家賃収入に興味はあるものの、「物件を買うほどの資金も時間もない」と悩む個人事業主は少なくありません。不動産クラウドファンディングは、少額からオンラインで投資できる仕組みとして近年急速に広がっています。本記事では、不動産クラウドファンディング 個人事業主という視点で、メリット・税務・リスク管理まで丁寧に解説します。読むことで、自分の事業を続けながら資産形成を図る具体的な手順と注意点がわかり、行動へ踏み出す自信が得られるでしょう。
不動産クラウドファンディングとは何か

まず押さえておきたいのは、従来の不動産投資との違いです。不動産クラウドファンディングは、インターネット上のプラットフォームを通じ、多数の投資家が少額を出し合って物件を取得・運用する仕組みです。金融商品取引法上は「不動産特定共同事業」の電子取引型に位置づけられ、運営会社は都道府県知事または国土交通大臣の許可を受けています。
一口あたりの最低投資額は1万円程度からが一般的で、契約期間は半年から3年ほどが中心です。運用が終了すると、家賃収入や売却益が分配されます。金融庁の2024年「クラウドファンディング業者モニタリング結果」によると、運用利回りの中央値は年5.1%と報告されました。つまり、銀行預金と比べて高い収益を期待しつつ、現物購入に比べて手間とコストを抑えられる点が魅力です。
一方で、元本保証はありません。また、途中解約が制限される案件が多いため、資金を固定できる余裕があるかを事前に確認する必要があります。特に個人事業主は事業資金の流動性が重要なため、契約期間とキャッシュフローを慎重に見極めることが欠かせません。
個人事業主が活用するメリットと注意点

ポイントは、本業との相乗効果を狙えることです。たとえばITフリーランスが余剰資金を不動産クラウドファンディングに振り向ければ、売上が変動しても分配金で収入源の複線化が図れます。また、管理業務を運営会社が担うため、本業が繁忙期でも手離れよく運用を続けられるのが大きな魅力です。
しかし、注意すべきは資金繰りと案件選定の二点です。日本政策金融公庫の2025年版「中小企業の資金繰り動向調査」では、個人事業主の約3割が資金繰りを理由に投資を断念したと回答しました。投資額を決める際は、月商の1〜2割以内に抑え、運転資金に支障が出ないラインを見極めましょう。
案件選定では、開発型よりも賃貸収益型を選ぶと安定性が高まります。開発型は売却益狙いで利回りが高い反面、工事遅延や市況変動のリスクが大きいからです。また、運営会社の実績と財務内容を確認し、直近3年間の償還実績が90%以上であるかを一つの目安にすると良いでしょう。
さらに、クラウドファンディング事業者の倒産リスクにも備える必要があります。営業者兼任型の場合、運営会社が破綻すると物件管理が滞る恐れがあるため、信託保全や優先劣後出資の仕組みが明確に設計されているかをチェックしてください。
税務上の取り扱いと節税ポイント
実は、税務処理は個人事業主とサラリーマン投資家で異なります。不動産クラウドファンディングから得た分配金は「事業所得」ではなく「雑所得」に区分されるのが原則です。そのため、青色申告特別控除や赤字の損益通算は利用できません。ただし、各案件で発生する運営報酬や信託報酬は経費として計上できるので、明細を保存しておくことが大切です。
2025年度の税制では、インボイス制度が導入済みですが、クラウドファンディングの分配金は消費税の課税対象外です。したがって、課税事業者であってもインボイスを発行する必要はありません。一方で、国税庁のガイドによれば、所得税の予定納税額は前年の雑所得を含めて計算されるため、収支予測を立てて納税準備金を別口座に確保しておくと安心です。
節税策としては、小規模企業共済やiDeCoと併用する方法が有効です。これらは所得控除の対象となり、クラウドファンディングの増加分を相殺できます。また、年間20万円以下の雑所得であれば確定申告が不要という特例がありますが、個人事業主はすでに青色申告を行っているケースが多いため、合算して申告するほうが後々の税務調査に備えた透明性を確保できます。
2025年度の主要プラットフォームと比較視点
重要なのは、利回りだけでなく運用スキームを総合的に比較することです。2025年10月時点で金融庁に登録され、実績が豊富なプラットフォームとしては「CREAL」「Rimple」「Fund-X」の三社が代表的です。ここでは最低投資額、年間償還率、優先劣後比率を中心に見ると、リスクとリターンのバランスを掴みやすくなります。
― 最低投資額 CREAL:1万円 Rimple:1万円 Fund-X:5万円
― 償還率(2022〜2024平均) CREAL:99.6% Rimple:100% Fund-X:98.8%
― 優先劣後比率 CREAL:10%劣後 Rimple:20%劣後 Fund-X:15%劣後
表からわかるように、Rimpleは劣後出資の割合が高く投資家保護が厚い一方、案件数はやや少なめです。Fund-Xは中規模開発案件が多く、利回りが6%台と高いものの、最低投資額が5万円とやや高めに設定されています。個人事業主が初めて挑戦する場合は、リスク許容度と資金計画に応じて、複数サービスを組み合わせて分散投資する方法が現実的でしょう。
さらに、各社が公開するエビデンス資料を確認することが欠かせません。運営報告書に監査法人のレビューが付いているか、物件情報が地図と写真で詳細に開示されているかを比較することで、情報公開姿勢を読み取れます。総務省の「デジタル社会白書2025」によると、投資家が重視する要素の上位は「運営者の透明性」「過去実績」「ユーザーサポート」となっており、これらが長期的なリピート投資に影響するとの調査結果も公表されています。
リスク管理と成功事例から学ぶコツ
まず意識したいのは、分散と検証です。ひとつの案件に集中すると、物件固有のトラブルが直撃します。2〜3プラットフォームを使い、契約期間や立地をずらすことで、景気変動や自然災害リスクを平準化できます。たとえば、都心のレジデンス型と地方の物流施設型を組み合わせれば、賃貸需要のサイクルが異なるため、収益の波を小さくできます。
成功事例として、年商3000万円のデザイン事務所を営むAさんは、2023年から月10万円ずつ不動産クラウドファンディングに投資しました。2025年9月時点で総投資額は300万円、平均実績利回りは5.3%、受取分配金は税引前で32万円に達しています。Aさんは分配金をすべて再投資し、案件を6本に分散したことで、途中で一件の売却遅延があったものの、他の案件からの入金でキャッシュフローを安定させました。
一方で、Bさんは高利回りのホテル開発案件に集中投資し、コロナ禍の影響で運用期間が延長されました。予定利回りは高いままですが、資金が長期間拘束され、事業資金の追加借入を余儀なくされたとのことです。このように、利回りだけでなく回収スケジュールの確実性を見極めることが、個人事業主にとっては生命線になります。
リスク管理の最後の砦は、情報のアップデートです。金融庁や国土交通省は、業者監督情報や行政処分をウェブで公開しています。投資前はもちろん、運用中も定期的にチェックし、問題が生じた場合は運営会社への問い合わせや匿名組合契約書の条項確認を行うことで、損失を最小限に抑えられます。
まとめ
不動産クラウドファンディング 個人事業主というテーマで見てきたように、少額・省時間で始められる一方、資金固定や情報非対称といったリスクが存在します。重要なのは、事業のキャッシュフローを守りながら、複数案件へ分散して投資する姿勢です。また、税務処理を適切に行い、納税資金を計画的に確保することで、不測の事態にも動じない体制が整います。まずは月商の一部を余裕資金として振り分け、実績豊富なプラットフォームから小口で参加してみましょう。行動を起こすことで、事業収入に次ぐ新たな収益の柱を築く第一歩が踏み出せるはずです。
参考文献・出典
- 金融庁 – https://www.fsa.go.jp
- 国土交通省 不動産特定共同事業ポータル – https://www.mlit.go.jp
- 国税庁 タックスアンサー – https://www.nta.go.jp
- 総務省 デジタル社会白書2025 – https://www.soumu.go.jp
- 日本政策金融公庫 中小企業動向調査 – https://www.jfc.go.jp