シェアハウス投資に興味はあるものの、「税金まわりが複雑で踏み出せない」と感じていませんか。複数人に部屋を貸す仕組みは、通常のアパート経営と違う点が多く、申告方法や経費計上を誤ると手元に残るキャッシュが減ってしまいます。本記事では2025年10月時点で有効な税制を前提に、初心者でも押さえるべきポイントを整理します。読み終えたころには、シェアハウス投資の数字を自分で組み立て、税務署とも堂々と渡り合える土台ができるはずです。
シェアハウス投資の基礎と税金の全体像

まず押さえておきたいのは、シェアハウスから得る利益は「不動産所得」に区分され、総合課税であることです。複数の入居者と短期契約を結ぶ場合も、民泊のような「事業所得」には原則該当しません。
シェアハウスはリビングや水回りを共有するため、設備投資が一般のワンルームより多くなりやすいです。つまり初期投資も修繕費も大きく、その分だけ必要経費を正しく計上できるかどうかが、節税効果を左右します。また、空室リスクを抑えやすい一方、入居者の出入りが頻繁で原状回復費がかさむ点も無視できません。
国税庁の「所得税基本通達」では、家賃と共益費をまとめて徴収している場合、全額を不動産収入として計上すると示されています。共益費を分けて受け取る方式に切り替えれば、実費精算分が収入から除外され、課税ベースを下げられる余地が生まれます。つまり契約書の作り方ひとつで、最終的な納税額が変わるのです。
重要なのは、収入を過大に申告するリスクと、経費を過小に評価するリスクの両方を避けるバランス感覚です。年間収支を月別に区分し、経費の性質を明確にする習慣を身につければ、税務調査にも自信を持って対応できます。
家賃収入の申告と必要経費の考え方

ポイントは「入居者ごとに小口で発生する支出を漏らさない」ことです。シェアハウスではトイレットペーパーや洗剤といった日用品をオーナー負担で補充するケースが多く、これらは「管理費」に含めて経費計上できます。見落としがちな小さな支出も年間では数万円単位になるため、レシートは必ず保管しましょう。
次に、管理委託手数料です。外部の管理会社へ一部業務を任せる場合、委託手数料のほか、入居者募集に伴う広告費も必要経費となります。国土交通省の2024年賃貸住宅市場調査によると、首都圏の平均募集コストは家賃の0.8〜1.2か月分です。数字を頭に入れておくと、手数料の妥当性を判断しやすくなります。
水道光熱費の扱いも特徴的です。入居者が人数で割り勘する形式なら、オーナーが立替払いし、入居者から実費回収した分は収入に含めません。一方、定額制にして家賃に上乗せした場合は、回収分が全額課税対象になります。契約形態を決める際には、節税効果だけでなく、入居者が納得しやすい公平さも考慮してください。
青色申告を選択すれば、65万円の控除に加え、30万円未満の備品を全額即時償却できます。電子帳簿保存法に対応した会計ソフトを導入し、仕訳の自動化を進めれば、複数入居者の家賃入金を管理する負担も軽くなります。青色申告承認申請書は開業後2か月以内の提出が必要なので、物件取得と同時に手続きする意識が欠かせません。
減価償却と資本的支出の判断ポイント
実は、シェアハウスの減価償却は「共有部の比率」が鍵を握ります。共有面積が50%以上なら、建物全体を一棟として扱い、一般の共同住宅と同じ耐用年数で償却できます。鉄骨造であれば法定耐用年数は34年、木造は22年です。
ただし購入時に中古だった場合、耐用年数は「法定耐用年数 − 経過年数 × 0.2」で計算する簡便法が使えます。築15年の木造なら22 − 15 × 0.2 = 19年が残存耐用年数です。これを超える期間であっても、入居可能な状態を維持していれば減価償却を続けられる点を覚えておきましょう。
リノベーション費用は「修繕費」か「資本的支出」かで税効果が大きく変わります。床材の貼り替えや給湯器交換など、機能を原状回復する工事は修繕費として当期経費にできます。一方、個室を増やし入居者数を増加させるような改装は資本的支出となり、耐用年数にわたって償却する必要があります。工事見積書を細分化し、税理士と相談して区分することが損金最大化の近道です。
また、個室に設置する家具家電は1セット単価が10万円を超えると固定資産になりますが、10万円未満かつ耐用年数1年未満なら消耗品費として一括計上が可能です。まとめ買いをする際は、単価を意識して仕入先に見積もりを調整してもらうと、当期利益を圧縮しキャッシュを温存できます。
消費税・固定資産税など間接税の扱い
基本的に居住用の家賃は消費税非課税です。しかし食事を提供したり、短期滞在型で宿泊料を徴収したりすると課税対象に変わります。課税売上が年間1,000万円を超えると消費税の課税事業者になるため、事業モデルを固める前に売上規模を試算してください。課税事業者を選択するなら、インボイス制度に対応した請求書と会計処理が不可欠です。
固定資産税については、土地200平米以下の部分が課税標準6分の1になる「小規模住宅用地の特例」が2025年度も継続しています。シェアハウスは住居用であるため、この特例がフルに使えます。また、建物が一定の耐震基準を満たす場合、新築後3年度分の固定資産税が半額になる措置も引き続き適用されています。木造2階建て以下なら対象になることが多いので、新築計画時は確認を忘れないでください。
都道府県によっては、若年層の住まい確保を目的に、シェアハウスへ改修する際の補助金を出す自治体もあります。ただし国費を伴う制度ではなく、市区町村単位の独自事業が大半です。募集要項の公開期間が短いケースがあるため、物件探しと並行して自治体の公式サイトを定期的にチェックする習慣をつけると効果的です。
2025年度税制改正の影響と今後の戦略
2025年度税制改正では、不動産所得の赤字と給与所得の損益通算を制限する案が議論されましたが、最終的に「節税目的の過度な中古物件取得」に限る限定的な適用にとどまりました。シェアハウスは中古リノベーションによる開業も多いため、減価償却費で大きな赤字を作る場合、事業性の説明資料を整えておくと安心です。
一方で、住宅確保要配慮者の入居促進に向けた「居住支援特別控除(仮称)」が創設され、要件を満たす入居者1人あたり年間最大5万円の税額控除が検討されています。2026年度に本格実施予定ですが、実証事業は2025年10月時点で始まっており、シェアハウス運営者が早期参加すると入居者募集で優位に立てます。
金融面では、日本銀行の政策金利が0.5%水準に据え置かれ、地方銀行の投資用ローン金利は2025年8月平均で年1.9%(日銀統計)。固定か変動かを選ぶ際は、返済比率を家賃収入の50%以内に抑える保守的計画が推奨されます。金利上昇局面でも手残りが確保できるよう、キャッシュフロー計算書を毎年更新し、資金繰り表とセットで管理してください。
最後に、インフレ時代は賃料改定が収益拡大の鍵を握ります。賃貸借契約の特約で、電気代高騰時の共益費自動見直し条項を盛り込むなど、将来コストを家賃に転嫁できる設計を心がけましょう。法務的なチェックを怠らなければ、入居者トラブルを避けながら安定経営を実現できます。
まとめ
シェアハウス投資で成功するには、税金の仕組みを正しく理解し、物件や契約をデザインする段階から節税を組み込むことが欠かせません。家賃と共益費の区分、青色申告による控除、減価償却と資本的支出の線引き、さらには消費税や固定資産税の特例まで、多面的に検討する姿勢が重要です。この記事で紹介した基本を実践し、自分の数字でシミュレーションすれば、税負担を抑えつつキャッシュを最大化できます。今日から領収書の整理と収支表の作成を始め、将来の選択肢を広げていきましょう。
参考文献・出典
- 国税庁 – https://www.nta.go.jp
- 国土交通省 住宅局 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku
- 日本銀行 統計データ – https://www.boj.or.jp/statistics
- 総務省 固定資産税関係法令集 – https://www.soumu.go.jp
- 東京都居住支援ポータル – https://www.jutaku.metro.tokyo.lg.jp