アパート経営に興味はあるものの、「自己資金が限られている自分でも、最終的に1億円規模まで拡大できるのか」と不安に感じる方は多いでしょう。実は、正しい資金計画と着実な運営を組み合わせれば、今から始めても十分に到達可能です。本記事では、1億円という金額が意味する規模感から融資の組み立て方、物件選びの基準、日々の運営テクニック、そして2025年度に活用できる制度までを丁寧に解説します。読み終えるころには、目標達成までの具体的な道筋が鮮明になるはずです。
1億円の規模感を正しく理解する

まず押さえておきたいのは、1億円のアパート経営がどの程度のボリュームを示すかという点です。家賃相場6万円、総戸数12戸の木造アパートなら、表面利回り8%で年間家賃収入は約864万円になります。取得価格が1億円の場合、諸費用を含めた総投資額は1億1,000万円前後になることが多いです。
この数字を現実的に把握すると、毎月の返済額や手残りの目安が見えてきます。仮に金利2.0%、30年元利均等返済で9,000万円を借りると、毎月の返済は約33万円です。空室率を国土交通省2025年8月調査の全国平均21.2%で試算すると、稼働8割程度でも家賃収入は月57万円ほど確保でき、返済後に10万円程度が残る計算になります。
つまり、1億円規模でもキャッシュフローは意外と堅実に組み立てられます。ただし想定以上の修繕費や退去が続くと収支は簡単に崩れます。後のセクションで述べる運営スキルと資金クッションが、1億円到達後の安定運営を左右すると意識してください。
成功する資金計画と融資戦略

ポイントは、自己資金と借入比率のバランスを最適化し、金利リスクを抑えることです。自己資金として物件価格の20%を用意できれば、金融機関からの評価が上がり、金利交渉も有利になります。実際、都市銀行より地方銀行や信用金庫の方が、賃貸住宅の地域貢献を評価し最大9割融資を提示する事例も珍しくありません。
さらに、2025年10月時点で広がる「サスティナブルファイナンス型融資」は要チェックです。環境性能の高い賃貸住宅に対し、金利を0.1〜0.3%下げる制度が拡大しています。長期で見ると総返済額が数百万円減るため、キャッシュフロー改善に直結します。申請時には設計図面の断熱性能証明や、省エネ設備の見積書が必要になるので、早めに資料をそろえましょう。
一方で、変動金利を選ぶ場合は金利上昇の耐性を確認しておくことが欠かせません。現在の政策金利が上昇局面に転じたとき、1%の上昇で毎月返済が約5万円増える試算も示されています。返済比率を家賃収入の50%以内に抑える設計にしておくと、金利変動があっても続けやすいです。
物件選びで押さえる立地と建物条件
重要なのは、人口動態と生活利便性の両面から長期需要を見極めることです。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2025〜2040年までの全国人口は年平均1%減少とされますが、政令指定都市の中心部とその周辺駅徒歩圏は微増が見込まれています。この「微増エリア」を狙うと、家賃下落と空室のリスクを抑えやすいです。
物件種別では、木造築浅アパートと軽量鉄骨アパートが主流ですが、建物性能だけで選ぶと落とし穴があります。例えば、木造でも高断熱仕様にすると2025年度の「賃貸住宅省エネ改修推進事業」で1戸最大40万円の補助が受けられます。補助対象は外壁・窓の断熱改修や高効率エアコンの導入で、実質利回りが1%程度向上するケースが報告されています。
生活利便性については、最寄り駅徒歩10分以内、または徒歩15分圏でも大型商業施設や大学キャンパスがある立地を選ぶと、入居ターゲットが明確になり空室対策が容易です。また、駐車場ニーズが高い郊外では敷地延長や区画割りで賃料を加算できるため、土地の形状も収益に直結します。
キャッシュフローを安定させる運営術
実は、購入後の運営こそが1億円到達後の命運を分けます。空室率を下げる第一歩は、入居者属性に合わせた設備投資を計画的に行うことです。たとえば、単身者向けならWi-Fi無料サービスを導入すると、月額500円の費用で家賃を2,000円上げられる例があります。ファミリータイプでは宅配ボックスや防犯カメラが収益向上に寄与します。
修繕費は毎月家賃収入の10%を積立てるルールを設定すると、突発的な出費に慌てずに済みます。築10年目で外壁塗装と屋根防水に700万円かかったという事例もあり、まとまった資金がないと金融機関へのリスケジュール依頼が必要になるケースもあります。計画的な積立てが、信用度の維持と次の物件取得への道を開きます。
また、管理会社の選定は「安い手数料」より「提案力」を重視してください。入居者アンケートを毎年実施し、サービス改善へフィードバックする会社は、退去率を2〜3ポイント下げる効果が確認されています。オーナーが数字と現場の両方を把握し、管理会社と対等に議論する姿勢が、キャッシュフロー安定化の近道です。
2025年度の制度と税制を味方にする
まず、固定資産税の新築住宅軽減措置は2025年度も継続しており、アパートの場合は最長5年間半額となります。建築後5年以内に売却しても、買主が残り期間の減税を享受できるため、出口戦略面でもプラスに働きます。
次に活用したいのが、先に触れた「賃貸住宅省エネ改修推進事業」です。2025年度は申請締切が12月末で、補助率は1/3、上限120万円(3戸以上の場合)です。実施後には省エネ性能を示すラベルを掲示でき、募集広告で差別化しながら家賃アップを狙えます。
税制面では、青色申告特別控除65万円を確実に受けるため、複式簿記と電子帳簿保存が前提になります。クラウド会計ソフトの活用で時間を短縮し、その分を物件調査や入居者サービス向上に充てると、トータルリターンが伸びます。さらに、長期譲渡所得の税率20%を活かすためには、購入から5年超での売却を計画に組み込んでおくと納税額を圧縮できます。
まとめ
ここまで、アパート経営 1億円を現実の目標にするための考え方と手順を解説しました。規模感を正しく把握し、自己資金と融資をバランス良く組み立て、需要が続く立地を選べば、キャッシュフローは着実に積み上がります。さらに、運営フェーズでの設備投資と資金管理が、長期安定と次の投資チャンスを生み出します。最後に、2025年度の減税や補助金を活用して支出を抑えれば、手残りはさらに増えるでしょう。今日からできる第一歩として、気になるエリアの人口動向と金融機関の融資条件を調べ、具体的なシミュレーションを作成してみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査 2025年8月速報値 – https://www.mlit.go.jp
- 国立社会保障・人口問題研究所 将来人口推計 2023年 – https://www.ipss.go.jp
- 環境省 賃貸住宅省エネ改修推進事業 2025年度概要 – https://www.env.go.jp
- 総務省 固定資産税に関する資料 2025年度版 – https://www.soumu.go.jp
- 日本銀行 金融システムレポート 2025年4月 – https://www.boj.or.jp