不動産で資産を築きたいものの、物件購入には多額の資金や管理の手間が付きまといます。そんな悩みを抱える方にとって、少額から始められる「REIT(リート)」は心強い選択肢です。本記事では2025年10月時点の最新情報を基に、REITの仕組みや市場動向、銘柄選びのコツまで丁寧に解説します。読むことで、証券口座だけで実物不動産の収益を得るイメージがつかめるはずです。まずは基本から順に理解を深めていきましょう。
REITの仕組みと投資の魅力

重要なのは、まずREITがどのような構造で利益を生み出すのかを把握することです。
REITは「不動産投資信託」の略称で、多数の投資家から集めた資金をオフィスビルや商業施設、住宅などの収益物件に投資し、賃料や売却益を配当として還元します。投資法人自体が東証に上場しているため、株式と同じように売買できる点が最大の特徴です。
実は、この上場構造により一口数万円から投資でき、物理的な不動産管理を一切行わずに済みます。金融庁の統計によると、2025年上期の東証REIT平均取引額は日々およそ1,800億円で、高い流動性が示されています。換金性が高いことは、突然の資金需要に備える上で大きなメリットです。
さらに、REITは法律上、利益の90%以上を配当に回すことで法人税が実質的に免除されます。つまり配当利回りが高めに維持されやすく、インカムゲイン(継続的な収入)を重視する投資家に適しています。一方で価格変動リスクも存在するため、運用方針を明確に決めておくことが欠かせません。
なお、日本のJ-REITは国内不動産に集中投資する点が特色です。海外資産を含むグローバルREITに比べ、為替リスクが小さい反面、国内景気の影響は大きくなります。自分のリスク許容度と期待リターンのバランスを確認した上で活用しましょう。
2025年の市場動向と人気セクター

まず押さえておきたいのは、2025年時点でどのセクターが投資家の関心を集めているかです。
2024年のコロナ禍収束後、オフィス空室率は都心で緩やかに改善し、国土交通省によると2025年4月時点で主要5区平均は4.1%まで低下しました。しかしリモートワーク定着の影響は残り、オフィス系REITの賃料上昇は限定的です。一方、データセンターや物流施設を中心としたインフラ系REITは、EC需要とAIサーバー設置拡大に支えられ堅調な成長を示しています。
結論として、直近の分配金利回りだけでなく、賃料の成長余地を見極める視点が欠かせません。具体的には、物流特化型の平均利回りは3.5%前後とオフィス系より低めながら、内部成長率は年4%台と高い傾向があります。住宅特化型は空室リスクが低く、利回りは約3.0%で安定志向の投資家に人気です。
参考までに、2025年9月末時点の主要セクター平均利回りは以下の通りです。
- オフィス系:4.1%
- 物流系 :3.5%
- 住宅系 :3.0%
- 商業系 :3.8%
利回りの差は将来の賃料成長期待や財務健全性を反映しています。数字だけを追うのではなく、セクターごとの長期トレンドを踏まえて判断すると失敗しにくくなります。
初心者におすすめの銘柄選びの考え方
ポイントは、高利回りよりも分配金の継続性と財務の安定性を重視することです。
まず、格付会社が公表するLTV(Loan to Value:総資産に占める負債比率)が50%未満の銘柄は財務余力が大きく、金利上昇局面でも耐性があります。日本格付研究所のレポートでは、LTVが10ポイント高いと、利払い負担が約1.5倍になるケースが示されています。借入比率は安全性のバロメーターとして必ず確認しましょう。
次に、テナント分散度合いも重要です。例えば住宅系REITは1万戸以上の賃貸ユニットを保有し、1テナントの退去影響が小さいため、家賃収入が安定します。商業系やオフィス系でも、上位テナントの賃料比率が20%以下なら依存度が低く、リスク分散が利いています。
さらに、運用会社の実績も見逃せません。運用開始から10年以上経過し、分配金を減配せずに継続している銘柄は、景気変動時の運営能力が確認できる貴重な証拠です。東証の開示資料を読めば、過去の賃料改定率や物件取得実績を把握できます。初心者ほど、情報を開示し続けている透明性の高い銘柄を選ぶと安心です。
ポートフォリオ構築とリスク管理
重要なのは、複数銘柄を組み合わせてセクターリスクを薄める設計です。
例えば、物流系と住宅系を半々で保有すると、景気感応度が異なるため価格変動が相殺されやすくなります。金融庁「資産運用業高度化プログラム」のデータでは、異なるセクターを組み合わせた場合、年間価格変動幅(ボラティリティ)が単一銘柄保有に比べ約25%低下しました。
一方で、REITは金利上昇に弱い面があります。日銀の「経済・物価情勢の展望」では、政策金利が2026年にかけて0.5ポイント引き上げられるシナリオも示されています。想定外の金利上昇で価格が調整する局面に備え、定期的なリバランスと配当再投資の計画を立てておくと良いでしょう。
また、投資額を段階的に増やす「ドルコスト平均法」は、短期的な値動きを平準化する効果があります。毎月一定額を購入する設定を証券会社の積立サービスで行えば、心理的負担を軽減しながら長期保有に専念できます。
税制メリットと2025年度の制度活用
実は、REIT投資でも税制面の優遇を活用することで手取りリターンを高められます。
2025年度のNISA(少額投資非課税制度)は年間投資枠が成長投資枠240万円、つみたて投資枠120万円に拡充されています。REITは上場株式扱いのため、配当・売却益が非課税で受け取れます。特に分配金を再投資したい人は、NISA口座での保有を検討すると効率的です。なお、非課税枠は翌年へ繰り越せない点に注意してください。
また、個人型確定拠出年金iDeCoでREIT型の投資信託を選ぶと、掛金の全額が所得控除の対象になります。配当課税が繰り延べられる上、元本確保型商品と自由に組み合わせられるため、老後資産形成にも役立ちます。
ただし、NISAとiDeCoは両方使うと管理手続きが煩雑になる場合があります。銀行口座の自動振替や残高管理アプリを活用し、把握しやすい運用体制を整えることが成功への近道です。
まとめ
ここまで、REITの基本構造から2025年の市場トレンド、銘柄選びの視点、そして税制優遇まで幅広く解説してきました。要するに、高い利回りに飛びつくのではなく、財務健全性とセクター分散を意識しながら少額でコツコツ積み上げることが長期的な成功につながります。今日紹介した考え方を踏まえ、自分のリスク許容度と資金計画に合う銘柄リストを作成してみてください。行動を起こすことで、不動産収益を享受する第一歩が踏み出せるはずです。
参考文献・出典
- 金融庁 – https://www.fsa.go.jp
- 日本取引所グループ(JPX) – https://www.jpx.co.jp
- 一般社団法人投資信託協会 – https://www.toushin.or.jp
- 国土交通省 不動産市場統計 – https://www.mlit.go.jp
- 日本格付研究所(JCR) – https://www.jcr.co.jp