アパート経営に興味はあるものの、「毎月いくら入ってくるのか」「本当に利益が出るのか」と不安に感じる人は多いはずです。家賃収入は夢の不労所得と語られがちですが、実際には空室や税金、修繕費など数多くのコストが絡みます。本記事では月々の収入の仕組みを基礎から丁寧に説明し、最新の公的データと具体例を交えてリアルな数字を示します。読み終えたころには、自分が目指すべき家賃設定や資金計画のイメージが描けるようになるでしょう。
月々の収入を決める三つの要素

まず押さえておきたいのは、月々の家賃収入を左右する要素が「入居率」「家賃単価」「運営コスト」の三つに集約される点です。ここを理解すると、数字のブレを論理的に把握できるようになります。
入居率とは部屋がどれだけ埋まっているかを示す割合で、国土交通省の住宅統計によると2025年10月時点の全国アパート空室率は21.2%です。言い換えると、平均的な入居率は約78.8%となりますが、都市部の駅近物件では90%を超えるケースもあります。一方で地方の築古物件だと60%前後まで下がる例も珍しくありません。
家賃単価は立地と物件スペックで決まります。築浅の都心アパートは一室あたり8万円を超えることもありますが、郊外の築20年超では4万円台が相場です。つまり、表面的な満室想定家賃だけでなく、実際のマーケット賃料をしっかり調べることが重要です。
運営コストには管理委託料、共用部電気代、保険料などが含まれます。一般的には家賃収入の15%前後が目安ですが、外壁修繕や設備更新が重なる年は40%近くに跳ね上がる可能性もあります。このように三要素は相互に影響し合うため、月ごとのキャッシュフローを予測する際は一体で考える必要があります。
手取り額を正しく計算する方法

ポイントは、家賃収入から「経費」と「返済」を順番に差し引くことで手取り額を明確にすることです。数字を並べるだけではなく、流れを意識すると計算ミスを防げます。
まず家賃総額から管理委託料や広告料を引き、残った金額を営業純収益と呼びます。さらに固定資産税や火災保険、共用電気代を差し引くと、営業純利益が算出できます。この時点ではまだ借入返済は含めません。
次に金融機関への元利返済を月単位で差し引きます。返済は元金と利息が混在しており、減価償却費と合わせた税務調整も欠かせません。税引き前キャッシュフローがプラスなら運営自体は黒字ですが、ここから所得税・住民税が発生する点に注意してください。
最後に残る金額が月々の手取り収入です。例えば家賃総額60万円、経費率20%、返済額25万円、税金3万円とすると、手取りは60万円×0.8−25万円−3万円=20万円となります。こうした流れを理解すると、広告費が増えたときにどこが圧迫されるかを即座に把握できるようになります。
数字で見るモデルケース
実は、具体的な数字を当てはめると収益イメージがぐっと鮮明になります。ここでは首都圏郊外の木造アパート(1K×8戸)を例に取り、2025年時点の相場で試算します。
満室家賃は1戸6万円で月48万円ですが、空室率を全国平均の21.2%で計算すると実入居率は78.8%、家賃収入は約37万8000円になります。管理委託料5%、共用電気代と保険で月2万円、広告費を平準化して月1万円と置くと経費合計は約5万9000円です。
残り31万9000円から、金利1.8%・25年返済の融資2,800万円に対する月返済14万2000円を差し引くと、税引き前キャッシュフローは17万7000円になります。減価償却後の課税所得が低めと仮定し、所得税・住民税合計で3万円とすると、月々の手取りは約14万7000円です。
この数字は一例ですが、入居率を85%に高められれば手取りは17万円台に上がります。逆に大型修繕が発生して半年だけ経費率が40%に跳ね上がると、手取りはほぼゼロになる計算です。モデルケースを通じて、安定運営の重要性が見えてくるでしょう。
収入を安定させる五つの戦略
重要なのは、家賃収入を増やすよりも「減らさない」工夫を徹底することです。そのための代表的な戦略を五つ紹介します。
第一に、オンライン内見やスマートロックを導入し、入居申し込みのハードルを下げます。これにより空室期間を平均で1〜2週間短縮できる例が増えています。第二に、人気設備ランキングで上位のネット無料や宅配ボックスを追加し、家賃の下落を食い止めます。
第三に、入居者ターゲットを絞ったリノベーションを行います。たとえば社会人単身者向けにワークスペースを設けると、同エリア平均より3000円高い家賃設定でも成約するケースがあります。第四に、管理会社との定期的な運営会議を設け、広告費と家賃設定を見直します。
最後に、修繕積立を月あたり家賃収入の5%程度確保しておくことです。資金を前もって積み上げれば、急な外壁補修でも追加融資を受けずに済み、キャッシュフローの乱れを防げます。こうした戦略を組み合わせることで、月々の収入を底上げしつつ安定させることが可能になります。
2025年度の税制と補助を活用する
ポイントは、現行制度を正しく把握し、使えるものを漏れなく利用することです。2025年度において個人オーナーが押さえておきたいのは主に三つあります。
第一に、新築アパートの固定資産税が3年間半額になる軽減措置です。建築確認が2025年度内なら適用されるため、着工時期によっては大きな節税効果を得られます。第二に、省エネ性能向上の賃貸住宅改修への補助金があります。国交省の「既存賃貸住宅省エネ化推進事業」は1戸当たり上限50万円で、募集は年度ごとに行われます。
第三に、小規模宅地等の特例は相続時の評価額を最大50%減額でき、長期保有を前提にした節税策として有効です。もっとも利用条件が細かいため、税理士への事前相談が必要になります。
これらの制度は予算枠や申請条件が毎年微調整されるため、2025年12月時点の公募要領を必ず確認してください。制度を活用すれば、手取りベースで月1万〜2万円相当の負担軽減につながるケースもあり、キャッシュフロー改善に直結します。
まとめ
ここまで「アパート経営 月々の収入はいくら」という疑問に対し、収入を決める三要素、正しい計算手順、モデルケース、安定化の戦略、2025年度制度の活用まで幅広く解説しました。家賃収入は入居率とコストのバランス次第で大きく変動しますが、数字の根拠を持って対策すれば月10万円超の手取りも十分に狙えます。まずは自分の想定物件で試算表を作り、改善策を一つずつ実行してみてください。着実な行動が、安定したキャッシュフローへの最短ルートとなります。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査 – https://www.mlit.go.jp/statistics/
- 総務省 固定資産税に関する資料 – https://www.soumu.go.jp/
- 国土交通省 既存賃貸住宅省エネ化推進事業 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/
- 国税庁 相続税土地評価 小規模宅地等の特例 – https://www.nta.go.jp/
- 日本賃貸住宅管理協会 賃貸住宅設備ランキング2025 – https://www.jpm.jp/