不動産投資を始めようとしたとき、「木造・鉄骨造・RC造のどれを選べばいいのか」と迷う方は非常に多いです。それぞれに異なる特徴があり、初期費用・利回り・融資条件・修繕費まで、あらゆる面で差が出てきます。「RCなら安心」「木造は古くなると売れない」といった断片的な情報だけで判断してしまうと、自分の投資スタイルに合わない物件を選んでしまうリスクがあります。この記事では、法定耐用年数・建築コスト・融資条件・修繕費・利回りという5つの切り口から、3つの構造を丁寧に比較します。初心者の方でも判断の軸が持てるよう、具体的な数値を交えながら解説していきます。
法定耐用年数が投資の土台を決める

まず押さえておきたいのは、構造ごとの法定耐用年数です。この数字は減価償却・融資期間・出口戦略のすべてに影響するため、不動産投資の「土台」と言っても過言ではありません。
国税庁の資料(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/0021012-127_02.pdf)によると、住宅用途の法定耐用年数は木造22年、金属造(骨格材3mm以下)19年・(3mm超4mm以下)27年・(4mm超)34年、RC造(鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造)47年と定められています。鉄骨造は一括りに語られることが多いですが、実際には骨格材の厚みによって耐用年数が大きく変わります。一般的に板厚6mm未満を「軽量鉄骨」、6mm以上を「重量鉄骨」と区別します(日本サッシ・ドア工業会 https://www.jsma.or.jp/useful/terminology/search/details.html?pdid=461)。
この耐用年数の差は、減価償却費の計算に直結します。木造は耐用年数が短いぶん、毎年の減価償却費が大きくなり、節税効果を早期に享受できます。一方でRC造は47年にわたって少しずつ償却するため、単年度の節税額は小さくなります。どちらが有利かは、投資家の税務状況や保有期間の方針によって異なるため、一概には言えません。
また、耐用年数が長いほど融資期間を長く設定しやすくなるという実務上の傾向もあります。HEDGE GUIDE(https://hedge.guide/feature/wood-steel-concrete-cost-lending.html)によると、耐用年数が長い構造ほど長期融資を設定しやすく、単年度の返済負担を抑えやすいと整理されています。木造は返済期間が短くなりやすいため、月々のキャッシュフローが圧迫されるケースも出てきます。
建築コストと工期で変わる初期投資の重さ

初期費用の大きさは、投資効率を左右する重要な要素です。建築コストは構造によって異なり、一般的には木造が最も低く、RC造が最も高い傾向にあります(小田急ハウジング https://www.odakyuhousing.co.jp/column/2026/05/04/wooden_apartment/)。木造とRC造では構造による建築コストの差が大きく、同じ延床面積の建物を建てるだけで総額に大きな開きが生まれます。
工期にも構造ごとの差があります。一般的には、木造が最も短く、RC造が最も長い傾向にあります。工期が長くなるほど、つなぎ融資の金利負担が増え、賃料収入が始まるまでの期間も延びます。RC造を新築で建てる場合、着工から入居者募集まで相応の期間がかかることが想定されるため、資金計画には余裕を持たせる必要があります。
一方で、初期投資が低い木造は表面利回りで有利になりやすいという側面もあります。小田急ハウジングの記事では「木造の方が高い収益を生み出すケースがある」と指摘されており、「家賃が高い=投資効率が高い」とは必ずしも言えません。RC造は家賃を高く設定しやすい反面、建築コストが高いため、利回りで木造に劣ることがあります。初期投資と家賃収入のバランスを数字で確認することが、構造選びの基本です。
融資条件の違いが長期収益を左右する
構造の違いは、金融機関からの融資条件にも大きく影響します。実務的には、木造は法定耐用年数22年の短さから融資期間が短めになりやすく、RC造は47年を背景に長めの融資期間を取りやすい傾向があります(TSON https://www.tson.co.jp/media/rei/rei-actual/3738/)。鉄骨造は建物仕様によって耐用年数や評価が変わるため、金融機関ごとの差が出やすい構造です。
Wealth Agentが公開している融資条件早見表(https://www.agent-hp.com/real-estate-financing-conditions-table/)には、金融機関ごとの具体的な条件が示されています。金融機関によって金利・融資期間・構造別の評価が大きく異なります。ただし、これらの条件は時期や審査状況によって変わるため、最新情報は必ず各金融機関に直接確認してください。
融資期間が長くなると月々の返済額が下がり、キャッシュフローに余裕が生まれます。しかし同時に、総返済額が増えるというトレードオフもあります。重要なのは、融資期間と金利の組み合わせを複数パターンでシミュレーションし、自分の投資計画に合った条件を選ぶことです。
修繕費とランニングコストの現実
長期保有を前提とした不動産投資では、修繕費などのランニングコストを見落とすと収益計画が大きく狂います。大規模修繕の周期は構造によって異なり、一般的には木造が最も短く、RC造やS造がそれに続く傾向にあります(小田急ハウジング https://www.odakyuhousing.co.jp/column/2026/05/04/wooden_apartment/)。RC造は修繕周期が木造と大きく変わらない一方、1回あたりの補修・防水費が高額になりやすい傾向があります。
木造は修繕周期が短めですが、固定資産税が低い傾向があるため、ランニングコスト全体で見ると必ずしも不利とは言えません。大切なのは「修繕の回数」だけでなく「1回あたりの費用」まで含めて試算することです。たとえば外壁塗装・防水工事・給排水管の更新など、工事の種類によっても費用は大きく異なります。購入前に修繕履歴を確認し、今後必要になる工事を専門家に見積もってもらうことが、失敗しない物件選びの基本です。
遮音性についても構造差が出やすい点です。国土交通省の資料では遮音性能はL値などで説明されていますが、遮音性能は設計仕様や部位ごとの条件で異なり、構造別の固定的な目安を一概に示すことは難しいとされています。遮音性が低いと入居者の満足度が下がり、空室率の上昇につながるリスクがあります。軽量鉄骨は「鉄骨だから静か」と思われがちですが、実際には木造に近い遮音性能である可能性があることを理解しておく必要があります。
利回りと出口戦略から見た構造選びの判断軸
実際にどの構造が投資として有利かは、利回りと出口戦略を合わせて考えることで初めて判断できます。家賃設定のしやすさはRC造→重量鉄骨→軽量鉄骨→木造の順が一般的ですが、初期投資の低い木造は表面利回り・実質利回りで上回るケースがあります(小田急ハウジング https://www.odakyuhousing.co.jp/column/2026/05/04/wooden_apartment/)。つまり、高い家賃を取れる構造が必ずしも高利回りになるわけではありません。
出口戦略の観点では、RC造は耐用年数が長いため売却時に残存耐用年数が残りやすく、買い手が融資を受けやすい状態を維持しやすいという利点があります。一方、木造は耐用年数が短いため、築年数が経過すると融資が付きにくくなり、売却価格が下がりやすい傾向があります。ただし、国土交通省の取り組みにより、木造建築の高層化・長寿命化への関心も高まっており(国土交通省 https://www.magazine.mlit.go.jp/interview/vol34-c-1/)、木造の評価は今後変化していく可能性もあります。
物件を購入・内見する際は、登記や重要事項説明書で構造を必ず確認し、可能であれば設計図書で床スラブ厚や壁仕様まで確認することが推奨されています。床スラブ厚は遮音性や耐久性を左右する重要な指標とされており、設計仕様を確認する際の重要なポイントです。構造の「名称」だけでなく、仕様の中身まで確認する習慣をつけることが、長期的な投資成功につながります。
まとめ
木造・鉄骨造・RC造の比較は、「どれが一番いいか」という単純な答えがある問題ではありません。初期コストを抑えて高利回りを狙うなら木造、遮音性と家賃水準を重視するならRC造、その中間を求めるなら重量鉄骨という選び方が一つの基準になります。重要なのは、法定耐用年数・建築コスト・融資条件・修繕費・利回りの5つを自分の投資計画に照らし合わせて総合的に判断することです。
数値はあくまで目安であり、物件の立地・築年数・仕様によって実態は大きく変わります。融資条件については必ず複数の金融機関に相談し、修繕費については専門家の見積もりを取ることをおすすめします。この記事を出発点に、自分に合った構造選びの判断軸を少しずつ磨いていただければ幸いです。
参考文献・出典
- 国税庁「減価償却費の計算/耐用年数と償却率」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/0021012-127_02.pdf
- 日本サッシ・ドア工業会「軽量鉄骨造 | サッシ・ドア関連用語集」 – https://www.jsma.or.jp/useful/terminology/search/details.html?pdid=461
- 国土交通省「注目が集まる木造建築の高層化」 – https://www.magazine.mlit.go.jp/interview/vol34-c-1/
- 小田急ハウジング「木造賃貸住宅のメリットを解説!注意点の解決策もご紹介」 – https://www.odakyuhousing.co.jp/column/2026/05/04/wooden_apartment/
- SUUMO「鉄骨造(S造)のマンションは話し声がうるさい?音漏れのデメリットや防音対策について専門家が解説」 – https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/ms_shinchiku/ms_knowhow/ms_steelframe/
- TSON「木造アパートとRC・鉄骨は何が違う?投資効率・融資・売却の判断ポイントを整理」 – https://www.tson.co.jp/media/rei/rei-actual/3738/
- HEDGE GUIDE「木造・鉄骨造・RC造、アパート経営で選ぶべき構造は?コスト・耐用年数・融資の観点から比較」 – https://hedge.guide/feature/wood-steel-concrete-cost-lending.html
- Wealth Agent「融資条件早見表」 – https://www.agent-hp.com/real-estate-financing-conditions-table/