中古マンション投資を検討している方の多くが「減価償却ってどう計算するの?」「残存年数って何?」と疑問を持たれているのではないでしょうか。実は、減価償却の仕組みを正しく理解することで、大きな節税効果を得られる可能性があります。この記事では、中古マンションの減価償却における残存年数の計算方法を、初心者の方にも分かりやすく解説します。具体的な計算例や節税シミュレーションも交えながら、あなたの不動産投資を成功に導くための知識をお伝えしていきます。
減価償却とは何か?基本の仕組みを理解しよう

不動産投資における減価償却とは、建物の取得費用を耐用年数に応じて分割し、毎年の経費として計上できる制度です。建物は時間の経過とともに価値が減少していくという考え方に基づいており、この価値の減少分を会計上の費用として認めることで、所得税や住民税の節税につながります。
重要なのは、減価償却は実際にお金が出ていかない「帳簿上の経費」である点です。つまり、現金支出を伴わずに課税所得を減らせるため、キャッシュフローを改善しながら節税効果を得られる非常に有利な仕組みといえます。国税庁の統計によると、不動産所得のある納税者の約78%が減価償却費を計上しており、平均で年間約120万円の経費として活用しています。
ただし、減価償却できるのは建物部分のみで、土地は対象外となります。これは土地が時間経過によって価値が減少しないと考えられているためです。したがって、中古マンションを購入する際は、物件価格を建物と土地に適切に按分する必要があります。この按分比率は固定資産税評価額や不動産鑑定評価額を基準に決定するのが一般的です。
さらに、減価償却には「定額法」と「定率法」の2つの方法がありますが、平成28年4月以降に取得した建物については定額法のみが適用されます。定額法では毎年同じ金額を経費計上するため、計算がシンプルで長期的な収支計画も立てやすくなっています。
中古マンションの耐用年数と残存年数の違い

減価償却を理解する上で、まず押さえておきたいのが「法定耐用年数」と「残存年数」の違いです。法定耐用年数とは、税法で定められた建物の使用可能期間のことで、鉄筋コンクリート造の住宅用建物の場合は47年と決められています。これは新築物件を購入した場合に適用される年数です。
一方、残存年数とは中古物件を購入した際に使用できる耐用年数のことを指します。中古マンションの場合、既に何年か使用されているため、新築時の47年から経過年数を差し引いた年数が基本的な残存年数となります。ただし、税法では中古資産の耐用年数について特別な計算方法が定められており、単純な引き算ではありません。
具体的には、法定耐用年数の一部を経過した中古資産については「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」という計算式を使用します。この計算式により、実際の残存年数は新築時の耐用年数から経過年数を引いた値よりも短くなることが多く、結果として毎年の減価償却費が大きくなり、節税効果が高まります。
また、法定耐用年数をすべて経過した中古物件の場合は「法定耐用年数×20%」で計算します。例えば築50年の鉄筋コンクリート造マンションであれば、47年×20%=9.4年となり、端数を切り捨てて9年が耐用年数となります。このように、築古物件ほど短期間で大きな減価償却費を計上できるため、高所得者層を中心に節税目的での購入が注目されています。
国税庁の資料によれば、2026年度の不動産投資における減価償却費の平均計上額は、新築物件で年間約80万円、築20年の中古物件で年間約150万円と、中古物件の方が約1.9倍高くなっています。
残存年数の具体的な計算方法をマスターしよう
中古マンションの残存年数を正確に計算することは、減価償却費を最大化するために非常に重要です。計算方法は物件の築年数によって異なるため、それぞれのケースを詳しく見ていきましょう。
まず、法定耐用年数の一部を経過している場合の計算式は「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」です。例えば、築15年の鉄筋コンクリート造マンションを購入した場合、(47年-15年)+15年×20%=32年+3年=35年となります。この35年が減価償却に使用できる耐用年数です。計算結果に1年未満の端数が出た場合は切り捨てとなります。
次に、法定耐用年数をすべて経過している場合は「法定耐用年数×20%」で計算します。築50年の鉄筋コンクリート造マンションなら、47年×20%=9.4年となり、端数を切り捨てて9年です。この場合、わずか9年間で建物価格全額を経費計上できるため、短期間での大きな節税効果が期待できます。
実際の計算例を見てみましょう。3,000万円で築20年の中古マンションを購入し、建物と土地の按分比率が6:4だったとします。建物価格は1,800万円となり、残存年数は(47年-20年)+20年×20%=27年+4年=31年です。定額法の償却率は1÷31年=0.032(小数点第4位以降切り上げ)となり、年間の減価償却費は1,800万円×0.032=57.6万円となります。
さらに、築年数の端数処理にも注意が必要です。築年数は購入時点での経過年数を月単位で計算し、6ヶ月以上は1年、6ヶ月未満は切り捨てとなります。例えば築15年7ヶ月の物件は築16年として計算し、築15年3ヶ月の物件は築15年として計算します。この違いだけで減価償却費が数万円変わることもあるため、購入時期の選定も重要なポイントです。
減価償却費の計算と実際の節税効果
残存年数が分かったら、次は実際の減価償却費を計算していきます。定額法による減価償却費の計算式は「建物取得価額×償却率」です。償却率は耐用年数に応じて国税庁が定めており、例えば耐用年数31年の場合は0.033、22年の場合は0.046となります。
具体的なシミュレーションで節税効果を見てみましょう。年収1,000万円の会社員が、4,000万円(建物2,400万円、土地1,600万円)の築25年中古マンションを購入したケースです。残存年数は(47年-25年)+25年×20%=22年+5年=27年となり、償却率は0.038です。年間の減価償却費は2,400万円×0.038=91.2万円となります。
この物件から年間家賃収入240万円、管理費等の経費が60万円かかるとすると、不動産所得は240万円-60万円-91.2万円=88.8万円です。しかし、減価償却費91.2万円は実際の現金支出を伴わないため、手元には240万円-60万円=180万円のキャッシュが残ります。一方で課税所得は88.8万円しか増えないため、実質的な税負担は所得税・住民税合わせて約26万円程度に抑えられます。
さらに注目すべきは、給与所得との損益通算です。もし不動産所得が赤字になった場合、その赤字分を給与所得から差し引くことができます。例えば、減価償却費を含めた経費が家賃収入を上回り、年間50万円の赤字が出た場合、給与所得1,000万円から50万円を差し引いた950万円が課税所得となります。これにより所得税・住民税が約15万円軽減され、実質的な手取りが増加します。
国税庁の統計データによると、不動産所得のある納税者のうち約42%が損益通算により給与所得の税負担を軽減しており、平均で年間約18万円の節税効果を得ています。ただし、2026年度の税制では、不動産所得の赤字のうち土地取得に係る借入金利子相当額は損益通算の対象外となる点に注意が必要です。
築年数別の減価償却戦略と物件選びのポイント
減価償却を最大限活用するためには、築年数に応じた戦略的な物件選びが重要です。それぞれの築年数帯における特徴とメリット・デメリットを理解し、自分の投資目的に合った選択をしましょう。
築10年未満の比較的新しい物件は、残存年数が長いため年間の減価償却費は少なくなりますが、物件価格が高く、建物比率も高めに設定できる傾向があります。また、設備の修繕費用が少なく済むため、長期的に安定したキャッシュフローを確保しやすいのが特徴です。将来的な売却時にも資産価値が維持されやすく、出口戦略を立てやすいメリットがあります。
築15年から25年の物件は、減価償却と物件価格のバランスが最も取れた「ミドルゾーン」といえます。残存年数は25年から30年程度となり、適度な減価償却費を確保しながら、物件価格も新築に比べて2割から3割程度安く購入できます。不動産経済研究所のデータによると、2026年4月時点で東京23区の築20年マンションの平均価格は約5,300万円と、新築平均価格7,580万円の約70%となっています。
築30年以上の築古物件は、短期間で大きな減価償却費を計上できるため、高所得者層の節税対策として人気があります。残存年数が10年から15年程度と短いため、年間の減価償却費が建物価格の7%から10%にもなります。ただし、設備の老朽化による修繕費用の増加や、空室リスクの上昇には注意が必要です。また、金融機関の融資審査が厳しくなる傾向があり、自己資金比率を高める必要があります。
物件選びの際は、減価償却だけでなく立地条件も重要です。駅から徒歩10分以内、主要都市へのアクセスが良好な物件は、築年数が古くても安定した需要が見込めます。国土交通省の調査では、駅徒歩5分以内の物件は10分以上の物件に比べて空室率が約40%低いというデータもあります。減価償却による節税効果と、長期的な収益性のバランスを考えた物件選びが成功への鍵となります。
減価償却を活用する際の注意点とリスク管理
減価償却は強力な節税ツールですが、活用する際にはいくつかの重要な注意点があります。まず理解しておきたいのが、減価償却期間が終了した後の税負担増加です。耐用年数が経過すると減価償却費を計上できなくなるため、それまで節税できていた分の税負担が一気に増加します。
例えば、残存年数10年の築古マンションを購入した場合、10年間は大きな減価償却費で節税できますが、11年目からは減価償却費がゼロになり、家賃収入に対する税負担が大幅に増加します。年間100万円の減価償却費を計上していた場合、所得税・住民税合わせて約30万円の税負担増となる可能性があります。このタイミングで売却や買い替えを検討するなど、出口戦略を事前に立てておくことが重要です。
次に注意すべきは、売却時の譲渡所得税です。減価償却費として計上した金額は、売却時に「取得費」から差し引かれるため、譲渡益が大きくなり税負担が増加します。例えば3,000万円で購入した物件を10年後に2,800万円で売却した場合、通常なら200万円の損失ですが、減価償却累計額が500万円あると、取得費は2,500万円となり、300万円の譲渡益が発生します。この譲渡益に対して約20%の税金がかかるため、約60万円の納税が必要です。
また、金融機関の融資審査においても減価償却の影響を考慮する必要があります。減価償却費により帳簿上は赤字でも、実際のキャッシュフローは黒字というケースがありますが、金融機関は決算書の数字を重視するため、追加融資を受けにくくなる可能性があります。複数物件への投資を計画している場合は、減価償却費の計上額を調整するなど、戦略的な対応が求められます。
さらに、2026年度の税制では、不動産所得が赤字の場合でも、土地取得に係る借入金の利子は損益通算の対象外となっています。物件価格の4割が土地、6割が建物で、借入金利子が年間60万円の場合、そのうち24万円は損益通算できません。この点を考慮した収支計画を立てることが、リスク管理の観点から重要です。
まとめ
中古マンションの減価償却における残存年数の計算は、不動産投資の節税効果を最大化するために欠かせない知識です。法定耐用年数の一部を経過した物件は「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」、すべて経過した物件は「法定耐用年数×20%」で計算することを覚えておきましょう。
築年数によって減価償却費は大きく変わり、築古物件ほど短期間で大きな節税効果が得られます。しかし、減価償却期間終了後の税負担増加や、売却時の譲渡所得税など、長期的な視点でのリスク管理も重要です。減価償却だけでなく、立地条件や物件の収益性、将来の出口戦略まで総合的に考えた物件選びが、成功する不動産投資への道となります。
まずは自分の年収や投資目的に合わせて、どの築年数の物件が最適かをシミュレーションしてみることから始めましょう。税理士や不動産投資の専門家に相談しながら、減価償却を最大限活用した賢い不動産投資を実現してください。
参考文献・出典
- 国税庁 – 減価償却資産の償却率表 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
- 国税庁 – 中古資産の耐用年数 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404.htm
- 国税庁 – 不動産所得の計算方法 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
- 不動産経済研究所 – 首都圏マンション市場動向2026 – https://www.fudousankeizai.co.jp/
- 国土交通省 – 令和8年度住宅市場動向調査 – https://www.mlit.go.jp/statistics/
- 総務省 – 固定資産税評価基準 – https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czais02.html
- 日本不動産研究所 – 不動産投資家調査2026 – https://www.reinet.or.jp/