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共有相続で揉めないための完全ガイド|トラブルを防ぐ5つの対策

親が亡くなった後、不動産を兄弟姉妹で共有相続することになりそうで不安を感じていませんか。実は相続トラブルの約3割が不動産の共有相続に関連しており、仲の良かった家族が裁判で争うケースも少なくありません。しかし適切な準備と対策を行えば、こうしたトラブルは十分に防ぐことができます。この記事では、共有相続で揉めないための具体的な方法から、事前にできる対策、万が一トラブルになった場合の解決策まで、実践的な情報をお伝えします。相続が発生する前に知っておくべき知識を身につけることで、大切な家族関係を守りながら円満な相続を実現できるでしょう。

共有相続とは何か|基本的な仕組みを理解する

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共有相続について正しく理解することが、トラブル防止の第一歩となります。多くの方が「とりあえず共有名義にしておけば問題ない」と考えがちですが、実はこれが将来的な争いの火種になることが多いのです。

共有相続とは、一つの不動産を複数の相続人が共同で所有する状態を指します。たとえば親が残した自宅を子ども3人で相続する場合、それぞれが3分の1ずつの持分を持つことになります。登記簿には「A 持分3分の1」「B 持分3分の1」「C 持分3分の1」というように記載され、法律上は全員が平等な所有者となります。

一見すると公平に見える共有相続ですが、実際の運用では様々な問題が生じます。不動産を売却する際には共有者全員の同意が必要になり、一人でも反対すれば売却できません。また賃貸に出す場合も、管理方法や賃料の配分について全員で合意する必要があります。さらに固定資産税の支払いや修繕費用の負担についても、共有者間で話し合いが必要です。

最高裁判所の司法統計によると、2024年度の遺産分割調停事件のうち、約32%が不動産の共有に関する問題を含んでいました。これは相続開始時には問題なくても、時間の経過とともに共有者の生活状況や考え方が変わり、意見の対立が生まれやすいためです。たとえば一人が急にお金が必要になって売却を希望しても、別の相続人が思い出の家を残したいと考えれば、そこで対立が生じます。

共有相続の問題は世代を超えて複雑化することも特徴です。最初は兄弟3人の共有だったものが、それぞれが亡くなると配偶者や子どもに持分が相続され、気づけば10人以上の共有状態になることもあります。こうなると全員の合意を得ることがほぼ不可能になり、不動産が事実上「塩漬け」状態になってしまうのです。

共有相続で揉める典型的なパターンとその原因

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共有相続のトラブルには、いくつかの典型的なパターンがあります。これらを事前に知っておくことで、自分の家族に当てはまるリスクを早期に発見できます。

最も多いのが「売却するか保有するか」での対立です。たとえば長男は実家に愛着があり保有を希望する一方、次男は遠方に住んでおり現金化したいと考えるケースです。国土交通省の調査では、相続した不動産の約45%が相続人の誰も居住していない状態になっており、こうした状況では売却派と保有派の対立が生まれやすくなります。

次に多いのが「管理費用の負担」に関する問題です。共有不動産の固定資産税や修繕費は、原則として持分に応じて負担します。しかし実際には一部の相続人だけが支払いを続け、他の相続人が負担を拒否するケースが頻発しています。特に空き家状態の実家では、誰も使っていない家のために毎年数十万円を支払うことに不満が募り、関係が悪化していきます。

居住権をめぐる争いも深刻です。たとえば長男が親と同居していた実家を兄弟で共有相続した場合、長男は引き続き住み続けたいと考えますが、他の兄弟から「家賃を払うべきだ」と主張されることがあります。民法では共有者は持分に応じて使用できる権利がありますが、一人が全体を使用している場合の対価については明確な規定がなく、トラブルの原因となります。

さらに見落とされがちなのが「次世代への影響」です。当初は兄弟2人の共有だったものが、それぞれが亡くなると配偶者や子どもに相続されます。すると親族関係が薄い者同士の共有となり、連絡を取ることすら困難になります。法務省の統計では、所有者不明土地の約20%が、こうした共有関係の複雑化が原因とされています。

感情的な対立も無視できません。「親の介護を一人で担った」「生前に多額の援助を受けていた」といった過去の経緯が、相続時に表面化することがあります。こうした感情的なしこりがあると、本来は合理的に解決できる問題でも、意地の張り合いになってしまうのです。

生前にできる最も効果的な対策|遺言書の活用

共有相続のトラブルを防ぐ最も確実な方法は、被相続人が生前に明確な意思を示しておくことです。特に遺言書の作成は、家族間の争いを未然に防ぐ強力なツールとなります。

遺言書で不動産を特定の相続人に相続させることを指定すれば、共有状態を避けることができます。たとえば「自宅は長男に相続させる」と明記し、他の相続人には預貯金や有価証券を配分することで、不動産の共有を回避できます。日本公証人連合会の統計によると、2024年度に作成された公正証書遺言は約11万件で、そのうち約65%が不動産の分割方法を明確に指定していました。

遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言がありますが、トラブル防止の観点からは公正証書遺言が推奨されます。公正証書遺言は公証人が作成するため法的な不備がなく、原本が公証役場に保管されるため紛失や改ざんの心配もありません。費用は財産額によって異なりますが、一般的な相続では5万円から10万円程度です。

遺言書を作成する際は、遺留分に注意が必要です。遺留分とは法定相続人に最低限保障された相続分で、配偶者や子どもには法定相続分の2分の1が認められています。たとえば子ども3人の法定相続分がそれぞれ3分の1の場合、遺留分はそれぞれ6分の1となります。遺言で一人に全財産を相続させても、他の相続人は遺留分侵害額請求ができるため、この点を考慮した内容にすることが重要です。

付言事項の活用も効果的です。付言事項とは遺言書に法的効力はないものの、被相続人の思いや分割方法の理由を記載する部分です。「長男には親の介護を任せたいので自宅を相続させる」「次男には事業資金として預貯金を多く配分する」といった理由を明記することで、相続人の納得感が高まり、争いを防ぐことができます。

生前贈与との組み合わせも検討する価値があります。相続時精算課税制度を利用すれば、2500万円まで贈与税なしで財産を移転でき、相続時に相続財産として計算されます。この制度を使って生前に不動産を特定の相続人に贈与しておけば、相続時の共有を避けられます。ただし2026年度の税制では、この制度を選択すると年110万円の基礎控除が使えなくなる点に注意が必要です。

相続発生後に揉めないための話し合いの進め方

相続が発生した後でも、適切な話し合いの進め方を知っていれば、トラブルを最小限に抑えることができます。感情的にならず、建設的な議論を進めるためのポイントを押さえましょう。

まず相続人全員が集まる場を早期に設定することが重要です。相続開始から3ヶ月以内に初回の話し合いを行うことで、問題を先送りせず、記憶が新しいうちに被相続人の意向を確認できます。全国の家庭裁判所に寄せられる遺産分割調停の約40%が、相続開始から1年以上経過してから申し立てられており、時間が経つほど解決が困難になる傾向があります。

話し合いでは、まず財産の全体像を明確にすることから始めます。不動産の評価額、預貯金、有価証券、負債など、すべての財産をリストアップし、相続人全員で共有します。不動産の評価については、複数の不動産会社に査定を依頼し、客観的な市場価格を把握することが大切です。評価額が曖昧なまま話し合いを進めると、後から「評価が不当だった」という不満が生まれます。

各相続人の希望と事情を率直に話し合うことも欠かせません。「実家に住み続けたい」「現金が必要」「管理の手間を避けたい」など、それぞれの状況や考えを共有することで、全員が納得できる解決策を見つけやすくなります。この際、一方的に自分の主張を押し通すのではなく、他の相続人の立場も理解しようとする姿勢が重要です。

具体的な分割案を複数検討することも効果的です。たとえば不動産を共有相続する案、特定の相続人が取得して他の相続人に代償金を支払う案、売却して現金を分配する案など、複数の選択肢を比較検討します。それぞれのメリット・デメリットを整理し、長期的な視点で最適な方法を選びます。

専門家の同席も検討すべきです。弁護士や税理士、不動産鑑定士などの専門家が同席することで、法的な問題点や税務上の注意点を確認しながら話し合いを進められます。特に相続税の申告が必要な場合は、税理士のアドバイスを受けながら分割方法を決めることで、税負担を最小化できます。相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内のため、早めに専門家に相談することが重要です。

話し合いの内容は必ず議事録として記録し、相続人全員で共有します。口頭での合意だけでは後から「言った言わない」の争いになりかねません。重要な決定事項は書面に残し、全員が署名することで、後のトラブルを防ぐことができます。

共有状態を解消する具体的な方法

すでに共有相続が発生してしまった場合でも、共有状態を解消する方法はいくつかあります。それぞれの方法の特徴を理解し、自分の状況に最適な選択をすることが大切です。

最も一般的なのが「換価分割」です。これは不動産を売却して、その代金を相続人で分配する方法です。現金化することで公平な分配が可能になり、管理の手間からも解放されます。国土交通省の調査では、相続した不動産の約28%が相続後3年以内に売却されており、多くの相続人がこの方法を選択しています。ただし売却には共有者全員の同意が必要で、一人でも反対すれば実行できません。

「代償分割」は、特定の相続人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払う方法です。たとえば長男が3000万円の不動産を単独で相続し、次男と三男にそれぞれ1000万円ずつ支払うケースです。この方法なら不動産を残したい相続人の希望を叶えつつ、他の相続人も公平に財産を受け取れます。ただし代償金を支払う資金力が必要で、不動産の評価額について合意が得られないと実行が難しくなります。

「現物分割」は、土地を物理的に分筆して、それぞれの相続人が単独で所有する方法です。広い土地であれば、それぞれが建物を建てられる大きさに分割することで、共有状態を解消できます。ただし分筆には測量費用や登記費用がかかり、一般的に50万円から100万円程度の費用が必要です。また分割後の土地が建築基準法の接道義務を満たさない場合、建物が建てられなくなる可能性もあります。

「共有物分割請求訴訟」は、話し合いで解決できない場合の最終手段です。共有者の一人が裁判所に申し立てることで、裁判所が分割方法を決定します。民法第258条に基づく権利で、共有者であれば誰でも請求できます。裁判所は現物分割、代償分割、競売による換価分割のいずれかを命じますが、手続きには1年以上かかることが多く、弁護士費用も50万円から100万円程度必要になります。

2023年の民法改正で導入された「所在等不明共有者の持分取得制度」も活用できます。この制度では、共有者の一部が所在不明の場合、裁判所の決定を得て、その持分を他の共有者が取得できます。また「所在等不明共有者の持分譲渡制度」では、所在不明者の持分を第三者に売却することも可能になりました。これらの制度により、連絡が取れない共有者がいる場合でも、共有状態の解消が以前より容易になっています。

どの方法を選ぶにしても、早期の決断が重要です。共有状態が長期化するほど、固定資産税や管理費用の負担が増え、建物の老朽化も進みます。また時間が経つと相続人の状況も変わり、さらに解決が困難になります。相続開始から3年以内に方針を決定し、5年以内に実行することを目標にすると良いでしょう。

まとめ|円満な相続のために今すぐできること

共有相続で揉めないためには、事前の準備と適切な対応が不可欠です。最も効果的なのは被相続人が生前に遺言書を作成し、不動産の分割方法を明確にしておくことです。公正証書遺言を作成し、付言事項で分割の理由を説明することで、相続人の納得感が高まります。

すでに相続が発生している場合は、早期に相続人全員で話し合いの場を設け、財産の全体像を把握することから始めましょう。各相続人の希望と事情を率直に共有し、複数の分割案を比較検討することが大切です。専門家のアドバイスを受けながら、法的・税務的に最適な方法を選択してください。

共有状態になってしまった場合でも、換価分割、代償分割、現物分割など、解消する方法は複数あります。状況に応じて最適な方法を選び、できるだけ早期に実行することが重要です。時間が経つほど問題は複雑化し、解決が困難になります。

何より大切なのは、家族間のコミュニケーションです。相続は財産の問題であると同時に、家族の絆を試される場面でもあります。お互いの立場を尊重し、感情的にならず冷静に話し合うことで、円満な解決が可能になります。必要に応じて専門家の力を借りながら、大切な家族関係を守りつつ、公平で納得のいく相続を実現してください。

参考文献・出典

  • 最高裁判所 司法統計 – https://www.courts.go.jp/toukei/index.html
  • 国土交通省 土地問題に関する国民の意識調査 – https://www.mlit.go.jp/
  • 法務省 所有者不明土地問題研究会 – https://www.moj.go.jp/
  • 日本公証人連合会 公正証書遺言の作成状況 – http://www.koshonin.gr.jp/
  • 国税庁 相続税の申告事績 – https://www.nta.go.jp/
  • 法務省 民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号) – https://www.moj.go.jp/

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