不動産投資に興味はあるものの、「自分の年収で本当にローンが組めるのか」と不安に感じる方は多いはずです。特にネット上では諸説入り乱れ、二〇代でも一棟マンションを買えるという派手な体験談から「年収一千万円ないと無理」といった極端な説まで並びます。本記事では、収益物件 年収いくらからを判断するための基本指標と金融機関の審査基準、さらに自己資金やキャッシュフローの考え方まで、最新データを使ってやさしく解説します。読み終える頃には、自分がいつ・どの規模から投資を始められるのかが具体的にイメージできるはずです。
まず押さえておきたいのは年収と借入余力のつながり

収益物件を買う際、もっとも直接的に効いてくるのは「年収倍率」です。年収倍率とは、年間所得の何倍まで金融機関が融資を許容するかを示す指標で、おおむね五〜七倍が一般的な目安と言われます。ただし、これはマイホーム向け住宅ローンに近い数字であり、投資用ローンでは融資期間が短く金利が高くなる傾向があるため、実際には三〜五倍に収まることが多いと覚えておくとよいでしょう。
一方、金融機関が最終判断で重視するのは返済比率です。返済比率とは、年間返済額を年収で割った値で、投資用の場合は三五%程度が上限になるケースが目立ちます。たとえば年収六〇〇万円の会社員であれば、年間返済額が二一〇万円前後に収まる借入額が上限ラインとなります。この数値は家賃収入を合算する前の「個人年収ベース」で判定されやすい点に注意が必要です。
つまり、収益物件 年収いくらからを判断するときは、単に物件価格を見積もるのではなく、「返済比率三五%以内」という安全ゾーンを先に計算し、その範囲でキャッシュフローが黒字になる物件を選ぶことが最初のハードルになります。
金融機関審査で見られるポイントと年収の関係

実は金融審査では年収以外の要素が合否を左右することが少なくありません。まず勤務先の安定性です。上場企業や公務員の場合、同じ年収でも与信スコアが高く算定されるため、融資枠が広がりやすい傾向があります。また、勤続年数も重要で、三年以上をひとつの目安としている銀行が多数派です。
さらに、副業所得や配偶者の収入を合算できるケースがある点も覚えておきましょう。たとえば副業で年間一〇〇万円の利益を三期連続で申告していれば、年収六〇〇万円の会社員は合計七〇〇万円として評価される可能性があります。これにより返済比率を安全域に保ちつつ、借入総額を引き上げられる場合があります。
一方で、既存のカードローンや自動車ローンは大きなマイナス材料になります。日本銀行の金融システムリポート(二〇二五年七月版)は、個人の無担保ローン残高が増えるほど投資用ローンの新規実行額が縮小する相関を示しています。つまり、物件探しの前に不要な借り入れを整理しておくだけで、審査通過率が高まるわけです。
自己資金とキャッシュフローを両輪で考える
ポイントは、自己資金率をどこまで高めるかで月々のキャッシュフローが大きく変わる点です。自己資金が一割の場合と三割の場合では、同じ物件でも毎月の手取りが三万円以上違うことは珍しくありません。国土交通省の不動産投資家調査(二〇二五年版)によれば、自己資金二〇%以上を投入した投資家の七五%が「キャッシュフローに余裕がある」と回答しています。
しかし、自己資金を入れすぎると「レバレッジ効果」が薄まり、投下資本利益率(ROI)が低下することにも注意が必要です。重要なのは、手元資金の半分程度を残し、突発的な修繕や空室リスクに備える余裕を設けつつ、返済比率が三〇%前後になるバランスを探ることです。
言い換えると、年収五〇〇万円の方が一億円規模の一棟アパートをフルローンで購入するシナリオは理論上可能でも、金利上昇や空室で一気に赤字へ転落する危険が高いということです。安全運転をしたい初心者なら、年収の三〜四倍、自己資金二〜三割を目線にするのが無理のないスタートラインといえるでしょう。
年収別シミュレーションで見る現実的な物件規模
結論として、年収だけを基準に物件価格を決めるのはリスクが高いものの、目安を持つことは計画を立てるうえで有効です。ここでは代表的な三つの年収帯を想定し、返済比率三五%以内に収まる借入額と想定家賃収入を試算します。金利二・五%、期間二十五年、自己資金二〇%という前提で計算しました。
まず年収四〇〇万円の場合、年間返済上限は一四〇万円ほどです。元利均等返済では借入約三〇〇〇万円が目安となり、自己資金を六〇〇万円用意すれば、総額三六〇〇万円程度の区分マンション二戸が現実的なラインになります。月々の手残りは一戸あたり一万円前後と少ないため、修繕積立金と税金を差し引くと大きな黒字は期待しにくいものの、経験を積むには適した規模です。
次に年収六〇〇万円層では、借入余力が約四五〇〇万円に拡大します。自己資金一二〇〇万円を組み合わせれば、六〇〇〇万円規模の木造アパート一棟を視野に入れられます。家賃収入が満室時で月六〇万円なら、返済後に一〇万円前後のキャッシュフローが見込め、やや攻めの投資が可能になります。
最後に年収八〇〇万円以上では、借入額は七〇〇〇万円超となり、RC造の区分レジデンス複数戸や一棟鉄骨マンションが候補になります。ただし金利三%台に上がると返済比率が急上昇する点に注意が必要で、固定金利への切り替えや繰上返済計画を同時に作ることが欠かせません。
2025年度も使える税制優遇とリスク管理のコツ
まず押さえておきたいのは、個人で購入する収益物件でも建物部分について減価償却が認められる点です。これにより家賃収入の一部を非課税化でき、手取りキャッシュフローの安定につながります。減価償却は法律の改正がない限り二〇二五年度以降も有効で、耐用年数や構造に応じた定額法が基本となります。
また、二〇二五年度の賃貸住宅管理業法では、サブリース契約の透明化が進み、家賃保証の上限や中途解約条件が明確化されています。オーナー側にとっては、過度な家賃減額リスクを抑えられる環境が整ってきたと言えるでしょう。一方で、管理委託料の相場は上昇傾向にあるため、利回りシミュレーションの段階で管理費八〜一〇%を見込んでおくと安全です。
さらに、金融庁が二〇二五年七月に公表した銀行検査マニュアル改訂では、「賃貸用不動産ローンの審査では、ストレス金利+二%で返済比率を再計算する」ことが推奨されました。実務上もこの計算方法を採用する銀行が増えているため、自己シミュレーションでも金利上昇二%を想定するクセをつけると、長期的な破綻リスクを大幅に抑えられます。
まとめ
本記事では、収益物件 年収いくらからを判断するために必要な年収倍率・返済比率・自己資金率の考え方を整理し、年収帯別のシミュレーション例を示しました。年収だけで資金計画を立てると危険ですが、返済比率三五%以内と自己資金二〇%以上を守れば、年収四〇〇万円台でも安定した投資を始められます。逆に年収八〇〇万円でもフルローンに頼りきると、金利上昇で赤字転落するリスクが高まります。行動を起こす前に、自分の年収と家計を洗い出し、ストレス金利でのキャッシュフローを必ず確認してください。安全域を決めたうえで物件選びと金融機関交渉を進めれば、堅実に資産を増やす第一歩が踏み出せるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産投資家調査2025 – https://www.mlit.go.jp/report/2025_investor_survey
- 日本銀行 金融システムリポート2025年7月 – https://www.boj.or.jp/research/fsr/fsr_2025.htm
- 金融庁 銀行検査マニュアル改訂2025年版 – https://www.fsa.go.jp/common/manual/bank_2025.pdf
- 総務省 家計調査年報2024 – https://www.stat.go.jp/data/kakei/
- 国税庁 所得税法令解釈通達(減価償却)2025 – https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/225/01.htm