不動産の税金

2026年版・青色申告決算書(不動産所得用)の書き方と3つの控除額

不動産投資をしていると、毎年の確定申告で「青色申告決算書の書き方がよくわからない」と悩む方は少なくありません。特に初めて青色申告に挑戦する方にとって、どの欄に何を記入すればよいのか、収入や経費の分類はどうすればよいのか、迷うポイントが多いのも事実です。この記事では、国税庁が公表している令和7年分(2025年分)の書き方資料をもとに、不動産所得用の青色申告決算書の基本的な仕組みと記入のポイントをわかりやすく解説します。2026年2月から始まる確定申告に向けて、ぜひ参考にしてください。

青色申告とは何か、不動産所得との関係

青色申告とは何か、不動産所得との関係のイメージ

まず押さえておきたいのは、青色申告が単なる申告方法の選択ではなく、税制上の大きなメリットをもたらす制度だという点です。不動産所得がある方も、一定の要件を満たせば青色申告を選ぶことができます。

青色申告を選択すると、最大65万円の特別控除が受けられるほか、赤字が出た場合に翌年以後3年間にわたって損失を繰り越せるという特典があります。国税庁の案内によると、前年も青色申告をしている場合は、損失を前年分の所得に繰り戻して控除し、前年分の所得税の還付を受けることも可能です(国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_2.htm)。これらの特典は、白色申告では受けられないものです。

青色申告を始めるには、事前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。国税庁の説明によると、その年の3月15日までに提出するのが原則で、1月16日以後に新たに開業した方は開業の日から2か月以内に提出することとされています(国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_2.htm)。申請を忘れると、その年は白色申告しか選べなくなるため注意が必要です。

なお、令和7年分の確定申告期間は令和8年2月16日(月)から3月16日(月)までと案内されています。2026年の申告に向けて、今から準備を進めておくと余裕を持って対応できます。

青色申告特別控除の3段階を理解する

青色申告特別控除の3段階を理解するのイメージ

青色申告の最大の魅力である特別控除は、記帳方法によって65万円・55万円・10万円の3段階に分かれています。どの控除額が適用されるかは、帳簿の付け方と申告の方法によって決まります。

最も大きい65万円の控除を受けるには、複式簿記(正規の簿記の原則)による記帳、貸借対照表と損益計算書の添付、期限内の申告に加えて、国税庁によるとe-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿の要件を満たす保存等が必要です(国税庁「令和7年分青色申告決算書(不動産所得用)の書き方」https://www.keisan.nta.go.jp/r7yokuaru/cat2/cat26/cat267/cid548.html)。

e-Taxを利用しない場合でも、複式簿記・貸借対照表添付・期限内申告の要件を満たせば55万円の控除が受けられます。一方、複式簿記ではなく簡易な帳簿による記帳であっても、最高10万円の控除は受けられます。初心者の方はまず10万円控除から始めて、慣れてきたら65万円控除を目指すというステップアップも現実的な選択肢です。

控除額の違いは、課税所得に直接影響します。たとえば所得税率が20%の方であれば、10万円控除と65万円控除の差額55万円に対して、単純計算で11万円の税負担の差が生じます。記帳の手間はかかりますが、複式簿記への移行を検討する価値は十分にあります。

不動産所得の収入金額に含まれるもの

青色申告決算書の記入で初心者が最初に迷うのが、「何を収入として計上するか」という点です。賃貸料だけを収入と思い込んでいると、記入漏れが生じる可能性があります。

国税庁の説明によると、不動産所得の総収入金額には賃貸料収入だけでなく、名義書換料・承諾料・更新料・頭金などの名目で受け取るもの、敷金や保証金のうち返還を要しないもの、そして共益費などの名目で受け取る電気代・水道代・掃除代なども含まれます(国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm)。

特に注意が必要なのは敷金・保証金の扱いです。入居者に返還する予定の敷金は収入に含まれませんが、返還しないことが確定した部分は収入として計上する必要があります。礼金や更新料も同様に収入として扱われるため、受け取った年に漏れなく記入することが大切です。

共益費についても見落としがちなポイントです。「共益費は管理のための費用だから収入ではない」と誤解している方もいますが、名目にかかわらず受け取った共益費は収入に含まれます。ただし、その共益費で実際に支払った電気代や水道代は経費として計上できるため、収支の両面で正確に記録しておくことが重要です。

必要経費として計上できる主な項目

収入と並んで重要なのが必要経費の把握です。経費を正確に計上することで、課税所得を適正に計算できます。

国税庁の案内では、不動産所得の必要経費の主なものとして、固定資産税・損害保険料・減価償却費・修繕費が挙げられています(国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm)。これらは不動産投資において毎年発生する代表的な経費であり、領収書や納税通知書を保管しておくことが基本となります。

減価償却費は、建物や設備の取得費用を耐用年数にわたって分割して経費計上するものです。毎年の現金支出はないにもかかわらず経費として認められるため、節税効果が高い項目として知られています。ただし、耐用年数や取得価額の設定を誤ると計算が狂うため、初めて計算する際は税理士や国税庁の手引きを参照しながら慎重に進めることをおすすめします。

修繕費については、「資本的支出」との区別が重要です。壊れた箇所を元の状態に戻す修繕は経費として計上できますが、建物の価値を高めるような改良工事は資本的支出として減価償却の対象となります。この区分は判断が難しいケースもあるため、工事の内容を詳細に記録しておくと後から確認しやすくなります。

事業規模かどうかで変わる税務上の扱い

不動産貸付けが「事業」として認められるかどうかは、税務上の扱いに大きな影響を与えます。この点は、青色申告決算書を正確に記入するうえで欠かせない知識です。

国税庁の説明によると、不動産貸付けが事業として行われているかは原則として社会通念上の規模で実質判定し、建物の貸付けはおおむね10室以上、または独立家屋の貸付けはおおむね5棟以上であれば事業として扱われます(国税庁「No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1373.htm)。この基準は「5棟10室基準」と呼ばれ、不動産投資の世界では広く知られています。

事業規模かどうかによって、資産損失の扱いが異なります。事業として行われる不動産貸付けでは、賃貸用固定資産の取壊しや除却などの資産損失は全額を必要経費に算入できます。一方、事業規模に満たない場合は、その年分の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入されます(国税庁「No.1373」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1373.htm)。

賃貸料の回収不能による貸倒損失についても同様の違いがあります。事業として行われている場合は回収不能となった年分の必要経費に算入できますが、それ以外の場合は収入に計上した年分までさかのぼって所得計算をやり直す必要があります(国税庁「No.1373」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1373.htm)。物件数が少ない段階から将来の規模拡大を見据えて記録を整えておくことが、長期的な管理のしやすさにつながります。

まとめ

青色申告決算書(不動産所得用)の書き方は、収入の範囲・経費の種類・事業規模の判定という3つの軸を理解することが出発点です。国税庁は令和7年分の書き方資料を公式サイトで公開しており、PDFで詳細な記入例を確認できます。令和8年2月16日から始まる申告期間に向けて、今から帳簿の整理と必要書類の収集を進めておくことが大切です。

青色申告の特別控除は最大65万円という大きなメリットがある一方、複式簿記による記帳など一定の手間も伴います。最初は10万円控除の簡易な記帳から始め、慣れてきたら段階的にステップアップするという方法も有効です。不明な点は国税庁の公式サイトや最寄りの税務署に相談しながら、正確な申告を目指してください。

参考文献・出典

  • 国税庁「確定申告書等の様式・手引き等(令和7年分)」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/syotoku/r07.htm
  • 国税庁「令和7年分 青色申告決算書(不動産所得用)の書き方」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/039.pdf
  • 国税庁「No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1373.htm
  • 国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
  • 国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」 — https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_2.htm
  • 国税庁「手順2 収入金額等、所得金額を計算する」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/03/order2/3-2_03.htm
  • マネーフォワード クラウド確定申告「不動産所得を申告する場合の操作方法」 — https://biz.moneyforward.com/support/tax-return/faq/setting-account/se04.html

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