鉄骨造のアパートやテナントビルを建てたいけれど、建築費がどれくらいかかるのか分からず不安になる方は多いでしょう。資材価格の高騰や人手不足のニュースが続く中、予算が膨らむのではと心配になるのも当然です。本記事では、2025年時点の公的データを踏まえ、鉄骨造 建築費の相場と内訳、費用を抑える具体策、そして長期運営を見据えた資金計画まで順に解説します。読み終えるころには、必要なコストと対策がクリアになり、自信を持って次の一歩を踏み出せるはずです。
鉄骨造が選ばれる理由と建築費の関係

まず押さえておきたいのは、構造の特性がコストに直結するという事実です。鉄骨造は柱や梁を鋼材で組むため、木造より高い強度を確保でき、間取りの自由度も広がります。また耐火性能が高く、防火地域でも建設しやすいことから都市部の収益物件で採用例が増えています。一方で鋼材そのものの単価は木材より高く、加工に専門技術が必要なため、建築費が上がりやすい点は避けられません。つまり、高い初期投資と引き換えに、立地競争力や長期耐久性を得られるというのが鉄骨造の特徴といえます。
実は、この耐久性とリフォームしやすさが長期運営の収益に影響します。壁式構造のRC造と違い、鉄骨造は間仕切りの移動が比較的容易で、テナント入れ替え時の改装費を抑えられます。将来の用途変更や増改築にも対応しやすいため、資産価値が維持されやすいというメリットが期待できます。結果として、空室リスクの低減や売却時の価格維持につながり、総合的な投資効率を底上げしてくれるのです。
2025年の鉄骨造 建築費相場と内訳
ポイントは、最新データで具体的な数字を把握することです。国土交通省「建設工事費デフレーター2025年7月速報」によると、鉄骨造共同住宅の全国平均は1平方メートルあたり約32万円、坪換算で約105万円に達しています。2019年比ではおよそ12%の上昇で、資材高騰と人件費増加が主因とされています。
建築費を分解すると、構造体工事が全体の30〜35%、内外装仕上げで25〜30%、設備工事が20〜25%を占めます。意外に見落とされがちなのが仮設費や現場管理費で、合わせて10%前後かかるのが一般的です。つまり、坪単価だけを追うのではなく、内訳を細かく確認することで交渉の余地が見つかります。
地域差にも注意が必要です。東京都心部では坪単価110万円を超えるケースが珍しくない一方、地方都市では90万円台に収まることもあります。ただし、地方でも鉄骨を加工する工場が遠いと運搬コストが跳ね上がり、結果的に割高になる事例も見られます。規模や立地が違えば単価も動くため、複数の見積もりを比較する姿勢が欠かせません。
さらに、2025年度は省エネ基準適合義務化の影響で、高性能サッシや断熱材を採用する物件が増えています。初期費用は上がりますが、エネルギー消費性能算定の評価値が良好になると金融機関の融資条件が優遇される場合もあり、トータルコストでみるとメリットが大きいケースもあります。
コストを左右する5つのポイント
重要なのは、同じ鉄骨造でも設計と施工次第で建築費が大きく変わる点です。第一に影響するのがプランのシンプルさで、直線的な外観と均一なスパンを採用すれば鉄骨の加工量を減らせます。逆に、凹凸や大開口を増やすと補強材が必要になり、重量も工程も増加します。
次に注目したいのが鉄骨重量です。構造設計で過剰な安全率を取ると梁や柱が太くなり、材料コストが跳ね上がります。信頼できる構造設計事務所と連携し、法定範囲内で最適化するだけで数百万円規模の削減が見込めることも珍しくありません。
三つ目は施工期間です。鉄骨は現場で組み上げるスピードが早い反面、天候に左右されやすい基礎工事が長引くと仮設費と人件費が膨らみます。工程表を綿密に管理し、梅雨時期や台風シーズンを避けるスケジュールを組むことで、想定外のコスト増を抑えられます。
最後に、資材購入のタイミングと工場の稼働率も無視できません。鋼材市況は四半期ごとに変動し、2025年4月にはロシア産鉄鋼の輸入制限で一時的な値上がりが見られました。発注を前倒しして価格が安い時期に手配できれば、建築費全体で1〜2%の差がつくこともあります。情報収集を怠らず、市況変動を把握することが資金効率を高める鍵となります。
資金計画と有利な融資の組み立て方
まず押さえておきたいのは、建築費だけでなく融資条件がキャッシュフローに直結する点です。日本政策金融公庫の不動産投資向け融資は最長20年ですが、民間銀行では25年超の長期融資を取り扱う例も増えています。返済期間が5年延びるだけで、月々の返済額はおよそ15%下がるため、空室リスクへの耐性が向上します。
金利差にも目を向けましょう。2025年12月時点で大手行の変動金利は年1.4%前後、地方銀行は1.2%前後が平均的です。0.2ポイントの差でも、1億円を25年借りた場合の総返済額は約300万円変わる計算になります。つまり、複数行に同時打診し、条件を比較するだけで大きな節約が可能です。
自己資金の割合も建築費に影響します。金融機関が重視するのは、建築費の20〜30%を現金で拠出できるかどうかです。自己資金を厚くすると金利優遇や保証料減額を受けられるケースがあり、トータルコストで見ると外注費削減以上の効果を生むことがあります。予算計画の段階で頭金と予備費をバランス良く確保することが、安定経営の基盤になります。
また、2025年度の「住宅エコ改修促進税制」は、省エネ性能を高めた賃貸住宅にも適用されます。一定の断熱性能を満たすと固定資産税の減額措置を受けられるため、初期コストが上がっても実質負担は軽くなる可能性があります。制度は年度ごとに予算枠があるので、着工前に最新情報を確認し、申請スケジュールを組むことが大切です。
長期保有を前提としたメンテナンス費の捉え方
実は、鉄骨造のメンテナンスサイクルは建築費と同じくらい投資収益に影響します。外壁塗装は12〜15年ごと、屋上防水は20年ごとが一般的ですが、早めの点検と部分補修を徹底すれば、大規模改修のタイミングを後ろ倒しできます。ここで生まれるキャッシュフローの余裕が、次の投資機会をつかむ原資になるのです。
錆び対策も忘れてはいけません。鋼材は防錆塗装で保護されているものの、切断面やボルト接合部は錆びやすいポイントです。年1回の目視点検と5年ごとの簡易塗装で進行を抑えれば、構造耐久性を大きく損なわずに済みます。つまり、小さなメンテナンス費を惜しまず、長期的な修繕コストを平準化する発想が重要になります。
さらに、省エネ設備の導入はランニングコストを下げるだけでなく、入居者募集の際の競争力を高めます。LED照明や高効率空調は初期費用を数十万円押し上げるものの、電気代削減分で5〜7年で回収できるケースが多いと報告されています。投資回収期間を計算し、入居者に光熱費のメリットを訴求することで高い入居率を維持しやすくなります。
まとめ
結論として、鉄骨造 建築費は木造より高めですが、耐久性と自由度が長期的な収益性を支えてくれます。2025年の平均坪単価は約105万円で、設計の工夫や資材調達のタイミングしだいで数%の削減が可能です。さらに、適切な融資戦略とメンテナンス計画を組み合わせれば、初期投資を回収しながら安定したキャッシュフローを確保できます。まずは複数社の見積もりを取り、内訳を細かく比較するところから行動を始めてみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 建設工事費デフレーター2025年7月速報 – https://www.mlit.go.jp
- 建設物価調査会 建築費指数年報2025 – https://www.kensetu-bukka.or.jp
- 日本政策金融公庫 融資制度情報2025年版 – https://www.jfc.go.jp
- 一般社団法人 不動産証券化協会 市場動向レポート2025 – https://www.ares.or.jp
- 住宅金融支援機構 フラット35金利推移2025 – https://www.jhf.go.jp