不動産投資の基礎

育休中に投資を始める完全ガイド|融資と資産形成

育休中は子育てに専念しながら、これからの家計や資産形成についてじっくり考えられる貴重な時間でもあります。「この期間を活かして投資を始めたいけれど、収入が減っている今でも大丈夫だろうか」と悩む方は少なくありません。実際のところ、育休中でも投資を始めることは十分に可能です。ただし、住宅ローンと投資用ローンでは条件が大きく異なり、育休という状況ならではの準備が求められます。

この記事では、育児休業給付の仕組みや社会保険料の扱いといった家計の基礎から、金融機関ごとの融資申込の可否、必要書類、新NISAの活用まで、公的機関の情報をもとに実務的にお伝えします。育休という限られた期間を、将来の資産形成へとつなげるためのヒントを見つけていただければ幸いです。

育休中のお金の仕組みをまず理解する

投資を考える前に、育休中の家計がどう変化するのかを正確に把握しておくことが大切です。まず押さえたいのが、育児休業給付の金額です。厚生労働省の説明によると、育児休業給付は原則として休業開始時賃金日額の67%で計算され、育児休業の開始から181日目以降は50%に下がります。つまり、育休が長引くほど手取り収入は目減りしていくわけです。

一方で、負担が軽くなる面もあります。育児休業期間中は、健康保険と厚生年金の社会保険料について、本人負担分と事業主負担分の双方が免除されるためです。給与から差し引かれていた社会保険料がなくなることで、給付率67%や50%という数字以上に、実質的な手取りの減少幅は抑えられます。この点を理解しておくと、投資に回せる余力を冷静に見積もることができます。

税金の面でも知っておきたいポイントがあります。国税庁のQ&Aでは、地方公務員等共済組合から支給される育児休業手当金は非課税所得とされ、所得税は課されないと説明されています。給付金の課税関係は加入している制度によって異なるため、詳細はご自身の勤務先や各公的機関でご確認ください。こうした収入と支出の変化を正しく踏まえたうえで、無理のない投資計画を立てることが第一歩となります。

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育休中でも住宅ローンは申し込めるのか

マイホームと不動産投資の両方を検討している方も多いため、まずは住宅ローンから整理しましょう。結論として、育休中であっても復職予定があれば住宅ローンを申し込める金融機関は複数あります。ただし、審査で用いる年収の考え方や必要書類にはそれぞれ特徴があります。

たとえばイオン銀行は、公式の説明で、育児休業中でも復職の予定があれば住宅ローンを申し込めるとしています。auじぶん銀行の公式FAQでも同様に申込が可能で、仮審査申込時の前年年収は産休・育休前の年収を入力するよう案内されています。そのうえで、勤務先が発行した産休・育休期間がわかる書類と、休業直前3か月分の給与明細や賞与明細の提出が求められます。育休で減った現在の収入ではなく、休業前の収入をベースに審査してもらえる仕組みになっているわけです。

大手銀行も同じ方針です。三菱UFJ銀行は公式FAQで、産休・育休中でも申込が可能で、休業に入る前の通年の源泉徴収票を用いると説明しています。三井住友銀行も、休暇取得前に通年で勤務していた年の源泉徴収票または住民税課税決定通知書が必要とし、場合によっては勤務先発行資料の提出を依頼することがあるとしています。フラット35を扱うARUHIも申込可能ですが、復職前に融資金を受け取ると、復職前であっても返済が始まる点に注意が必要だと明記しています。

育児期間への配慮を制度化した金融機関もあります。武蔵野銀行の住宅ローン特例では、産休・育休中でも原則として借入が可能となり、子ども1人あたり最長2年間の元金据置が使えます。ただし、据置期間中も利息の支払いは続くため、返済がゼロになるわけではない点は理解しておきましょう。いずれの金融機関でも、育休前の勤務実績と復職の確実性が評価の鍵になるといえます。

投資用不動産ローンは住宅ローンと別物

ここで重要なのは、住宅ローンと投資用不動産ローンをはっきり区別することです。住宅ローンは自分が住む家を買うためのものであり、賃貸経営を目的とした物件購入には使えません。投資用ローンは事業性が問われるため、審査基準も金利水準も住宅ローンとは大きく異なります。育休中に投資を検討する場合、この違いを混同しないことが失敗を避ける前提となります。

投資用ローンの一例として、オリックス銀行の不動産投資ローンがあります。公式情報によると、借入額は2,000万円以上2億円以内、借入期間は1年以上35年以内で、変動金利型を基本としています。保証料は不要で団体信用生命保険が付き、一般団信であれば金利の上乗せはありませんが、生活習慣病団信〈入院プラス〉を選ぶと年0.10%の上乗せとなります。取扱事務手数料は借入金額の2.20%以内で、これとは別に登記費用や印紙代もかかります。

スルガ銀行の投資用不動産ローンは、一定の資産背景を有する個人を対象に、資産形成や資産活用を目的とした賃貸不動産の取得資金として使えます。融資期間は1年以上35年以内の変動金利で、取扱手数料は融資額の0.55%です。繰上返済については、実行後5年以内は返済額の2.0%、5年経過後は一部で6,600円、全額で11,000円と定められています。こうした手数料の水準は投資収益に直結するため、事前に把握しておくことが欠かせません。

投資用ローンの公式ページは金利を非公開とし、個別照会を前提とするケースが多いのが実情です。不動産投資の専門メディアであるWealth Agentの整理では、オリックス銀行は変動2.6〜2.65%前後、年収500万円以上を最低ラインとし、融資後に物件価格の20%にあたる金融資産を残すことが条件として示されています。スルガ銀行についても、審査で金融資産を重視し、融資後も1,000万円以上の残高が必要という整理がなされています。ただしこれらは二次情報であり、最新の正確な条件は各金融機関へ直接確認する必要があります。

一棟物件や事業性融資という選択肢

より規模の大きい投資を視野に入れる場合は、地方銀行のアパートローンや公的融資も選択肢になります。地域や物件の構造によって条件が変わるため、それぞれの特徴を知っておくと比較しやすくなります。

たとえばみなと銀行のアパートローンは、購入資金の融資上限が購入価額の80%で、期間は30年以内です。借入当初1年以内の元金据置ができ、団信への加入は任意とされています。中国銀行のアパートローン(提携口)は物件の構造によって借入期間の上限が異なるとされます。正確な融資限度額や借入期間は、取扱店舗または中国銀行公式サイトの商品概要説明書で最新の条件をご確認ください。物件の構造によって組める期間が変わる点は、収支計画を左右する重要な要素といえます。

公的な融資に目を向けると、住宅金融支援機構の賃貸住宅融資は最長40年という長期返済が可能で、融資手数料や繰上返済手数料が不要という特徴があります。さらに、子育て配慮賃貸住宅の基準に適合する場合には、当初15年間、年0.2%の金利引下げを受けられるとされています。また、日本政策金融公庫の企業活力強化資金は、一定の要件を満たす不動産賃貸業を対象に含み、融資限度額は7,200万円、設備資金は20年以内という条件になっています。これらは民間ローンとは異なる審査の視点を持つため、選択肢として押さえておく価値があります。

育休中の投資で押さえておくべきリスク

育休中に投資を始める際には、この時期ならではのリスクを十分に理解しておくことが欠かせません。最も大きいのは、収入が一時的に減少している点です。育児休業給付は先述のとおり、181日目以降は賃金日額の50%まで下がります。復職後に時短勤務を選べば収入はさらに減る可能性があり、この減少を見込まずにローンを組むと、返済が家計を圧迫しかねません。

不動産投資では、入居者が退去してから次が決まるまでの空室期間が必ず発生します。この間は家賃収入がゼロになり、自己資金からローンを返済しなければなりません。育休中は収入が限られているため、空室が長引いた場合の備えが特に重要です。あわせて、中古物件ではエアコンや給湯器の故障といった予期せぬ修繕費が突然発生することもあります。こうした急な出費に対応できる予備資金を、投資資金とは別に確保しておく必要があります。

見落としがちなのが、返済開始のタイミングです。ARUHIが説明しているように、復職前に融資が実行されると返済も復職前から始まります。武蔵野銀行の据置制度を使っても利息の支払いは続きます。収入が最も少ない時期に返済が重なる事態を避けるため、融資実行日と返済開始日を事前にしっかり確認しておきましょう。育休は本来子育てに専念する期間であることを忘れず、無理のない範囲で投資と向き合う姿勢が大切です。

まずは新NISAから始めるという考え方

不動産投資はまとまった資金と手間が必要なため、育休中の第一歩としては少額から始められる投資も現実的です。その代表が新NISAです。国税庁の説明によると、新NISAの年間投資上限額は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円で、非課税保有限度額は総額1,800万円、うち成長投資枠のみでは1,200万円が上限とされています。運用益が非課税になる制度であり、長期の資産形成と相性が良いのが特徴です。

育休中は収入が減るため、無理のない金額で積立を始め、家計の状況に応じて調整していくのが賢明です。時間に余裕のあるこの時期に投資の基礎を学び、少額で経験を積んでおけば、復職後や不動産投資に踏み出す際の判断力が自然と養われていきます。まずは仕組みを理解しながら小さく始めることが、長期的な成功への近道といえるでしょう。

失敗しないための準備ステップ

育休中に投資を成功させるには、段階的に準備を進めることが欠かせません。まずは投資の基礎知識を身につけることから始めましょう。利回りやキャッシュフロー、減価償却といった仕組みを理解しておくと、金融機関や不動産会社と対等にやり取りできるようになります。育休中は子どもが眠っている時間などを活用して、書籍やオンラインの資料でじっくり学べるのが強みです。

次に、必要な資金を明確にします。不動産投資では物件価格に対して自己資金をどの程度用意するかが審査に大きく影響します。前述のとおり、融資後に一定の金融資産を残すことを求める金融機関もあるため、頭金だけでなく手元資金の余力まで含めて計画を立てることが重要です。育休前の源泉徴収票や給与明細を複数年分そろえておけば、住宅ローン・投資用ローンのどちらでも審査をスムーズに進められます。

あわせて、信頼できる専門家とのつながりを育休中に作っておくことをおすすめします。不動産会社、税理士、ファイナンシャルプランナーなど、各分野の相談先を確保しておくと、実際の投資判断で心強い味方になります。復職後は仕事と育児に追われるため、管理会社の選定や運営体制の検討も、時間のある育休中に進めておくと安心です。焦って無理な投資に踏み出すのではなく、この期間を準備期間と位置づけることが成功につながります。

まとめ

育休中でも投資を始めることは十分に可能です。住宅ローンについては、イオン銀行やauじぶん銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行などが復職予定を前提に申込を受け付けており、審査では育休前の年収を用いる仕組みが一般的です。ただし、投資用不動産ローンは住宅ローンとは別物であり、事業性や金融資産が重視される点を混同しないことが大切です。

育児休業給付の給付率や社会保険料の免除といった家計の仕組みを正しく理解し、収入が減る時期に返済が重ならないよう融資実行のタイミングにも注意しましょう。まずは新NISAのような少額投資で経験を積みつつ、不動産投資は準備を整えてから復職後に本格化させるという段取りも現実的です。なお、制度や金利、審査条件は変わることがあるため、最新情報は必ず各金融機関や公的機関の公式サイトでご確認ください。育休という貴重な時間を、将来の資産形成へと着実につなげていきましょう。

参考文献・出典

  • 厚生労働省「Q&A~育児休業等給付~」 – https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html
  • 国税庁「No.1535 NISA制度」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1535.htm
  • 国税庁「No.1400 給与所得」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1400_qa.htm
  • イオン銀行「育休中でもお申込み可能な住宅ローン」 – https://www.aeonbank.co.jp/column/mortgageloan/aeonbank/ikukyu/
  • auじぶん銀行「産休・育休中の住宅ローン利用について」 – https://help.jibunbank.co.jp/faq_detail.html?id=1090
  • 三菱UFJ銀行「産休中・育休中の住宅ローン申込」 – https://faq01.bk.mufg.jp/faq/show/5786
  • 三井住友銀行「産休・育休中の住宅ローン申込」 – https://qa.smbc.co.jp/faq/show/10418
  • ARUHI「休職中でも申込みできますか」 – https://www.sbiaruhi.co.jp/faq/detail/8
  • 武蔵野銀行「住宅ローン 産休・育休特例」 – https://www.musashinobank.co.jp/sp/loan/housing/kosodate.html
  • オリックス銀行「不動産投資ローン」 – https://www.orixbank.co.jp/personal/property/
  • スルガ銀行「投資用不動産ローン 商品概要説明書」 – https://www.surugabank.co.jp/surugabank/prod/pdf/real_estate.pdf
  • みなと銀行「みなとアパートローン」 – https://www.minatobk.co.jp/kojin/asset_loan/apart.html
  • 中国銀行「アパートローン(提携口)」(該当商品ページを確認できなかったためトップページを掲載。詳細は取扱店舗にご確認ください) – https://www.chugin.co.jp/
  • 住宅金融支援機構「賃貸住宅を建設する場合の参考金利」 – https://www.jhf.go.jp/
  • 日本政策金融公庫「融資制度一覧(国民生活事業)」 – https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/index_k_02.html
電宅男
監修 電宅男 宅地建物取引士 / MBA|株式会社青山地所 営業部

一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。

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