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井戸水で水道代ゼロは本当?下水道料金と維持費の真実

不動産投資を進める中で、井戸水を使用している物件に出会うことがあります。「井戸水なら水道代がかからず、ランニングコストを抑えられるのでは」と期待する方も多いでしょう。確かに公共上水道を使わない物件では毎月の水道料金が発生しませんが、その一方で下水道使用料やポンプの電気代、定期的な水質検査などのコストが生じます。この記事では、井戸水物件で本当に水道代がゼロになるのか、維持管理にどれくらいの費用がかかるのか、そして投資判断で押さえるべきポイントまで、公的機関の情報を交えて詳しく解説します。

「水道代ゼロ」が成り立つ条件と落とし穴

井戸水物件では公共の上水道を使用しないため、毎月の水道料金が発生しません。一般的な賃貸物件では水道代が月々数千円かかりますが、井戸水を使用する物件ではこの費用が不要になります。年間に換算すれば数万円の節約効果があり、水の使用量が多い物件ほどメリットは大きくなります。

ところが、ここに大きな落とし穴があります。多くの方が見落としがちなのが下水道使用料の存在です。横浜市の説明によると、井戸水や雨水、ビル湧水などを公共下水道へ排出する場合は「公共下水道使用開始届出書」などの申請が必要で、下水道使用料の支払い義務が生じます。つまり、上水道を使わなくても、下水道に接続している地域では汚水を流した分の料金がかかるのです。

具体的な金額も自治体の例から見えてきます。福井市の試算では、5人世帯が井戸水だけを使用している場合、下水道使用料は2か月あたり8,272円とされています。水道25立方メートルと井戸水を併用する5人世帯でも、井戸水分の下水道使用料が別途6,450円かかり、合計は9,673円になると示されています。下水道使用料の計算方法は自治体ごとに異なり、具体的な金額は各自治体の基準に基づいて決定されます。水道代がゼロでも、下水道の負担は残るのが実態です。

下水道使用料の計算方法は自治体ごとに異なります。井戸水は使用量を直接測れないため、人数で認定する方式が多く採用されています。横浜市では、家事専用に使用している場合、1世帯3人までは1か月8立方メートルとし、3人を超えると1人増すごとに2立方メートルを加算して算出するとしています。物件のある自治体がどのような課金方式を採用しているかを、購入前に必ず確認しておくことが重要です。

ポンプの電気代という「もうひとつの水道代」

井戸水を汲み上げるにはポンプの稼働が欠かせず、そのための電気代が発生します。よく「ポンプ代で月数千円かかる」と語られますが、実際は使用するポンプの出力によって幅があります。ある専門メディアの試算では、浅井戸ポンプ(250W)なら月額約465円、深井戸水中ポンプ(750W)でも月額約1,395円とされています。家庭用の一般的な出力帯であれば、必ずしも数千円固定ではないことがわかります。

電気代の目安単価としては、家電製品の表示で使われる31円/kWh(税込)が一つの基準になります。物件の規模や使用量、ポンプの出力に応じて、実際の電気代を試算しておくとよいでしょう。省エネタイプのポンプを採用すれば、ランニングコストをさらに抑えることが可能です。

飲用に使うなら必須となる水質検査

井戸水を飲用に使う場合、安全性の確認は欠かせません。厚生労働省の「飲用井戸等衛生対策要領」では、一般飲用井戸や業務用飲用井戸などは1年以内ごとに1回の定期検査を行うものとされ、自己居住専用の井戸であっても1年以内ごとに1回が望ましいとされています。賃貸物件として運用する場合は入居者の健康を守る責任があるため、定期的な水質検査が実質的に欠かせません。

検査で重視される基本項目について、同要領では一般細菌、大腸菌、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素、塩化物イオン、有機物、pH値、味、臭気、色度、濁度などが挙げられています。さらに周辺環境に応じて、トリクロロエチレンやテトラクロロエチレンに代表される有機溶剤などが追加されることもあります。検査の依頼先は、水道法に基づく地方公共団体の機関、または厚生労働大臣の登録を受けた検査機関へ行うのが原則とされています。

検査費用は項目数によって大きく変わります。ある検査機関では飲用井戸11項目が税込9,900円であるのに対し、原水全項目では税込198,000円という価格が示されています。別の機関でも11項目8,910円、原水41項目198,000円という価格帯が提示されており、基本検査なら1万円前後、全項目検査なら20万円前後という実勢が見えてきます。

近年は有機フッ素化合物のPFOS・PFOAへの関心も高まっています。これらを含めると費用は跳ね上がり、ある機関では14項目で63,800円、PFOS・PFOAを除いた13項目なら8,800円という価格差が示されています。健康への影響が懸念される項目であるため、周辺環境によっては追加検査を検討する価値があります。

なお、都市部では井戸水を飲用に適した状態で維持するハードルが高い点にも注意が必要です。横浜市は、井戸水を常に水道水質基準に適合させて飲用するには塩素消毒や高度な水処理、継続的な維持管理が必要だとしています。同市では、ほぼ全域で水道が整備されていることから、井戸水は飲用以外の生活用水とし、飲料水には水道を使うことを勧めています。物件の立地によっては、飲用利用を前提にしない運用も選択肢になります。

井戸設備の状態確認と更新コスト

井戸設備の状態確認は、購入後のトラブルを避けるために極めて重要です。井戸には浅井戸と深井戸があり、浅井戸は地表の影響を受けやすく水質が変動しやすい特徴があります。一方、深井戸は深い層から水を汲み上げるため水質が比較的安定しています。それぞれに適したポンプが設置されているかを確認しましょう。

ポンプは消耗品を含む更新前提の設備として捉える必要があります。あるメーカーの目安では、ポンプ全体の取替えは10~15年、軸受は2~4年、メカニカルシールは1~2年とされています。ポンプ本体の価格も無視できず、浅井戸用ポンプではメーカー参考価格で税抜92,400円から215,600円のレンジがあります。実際の交換にはこれに工事費が加わるため、設置年数が経過している物件では価格交渉の材料として活用できます。

井戸水の質によっては、専用の処理設備が必要になることもあります。鉄分やマンガンが多い井戸水では除鉄・除マンガン装置が求められ、あるメーカーの製品では最大10mg/Lまでの鉄分除去をうたっています。砂混じりの水への対策が必要な場合もあり、こうした処理設備のニーズは水質検査の結果を専門業者に見せて判断するのが確実です。

井戸の構造面では、周囲がコンクリートで固められているか、雨水や汚水が流れ込まない高さが確保されているかを確認します。蓋がしっかり閉まり、小動物や異物が入らない構造かもチェックすべきポイントです。配管については地面が不自然に湿っている箇所がないか、漏水の兆候がないかを注意深く観察しましょう。

見落としやすい水量と災害時のリスク

井戸水物件では水質だけでなく水量のリスクにも目を向ける必要があります。内閣官房の資料によると、降雨不足や渇水に伴う地下水利用の増加などで地下水位が低下すると、浅い井戸で取水が困難になることがあります。さらに地下水を大量に汲み上げると、近隣の井戸の取水に支障をきたす可能性も指摘されています。安定した水量が確保できるかは、長期運用の前提条件になります。

災害時の優位性は井戸水物件のアピールポイントですが、過信は禁物です。国土交通省の災害用井戸に関する資料では、電動ポンプで動く井戸は停電になれば使えないと明言されています。上水道が止まっても井戸水が使えるという安心感は確かに魅力ですが、停電を伴う災害では電動ポンプ井戸が機能しない点を理解しておく必要があります。

地下水利用のルールと新設時の前提

地下水の利用には地域ごとのルール確認が欠かせません。国土交通省は、地下水保全等に係る法律・条例・要綱によって採取規制がなされていると整理しています。環境省も都道府県・市区町村が制定する地下水採取規制に関する条例等を一覧化しており、こうした規制は一部の特定地域に限られるものではありません。

自治体によっては、一定規模以上の井戸について掘削前の届出が必要になります。たとえば開成町の条例では、深さ20メートル以上・ケーシングの口径100ミリメートル以上の動力井戸が対象となり、工事施工前60日以内に地下水取水届を提出することが求められています。物件を購入する前には、その地域の条例を必ず確認しておくことが重要です。

井戸を新設または掘り直す場合の工期と費用も把握しておきましょう。国土交通省のガイドラインでは、一般的な浅井戸の工事期間は10~14日間程度が目安とされ、水質を把握する水質試験はこれとは別に約2週間から1か月かかるとされています。費用については、浅井戸30メートル級で直接工事費ベースで約10万円/m前後という概算が示されていますが、これは揚水ポンプや電気工事費を含まない前提である点に注意が必要です。実際の総額はこれを上回ります。

井戸水物件の投資判断で押さえるべき基準

井戸水物件への投資を判断する際は、メリットとデメリットを総合的に評価することが大切です。水道料金がかからない点は確かに魅力ですが、下水道使用料やポンプ電気代、水質検査、設備更新といった実際のコストを差し引いたうえで、純粋な節約効果がどの程度あるのかを冷静に計算する必要があります。

重要なのは、物件価格と周辺相場との比較です。井戸水物件は市場価格より安く設定されていることが多いため、その価格差が維持管理コストや将来の設備更新費用を上回るかどうかを検証します。例えば、同条件の上水道物件より200万円安く購入できる場合、年間の維持管理コストが多少増えたとしても、長期で見れば十分に回収できる可能性があります。

地域の特性も判断材料になります。井戸水の使用が一般的な地域では入居者の抵抗感も少なく、物件の流動性も比較的高くなります。一方、上水道が当たり前の都市部では敬遠される傾向があり、入居者募集や売却時に苦労する可能性があります。前述のとおり都市部では井戸水を飲用に維持するハードルも高いため、飲用以外の生活用水として位置づける運用も含めて、出口戦略を見据えた総合的な判断が求められます。

まとめ

井戸水物件には毎月の水道料金がかからない魅力がある一方、「負担ゼロ」とは限りません。下水道に接続している地域では下水道使用料が残り、福井市の例では5人世帯で2か月8,000円台の負担が生じています。これに加えてポンプの電気代、年1回程度の水質検査費、設備の更新費用が発生します。水道料金の節約分だけで単純に得をするわけではない点を、まず正しく理解しておきましょう。

購入前には水質検査を実施し、飲用に使うなら基本11項目で1万円前後、全項目なら20万円前後という費用感を踏まえて検討してください。ポンプは10~15年で更新前提の設備であること、地域によっては地下水採取条例の届出が必要なこと、停電時には電動ポンプ井戸が使えないことなど、見落としやすいリスクも含めて見極めることが大切です。

最新の課金方式や条例の詳細、検査の依頼先などは個別事情によって異なるため、物件のある自治体や厚生労働大臣登録の検査機関など、各公的機関の公式情報で必ず確認してください。コストとリスクを正確に把握したうえで物件価格の妥当性を判断すれば、井戸水物件もランニングコストを抑えながら安定した収益を狙える選択肢になり得ます。

参考文献・出典

  • 厚生労働省 飲用井戸等衛生対策要領の実施について – https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta5445&dataType=1&pageNo=1
  • 横浜市 下水道使用料 – https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/kasen-gesuido/gesuido/keiei/gesuidoushiyouryou.html
  • 横浜市 井戸水を下水道に流す場合の下水道使用料は? – https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/kasen-gesuido/gesuido/gesuidofaq/shiyoryo/002.html
  • 福井市 井戸水等を使用している場合の下水道の使用水量の認定 – https://www.city.fukui.lg.jp/kurasi/gesui/siyouryo/idoheiyou.html
  • 横浜市 受水槽の衛生管理に関する情報 – https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/sumai-kurashi/seikatsu/kaiteki/jusuisou.html
  • 国土交通省 地下水関連法制度・条例等について – https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_tk1_000064.html
  • 環境省 地下水採取規制に関する条例等 – https://www.env.go.jp/water/jiban/sui/
  • 内閣官房 地下水の基礎 – https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gmpp/guide/technologies/fundamentals.html
  • 国土交通省 災害時地下水利用ガイドライン – https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/content/001879780.pdf
  • 国土交通省 災害用井戸の普及に向けた論点整理 – https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/content/001879781.pdf

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