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旧耐震物件の売買契約書に必要な特約とは?初心者向け解説

旧耐震基準の物件を売買するとき、「契約書にどんな特約を入れればいいの?」「買主として何に気をつければいい?」と不安に感じる方は多いのではないでしょうか。旧耐震物件は価格が抑えられている反面、耐震性や法的なリスクについて正しく理解しておかないと、後々トラブルに発展するケースがあります。この記事では、旧耐震物件の売買契約書に盛り込まれる特約の内容と意味、買主・売主それぞれが知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。契約書を前にして「これは何のための条文?」と迷わないよう、基礎からしっかり押さえていきましょう。

旧耐震基準とは何か、まず押さえておきたいこと

旧耐震基準とは何か、まず押さえておきたいことのイメージ

旧耐震基準とは、国土交通省によると、建築基準法の耐震基準が強化された昭和56年6月1日以前に建築された建物を指します。現在の耐震基準と比べると、大きな地震に対する強度の要件が異なるため、旧耐震物件は「現行の耐震基準を満たしていない可能性がある」という前提で取引されます。

この昭和56年という年号は、不動産取引においてひとつの重要な区切りとなっています。なぜなら、住宅ローン減税の適用条件や、各種税制上の優遇措置において、この日付が判断基準として使われることが多いからです。国土交通省のデータによると、昭和56年12月31日以前に建築された既存住宅を取得した場合、住宅ローン減税の適用を受けるためには耐震基準適合証明書などの書類を別途用意する必要があるとされています。

旧耐震物件だからといって、必ずしも危険な建物というわけではありません。耐震補強工事が施されていたり、構造的に問題がないケースも存在します。しかし、売買の場面では「現行基準を満たしていない」という事実が契約上の重要な情報となるため、それを正確に伝え、双方が納得した上で契約を結ぶことが大切です。

売買契約書における「容認特約」の役割

売買契約書における「容認特約」の役割のイメージ

旧耐震物件の売買契約書でよく登場するのが「容認特約」と呼ばれる条項です。これは、買主が物件の特定の状態や欠点を理解した上で購入することに同意する、という意思表示を契約書に明記するものです。

具体的な文例としては、「本件建物は昭和56年5月31日以前に建築確認を取得した旧耐震基準時の建物であり、現在の耐震基準を満たしていない建物であることを買主は容認して契約書記載の売買代金で購入する」という形が示されています。この一文があることで、買主は「耐震基準を満たしていないことを知った上で購入した」という事実が契約書上に残ります。

さらに踏み込んだ特約では、「今後、売主に対して耐震基準を満たさないことについて一切の追完請求、代金減額請求、解除、損害賠償、錯誤取消等の責任を求めないものとする」という文言が盛り込まれることもあります。これは売主にとって非常に重要な免責条項ですが、買主にとっては大きなリスクを引き受けることを意味します。そのため、この特約に署名する前に、内容を十分に理解しておくことが不可欠です。

免責特約が「無効」になるケースとは

免責特約を契約書に盛り込んでいれば、売主は常に責任を免れるかというと、そうではありません。実は、一定の条件下では免責特約が無効と判断されることがあります。

まず重要なのは、売主が耐震基準を満たしていないことを知りながら買主に告げていなかった場合です。この場合、免責特約があっても不適合責任を負うことになると整理されています。たとえば、過去に耐震診断を実施して強度不足を把握していたにもかかわらず、その事実を隠して売却した場合がこれにあたります。売主が契約不適合を知っていながら告げずに売買契約を締結したような信義に反するケースでは、免責特約そのものが無効となりうるのです。

また、売主が宅地建物取引業者(不動産会社)である場合にも注意が必要です。宅建業法40条により、宅地建物取引業者が自ら売主となる場合、担保責任の期間を引渡しから2年以上とする特約は有効です。これより短く買主に不利な特約は無効とされています。つまり、プロの不動産会社が売主のときは、免責特約の効力に制限がかかる場合があるということです。

さらに、「現状有姿」という言葉が契約書に書かれていても、それだけで契約不適合責任が免除されるわけではありません。現状有姿条項が設けられているからといって、契約不適合責任(2020年の民法改正前は瑕疵担保責任と呼ばれていました)は免除されないと考えられており、免責を明確にしたいなら別途特約を設ける必要があります。

買主が取るべきリスク回避の手段

旧耐震物件を購入する際、買主としてできるリスク回避の手段はいくつかあります。まず知っておきたいのは、容認特約に署名する前に、物件の状態を自分でしっかり確認するという姿勢の重要性です。

具体的な方法として有効なのが、建物状況調査(インスペクション)の実施です。専門家が建物の劣化状況や不具合を調査するもので、購入前に物件の実態を把握する手段として広く活用されています。また、既存住宅売買瑕疵保険への加入を売買条件として求めることも、リスク回避の有効な手段とされています。買主において「本件建物の耐震性に問題がないこと」が購入条件であるなら、建物状況調査および既存住宅売買瑕疵保険の付保を行うことを売買条件にすることなどにより、リスク回避を図るべきだと整理されています。

耐震基準適合証明書の取得も重要な選択肢のひとつです。この証明書は、建築士などが家屋について調査を終了したものが使われます。証明書を取得できれば、住宅ローン減税の適用を受けられる可能性が広がるほか、物件の耐震性について客観的な根拠を得ることができます。旧耐震物件だからといって諦めるのではなく、こうした手続きを活用して安心して購入できる環境を整えることが大切です。

売主が契約前に準備しておくべきこと

売主の立場から見ると、旧耐震物件を売却する際には事前の情報整理と誠実な開示が何より重要です。免責特約を盛り込んだとしても、知っている情報を隠せば特約が無効になるリスクがあることは先述の通りです。

まず取り組むべきは、過去に実施した耐震診断の結果や修繕履歴などを整理しておくことです。これらの情報は、買主への重要事項説明の場面でも必要となります。情報を正確に開示することは、売主自身を法的リスクから守ることにもつながります。

次に、特約の文言を不動産会社や弁護士などの専門家と一緒に確認することをおすすめします。特約の内容が曖昧だったり、法的に無効となりうる表現が含まれていたりすると、後々のトラブルの原因になります。売主・買主双方が納得できる形で特約を設定することが、円滑な取引の基本です。また、現状有姿での売却を希望する場合でも、それだけでは免責にならないことを念頭に置き、必要な特約を別途明記するよう心がけましょう。

まとめ

旧耐震物件の売買契約書における特約は、売主・買主双方にとって非常に重要な意味を持ちます。容認特約は買主が耐震基準未充足を承知した上で購入することを明示するものであり、免責特約は売主の責任範囲を限定するものです。しかし、売主が不具合を知りながら隠していた場合や、宅地建物取引業者が売主の場合には、特約の効力に制限がかかることがあります。買主は建物状況調査や耐震基準適合証明書の取得などでリスクを軽減し、売主は誠実な情報開示と適切な特約設定で自身を守ることが大切です。旧耐震物件の取引は複雑な側面もありますので、不動産会社や専門家のサポートを積極的に活用しながら、安心できる契約を目指してください。

参考文献・出典

  • 全日本不動産協会「月刊不動産 2022年3月号」 — https://www.zennichi.or.jp/wp-content/uploads/2022/03/gekkanfudosan_2022_03.pdf
  • 東京都住宅政策本部「不動産取引の手引き 引渡し後に不具合・欠陥が…」 — https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/fudosan/torihiki/tebiki/490p36-38
  • 住友不動産販売「現状有姿条項の注意点」 — https://smtrc.jp/useful/knowledge/introduction-sell-law/2019_07.html
  • 国土交通省「住宅ローン減税」 — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000017.html
  • 国税庁「No.1211-5 要耐震改修住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1211-5.htm
  • 国土交通省「リフォーム促進税制について(消費者のみなさまへ)」 — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000249.html

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