不動産の税金

築10年の物件を持つオーナー必見!確定申告で得するための実践ガイド

築10年の賃貸物件を所有していると、「そろそろ減価償却も折り返し地点だけれど、確定申告で損をしない方法はあるのだろうか」と不安になるかもしれません。築浅物件とは違い、修繕費や入居者対応などコストも増えやすく、所得税や住民税の負担を抑える工夫が欠かせません。本記事では「築10年 確定申告」にまつわる悩みを解消するため、減価償却、経費計上、2025年度の税制動向まで最新情報を盛り込みながら具体的に解説します。読み終えるころには、必要書類の準備から電子申告のコツまでスムーズに理解でき、節税しながらキャッシュフローを守る手順が見えてくるはずです。

築10年物件が確定申告で注目される理由

築10年物件が確定申告で注目される理由のイメージ

まず押さえておきたいのは、築10年という節目が税務上いくつもの変化点と重なる点です。木造物件なら法定耐用年数22年の約半分に達し、減価償却費がまだ大きい一方で修繕需要も高まります。また、家賃水準が築年数とともに緩やかに下がり始めるため、収支改善には正確な経費計上が欠かせません。

総務省の家計調査によると、築10年前後の物件で計上される修繕費は築5年未満に比べて約1.6倍に増加しています。つまり、収入が横ばいでも経費が増える構造があるため、青色申告特別控除や電子申告による65万円控除を活用しなければ税負担が重くなる恐れがあります。さらに、法定点検や原状回復を怠ると入居率が下がり、キャッシュフローが圧迫されるという二重苦も起こりやすいのが現実です。

一方で、築10年は売却時の譲渡所得税にも影響します。所有期間が5年を超えることで長期譲渡扱いになり、税率が一気に下がる点も見逃せません。確定申告を通じて年間損益を正確に把握しておくことが、将来の売却判断の材料にもなるのです。

減価償却の基本と築年数10年の影響

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重要なのは、減価償却費が依然として大きな節税メリットを生む点です。減価償却とは建物や設備の価値の目減りを毎年経費化する仕組みで、所得税法上は「定額法」が原則となります。木造22年、鉄骨造34年、RC造47年という法定耐用年数に対し、築10年時点では残存期間がそれぞれ12年、24年、37年残っている計算です。

たとえば木造の中古一棟アパートを新築価格3,000万円、建物比率60%と仮定すると建物価額は1,800万円になります。築10年経過後でも1,800万円÷22年=約81.8万円の償却費が毎年計上できるため、所得を圧縮する効果は依然として大きいのです。また、設備部分を「短期償却資産」として区分すると、さらに速いペースで費用化できる場合があります。設備割合は国税庁の「建物附属設備の区分例示表」を参考に根拠を示すと、税務調査でも説明しやすくなります。

一方で、定率法による償却を選択している場合は注意が必要です。2016年4月1日以降に取得した建物は定率法を選択できませんが、それ以前に取得しているケースでは毎年の償却費が徐々に減少するため、キャッシュフローとのズレが生じやすくなります。申告前に減価償却一覧表を作成し、残存簿価と次年度以降の推移を確認することで、資金計画の精度が高まります。

築10年で使える主な経費と書類のそろえ方

ポイントは、経費計上の幅を広げ、必要書類を漏れなくそろえることです。代表的な経費としては、修繕費、管理委託料、保険料、ローン利息、固定資産税、広告料などがあります。築10年では給湯器やエアコンの交換が頻発するため、支出が20万円未満なら一括経費、超える場合は「資本的支出」として減価償却に振り分ける判断が必要です。

たとえば給湯器を18万円で交換した場合、国税庁通達では「短期の使用にとどまる消耗品」としてその年の経費にできます。逆に屋上防水を100万円かけて全面修繕した場合は耐用年数15年で分割償却となり、全額を一度に落とせません。領収書や工事見積書には工事内容の内訳が記載されているかを確認し、税理士とも相談しながら区分しましょう。

書類準備では、銀行の年末残高証明、管理会社からの年間収支報告書、火災保険の更新通知なども重要です。電子申告を利用すると領収書の郵送は不要ですが、5〜7年間の保管義務は残ります。スマートフォンでスキャンした画像も「電子帳簿保存法」の要件(解像度、改ざん防止措置)を満たせば証憑として認められるため、クラウド保管サービスの活用が実務を大きく効率化します。

2025年度の税制と電子申告で押さえるポイント

実は、2025年度も不動産オーナー向けの大きな税制改正はありませんが、電子申告を前提とした控除拡大が続いています。青色申告者が「e-Tax」で申告し、電子帳簿保存法の要件を満たせば65万円の控除が適用される点は2025年度も維持されています。紙提出や電子帳簿未対応の場合は控除額が55万円に下がるため、IT化が節税の分岐点になります。

また、住宅ローン控除の被適用期間中に賃貸へ転用するケースでは、ローン控除が打ち切られるため注意が必要です。築10年で居住用から賃貸用に切り替える場合、転用時点で未償却残高があっても控除は受けられません。一方、既に賃貸用として取得した物件を自己居住用に転用する際は、物件取得から20年(耐火建築物は25年)以内なら「住宅取得控除」の対象になり得ます。用途変更のタイミングと確定申告の手続きを誤ると税負担が増えるため、事前に税理士に相談しましょう。

電子申告ではマイナンバーカードとICカードリーダー、またはスマホ認証が必須です。金融機関や外部サービスと連携させる「仕訳自動取込機能」を使えば、家賃入金やローン返済が自動仕訳化され、人的ミスを防げます。国税庁のe-Tax仕様は毎年細かな更新が入るため、ソフトウェアも最新版にアップデートしておくと送信エラーを回避できます。

築10年の出口戦略と申告後のフォロー

まず押さえておきたいのは、確定申告を終えた時点が翌年の投資戦略を立てるスタートラインだということです。申告書の「損益計算書」を分析すると、物件ごとの収益力が数値で見えるため、不要な支出を削るか売却を検討するかの判断材料になります。築10年は大規模修繕のピークを迎える前でもあるため、外壁塗装や共用部改善の資金を計画的に積み立てるか、保有・売却のどちらに舵を切るかを決めやすい時期です。

長期譲渡になると税率が約20%に下がる点は、売却益の多寡によっては強力な節税要素になります。たとえば取得費2,500万円、売却額3,200万円で長期譲渡なら、課税譲渡所得700万円に対して約140万円の税額で済みます。短期譲渡(所有5年以下)なら同条件で約280万円課税されるため、築10年物件を保有する意義が見えてきます。

さらに、確定申告後に税務署から「お尋ね」が来るケースでは、修繕費と資本的支出の区分や家事按分の根拠を求められることが多いです。帳簿と領収書の紐づけを明確にしておくと、スムーズに回答でき、追加徴税やペナルティを回避できます。申告後の1年間は帳簿の改善・クラウド化を進め、翌年申告の作業負担を減らすことが、結果として空室対策や資産拡大に回す時間を生み出します。

まとめ

結論として、築10年の賃貸物件を保有するオーナーは、減価償却と修繕費に関する知識を深め、電子申告を通じて青色申告特別控除65万円を確実に取り切ることが、節税とキャッシュフロー維持の鍵になります。減価償却の残存期間を正確に把握し、修繕費と資本的支出を適切に区分するだけで、税額は大きく異なります。さらに、2025年度の電子帳簿保存法に対応しておけば、申告業務が効率化され、空いた時間を入居率アップや物件価値向上に振り向けられます。今日から領収書と帳簿の整理に着手し、来年の確定申告で余裕を持って節税を実現しましょう。

参考文献・出典

  • 国税庁 – https://www.nta.go.jp
  • 総務省統計局 家計調査 – https://www.stat.go.jp
  • 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp
  • e-Tax(国税電子申告・納税システム) – https://www.e-tax.nta.go.jp
  • 中小企業庁 電子帳簿保存法Q&A – https://www.chusho.meti.go.jp

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