不動産の税金

年収1500万以上 マンション投資 リスクと対策

多くの高年収層が「給与だけでは資産形成が不安」と感じ、マンション投資に注目しています。しかし「年収が高いほど融資が通りやすいから大丈夫」と安易に進めると、想定外の損失に悩まされるケースも少なくありません。本記事では、年収1500万以上の方が直面しやすいリスクを整理し、その対処法を最新データとともに解説します。読み終えるころには、自分に合ったリスク管理の考え方と行動プランが見えてくるはずです。

高年収層が直面しやすい投資環境

高年収層が直面しやすい投資環境のイメージ

まず押さえておきたいのは、年収1500万以上の投資家には独特の市場環境が用意されているという事実です。金融機関は高属性の顧客に対して融資枠を広めに提示し、築浅や高額帯の区分マンションを薦める傾向があります。一見すると好条件に映りますが、物件価格が大きいほど収益率が下がり、空室時の負担も重くなる点を忘れてはいけません。

日本銀行が公表する2025年10月の平均金利データでは、投資用ローンの変動金利は年2.1%前後です。金利自体は歴史的低水準でも、物件価格が高いと返済額が膨らみ、表面利回り5%台ではキャッシュフローがほとんど残らないケースが多発しています。また、不動産経済研究所によれば、2025年の東京23区新築マンション平均価格は7,580万円に到達し、前年より3.2%上昇しました。高年収層ほど「融資が組めるから買える」状況に陥りやすいため、利回りと返済バランスの確認が最優先となります。

さらに、高属性ゆえに営業担当も積極的にアプローチしてきます。複数社のプレゼン資料を比較せず「担当者が信頼できそうだから」という理由で即決する失敗例も後を絶ちません。つまり、高年収者こそ情報の精査とシミュレーションの徹底が不可欠なのです。

キャッシュフローと節税の誤解

キャッシュフローと節税の誤解のイメージ

重要なのは、損益計算上の「赤字=節税メリット」が必ずしも手元資金のプラスを意味しない点です。減価償却や金利を経費計上して税額を圧縮できても、実際のキャッシュはローン返済で出ていきます。特に年収1500万以上の高い税率帯では、節税効果が大きく映りますが、それに安心してキャッシュフローを軽視すると危険です。

国税庁の2025年度所得税率表では、課税所得900万円超1800万円以下の税率は33%です。節税狙いで年間100万円の損益通算をすると、税還付は約33万円になり、一見魅力的に感じます。しかし、同時に手出しが年間120万円発生していれば、差し引きマイナスです。言い換えると、節税はあくまで副次効果であり、投資自体の収益力が先に立たないと意味をなさないということです。

また、給与収入と不動産収入の合計が増えることで、社会保険料や住民税の負担が変動する点にも注意が必要です。2025年度の健康保険料率は平均10%台を維持していますが、報酬月額が上がれば保険料も比例して増えます。シミュレーション時には、税金だけでなく付帯コストまで含めたキャッシュフロー表を作成しましょう。

空室と家賃下落リスクの読み解き方

実は、年収1500万以上の投資家が買いやすい都心ワンルームでも、空室リスクはゼロではありません。東京都住宅政策本部の統計によると、2025年時点の23区平均空室率は11.4%です。さらに、単身者向け物件は供給過多が指摘されており、周辺物件との差別化が難しくなっています。

家賃下落は空室率の上昇と連動するため、購入前にエリアの人口動態や新築供給計画を確認することが重要です。総務省の都市圏将来人口推計では、都心5区は2035年まで緩やかな増加傾向ですが、周辺区は横ばいから微減が予測されています。同じ23区でも区によって温度差があるため、駅徒歩や再開発計画など複合的要因を吟味しましょう。

空室が発生した際のリカバリー策として、原状回復のグレードを工夫し、賃料水準を維持するオペレーションが欠かせません。設備投資を軽視すると「家賃は下げても決まらない」負のスパイラルに陥ります。一方で過剰なリフォームは回収期間が延びるため、周辺家賃と差別化ポイントをデータで検証した上で最小限の投資に抑えることが賢明です。

金利上昇と融資戦略をどう組むか

ポイントは、低金利前提のシミュレーションだけで判断しないことです。日本銀行は2025年9月の金融政策決定会合でマイナス金利解除の議論を継続中と報道されました。仮に1%の金利上昇が起これば、ローン残高5,000万円・残期間25年のケースで年間返済額は約30万円増加します。キャッシュフローが薄い物件では、わずかな金利変動でも赤字化する恐れがあるのです。

そこで有効なのが、固定金利期間選択型の活用や繰上返済用の内部留保を厚くしておく方法です。固定期間を10年に設定し、その間に返済原資を積み上げれば、金利リスクを一定程度コントロールできます。また、複数物件を保有する前提なら、あえて金利タイプを分散し、ポートフォリオ全体でリスクを平準化する戦略も考えられます。

金融機関と交渉する際は、年収や資産背景を示して金利優遇を引き出すだけでなく、返済比率を抑えた借入額を提示することが肝心です。返済比率は一般に年収の35%以内が目安とされますが、高年収層でも25%以下にしておくと、将来の余裕資金を確保しやすくなります。つまり、借りられる額ではなく返せる額を基準にプランを立てることが、安全運用への第一歩となります。

2025年度に使える公的優遇を活かす視点

基本的に、2025年度時点で区分マンション投資に直接利用できる公的補助金は存在しません。しかし、住宅ローン控除と不動産取得税の軽減措置は引き続き適用されます。区分所有でも自宅兼投資として「住宅ローン控除」を活用できるケースがありますが、居住要件や床面積など細かな条件をクリアする必要があります。投資専用なら対象外になるため、うまく制度を使いたい場合は居住比率や居住年数を事前に計画しておきましょう。

一方、固定資産税の新築減税は2026年3月末着工分まで延長が決定済みです。新築区分を検討する際は、引き渡し時期だけでなく着工日が要件に含まれる点を理解しておくと、税負担を三年間軽減できる可能性があります。なお、この減税は築後から3年度分が対象であり、4年目以降は評価額に基づく課税が戻るため、そのタイミングでのキャッシュフロー悪化を見込んでおくことが欠かせません。

最後に、自治体が運営するリノベーション補助金などは投資物件を対象外にしている例が多いです。制度名だけで判断せず、対象者要件を確認したうえで無理なく使える優遇策に絞り込むことが長期運用の助けになります。

まとめ

本記事では「年収1500万以上 マンション投資 リスク」をテーマに、融資枠の拡大がもたらす収益率低下、節税とキャッシュフローのギャップ、空室・家賃下落、そして金利上昇と公的優遇の活用ポイントを整理しました。結論として、高年収だからこそ資金調達は容易ですが、その分だけ損失額も大きくなる構造を理解し、緻密なシミュレーションと分散戦略を欠かさないことが成功の鍵です。今日からできる行動として、①複数の融資条件を比較する、②税引き後キャッシュフロー表を作る、③エリアの将来人口を調べる、という三つを実践してみてください。慎重な準備が、10年後の安定した資産形成へつながります。

参考文献・出典

  • 不動産経済研究所 – https://www.fudosankei.com
  • 日本銀行「金融システムレポート」 – https://www.boj.or.jp
  • 国税庁「所得税の税率表(2025年度)」 – https://www.nta.go.jp
  • 東京都住宅政策本部「住宅市場動向調査2025」 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp
  • 総務省「地域別将来人口推計2025」 – https://www.stat.go.jp

関連記事

TOP