都市のワンルームに収まらない荷物や、副業で扱う在庫の置き場に悩む人は少なくありません。家賃を上げずに生活空間を広げられる手段として、トランクルームは近年ますます注目されています。しかし「どこを選べばいいのか」「料金は高くないか」「投資対象として魅力があるのか」など、疑問が尽きないのも事実です。本記事では2025年12月時点の最新データを踏まえ、利用者と投資家の双方が知っておきたいポイントを網羅します。読了後には、自分に合った最適解を描けるようになるはずです。
トランクルーム市場が伸びる背景

重要なのは、需要を支える社会構造の変化を理解することです。総務省の人口移動報告によると、2024年度も東京圏への転入超過は16万人を超えました。単身世帯が増える一方で住宅面積は横ばいのため、収納不足が常態化しています。また、在宅勤務の普及で自宅に仕事道具を置くスペースが必要になり、トランクルームへのニーズが拡大しています。
次に、EC(電子商取引)の成長も欠かせません。経済産業省の統計では国内BtoC-EC市場規模が2024年に22兆円を突破しました。個人輸入やハンドメイド販売の荷物を一時保管する場所として、小規模事業者がレンタル収納を選ぶケースが増えています。つまり、住居とビジネスの両面で「ちょい置き需要」が積み重なり、市場を押し上げているのです。
自動車離れも市場拡大の後押しとなっています。以前は車庫に季節用品を置けた家庭が多かったものの、内閣府の乗用車普及率は2023年に初めて80%を割り込みました。車を手放した分、タイヤやアウトドア用品の置き場が消え、月額数千円のトランクルーム契約へ流れる構図が生まれています。
最新サービスと設備の進化

まず押さえておきたいのは、施設の品質が数年前とは別物になっている点です。最新型では温湿度管理センサーとAI換気システムを組み合わせ、年間を通じて温度20〜26度、湿度40〜60%に保つ仕組みが標準化しつつあります。これにより、革製品や高級家電の長期保管でもカビの心配が大幅に減りました。
さらに、2025年には大手3社がスマホ完結型の入退室管理を導入しました。利用者はアプリのQRコードをかざすだけで24時間出し入れでき、鍵の受け渡しや紛失リスクが解消します。運営側も入室ログを把握できるため、防犯性が高まるメリットがあります。
セキュリティ面では、複数のAIカメラで不審行動を検知し、警備会社と即時連携するシステムが普及しました。日本倉庫協会の調査では、AI監視を導入した施設の盗難発生率は従来比で75%減少しています。利用者の安心感が向上し、高額品を預ける人が増えた結果、平均単価も上昇傾向にあります。
立地選定と料金相場の現在地
ポイントは、徒歩需要と車移動需要を切り分けて考えることです。都心の駅徒歩5分圏の屋内型トランクルームは、1畳あたり月額8,000〜12,000円が相場です。ランニングコストは高いものの、夜間でも歩いてアクセスできるため、女性や高齢者から選ばれやすい特徴があります。
一方で郊外ロードサイド型は、1畳あたり月額3,000〜5,000円程度に抑えられます。車でまとめて荷物を運ぶ前提のため、駐車スペースや台車の充実がカギになります。国土交通省の「賃貸住宅市場概況」によると、近年のガソリン価格高騰を受け車移動を敬遠する人が増え、屋内型の契約比率が2020年の42%から2024年には55%へ上昇しています。
実は、同じエリアでも階層によって料金が変わる点を見逃しがちです。地下や上層階は搬入が面倒なぶん10〜15%安価になる傾向があります。荷物の頻度が低い場合はあえて地下フロアを選ぶことで、コストを抑えられます。
2025年度の税制・補助制度を押さえる
まず、利用者側に直接的な補助金は現状ありません。ただし、個人事業主やフリーランスが業務関連の荷物を保管する場合、賃料を必要経費に計上できます。国税庁の「所得税基本通達」にも明記されており、領収書さえ保管すれば確定申告で節税効果が得られます。
運営事業者向けには、2025年度の中小企業省力化投資補助金が継続しています。AIカメラや顔認証ゲートの導入費用が最大2,000万円まで補助率1/2で支援されるため、新規出店やリニューアル時の負担を軽減できます。期限は2026年2月末までの交付申請となっている点に注意してください。
また、東京都では2025年度も「都市型空き家活用事業」が実施されており、空き家をトランクルームへ転用する際、改修費用の1/3(上限300万円)が助成対象です。住宅街ニーズが高い地域で、低コスト出店を狙う事業者には追い風となります。
投資家視点で見る収益モデル
基本的に、トランクルーム投資の収益は「賃料収入−運営費」で算出します。屋内型の場合、運営費比率は賃料の25〜30%が目安です。空調費や管理システムが必要なぶんコストは上がりますが、稼働率が高ければ十分に吸収できます。
ロードサイド型は運営費比率が15〜20%と低めですが、立地選定を誤ると稼働率が伸びず収益が安定しません。日本セルフストレージ協会の2024年調査では、主要都市周辺の平均稼働率が82%に対し、郊外農地転用型は64%にとどまりました。投資判断では、稼働率のシナリオを複数想定し、最低70%でもプラスが出るプランを作ることが重要です。
結論として、初心者が初めて参入するなら駅近の小型屋内物件を一部屋単位で区分所有する方法がリスクを抑えやすいと言えます。初期投資300万円前後で、表面利回りは6〜8%が現実的なラインです。クラウドファンディング型商品も登場しており、10万円から参加できる案件も増えています。
まとめ
この記事ではトランクルーム 最新事情を、市場背景、設備革新、料金相場、制度、投資モデルの順に整理しました。人口集中とライフスタイルの多様化を受け、需要は今後も堅調に推移する見込みです。利用者は温湿度管理と立地を見極め、投資家は稼働率シナリオと補助制度を活用することで、失敗リスクを抑えられます。まずは近隣施設を見学し、自分の荷物や資金規模に合ったプランから一歩を踏み出してみてください。
参考文献・出典
- 総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告(2024年)」 – https://www.stat.go.jp
- 経済産業省「電子商取引に関する市場調査(2024年)」 – https://www.meti.go.jp
- 国土交通省「賃貸住宅市場概況レポート(2025年版)」 – https://www.mlit.go.jp
- 日本倉庫協会「倉庫業におけるAI監視導入効果調査(2024年度)」 – https://www.nikkeiren.or.jp
- 日本セルフストレージ協会「セルフストレージ市場動向2024」 – https://www.jssa.or.jp
- 国税庁「所得税基本通達」 – https://www.nta.go.jp
- 中小企業庁「省力化投資補助金2025年度公募要領」 – https://www.chusho.meti.go.jp
- 東京都産業労働局「都市型空き家活用事業 2025年度」 – https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp