管理費・修繕積立金

マンション共用部の電気代目安と削減する3つの方法

マンション共用部の電気代、あなたのマンションは適正ですか?

管理組合の理事として収支報告書に目を通したとき、共用部の電気代の高さに驚いた経験はないでしょうか。実は多くのマンションで、契約や設備を見直すだけで年間数十万円のコスト削減が可能です。資源エネルギー庁によると、2016年4月1日から低圧分野の小売が全面自由化され、家庭や商店を含むすべての消費者が電力会社や料金メニューを自由に選べるようになりました。低圧契約のマンション共用部も例外ではなく、「切り替え余地がない」とは言えない状況です。

共用部の電気代削減は、単なる節約以上の意味を持ちます。管理費の適正化は住民の経済的負担を軽減するだけでなく、マンション全体の資産価値維持にも直結する重要な取り組みです。削減できた費用を修繕積立金に回せば、将来の大規模修繕にも余裕を持って対応できるようになります。この記事では、共用部電気代の目安から具体的な削減方法まで、管理組合が実践できる情報をお届けします。

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そもそも共用部の電気代とは何を指すのか

共用部の電気代を理解するには、まずどこまでが共用部分にあたるのかを押さえる必要があります。国土交通省のマンション標準管理規約では、エントランスホール、廊下、階段、エレベーターホール、ポンプ室、自家用電気室などが共用部分に位置付けられています。さらにエレベーター設備や電気設備、給水設備、オートロック設備なども共用部分の範囲に含まれます。

これらの設備にかかる電気代は、標準管理規約上、通常は「管理費」で負担する対象です。具体的には「共用設備の保守維持費及び運転費」に充てると整理されており、すべての区分所有者が管理費を通じて間接的に負担していることになります。

ここで押さえておきたいのは、共用部電気代がエントランスや廊下の照明だけではないという点です。給水ポンプやエレベーターなどの動力設備も共用部の請求に含まれるため、まず「どの回路・設備が共用部請求に入っているか」を整理しないと、目安額を誤って判断しやすくなります。標準管理委託契約書では、管理対象部分に駐車場や自転車置場、外灯設備、ゴミ集積所なども含まれます。この前提を理解しておくと、後の削減策を検討する際の見通しが立てやすくなります。

共用部電気代の目安はいくら?規模と設備で大きく変わる

共用部の電気代を考えるうえで重要なのは、全国一律の「目安」を鵜呑みにしないことです。電気料金は地域や契約内容によって大きく異なるため、平均値だけで判断すると実態とずれてしまいます。エレベーターの台数や外灯の数、給水方式によっても金額は大きく変わってくるからです。

規模感をつかむために、公表されている実例を見てみましょう。あるマンション管理業協会の受賞事例では、複数戸のマンションで共用部電気代が年間数百万円規模にのぼり、年間管理費総額の相当な割合を占めていました。共用部電気代が管理費のなかで大きな比重を占めうることがよくわかります。一方、大規模タワーマンションになると規模はさらに大きく、川崎市がまとめた事例集では、共用部の電気料金が年間約2,700万円という物件も紹介されています。物件の規模によって金額の桁が変わってくるのが実態です。

金額を正確に把握するには、契約容量と年間使用量をセットで考えることが欠かせません。共用部は照明用の電灯契約と、エレベーターやポンプなどの動力契約に分かれることが多く、両方を合わせて全体像を見る必要があります。料金の構造を東京電力エリアの低圧電力で見ると、基本料金は1kWあたり1,098円05銭で、電力量料金は夏季27円14銭、その他季25円57銭となっています。契約電力が原則50kW未満の動力契約が対象で、これに燃料費調整額と再生可能エネルギー発電促進賦課金が別途加算される仕組みです。基本料金や単価の一部だけを見て「この金額が標準」と判断するのは危険なのです。

削減方法その1:電力会社の切り替えと契約種別の見直し

共用部電気代を下げる最初の一歩は、電力会社と契約種別の見直しです。低圧分野は2016年4月から小売が全面自由化されているため、共用部が低圧契約であれば「電力会社を比較する」こと自体が有効な削減策になります。大阪ガスの案内でも、契約を切り替えるだけで送電網は従来と同じまま、標準的なマンションなら年間で数万円ほどコストが下がるケースが多いと説明されています。設備を変えずに実行できる点が大きな魅力です。

契約種別の見直しも見逃せません。東京電力エリアの低圧電力では、多数の電気機器を一度に使わない場合、主開閉器契約に変えることで契約電力を低く抑えられる可能性があります。仮に契約電力を10kW下げられれば、基本料金の単価から計算して月約10,980円、年約13.2万円の削減余地が生まれます。実際にどこまで下げられるかは設備の使い方によりますが、単価比較よりも先に契約容量の見直しが効く場合が少なくありません。

これを裏付けるのが、先ほどのマンション管理業協会の受賞事例です。この管理組合では浄化槽設備の契約容量を72kWから44kWに変更しただけで、電気料が年間40万円近く削減され、さらに保安管理委託料も不要になりました。設備をそのままに、契約の適正化だけで大きな成果につながった好例といえます。まずは現状の契約容量が過大になっていないかを点検することが、削減の近道になります。

削減方法その2:大規模マンションでの高圧一括受電

戸数の多いマンションでは、高圧一括受電という選択肢も検討に値します。これは管理組合がマンション1棟分の電気を高圧契約でまとめて購入し、各戸へ低圧に変換して供給する方式です。東京電力の案内では、共用部還元型のプランを利用することで、共用部の電気料金を20〜40%程度削減できるとされています。スケールメリットを活かせるため、削減幅が大きくなりやすいのが特徴です。

ただし、導入には無視できない制約があります。同じ案内によれば、対象は既設分譲マンションで原則50戸以上・ファミリータイプといった条件があり、導入工事時や年1回の点検時にはマンション全体で停電が発生します。さらに専有部は個別の小売電気事業者と契約できなくなり、契約期間はサービス開始から10年、途中解約では手数料が発生します。全戸の入居者の同意が前提になるため、合意形成のハードルが高い点も踏まえて検討する必要があります。

つまり高圧一括受電は、削減効果が大きい一方で拘束条件も強い方法です。提供条件は会社や地域によって異なるため、複数の事業者から条件を取り寄せ、削減額と制約のバランスを慎重に見極めることが大切です。最新の情報は各社に確認することをおすすめします。

削減方法その3:LED化で省エネ効果を上乗せする

契約の見直しと並行して取り組みたいのが、共用部照明のLED化です。照明は部分的な対策でも効果が出やすく、契約見直しと組み合わせることで削減幅をさらに広げられます。LED化による省エネ効果は、点灯時間や既存照明の仕様によって異なりますが、共用廊下・外壁・外階段などの照明で大幅な削減が期待できます。点灯時間が長い場所ほど効果は大きくなります。駐車場・駐輪場の照明でも同様に高い省エネ効果が示されており、24時間ではなくても長時間点灯する場所は優先的な改修候補になりやすく、投資回収も早まります。実際、川崎市の事例集では、大規模タワーマンションのLED化によって年間の電気料金が約21%・約580万円削減できる見込みで、工事費は4年以内に回収できるとされています。

LED化は「いつか」ではなく、期限を意識した計画が求められる点も重要です。環境省によると、一般照明用蛍光ランプは種類ごとに2026年1月又は2027年1月から順次、製造・輸出入が禁止されます。共用部にまだ蛍光灯が残っている場合は、蛍光ランプからLED照明への計画的な交換が望ましいといえます。LED化の初期投資には自治体の補助金が使えるケースもありますが、制度は自治体によって大きく異なるため、最新情報は各自治体の公式サイトで確認してください。

契約見直しを成功させる具体的なステップ

共用部電気の見直しは、正しい手順を踏めば決して難しくありません。まず取り組むべきは、現在の電気使用状況の正確な把握です。契約種別ごとに過去12か月分の使用量と金額を集めて一覧にまとめましょう。単月の比較では季節変動やポンプ・空調の使用の偏りを見落としやすいため、1年分をそろえて比較することが実務的です。この作業によって、季節ごとの使用パターンや、特に電気を多く使う時期が明確になります。

使用状況を分析する際は、総使用量だけでなく、主要設備ごとの消費電力も把握すると効果的です。エレベーターや機械式駐車場、共用部照明、給排水設備のうち、どの設備がどれだけ電気を使っているかを理解することで、的を絞った削減策を検討できます。管理会社に依頼すれば、設備ごとの概算消費電力を教えてもらえる場合もあります。

データがそろったら、次は複数の電力会社から見積もりを取得します。最低でも3〜5社から提案を受けることで、適正な価格水準を見極められます。依頼の際は、現在の契約内容と過去1年分の使用実績を正確に伝えることが大切です。多くの電力会社はマンション管理組合向けの窓口を設けており、無料でシミュレーションを提供してくれます。

見積もりが集まったら、単純な料金だけで判断しないよう慎重に比較しましょう。割引の対象範囲や契約期間の縛り、中途解約時の費用負担、料金改定のルールといった細かい条件まで確認することが欠かせません。再エネ賦課金は割引の対象外となるのが一般的で、「総額が割引される」と誤解しないよう、何が割引対象かを丁寧に確かめることが後悔しない選択につながります。

管理組合で合意を得るための実践的アプローチ

契約見直しやLED化を実現するには、管理組合での合意形成が欠かせません。理事会で提案する際に最も効果的なのは、具体的な数字を示すことです。現在の年間電気代と見直し後の予想電気代を比較し、削減効果を明確にします。さらに、削減した費用を修繕積立金に回すなど使途を具体的に提案すると、区分所有者にとってのメリットが伝わりやすくなります。

新電力会社への切り替えに不安を感じる区分所有者には、安全性を丁寧に説明しましょう。送配電網は従来と同じものを使用するため、切り替えによって停電リスクが増えることはありません。同じ地域や似た規模のマンションでの成功事例を紹介するのも、不安の軽減に有効なアプローチです。

反対意見が出た場合は、その懸念を一つずつ解消していくことが大切です。「料金が途中で上がるのではないか」という不安には料金改定ルールを詳しく説明し、「手続きが面倒ではないか」という声には、実際の手続きを電力会社が代行してくれることを伝えます。とりわけ高圧一括受電は全戸同意が前提となり停電も伴うため、総会の前に個別の区分所有者へ説明する機会を設けておくとスムーズです。なお、管理規約の変更や切替に伴う総会決議の手順は個別事情によって異なるため、詳細は専門家に確認することをおすすめします。

まとめ:今すぐ始める電気代削減の第一歩

マンション共用部の電気代は、規模や設備、そして地域によって大きく異なります。複数戸で年間数百万円規模、大規模タワーでは年間約2,700万円という実例もあり、管理費に占める割合も無視できません。正確に把握するには、電灯と動力それぞれの契約容量と年間使用量、そして再エネ賦課金まで含めて全体像をつかむことが欠かせません。

削減の手段は大きく3つあります。低圧契約なら電力会社の切り替えや主開閉器契約への見直しで数万円から十数万円の削減が見込め、大規模マンションでは高圧一括受電で20〜40%程度の削減も可能です。さらにLED化を組み合わせれば省エネ効果を上乗せでき、蛍光灯の規制も見据えて計画的に進める意義があります。ただし高圧一括受電の拘束条件や割引対象外の費用には注意が必要です。

まずは過去12か月分の検針票や請求書を契約種別ごとに整理し、年間の使用状況を把握することから始めてみてください。多くの電力会社は無料でシミュレーションを提供してくれます。この小さな一歩が、年間数十万円の削減という大きな成果につながります。電気代削減は単なるコスト削減ではなく、マンション全体の価値を高める戦略的な取り組みなのです。

参考文献・出典

  • 資源エネルギー庁「電気事業制度について」- https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/index.html
  • 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」- https://www.mlit.go.jp/common/001216238.pdf
  • 国土交通省「マンション標準管理委託契約書」- https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000271.html
  • 環境省「一般照明用の蛍光ランプの規制について」- https://www.env.go.jp/press/press_04170.html
  • 川崎市「マンション管理組合活動事例集(共用部分の電気料金削減)」- https://www.city.kawasaki.jp/500/cmsfiles/contents/0000096/96633/mansionjireisyu-honbun.pdf
  • 東京電力エナジーパートナー「低圧電力」- https://www.tepco.co.jp/ep/private/plan/old02.html
  • 東京電力エナジーパートナー「マンション高圧一括受電」- https://www.tepco.co.jp/ep/private/smartmansion/
  • 日本照明工業会「マンション共用部の照明をLEDに交換」- https://www.jlma.or.jp/led-navi/contents/cont38_mansionLighting.htm
  • マンション管理業協会「省エネ・創エネで共用部分電気代を97%削減」- https://www.kanrikyo.or.jp/award/award2019/award02-01.html

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