奨学金の返済を続けながら、将来のために不動産投資を始めたいと考えている方は少なくありません。毎月の返済負担がある中で、さらに投資用ローンを組むことに不安を感じるのは当然のことです。この記事では、奨学金返済中でも不動産投資が可能なのか、どのようなリスクがあるのか、そして安全に始めるための具体的な方法について詳しく解説します。金融機関の審査基準から実際の資金計画まで、初心者の方にも分かりやすくお伝えしていきます。
奨学金返済中の不動産投資は可能なのか

結論から言えば、奨学金返済中でも不動産投資を始めることは可能です。ただし、金融機関の審査や返済能力の面で、通常よりも慎重な準備が必要になります。
奨学金は借入金の一種として扱われるため、不動産投資ローンの審査では必ず考慮されます。金融機関は申込者の総返済負担率を重視しており、これは年収に対する年間返済額の割合を示す指標です。一般的に、総返済負担率は35%以内が望ましいとされています。
例えば年収500万円の方が月3万円の奨学金を返済している場合、年間返済額は36万円となり、返済負担率は7.2%です。この状態で不動産投資ローンを組む場合、残りの27.8%分、つまり年間約139万円までの返済額であれば審査上問題ないと判断される可能性が高くなります。
実際には、金融機関によって審査基準は異なります。メガバンクは比較的厳しい基準を設けている一方、地方銀行や信用金庫では柔軟な対応をしてくれるケースもあります。また、日本政策金融公庫などの公的金融機関も選択肢の一つとなります。重要なのは、自分の返済能力を正確に把握し、無理のない計画を立てることです。
金融機関の審査で見られるポイント

不動産投資ローンの審査では、奨学金返済以外にも様々な要素が総合的に判断されます。これらのポイントを理解しておくことで、審査通過の可能性を高めることができます。
まず最も重視されるのが安定した収入です。正社員として3年以上勤務していることが一つの目安となります。年収については、最低でも400万円以上が求められることが多く、500万円以上あれば審査上有利になります。勤務先の規模や業種も考慮され、上場企業や公務員の場合は評価が高くなる傾向があります。
次に重要なのが信用情報です。クレジットカードの支払い遅延や携帯電話料金の滞納などがあると、審査に大きく影響します。奨学金の返済についても、延滞履歴がないことが前提条件となります。過去に返済の遅れがある場合、その記録は5年間残るため注意が必要です。
自己資金の額も審査の重要な要素です。物件価格の20〜30%の自己資金があると、金融機関からの信頼度が高まります。これは返済意欲の表れとして評価されるだけでなく、月々の返済負担を軽減する効果もあります。自己資金が少ない場合でも、定期預金や株式などの金融資産があれば、それらも考慮されることがあります。
さらに、購入する物件の収益性も審査対象となります。立地条件が良く、安定した家賃収入が見込める物件であれば、審査は通りやすくなります。空室リスクが低く、将来的な資産価値の維持が期待できる物件を選ぶことが大切です。
奨学金返済中に不動産投資を始めるリスク
奨学金返済と不動産投資を並行して行う場合、いくつかの特有のリスクを理解しておく必要があります。これらのリスクを事前に把握し、対策を講じることが成功への鍵となります。
最も大きなリスクは、返済負担の増加による家計の圧迫です。奨学金の返済に加えて投資用ローンの返済が始まると、月々の支出が大幅に増えます。想定していた家賃収入が得られない場合、自己資金から補填する必要が生じ、生活費を切り詰めなければならない状況に陥る可能性があります。
空室リスクも見逃せません。入居者が見つからない期間が長引くと、家賃収入がゼロになる一方で、ローン返済や管理費、固定資産税などの支出は続きます。この状態が数ヶ月続くと、貯蓄を取り崩すことになり、最悪の場合は物件を手放さざるを得なくなることもあります。
修繕費用の発生も大きな負担となります。築年数が経過した物件では、給湯器の故障やエアコンの交換など、予期せぬ出費が発生します。これらの費用は数十万円単位になることもあり、十分な予備資金がないと対応できません。奨学金返済中は、このような予備資金を確保することが難しい場合があります。
金利上昇リスクにも注意が必要です。変動金利でローンを組んでいる場合、将来的に金利が上昇すると返済額が増加します。奨学金の返済と合わせると、家計への影響は大きくなります。2026年現在、日本の金利は低水準を維持していますが、今後の経済情勢によっては上昇する可能性もあります。
安全に始めるための資金計画の立て方
奨学金返済中に不動産投資を始める場合、通常以上に慎重な資金計画が求められます。無理のない計画を立てることで、リスクを最小限に抑えることができます。
まず現在の収支状況を正確に把握することから始めましょう。月々の収入から、奨学金返済額、生活費、貯蓄額を差し引いた金額が、投資用ローンの返済に充てられる上限となります。この金額は手取り収入の20%以内に抑えることが理想的です。例えば手取り月収30万円の場合、投資用ローンの返済額は6万円以内に設定します。
次に、自己資金の目標額を設定します。物件価格の30%程度を自己資金として用意できれば、月々の返済負担を大幅に軽減できます。1500万円の物件であれば450万円が目標となります。この金額を貯めるには時間がかかりますが、その間に不動産投資の知識を深め、市場調査を行うことができます。
予備資金の確保も重要です。空室期間や修繕費用に対応するため、最低でも100万円、できれば200万円程度の予備資金を別途用意しておくことをお勧めします。この資金は投資用ローンの頭金とは別に確保し、緊急時にすぐに使える状態にしておきます。
収支シミュレーションを作成する際は、楽観的な予測だけでなく、厳しい条件でも検証します。空室率を20%、金利上昇を2%と仮定し、それでも返済が可能かどうかを確認します。また、奨学金の返済が完了するまでの期間と、投資用ローンの返済期間を比較し、将来的な返済負担の推移を把握しておくことも大切です。
初心者におすすめの物件選びのポイント
奨学金返済中の方が不動産投資を始める場合、物件選びは特に慎重に行う必要があります。リスクを抑えながら安定した収益を得られる物件を選ぶことが成功の鍵となります。
最も重要なのは立地条件です。駅から徒歩10分以内、できれば5分以内の物件を選ぶことで、空室リスクを大幅に減らすことができます。都心部や主要都市の中心部に近いエリアは、人口減少の影響を受けにくく、長期的な需要が見込めます。また、周辺にスーパーやコンビニ、病院などの生活施設が揃っていることも重要なポイントです。
物件の種類については、ワンルームマンションから始めることをお勧めします。一棟アパートと比べて初期投資額が少なく、管理の手間も軽減できます。価格帯としては1000万円から2000万円程度の物件が、初心者には適しています。この価格帯であれば、自己資金300万円から600万円程度で始めることができます。
築年数は15年から25年程度の物件が狙い目です。新築や築浅物件は価格が高く、利回りが低くなりがちです。一方、築年数が経過した物件は価格が抑えられており、適切にリフォームすれば十分な収益を上げることができます。ただし、築30年を超える物件は修繕費用が高額になる可能性があるため、建物の状態を慎重に確認する必要があります。
利回りについては、表面利回り6%以上を目安にします。ただし、表面利回りだけでなく、管理費や修繕積立金、固定資産税などの経費を差し引いた実質利回りも必ず計算します。実質利回りが4%以上あれば、安定した収益が期待できます。また、周辺の家賃相場を調査し、現在の家賃設定が適正かどうかも確認しましょう。
奨学金返済を優先すべきケース
すべての人が奨学金返済中に不動産投資を始めるべきというわけではありません。状況によっては、まず奨学金の返済を優先した方が良いケースもあります。
奨学金の残高が多く、返済期間が長期にわたる場合は、まず返済を優先することを検討しましょう。特に残高が500万円以上あり、月々の返済額が5万円を超えている場合は、投資用ローンを組むことで家計が圧迫される可能性が高くなります。このような状況では、まず奨学金の繰り上げ返済を行い、返済負担を軽減することが賢明です。
収入が不安定な場合も、投資は控えた方が良いでしょう。転職したばかりの方や、フリーランスとして働いている方は、金融機関の審査も通りにくく、仮に融資を受けられたとしても返済リスクが高くなります。まずは安定した収入基盤を築き、3年以上の勤務実績を作ることが先決です。
貯蓄が少ない場合も注意が必要です。自己資金として物件価格の30%を用意できず、さらに予備資金も確保できない状態では、不動産投資を始めるべきではありません。空室や修繕などの予期せぬ事態に対応できず、最悪の場合は物件を手放すことになりかねません。まずは計画的に貯蓄を増やし、十分な資金を確保してから投資を検討しましょう。
一方で、奨学金の残高が少なく、あと数年で完済できる見込みがある場合は、完済を待ってから投資を始めるという選択肢もあります。奨学金を完済すれば、金融機関の審査も通りやすくなり、より有利な条件で融資を受けられる可能性が高まります。また、返済負担がなくなることで、投資用ローンの返済に集中できるというメリットもあります。
成功するための具体的なステップ
奨学金返済中に不動産投資を成功させるには、段階的なアプローチが重要です。焦らず着実に準備を進めることで、リスクを最小限に抑えることができます。
第一段階として、まず3ヶ月から6ヶ月かけて不動産投資の基礎知識を学びます。書籍やセミナー、オンライン講座などを活用し、物件の選び方、融資の受け方、税金の仕組みなどを理解します。この期間に、実際の物件情報をチェックし、価格相場や利回りの感覚を養うことも大切です。不動産投資家のブログやSNSを参考にすることで、実践的な知識を得ることもできます。
第二段階では、自己資金の貯蓄を本格的に始めます。目標金額を設定し、毎月一定額を投資用の口座に積み立てます。ボーナスや臨時収入があった場合も、できるだけ貯蓄に回すようにします。この期間は1年から3年程度を想定し、その間に市場調査を続けながら、購入したい物件の条件を明確にしていきます。
第三段階として、金融機関への相談を開始します。複数の銀行や信用金庫を訪問し、融資条件や審査基準について情報を集めます。この時点で、自分の年収や奨学金の返済状況を正直に伝え、どの程度の融資が可能かを確認します。金融機関によって対応が大きく異なるため、少なくとも3〜5社に相談することをお勧めします。
第四段階では、具体的な物件探しを行います。不動産会社に希望条件を伝え、定期的に物件情報を受け取るようにします。気になる物件があれば、必ず現地を訪問し、周辺環境や建物の状態を自分の目で確認します。また、管理会社の評判や入居率なども調査します。良い物件が見つかったら、収支シミュレーションを作成し、本当に購入すべきかを慎重に判断します。
最終段階として、物件購入と運用開始に進みます。売買契約を結ぶ前に、必ず専門家に相談し、契約内容に問題がないか確認します。購入後は、信頼できる管理会社を選び、入居者募集や物件管理を任せます。自主管理は手間がかかるため、特に初心者の方には管理委託をお勧めします。運用開始後も、定期的に収支を確認し、必要に応じて戦略を見直していきます。
まとめ
奨学金返済中でも、適切な準備と計画があれば不動産投資を始めることは可能です。ただし、通常よりも慎重なアプローチが求められ、無理のない資金計画を立てることが何よりも重要です。
金融機関の審査では、奨学金返済を含めた総返済負担率が重視されます。年収に対する返済額の割合を35%以内に抑え、安定した収入と良好な信用情報を維持することが審査通過の鍵となります。また、物件価格の30%程度の自己資金と、100万円以上の予備資金を確保することで、リスクを大幅に軽減できます。
物件選びでは、立地条件の良いワンルームマンションから始めることをお勧めします。駅近で生活施設が充実したエリアの物件を選ぶことで、空室リスクを抑えることができます。築15年から25年程度の物件であれば、価格と収益性のバランスが取れており、初心者にも適しています。
一方で、奨学金の残高が多い場合や、収入が不安定な場合、貯蓄が少ない場合は、まず返済や貯蓄を優先することも検討しましょう。焦って投資を始めるよりも、十分な準備期間を設けることが、長期的な成功につながります。
不動産投資は、正しい知識と計画的な準備があれば、将来の資産形成に大きく貢献します。奨学金返済という負担がある中でも、段階的に準備を進めることで、安全に投資を始めることができます。まずは基礎知識の習得と資金の貯蓄から始め、自分に合ったペースで進めていきましょう。
参考文献・出典
- 日本学生支援機構(JASSO)- https://www.jasso.go.jp/
- 国土交通省 不動産市場動向マンスリーレポート – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html
- 金融庁 金融サービス利用者相談室 – https://www.fsa.go.jp/receipt/soudansitu/index.html
- 一般社団法人 不動産流通経営協会 – https://www.frk.or.jp/
- 公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会 – https://www.jpm.jp/
- 総務省統計局 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/
- 日本銀行 金融政策に関する情報 – https://www.boj.or.jp/mopo/index.htm/