不動産の税金

古家付き土地の売買契約書|必ず確認すべき特約

古家付き土地の購入を検討していると、「売買契約書に書かれている特約の意味がよくわからない」と感じる方は少なくありません。特に、建物の取り壊しや更地渡しに関する条件は、後になってトラブルへ発展しやすい部分です。契約書をよく確認しないままサインしてしまい、引渡し後に想定外の費用や責任問題が生じるケースも実際に起きています。この記事では、古家付き土地の売買契約書で押さえておくべき特約の種類と、それぞれの意味や注意点をわかりやすく解説します。初心者の方でも理解できるよう、基礎から順を追って説明しますので、ぜひ最後までお読みください。

古家付き土地の売買契約書とは何か

まず押さえておきたいのは、「古家付き土地」という取引形態の特殊性です。古家付き土地とは、古い建物が建ったままの状態で売り出されている土地を指します。買主が購入後に建物を取り壊して新築を建てることを前提とするケースが多く、土地としての価値に重点を置いた取引だと言えます。

通常の土地売買や建物売買と異なり、古家付き土地では「建物をどう扱うか」という点が契約書の内容を大きく左右します。建物を現況のまま引き渡すのか、売主が解体して更地にしてから引き渡すのかによって、盛り込む特約はまったく違ってきます。そのため契約書を読む際は、「土地に関する条件」と「建物に関する条件」を分けて確認することが重要です。

また、売買契約書は印紙税の課税対象となる文書でもあります。国税庁によると、不動産の売買契約書は印紙税額一覧表の第1号文書に該当し、契約書に記載された金額によって印紙税額が決まります(国税庁)。古家付き土地の場合も例外ではなく、契約金額の記載方法が税額に影響するため、この点も見落とさないようにしましょう。

現況渡しと更地渡し、特約でどう変わるか

古家付き土地の売買で最初に確認すべきなのは、「現況渡し」か「更地渡し」かという引渡し条件です。この違いによって、買主が負担するコストやリスクが大きく変わります。現況渡しとは、建物が建ったままの状態で土地を引き渡す方法で、この場合は買主が自分で解体業者を手配し、費用を負担して建物を取り壊すことになります。一方、更地渡しは売主が引渡し前に建物を解体し、更地にしてから引き渡す方法で、解体費用は売主負担ですが、その分が物件価格に上乗せされているケースもあります。

ここで注意したいのは、「現況渡し」や「現状有姿」という言葉を契約書に置くだけでは不十分だという点です。不動産取引の実務解説によると、現状有姿という言葉はおおむね「現在のあるがままの状態」という意味で使われますが、それだけでは何を目的物に含めるのかが曖昧なままです。塀・庭木・残置設備といった付属物が売買の対象に入るのか、老朽化や傾きなどをどの状態で引き渡すのかまで具体化して初めて、特約として意味を持ちます。言葉を置くことがゴールではなく、範囲と状態を明確にすることが本質だと理解しておきましょう。

更地渡しを選ぶ場合は、費用負担が売主か買主かという点にとどまらず、撤去範囲を具体的に決めることが欠かせません。建物本体だけでなく、基礎・杭・地下室、庭石・植栽・塀などの工作物、浄化槽や給排水管といった埋設物まで除去するかどうかを特約に明記しておく必要があります。あわせて、解体をいつまでに終えるのかという期限、そして解体後の建物滅失登記を誰が行うのかまで契約に落とし込むことが望ましいと言えます。これらを曖昧にすると、「地中に古い基礎が残っていた」「埋設管が撤去されていなかった」といったトラブルに発展しかねません。

なお、古家に未登記の増築部分や未登記建物が含まれるケースもあります。この場合は、現状のまま引き渡すのか、引渡しまでに登記を済ませるのかを特約や覚書で処理しておくのが実務上の対応です。登記の状態を放置したまま契約を進めると、後の権利関係が複雑になりやすいため、事前の確認が重要になります。

契約不適合責任と免責特約の関係

古家付き土地の売買で特に注意が必要なのが、契約不適合責任に関する特約です。契約不適合責任とは、引き渡された物件が契約の内容に適合しない場合に売主が負う責任で、以前の「瑕疵担保責任」に相当する概念です。民法によると、引き渡された目的物が種類・品質・数量の点で契約内容に適合しないとき、買主は履行の追完を請求できるとされています(e-Gov 民法)。古家付き土地では、土地だけでなく建物の扱いを契約書でどう定義したかが、この責任の範囲を大きく左右します。

個人間の売買でも見落とせないのが「通知期間」の定め方です。民法では、買主がその不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しなければ、請求や契約解除ができなくなるのが原則です。古家付き土地の特約では、この通知期間をどう設定するかを必ず確認しておかないと、後から責任の所在をめぐって揉めやすくなります。

重要なのは、売主が宅地建物取引業者(宅建業者)かどうかによって特約の有効性が変わる点です。宅地建物取引業法によると、宅建業者が自ら売主となる場合、引渡しの日から2年以上となる特約を除いて、民法の規定より買主に不利となる特約はできないとされています(e-Gov 宅地建物取引業法)。つまり、宅建業者が売主のとき、契約不適合責任を極端に短くしたり完全に免除したりする特約は、無効となるリスクが高いのです。

さらに、売主が事業者で買主が消費者という組み合わせでは、消費者契約法の観点にも注意が必要です。消費者庁の解説によると、事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項は無効とされています(消費者庁)。したがって古家付き土地であっても、「全部免責」のように強すぎる特約は無効となる可能性があり、当事者の属性を確認したうえで内容を検討することが欠かせません。

一方で、建物を一律に「売買目的物ではない」と決めつけるのも危険です。実務解説では、古家からアスベストが発見されるなど、想定を大きく上回る取壊費用が生じた場合には、売主に契約不適合責任を追及できる余地を残すべきだと指摘されています。建物を取り壊す前提だからといって建物の責任分担を丸ごと外してしまうと、予期せぬ高額費用を買主が抱え込むおそれがあります。建物に関する責任の切り分けは、特約で明確にしておくべきポイントです。

地中埋設物と境界に関する特約の確認

建物と土地は責任範囲を分けて確認するという視点も欠かせません。建物に関する特約ばかりに目が向きがちですが、土地側にも独自のリスクが存在します。たとえば建物についてはすぐ取り壊す前提で売主が責任を負わないと定めた場合でも、土地については別途、責任の範囲や期間を決めておく必要があります。

特に注意したいのが地中埋設物です。解体を進めるうちに、解体する建物とは関係のない古い配管や廃材、コンクリート塊などが地中から出てくることがあります。実務解説によると、解体する建物に関係のない地中埋設物については売主が責任を負わない旨を売買契約書に明記しておくなど、事前の対応が望ましいとされています。更地渡しの義務との関係で争いになりやすい部分だからこそ、責任の線引きを契約書に落とし込んでおくことが重要です。ただし、免責特約があっても、従前建物由来の埋設物の存在を売主や媒介業者が知っていた場合には、告知義務が生じるとする実務上の考え方もあります。発見した事実の告知と取扱いの整理は、免責特約とは別に必要になると理解しておきましょう。

土地の境界についても、契約前の確認が欠かせません。隣地との境界が未確定のまま契約を進めると、後で境界トラブルが生じるリスクがあります。実務解説では、隣地所有者の境界確認を得た確定測量図を期限までに交付できない場合には売買契約を解除できるようにしておく、といった対応が紹介されています。いつまでに確定測量図を交付するのか、できなかったときにどうするのかまで特約で決めておくと安心です。また、建物や塀などが隣地へ越境している、あるいは隣地から越境されているケースでは、越境を解消するのか承継するのか、その処理方法を特約や覚書として残しておく必要があります。

面積の扱いにも触れておきましょう。売買代金を登記簿の面積で確定させる公簿売買なのか、実測して差額を精算する実測売買なのかを曖昧にすると危険です。精算しない旨の特約がないまま数量を指示した売買になると、面積不足の場合に買主が代金の減額を請求できる余地が残ります。契約書で面積の考え方をどう定めているかは、必ず確認しておきたいポイントです。

引渡し・ローン・建物状況調査に関する特約

古家に居住者や占有者が残っている場合は、空家で引き渡す約定を入れるだけでなく、実行の時期まで詰めておく必要があります。実務解説によると、売主は原則として引渡日の前日までに空家にするか、当日に占有者を退去させる義務があるとされています。退去のタイミングが曖昧なままだと、引渡し当日に建物を明け渡せないという事態が起こりかねません。

買主が住宅ローンを利用するなら、ローン特約は必須に近い条項です。ローン特約とは、融資の承認が得られなければ売買契約を白紙に戻し、支払い済みの手付金を全額返還できるようにする取り決めです。この特約を有効に機能させるには、借入先の金融機関名・融資額・ローン特約の期限まで契約書に明記しておくことが大切だとされています。これらが曖昧だと、解除できる条件そのものが不明確になり、いざというときに白紙解除できないおそれがあります。

建物を解体せずに再利用する可能性が少しでもある場合は、建物状況調査の結果にも目を向けましょう。国土交通省の情報によると、建物状況調査の結果の概要等は重要事項として説明する対象であり、契約成立時には売主と買主の双方が確認した事項を書面に記載して交付する仕組みになっています(国土交通省)。再利用の余地があるなら、建物の状態をこうした書面で確認しておくことがトラブル防止につながります。

相続空き家の特例と特約の関係

古家付き土地の売買では、税制上の特例との関係で特約が問題になることもあります。特に「相続空き家の3,000万円特別控除」を利用する場合、契約書の特約内容が特例の適用可否に影響しうる点に注意が必要です。この特例は、相続した空き家を売却する際に、一定の要件を満たせば譲渡所得から3,000万円を控除できる制度です。

国土交通省によると、令和6年1月1日以降の譲渡については、譲渡の時からその翌年の2月15日までに家屋を取り壊した場合も、本特例の適用を受けられるとされています(国土交通省)。つまり、譲渡後に買主が解体する形でも、期限内に取り壊されれば対象となり得るということです。ここで、買主による解体の協力が現実的に必要になる場面が出てきます。

国土交通省の情報では、買主が解体する旨の特約を締結していない場合でも確認書の発行自体は可能とされています。ただし、要件を満たすためには買主の協力が不可欠だとも示されており、売買契約に解体協力の特約を入れておく実務上の意味は大きいと言えます。相続した古家付き土地を売却する予定がある方は、税理士や不動産の専門家に相談しながら、特約の内容と特例の要件を照らし合わせて確認することをおすすめします。

まとめ

古家付き土地の売買契約書には、通常の土地・建物売買にはない特有の特約が数多く登場します。現況渡しか更地渡しかという引渡し条件、契約不適合責任の範囲と免責特約の有効性、地中埋設物や境界・面積の取り扱い、引渡し時期やローン特約、さらに相続空き家の特例との関係まで、確認すべきポイントは多岐にわたります。いずれも、言葉を置くだけで満足せず、範囲・状態・期限・責任の所在まで具体化することが共通の勘所です。

特に、売主が宅建業者かどうか、あるいは買主が消費者かどうかによって特約の有効性が変わる点は、初心者の方が見落としやすい重要な知識です。契約書にサインする前に、不動産会社の担当者や宅地建物取引士に各特約の意味を丁寧に説明してもらいましょう。また、税制上の特例を活用する予定があるなら、税理士への相談も欠かせません。個別の事情によって最適な特約は異なりますので、最新情報は各公的機関の公式サイトで確認しつつ、専門家の助言を得ながら準備を整えることで、古家付き土地の取引を安心して進めることができます。

参考文献・出典

  • 国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000030.html
  • 国土交通省「住宅瑕疵担保履行法・既存住宅の建物状況調査」 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutaku-kentiku.files/kashitanpocorner/consumer/existing_housing_kizonjutaku.html
  • 国税庁「No.7101 不動産の譲渡・土地の賃貸借・消費貸借・運送等に関する契約書」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7101.htm
  • e-Gov 法令検索「民法」 – https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
  • e-Gov 法令検索「宅地建物取引業法」 – https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC1000000176_20240401_505AC0000000079
  • 消費者庁「消費生活の制度・環境づくり」 – https://www.caa.go.jp/about_us/about/caa_pamphlet/jp_2025_005.html

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