年収1500万円クラスの会社員や自営業者の方でも、「不動産投資ローンは本当に組めるのか」「どれくらいまで借りても安全なのか」と不安を抱くケースは少なくありません。実はこの年収帯には独自のメリットと落とし穴が存在します。本記事では、2025年10月時点の最新金利や融資制度を踏まえ、年収1500万円の投資家が取るべきローン戦略を具体的に解説します。読み終えた頃には、適切な借入額の目安、金融機関との交渉術、そして長期で安定運用するためのリスク管理のポイントがつかめるはずです。
年収1500万円が持つ融資上の優位性

ポイントは、金融機関が見る「返済余力」と「安定性」の両面で高評価を得やすいことです。年収1500万円層は、一般的に税込み収入上位5%前後にあたり、銀行にとっては優良な融資先となります。
まず返済比率の観点では、年間返済額が年収の30〜35%以内に収まれば、審査通過の可能性が高まります。たとえば変動金利1.8%、30年返済で総返済額を試算すると、年間約530万円の返済が限度となり、借入可能額はおよそ1億3,000万円が目安になります。都心ワンルーム複数戸や郊外ファミリータイプの一棟物件など、選択肢は広がります。
一方で、銀行は安定収入の継続性を細かく確認します。給与所得者であれば勤務先の上場有無や勤続年数が、事業所得者なら過去3年分の決算内容が重視されます。特に事業所得の場合、節税で所得を圧縮し過ぎると融資枠が減る恐れがあるため注意が必要です。
つまり高年収は大きな武器になる半面、書類の整合性を欠くと評価が一気に下がります。ローン審査は「年収の高さ」と「数字の透明性」をセットで整えることが第一歩と言えるでしょう。
まず押さえておきたい審査基準

重要なのは、金融機関が物件評価と個人属性を総合点で採点している点です。属性面で有利な年収1500万円層でも、物件評価が低ければ融資額は伸びません。
物件評価には「積算評価」と「収益還元評価」の二種類があり、都心区分マンションの場合、収益還元評価が高く出る傾向があります。例えば表面利回り4.5%、賃料改定リスクが低い物件なら銀行側も担保価値を認めやすく、フルローンに近い融資が通るケースもあります。
また、自己資金割合も審査を左右します。年収1500万円層は自己資金を1,000万円以上確保していることが多く、頭金1〜2割を入れると金利優遇を受けやすくなります。全国銀行協会の2025年調査では、自己資金2割以上を入れた場合、変動金利が平均1.5%から1.3%まで下がったというデータがあります。
さらに団体信用生命保険(団信)の加入条件も忘れてはいけません。健康状態に不安がある場合はワイド団信対応の金融機関を選ぶことで、審査落ちリスクを軽減できます。このように審査は点ではなく面で見る姿勢が欠かせません。
重要なのは返済比率とキャッシュフロー
まず押さえておきたいのは、ローン承認額と実際に安全運用できる額は一致しないという事実です。数字上借りられるからと言って、キャッシュフローが黒字になるとは限りません。
年収1500万円層であっても、生活費や他ローンを含めた総返済比率が40%を超えると、金利上昇や空室が発生した際に家計が圧迫されます。適正な借入上限は、年間手取りの25%程度に抑えるのが目安です。手取り1,100万円とすると、年間返済額は275万円までに設定すると安全域が広がります。
キャッシュフロー計算では、固定資産税、管理委託費、修繕積立金の3費用を必ず差し引きます。例えば都内ワンルームで年間家賃収入120万円、諸経費が30万円かかる場合、手残りは90万円です。このキャッシュフローが年間返済額を上回るかが重要な判断軸になります。
加えて、将来の大規模修繕に備えて毎年家賃収入の10%を内部留保すると、突発的な支出でもローン返済を滞らせずに済みます。数字をシビアに積み上げることで、心理的な余裕も生まれるでしょう。
ポートフォリオ拡大のための金融機関選び
実は、金融機関ごとに重視する指標が異なるため、同じ属性でも融資枠が大きく変わることがあります。メガバンクは厳格な審査と引き換えに低金利を提供しますが、評価対象を都心好立地物件に限定する傾向があります。
一方、地方銀行や信用金庫はエリア限定ながら収益性を重視し、郊外一棟アパートにも積極的です。2025年10月時点で、地方銀行のアパートローン固定10年は平均2.8%と、メガバンクより0.3ポイント高いものの、融資期間を35年まで延ばせるケースが多く、月々の返済負担を抑えやすいのが利点です。
さらにノンバンクは金利3.5%前後と高めですが、物件評価よりも家賃収入重視でフルローンが通りやすい特徴があります。年収1500万円層は属性が高評価なため、ノンバンクでも金利優遇交渉の余地があります。複数行の事前審査を取り、融資条件を比較すると有利な条件を引き出しやすくなります。
つまり、物件ごとに適した金融機関を使い分けることで、ポートフォリオ拡大の速度と安全性を両立できるのです。
2025年度の制度と賢い活用法
まず知っておきたいのは、2025年度も引き続き住宅ローン控除と違い、不動産投資ローンの金利は所得控除の対象外という点です。しかし、青色申告特別控除や減価償却費を使えば、課税所得を圧縮しキャッシュフローを改善できます。
2025年度税制改正で注目されるのが、「省エネ賃貸住宅促進税制」です。断熱等級5以上、一次エネルギー消費量等級6以上の新築賃貸物件を取得した場合、最大1,000万円まで即時償却が認められます(2027年3月末取得分まで)。年収1500万円層が高い税率を課される状況では、税負担を大幅に軽減できる有効な手段となります。
また、補助金としては国土交通省の「賃貸住宅省エネ改修促進事業」が2025年度も継続され、既存物件の断熱改修費用の1/3(上限150万円)が補助されます。ローンと併用し、改修後に家賃アップを図ることで、利回り向上と空室対策が同時に期待できます。
ただし、制度は予算枠到達次第終了するため、早めに申請準備を進めることが肝要です。制度利用の可否で投資シミュレーションが大きく変わるので、取得前に税理士や施工会社と連携し、スケジュールを固めることをおすすめします。
まとめ
本記事では、年収1500万円の投資家が不動産投資ローンを組む際に押さえておきたい審査基準、返済比率、金融機関選び、そして2025年度の制度活用までを解説しました。高年収は融資枠拡大という強みをもたらす一方、借り過ぎは家計を圧迫します。安全域を保ちながら返済比率を手取りの25%以内に抑え、キャッシュフロー重視で物件を選ぶことが成功への近道です。さらに、省エネ税制や改修補助金を活用すれば、節税と利回り向上を同時に実現できます。ぜひ本記事を参考に、数字と制度を味方に付けた戦略的な投資をスタートしてください。
参考文献・出典
- 全国銀行協会 住宅ローン・アパートローン調査2025年10月版 – https://www.zenginkyo.or.jp
- 国土交通省 不動産価格指数 2025年8月公表 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省 家計調査報告 2025年上半期 – https://www.stat.go.jp
- 財務省 税制改正大綱2025年度 – https://www.mof.go.jp
- 独立行政法人住宅金融支援機構 省エネ賃貸住宅促進税制ガイド – https://www.jhf.go.jp