動産を活用した生前贈与の具体例

実は、不動産を使った生前贈与には現金にはない強みがあります。不動産は相続評価額が「路線価」や「固定資産税評価額」で算定されるため、市場価格より低く評価されがちです。たとえば時価5,000万円のマンションでも、相続評価額が3,500万円程度に下がるケースは珍しくありません。贈与時の評価も同様なので、評価額のギャップを利用すれば実質的に大きな資産を低い税負担で移転できるのです。

さらに、賃貸用のアパートを贈与すれば、借家権割合や借地権割合による評価減も得られます。住宅金融支援機構のデータでは、2025年時点の木造アパート表面利回りは全国平均6〜7%と堅調です。つまり、賃料収入を受贈者に移転しつつ自らは経営のサポート役に回る形なら、家族経営でノウハウを引き継げます。

もっとも、贈与税の納税資金を確保するために、評価時点の資金計画が不可欠です。物件を渡しても納税資金が不足すれば、金融機関からの融資や物件の一部売却が必要になる恐れがあります。また、共有名義にした場合は修繕や売却に全員の同意が要るため、贈与前に管理ルールを文書化しておくとトラブルを避けやすくなります。

生前贈与で注意すべきポイント

まず、形式的な手続きを怠ると「贈与が成立していない」とみなされるリスクがあります。特に親子間で通帳を共有していると、税務署から名義預金と指摘される事例が後を絶ちません。贈与契約書を毎年作成し、資金移動は受贈者名義の口座へ振り込むのが基本です。

次に、相続発生前3年以内の贈与は、生前贈与加算として相続財産に組み戻されます。2024年改正により、2025年以降は加算対象期間が「死亡前7年以内」に段階的に延長される見通しです。つまり、早めに計画を開始しなければ節税効果が薄れる可能性が高まります。

また、生活費や医療費と見なされる贈与は非課税とされていますが、実態が生活援助と区別できないと課税対象になる場合があります。受贈者が学生なら学費を直接支払うより、贈与してから支払わせる形にしたほうが制度上は安全です。さらに、贈与後も財産の管理や収益を実質的に贈与者が握っていると「名義貸し」と判断される恐れがあるため、贈与後はあくまで受贈者主体で資産運用を行いましょう。

まとめ

生前贈与の最大の魅力は、節税効果と家族の将来設計を同時に実現できる点です。年間110万円の基礎控除をコツコツ使う方法から、相続時精算課税や不動産贈与を組み合わせる大規模なプランまで、多彩な選択肢があります。その一方で、贈与契約書の作成や資金移動の実態づくりなど、形式面を軽視すると効果が失われる恐れもあります。まずは家族でオープンに話し合い、税理士や不動産の専門家と連携しながら、自分たちに合った贈与スケジュールを早めに描くことが、2025年以降の賢い資産承継への近道です。

参考文献・出典

  • 国税庁 – https://www.nta.go.jp
  • 金融庁 – https://www.fsa.go.jp
  • 住宅金融支援機構 – https://www.jhf.go.jp
  • 総務省統計局 – https://www.stat.go.jp
  • 法務省 – https://www.moj.go.jp

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