不動産の税金

アパート経営の収益性を高める対策の核心

投資用アパートの家賃が思うように伸びず、返済や修繕費の負担が重く感じられる――そんな悩みを抱えるオーナーは少なくありません。実際、国土交通省住宅統計によると2025年7月の全国アパート空室率は21.2%と高止まりしていますが、適切な手を打てば収益性はまだ伸ばせます。本記事では「アパート経営 収益性 対策」を軸に、キャッシュフローの基礎から最新の補助金活用まで体系的に解説します。読み終える頃には、自分の物件で何から着手すべきかが具体的に見えてくるはずです。

キャッシュフローを正しく把握する

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重要なのは、毎月の入金と出金を網羅的に把握し、数字で経営状態を可視化することです。黒字と思っていたのに税引き後は赤字だった、という声は驚くほど多く聞かれます。

まず家賃収入から空室損・滞納損を差し引き、管理費や修繕積立を控除して正味の営業純収益(NOI)を算出しましょう。この段階で手取り額の8〜10%を修繕費に回すと、築15年以降の大規模修繕も慌てずに済みます。一方、ローン返済額は長期固定なら月々一定ですが、変動金利の場合は金利上昇に備えた上乗せをキャッシュフロー表に組み込んでください。

さらに減価償却費を計上し、税引き前利益を把握すると節税余地も見えてきます。毎年の青色申告特別控除(最大65万円)を活用する前提でシミュレーションを作ると、資金繰りの安全度が一段と高まります。

最後に、入居率90%、金利上昇1%など複数シナリオを作り、最悪ケースでも月次キャッシュフローがマイナスにならないか確認しましょう。ここを怠ると、満室想定で組んだローンが一転、負のレバレッジに変わるリスクがあります。

空室率を下げるためのリノベーション戦略

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まず押さえておきたいのは、家賃を上げるより空室期間を短縮するほうが総収益へのインパクトが大きい点です。家賃を2,000円上げても空室が1カ月延びれば、年収益は簡単に目減りします。

築20年以上の物件では、水回りとインターネット環境の改善がコスト効率に優れます。ユニットバスの交換は1室60万円前後かかりますが、入居期間が平均2年延び、家賃を1割上げられた事例が多数報告されています。また、無料Wi-Fi導入は1室あたり月数百円のコストで成約率を10%以上押し上げるケースがあり、空室対策として費用対効果が高いといえます。

外観の印象も成約スピードに直結します。外壁塗装やエントランス照明のLED化だけで、内見者の第一印象は大きく変わります。東京都の民間調査では、築古アパートで外壁を塗り直しただけで平均入居期間が1.4年延伸したという結果が出ています。

2025年度は「既存賃貸住宅省エネ改修支援事業」の補助金が継続予定で、断熱窓交換や高効率給湯器の導入に対し工事費の最大3分の1が補助されます。申請には省エネ性能証明が必要ですが、採択されれば入居者への光熱費メリットを訴求でき、長期入居を後押しします。

融資条件の改善と金利リスク管理

実は、融資条件の見直しだけでキャッシュフローが月数万円改善することがあります。2025年時点でメガバンクのアパートローン金利は1.1〜2.0%が主流ですが、地方銀行や信用金庫では団体信用生命保険を付けても1%前後で借り換えられる例もあります。

借り換え時は残債と違約金、登記費用を合算し、総返済額が減るか必ず試算してください。借り換え後も固定期間が終われば金利が上がるため、金利上昇2%でも耐えられるキャッシュフローを作るのが安全策です。また、元利均等返済のままではなく、元金均等返済に切り替えると利息負担が前倒しで減り、総返済額が少なくなります。

ローン審査では「自己資金2割」「返済比率35%以下」が現在の標準ラインです。追加担保や保証人を提案すれば、金利引き下げ交渉の余地が広がります。融資担当者に提出する事業計画書には、先ほど説明した複数シナリオのキャッシュフロー表を添付すると説得力が増します。

ランニングコストを削減する具体策

ポイントは、固定費を下げれば満室時の利益がそのまま上乗せされることです。管理費、保険料、光熱費の順に見直すと効果が大きくなります。

管理会社との委託契約は3年ごとに更新するのが一般的ですが、同規模物件の管理料が平均4.5%なのに対し、自社物件は5.5%というケースも珍しくありません。複数社に見積もりを取り、家賃送金サイクルや入居者対応品質も含めて総合評価しましょう。

火災保険料は2024年の料率改定で築古ほど上昇しましたが、2025年度は戸別契約より一括包括契約が割安になる傾向です。10戸以上のアパートなら、年間保険料が約15%下がる例も確認されています。また、LED照明への全面切り替えや太陽光発電の共用部利用で、電気代を年間4万円削減できた事例もあります。

こうした固定費削減は入居者サービスを犠牲にする必要はありません。むしろ管理品質を上げつつコストを抑えることで、長期的に満足度と収益性を同時に引き上げられます。

税制と補助金を活用して利益を底上げ

まず、青色申告特別控除と減価償却費はアパート経営の二大節税ツールです。木造アパート(法定耐用年数22年)の場合、築25年で取得しても4年で償却が終わるため、短期で大きく経費計上できます。これにより所得税・住民税の負担を繰り延べつつ、手元資金を確保できます。

固定資産税については、2025年度も「住宅用地の特例」が継続しており、200㎡以下部分は税率が1/6になります。土地の評価見直しが3年ごとに行われるため、過大評価の疑いがあれば市町村に再評価を申請すると数万円規模の削減余地があります。

補助金では前述の省エネ改修支援のほか、地方自治体が実施する「空き家活用助成」「子育て世帯向け住替え支援」などがアパート経営にも適用される場合があります。例えば愛知県豊橋市の2025年度事業では、子育て世帯が入居する賃貸住宅の改修に対し最大50万円が交付されます。こうした地域施策は期限付きなので、自治体の公式サイトを定期的に確認しましょう。

結論として、税制と補助金を戦略的に組み合わせれば、実質利回りを1〜2ポイント上げることは十分可能です。そのためには、税理士や行政書士と連携し、制度変更を追いかける体制を整えることが欠かせません。

まとめ

本文で示したように、アパート経営の収益性はキャッシュフロー管理、空室対策、融資条件、固定費削減、税制・補助金の五つを改善することで大きく向上します。どれか一つでも手を付ければ利益は動きますが、相互に連携させると効果は倍増します。まずは現在の数字を正確に把握し、最も改善幅が大きい項目から着手してください。今日から一つ行動を起こせば、来年の決算書が確実に変わります。柔軟に学び、堅実に実行する姿勢が、長期的に安定したアパート経営を支える最大の武器です。

参考文献・出典

  • 国土交通省 住宅統計調査 2025年7月速報値 – https://www.mlit.go.jp
  • 中小企業庁 既存賃貸住宅省エネ改修支援事業 2025年度要綱 – https://www.chusho.meti.go.jp
  • 総務省 統計局 固定資産税に関する資料 – https://www.stat.go.jp
  • 全国賃貸住宅新聞社 アパート管理費率調査 2025年版 – https://www.zenchin.com
  • 東京都都市整備局 賃貸住宅実態調査 2024年度報告書 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp

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