不動産投資を検討している方の中には、「区分マンションよりも一棟買いの方が収益性が高いのでは?」と考える方も多いのではないでしょうか。確かにワンルームマンションの一棟買いは、複数の部屋を一度に所有できるため、スケールメリットを活かした投資が可能です。しかし、初期投資額の大きさやリスク管理の複雑さなど、区分所有とは異なる課題も存在します。この記事では、ワンルームマンション一棟買いのメリット・デメリットから、成功するための具体的な戦略、資金計画の立て方まで、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
ワンルームマンション一棟買いとは何か

ワンルームマンション一棟買いとは、複数のワンルーム(1R・1K)で構成された賃貸マンションを建物全体で購入する投資手法です。一般的には6戸から20戸程度の規模が多く、単身者向けの賃貸需要が見込めるエリアで展開されています。
この投資手法が注目される理由は、複数の収益源を一度に確保できる点にあります。区分マンション投資では1戸の空室が収入ゼロを意味しますが、一棟所有なら他の部屋からの家賃収入でカバーできます。つまり、収入の安定性が格段に向上するのです。
さらに、建物全体を所有することで土地の資産価値も手に入ります。区分所有では土地の持ち分はわずかですが、一棟所有なら土地全体があなたの資産となります。これは将来的な資産価値の維持や、建て替え時の意思決定において大きなアドバンテージとなります。
ただし、投資規模が大きくなる分、慎重な判断が求められます。物件価格は立地や築年数にもよりますが、都心部では1億円を超えることも珍しくありません。地方都市でも数千万円から5000万円程度の資金が必要となるため、十分な準備と計画が不可欠です。
一棟買いと区分所有の違いを理解する

投資判断を行う前に、一棟買いと区分所有の本質的な違いを理解しておくことが重要です。この違いを把握することで、自分に適した投資スタイルが見えてきます。
まず投資規模の違いです。区分マンションは1000万円から3000万円程度で始められますが、一棟買いは最低でも5000万円以上の資金が必要になります。2026年2月の新築マンション平均価格は東京23区で7,580万円(前年比+3.2%)となっており、都心部での投資はさらに高額になる傾向があります。この初期投資の差は、融資審査の難易度や必要な自己資金額にも直結します。
収益性の面では一棟買いに軍配が上がります。複数の部屋から家賃収入を得られるため、表面利回りは6〜8%程度と区分マンションの4〜5%より高くなる傾向があります。また、空室リスクの分散効果により、実質的な収益の安定性も向上します。10戸のマンションで1戸空室が出ても、収入は10%減少するだけで済みます。
管理の自由度も大きな違いです。一棟所有なら建物全体の管理方針を自分で決定できます。外壁塗装のタイミング、共用部のリフォーム、設備の更新など、すべてオーナーの判断で実施可能です。一方、区分所有では管理組合の決議が必要となり、自分の意向だけでは進められません。
しかし、責任の重さも比例して増加します。建物全体の維持管理、大規模修繕の計画と実施、入居者トラブルへの対応など、すべてがオーナーの責任となります。区分所有なら管理組合が担う業務も、一棟所有では自分で対処しなければなりません。
一棟買い投資のメリットを最大化する方法
ワンルームマンション一棟買いの最大の魅力は、適切な戦略によって収益性を大きく高められる点にあります。ここでは具体的なメリットとその活かし方を見ていきましょう。
スケールメリットによるコスト削減は見逃せないポイントです。管理会社への委託費用は、戸数が増えるほど1戸あたりの単価が下がります。10戸の物件なら、区分マンション10戸を別々に所有するより管理費を20〜30%削減できることもあります。また、大規模修繕や設備更新の際も、まとめて発注することで工事費用を抑えられます。
土地の資産価値を活用した戦略も重要です。建物は経年劣化しますが、立地の良い土地は価値を維持しやすい傾向があります。将来的に建物が老朽化した際、土地を所有していれば建て替えや売却など、複数の選択肢を持つことができます。特に駅近や商業施設が充実したエリアの土地は、長期的な資産形成の核となります。
運営の自由度を活かした収益改善も可能です。例えば、空室が目立つ場合は家賃を柔軟に調整したり、リフォームで付加価値を高めたりできます。また、1階部分を店舗として貸し出すなど、用途の多様化によって収益源を増やすことも検討できます。建物全体をコントロールできるからこそ、市場の変化に応じた機動的な対応が実現します。
さらに、複数の金融機関から評価されやすいという利点もあります。一棟物件は担保価値が高く、事業性も評価されやすいため、融資条件が有利になることがあります。実際、区分マンションでは融資が難しい金融機関でも、一棟物件なら前向きに検討してくれるケースは少なくありません。
一棟買い投資のリスクと対策
高い収益性が期待できる一棟買い投資ですが、同時に注意すべきリスクも存在します。これらのリスクを事前に理解し、適切な対策を講じることが成功への鍵となります。
初期投資の大きさは最も重要な検討事項です。数千万円から億単位の資金が必要となるため、融資審査のハードルも高くなります。金融機関は物件の収益性だけでなく、投資家の年収、資産状況、事業計画の妥当性まで総合的に評価します。自己資金として物件価格の20〜30%、さらに諸費用として物件価格の8〜10%程度を用意できることが理想的です。
空室リスクへの対応も慎重に考える必要があります。複数の部屋があるとはいえ、立地選定を誤れば全体的な空室率が上昇し、収支が悪化します。特にワンルームマンションは単身者向けのため、周辺の大学や企業の動向に影響を受けやすい特徴があります。投資前には、そのエリアの人口動態、賃貸需要の推移、競合物件の状況を徹底的に調査しましょう。
大規模修繕費用の準備も欠かせません。建物全体を所有するということは、外壁塗装、屋上防水、給排水設備の更新など、すべての修繕費用を負担することを意味します。一般的に、築15年前後で1回目の大規模修繕が必要となり、その費用は1000万円を超えることもあります。毎月の家賃収入から修繕積立金を確保し、計画的に資金を準備することが重要です。
管理の手間と責任の増大にも注意が必要です。入居者からのクレーム対応、設備の故障対応、家賃滞納への対処など、オーナーとしての業務は多岐にわたります。管理会社に委託することで負担は軽減できますが、最終的な責任はオーナーにあります。特に初めての一棟投資では、実績豊富な管理会社を選び、密にコミュニケーションを取ることが成功のポイントとなります。
成功する物件選びの具体的なポイント
ワンルームマンション一棟買いで成功するかどうかは、物件選びの段階でほぼ決まると言っても過言ではありません。ここでは、収益性の高い物件を見極めるための具体的なチェックポイントを解説します。
立地条件は最優先で確認すべき要素です。駅から徒歩10分以内、できれば5分以内の物件が理想的です。単身者は通勤・通学の利便性を重視するため、駅近物件は常に高い需要があります。また、周辺にスーパーやコンビニ、飲食店などの生活利便施設が充実していることも重要です。さらに、近隣に大学や大企業のオフィスがあれば、安定した賃貸需要が見込めます。
建物の状態と築年数のバランスも慎重に判断しましょう。新築や築浅物件は修繕費用が少なく管理しやすい反面、価格が高く利回りは低めです。一方、築20年以上の物件は価格が抑えられ利回りは高いものの、近い将来に大規模修繕が必要になる可能性があります。築10〜15年程度で、適切にメンテナンスされている物件が、価格と収益性のバランスが取れた選択肢となることが多いです。
現在の入居状況と家賃設定も必ず確認してください。満室稼働している物件は魅力的に見えますが、相場より安い家賃で無理に満室にしている可能性もあります。周辺の類似物件と比較し、適正な家賃設定かどうかを見極めることが大切です。また、入居者の属性や契約期間も確認し、購入後すぐに大量退去が発生しないかチェックしましょう。
収益性の計算は表面利回りだけでなく、実質利回りで判断することが重要です。管理費、修繕積立金、固定資産税、都市計画税、火災保険料などの経費を差し引いた実質的な収益を計算します。一般的に、実質利回りが4〜5%以上あれば、長期的に安定した投資が期待できます。さらに、空室率を20%程度と保守的に見積もったシミュレーションを行い、それでも収支がプラスになるか確認しましょう。
資金計画と融資戦略の立て方
ワンルームマンション一棟買いでは、適切な資金計画と融資戦略が成功の鍵を握ります。大きな金額が動くだけに、綿密な計画と準備が不可欠です。
自己資金の準備から始めましょう。物件価格の20〜30%を自己資金として用意することが理想的です。例えば、5000万円の物件なら1000〜1500万円の自己資金が目安となります。これに加えて、諸費用として物件価格の8〜10%(400〜500万円)も必要です。諸費用には、仲介手数料、登記費用、不動産取得税、火災保険料、融資手数料などが含まれます。さらに、購入後の予備資金として300〜500万円程度を確保しておくと、突発的な修繕や空室期間にも対応できます。
融資を受ける金融機関の選定も重要なステップです。都市銀行、地方銀行、信用金庫、日本政策金融公庫など、複数の選択肢があります。それぞれ融資条件や審査基準が異なるため、3〜5つの金融機関に相談することをお勧めします。金利は0.5%違うだけでも、30年間の総返済額で数百万円の差が生じます。変動金利は現在1〜2%程度と低いですが、将来の金利上昇リスクがあります。固定金利は2〜3%程度と高めですが、返済計画が立てやすいメリットがあります。
事業計画書の作成は融資審査で重要な役割を果たします。物件の概要、立地の優位性、賃貸市場の分析、収支シミュレーション、リスク対策などを具体的に記載します。特に収支シミュレーションでは、楽観的なシナリオだけでなく、空室率20%や金利上昇2%といった厳しい条件でも返済可能であることを示すことが大切です。金融機関は、投資家の事業計画の妥当性と返済能力を総合的に判断します。
返済計画は余裕を持って設定しましょう。家賃収入の70〜80%を返済額の上限とし、残りを経費や修繕積立金、予備費に充てることが理想的です。無理な返済計画は、空室が増えた際に資金繰りが悪化し、最悪の場合は物件を手放さざるを得なくなります。長期的に安定した経営を続けるためには、保守的な計画を立てることが成功への近道です。
購入後の管理と運営のポイント
物件を購入した後の管理と運営が、投資の成否を左右します。適切な管理体制を構築し、継続的に収益を最大化する取り組みが必要です。
管理会社の選定は最初の重要な決断です。管理会社には、入居者募集、家賃回収、クレーム対応、清掃、設備点検など、多岐にわたる業務を委託します。管理手数料は家賃収入の5〜8%程度が相場ですが、安さだけで選ぶのは危険です。実績、対応の速さ、入居率の高さ、オーナーへの報告体制などを総合的に評価しましょう。複数の管理会社に相談し、実際に管理している物件を見学させてもらうことも有効です。
空室対策は継続的に取り組むべき課題です。空室が発生したら、まず原因を分析します。家賃が高すぎるのか、設備が古いのか、清掃が行き届いていないのか。原因に応じて、家賃の見直し、設備の更新、リフォームなどの対策を講じます。また、入居者が退去する前に次の入居者を見つける「予約入居」の仕組みを作ることで、空室期間を最小限に抑えられます。
定期的なメンテナンスと修繕計画も欠かせません。共用部の清掃、設備の点検、小規模な修繕は日常的に行い、建物の価値を維持します。また、大規模修繕に向けて長期修繕計画を立て、計画的に資金を積み立てます。一般的に、外壁塗装は12〜15年ごと、屋上防水は10〜15年ごと、給排水設備は20〜30年ごとに更新が必要です。これらの費用を見込んで、毎月の家賃収入から修繕積立金を確保しましょう。
入居者との良好な関係構築も長期的な安定経営につながります。入居者からの要望には迅速に対応し、快適な住環境を提供することで、長期入居を促進できます。長期入居者が増えれば、空室リスクが減り、入居者募集のコストも削減できます。また、定期的に入居者アンケートを実施し、改善点を把握することも効果的です。
まとめ
ワンルームマンション一棟買いは、適切な知識と戦略があれば、安定した収益を生み出す魅力的な投資手法です。複数の部屋から家賃収入を得られるため収益の安定性が高く、土地の資産価値も手に入れられます。また、建物全体を自分でコントロールできるため、運営の自由度が高いのも大きなメリットです。
しかし、初期投資額の大きさ、空室リスク、大規模修繕費用の負担など、注意すべき点も多くあります。成功するためには、立地条件の良い物件を選び、綿密な資金計画を立て、適切な管理体制を構築することが不可欠です。特に、保守的な収支シミュレーションを行い、厳しい条件でも収益を確保できる計画を立てることが重要です。
これから一棟買い投資を始める方は、まず自分の資金状況と投資目標を明確にしましょう。そして、信頼できる不動産会社や管理会社、金融機関との関係を構築し、十分な情報収集と準備を行ってください。焦らず、慎重に、しかし前向きに取り組むことで、ワンルームマンション一棟買いは長期的な資産形成の強力な手段となるはずです。
参考文献・出典
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp/
- 国土交通省「不動産市場動向マンスリーレポート」 – https://www.mlit.go.jp/
- 公益財団法人 東日本不動産流通機構 – https://www.reins.or.jp/
- 一般社団法人 日本不動産研究所 – https://www.reinet.or.jp/
- 総務省統計局「住宅・土地統計調査」 – https://www.stat.go.jp/
- 金融庁「投資用不動産向け融資に関する実態調査」 – https://www.fsa.go.jp/
- 一般社団法人 全国賃貸住宅経営者協会連合会 – https://www.zenchin.com/