不動産投資を始めようと物件を探していると、「築10年・表面利回り8%」といった魅力的な条件の物件に出会うことがあります。新築よりも価格が手頃で、利回りも高い。一見すると理想的な投資先に思えますが、本当にそうでしょうか。実は築10年という築年数には、投資判断において重要な意味があります。この記事では、築10年物件の表面利回りを正しく理解し、失敗しない投資判断をするための知識を、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。物件選びで後悔しないために、ぜひ最後までお読みください。
表面利回りの基本と築10年物件の位置づけ

不動産投資を検討する際、最初に目にするのが「表面利回り」という数字です。この指標は年間家賃収入を物件価格で割った値で、投資効率の目安として広く使われています。たとえば3000万円の物件で年間家賃収入が240万円なら、表面利回りは8%となります。
築10年物件は不動産投資市場において特別な位置づけにあります。新築時の価格下落が一段落し、建物の状態もまだ良好な時期です。2026年2月時点のデータによると、東京23区のワンルームマンションでは築10年前後の物件の平均表面利回りは4.5〜5.5%程度となっています。新築物件が3〜4%台であることを考えると、確かに利回り面では魅力的に見えます。
しかし表面利回りだけで判断するのは危険です。この数字には管理費、修繕積立金、固定資産税、将来の修繕費用などが含まれていません。実際に手元に残る収益を示す「実質利回り」は、表面利回りより2〜3%低くなるのが一般的です。つまり表面利回り8%の物件でも、実質的には5〜6%程度になる可能性があります。
築10年という時期は、建物の第一次修繕サイクルが始まる前の段階です。マンションの大規模修繕は通常12〜15年周期で行われるため、購入後数年で修繕積立金の値上げや一時金の徴収が発生する可能性があります。この点を考慮せずに表面利回りだけで判断すると、想定外の出費に直面することになります。
築10年物件の表面利回りが高く見える理由

築10年物件の表面利回りが新築より高く設定されているのには、明確な理由があります。まず物件価格が新築時より下落していることが大きな要因です。一般的に新築マンションは購入直後から10〜20%程度価格が下がり、その後は緩やかな下落カーブを描きます。
価格が下がる一方で、家賃は新築時とそれほど変わらないケースが多いのです。立地が良く管理が行き届いた物件であれば、築10年でも新築時の90〜95%程度の家賃を維持できます。この「価格は下がるが家賃は維持される」という特性が、表面利回りを押し上げる主な要因となっています。
さらに売主側の事情も影響します。築10年前後は投資用として購入した所有者が売却を検討する時期と重なります。ローン残債が減り、キャピタルゲインを確保できる水準になるためです。売主が早期売却を希望する場合、相場より低めの価格設定をすることがあり、結果として表面利回りが高く見えることになります。
ただし注意が必要なのは、表面利回りが相場より極端に高い物件です。周辺相場が5%なのに8%を超える物件は、何らかの問題を抱えている可能性があります。建物の管理状態が悪い、周辺環境に問題がある、事故物件である、といった理由で価格が下げられているケースも少なくありません。高利回りに飛びつく前に、なぜその利回りなのかを冷静に分析することが重要です。
築10年物件を選ぶ際の実質利回り計算方法
表面利回りだけでなく、実質利回りを計算することが賢明な投資判断の第一歩です。実質利回りは実際の収支をより正確に反映した指標で、年間家賃収入から諸経費を差し引いた純収益を物件価格で割って算出します。
具体的な計算例を見てみましょう。物件価格3000万円、年間家賃収入240万円の築10年マンションの場合、表面利回りは8%です。しかしここから管理費・修繕積立金が月3万円(年36万円)、固定資産税・都市計画税が年12万円、賃貸管理委託費が家賃の5%(年12万円)かかるとします。さらに空室率を10%と見込むと、実際の家賃収入は216万円になります。
純収益は216万円から諸経費60万円を引いた156万円となり、実質利回りは156万円÷3000万円で5.2%です。表面利回り8%から実質利回り5.2%へと、約3%も下がることになります。この差を理解せずに投資すると、想定していた収益が得られず、資金繰りに苦しむことになりかねません。
築10年物件では特に修繕積立金の動向に注意が必要です。多くのマンションでは段階的に修繕積立金を値上げする計画になっており、築10年時点では比較的安くても、数年後には倍近くになることもあります。購入前に長期修繕計画を確認し、将来の負担増を見込んだ収支シミュレーションを作成することが不可欠です。
また空室リスクも現実的に見積もる必要があります。立地や物件の魅力度によって異なりますが、一般的には年間10〜15%程度の空室率を想定しておくと安全です。満室想定の甘い計算では、実際の運用で大きなギャップが生じてしまいます。
築10年物件の隠れたコストとリスク
築10年物件には表面的には見えにくいコストやリスクが潜んでいます。最も大きいのが設備の更新費用です。給湯器やエアコンの寿命は10〜15年程度ですから、購入後すぐに交換が必要になる可能性があります。給湯器の交換だけで15〜20万円、エアコンも10万円程度かかります。
室内設備だけでなく、建物全体の修繕も視野に入れる必要があります。マンションの大規模修繕は通常12〜15年周期で実施されますが、修繕積立金が不足している管理組合も少なくありません。国土交通省の調査によると、約3割のマンションで修繕積立金が不足しているというデータがあります。不足分は一時金として各所有者に請求されるため、数十万円から場合によっては100万円を超える出費が発生することもあります。
築10年という時期は、建物の初期不良が表面化し始める時期でもあります。防水工事の不備による漏水、外壁タイルの剥落、配管の劣化など、新築時には分からなかった問題が顕在化します。これらの修繕費用は予想外の出費となり、収益を圧迫する要因になります。
さらに入居者の入れ替わりに伴う原状回復費用も考慮が必要です。築10年の物件では、前の入居者が長期間住んでいた場合、退去時のクリーニングや修繕に通常より多くの費用がかかることがあります。壁紙の全面張替え、フローリングの補修、水回りの清掃など、合計で30〜50万円程度かかるケースも珍しくありません。
賃料下落リスクも無視できません。築10年から20年にかけては、周辺に新築物件が建つと相対的に競争力が低下し、家賃を下げざるを得ない状況になることがあります。特に駅から遠い物件や設備が古い物件では、年1〜2%程度の賃料下落を想定しておく必要があります。
築10年物件で成功するための物件選びのポイント
築10年物件で安定した収益を得るには、物件選びの段階で重要なポイントを押さえることが必要です。まず立地条件は何よりも優先すべき要素です。駅から徒歩10分以内、できれば5分以内の物件を選ぶことで、将来的な賃料下落リスクを最小限に抑えられます。
管理状態の確認も欠かせません。エントランスや共用部分が清潔に保たれているか、掲示板の情報が更新されているか、自転車置き場が整理されているかなど、細かい点をチェックします。管理が行き届いている物件は、長期的に資産価値を維持しやすく、入居者の満足度も高くなります。
修繕積立金の状況は必ず確認しましょう。重要事項調査報告書で修繕積立金の残高と長期修繕計画を確認し、計画通りに積み立てられているかチェックします。残高が計画より大幅に少ない場合は、近い将来に一時金の徴収や積立金の大幅値上げが予想されます。また過去の修繕履歴も確認し、適切なメンテナンスが行われてきたかを把握することが重要です。
建物の構造や設備も重要な判断材料です。鉄筋コンクリート造は木造や軽量鉄骨造に比べて耐久性が高く、長期的な投資に適しています。また宅配ボックス、オートロック、防犯カメラなどの設備が充実している物件は、入居者の需要が高く空室リスクが低くなります。
周辺環境の将来性も考慮に入れます。再開発計画がある地域、大学や企業の移転予定がある地域は、将来的な賃貸需要の増加が期待できます。一方、人口減少が著しい地域や大型商業施設の撤退が予定されている地域は、避けた方が無難です。
実際に物件を内見する際は、日当たり、騒音、周辺の治安など、入居者目線でチェックします。自分が住みたいと思える物件かどうかが、良い投資物件かどうかの判断基準になります。また可能であれば、異なる時間帯に複数回訪問し、朝夕の通勤時間帯の様子や夜間の雰囲気も確認しておくと安心です。
築10年物件の表面利回りを最大化する運用戦略
物件を購入した後の運用方法によって、実質的な利回りは大きく変わります。まず入居者募集の戦略が重要です。家賃設定は周辺相場を十分にリサーチし、適正価格で設定します。相場より高すぎると空室期間が長くなり、低すぎると収益が減少します。繁忙期(1〜3月)に合わせて募集をかけることで、より良い条件で入居者を見つけやすくなります。
物件の魅力を高めるための工夫も効果的です。小規模なリフォームで費用対効果の高いものとしては、壁紙の張替え、照明のLED化、水回りの清掃・コーティングなどがあります。特にキッチンや浴室などの水回りは入居者が重視するポイントなので、清潔感を保つことが重要です。また無料インターネット設備の導入は、月数千円のコストで家賃を数千円上げられる可能性があり、投資効果が高い施策です。
管理会社の選定も収益に大きく影響します。管理委託費が安いだけでなく、入居者募集力が強く、トラブル対応が迅速な会社を選ぶことが大切です。複数の管理会社から見積もりを取り、サービス内容と費用のバランスを比較検討します。また定期的に管理状況をチェックし、必要に応じて管理会社の変更も検討します。
税務面での工夫も利回り向上につながります。減価償却費を適切に計上することで、所得税や住民税の負担を軽減できます。築10年の物件でも、建物部分の減価償却はまだ十分に残っています。また修繕費や管理費などの経費を漏れなく計上し、確定申告を適切に行うことで、手取り収益を最大化できます。
長期的な視点では、適切なタイミングでの売却も重要な戦略です。築15〜20年になると大規模修繕の時期が近づき、物件価値が下がりやすくなります。市場動向を見ながら、築15年前後で売却を検討することも一つの選択肢です。キャピタルゲインとインカムゲインの両方を考慮した出口戦略を、購入時から計画しておくことが成功への鍵となります。
まとめ
築10年物件の表面利回りは確かに魅力的に見えますが、それだけで投資判断をするのは危険です。表面利回りと実質利回りの差を理解し、管理費、修繕積立金、将来の修繕費用など、隠れたコストを含めた総合的な収支計算が不可欠です。
築10年という時期は、価格と建物状態のバランスが良い一方で、設備更新や大規模修繕が近づく時期でもあります。物件選びでは立地、管理状態、修繕積立金の状況を重点的にチェックし、長期的な視点で投資価値を判断することが重要です。
成功する不動産投資は、表面的な数字に惑わされず、実態を正確に把握することから始まります。この記事で紹介したポイントを参考に、慎重かつ戦略的な物件選びを行ってください。適切な知識と準備があれば、築10年物件は安定した収益をもたらす優良な投資先となるでしょう。まずは気になる物件の実質利回りを計算することから始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献・出典
- 国土交通省 – 不動産市場動向マンスリーレポート – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html
- 日本不動産研究所 – 不動産投資家調査 – https://www.reinet.or.jp/
- 国土交通省 – マンション総合調査 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000001.html
- 公益財団法人 東日本不動産流通機構 – 月例マーケットウォッチ – https://www.reins.or.jp/trend/mw/
- 一般社団法人 日本賃貸住宅管理協会 – 賃貸住宅市場景況感調査 – https://www.jpm.jp/
- 総務省統計局 – 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/