名古屋で不動産投資を始めたいけれど、「どの区を選ぶべきか」「価格はまだ上がるのか」と迷う方は多いでしょう。人口動態が安定し、再開発も進む名古屋は魅力的ですが、エリアごとに収益性が大きく異なります。本記事では、最新データを踏まえながら、初心者でも押さえやすいエリア選定のポイントと資金計画のコツを丁寧に解説します。読み終える頃には、自分に合った投資戦略を描けるようになるはずです。
名古屋市の市場動向を押さえる

まず押さえておきたいのは、市場の大きな流れです。愛知県住宅供給公社の統計によると、2025年時点の名古屋市人口は233万人と微増傾向を保っています。さらに、中部圏白書が示すとおり、企業の本社機能移転が続き、就業人口も緩やかに増えています。
この背景には中部国際空港第2滑走路の整備やリニア中央新幹線開業準備といったインフラ強化があり、オフィス需要とともに住宅需要も底堅い状況です。特に名駅周辺の商業開発はテナント需要を刺激し、単身赴任や若手社員の流入が続いています。つまり、全体としては空室リスクが小さく、家賃相場が安定しやすい都市と言えます。
一方で、名古屋市住宅都市局の空室率調査では、中村区・西区は8%前後に対し、守山区・港区では12%台と開きがあります。市内でも需要格差が表れている点を見落としてはいけません。再開発エリアと郊外住宅地を同列に考えず、細かな需要分析が必要です。
エリア選定で見るべき3つの指標

重要なのは「人口流入」「交通利便性」「再開発計画」という三つの視点で比較することです。
最初に人口流入を確認する際は、市区町村別の転入超過数をチェックします。中村区は2025年も転入超過が続き、ワンルーム需要が旺盛です。また、中区は若年層の集中が続くため築浅よりも立地重視で家賃を維持できます。
次に交通利便性ですが、名古屋市営地下鉄の乗降客数ランキングを参照すると、東山線と桜通線沿線が突出しています。特に吹上駅から今池駅周辺は賃料水準が安定し、駅徒歩5分以内の物件なら空室期間が平均2週間以内と短めです。一方、バス便のみのエリアは家賃下落が顕著で、収益計画が狂いやすくなります。
最後に再開発計画です。2025年度に都市計画決定された「栄三丁目西街区計画」は、商業施設とオフィスが一体化したランドマークを目指しています。近隣の矢場町・新栄は既存ビルの建て替えが進んでおり、駅近築古マンションでもリノベ後に賃料アップが見込めるのが特徴です。こうした具体的なプロジェクトを把握することで、家賃上昇余地を見極められます。
名古屋で勝ち筋となる物件タイプ
ポイントは物件タイプをエリア特性に合わせることです。単身者が集中する名駅エリアでは、25〜30㎡のコンパクトマンションが高稼働を維持しやすく、利回りも平均4.5〜5%で安定しています。また、中区・昭和区の文教地区では40〜50㎡の1LDKが二人暮らし需要を取り込みやすく、入居期間が長い点が魅力です。
一方、守山区や緑区のファミリー層向けには、木造アパートよりも耐震・断熱性能を強化した軽量鉄骨・RC造が好まれています。国土交通省の長期優良住宅制度(2025年度継続中)に適合する賃貸住宅なら、減価償却年数が長いため節税メリットが高く、保有期間全体での手残りが増えます。
中古区分マンションを検討するなら、築20年前後で大規模修繕を終えた物件が狙い目です。修繕積立金が底上げされ、向こう10年の追加負担が小さくなるためキャッシュフローが読みやすくなります。逆に、築25年以上でエレベーターや給排水管の交換時期が近い場合は、将来の臨時徴収を織り込んでおかないと利回りが目減りします。
資金計画と融資攻略のポイント
実は、名古屋の地銀・信用金庫は地元物件への融資に前向きで、自己資金10〜20%でも金利1.2〜1.5%の固定金利を打ち出しています。全国規模のメガバンクと比較すると審査基準が地域密着型であるため、物件評価の根拠を示せば融資枠を広げやすいのが特徴です。
融資交渉の第一歩は、賃料相場の根拠資料と空室率推移をセットで提示することです。例えば、家賃88,000円で運営する1LDKを購入する場合、名古屋市住宅供給公社の平均賃料データと自社管理会社の募集実績を併用して説明すると説得力が高まります。金融機関は「再調達価格」と「収益還元価格」を見比べるため、修繕積立金の残高や改修履歴も用意すると評価は上がります。
さらに、2025年度の税制では、個人投資家が住宅ローン控除を利用することはできませんが、不動産所得と給与所得の損益通算は認められています。減価償却と修繕費を適切に計上することで、初年度の税負担を軽減できる点を押さえておきましょう。手残りキャッシュを厚くし、返済余力を示すことが融資枠拡大につながります。
運用開始後に差がつく管理術
まず押さえておきたいのは、入居者満足度を高める細かな施策です。名古屋市の入居者アンケートでは、インターネット無料設備と宅配ボックスの需要が年々高まっており、これらを導入した物件は平均入居期間が1.4倍に伸びています。初期費用は30万円前後ですが、退去抑制による家賃空白期間の削減効果のほうが大きくなる傾向があります。
一方で、築古物件ではエントランス照明をLEDに交換するだけで共用電気料が30%以上下がるケースが多く、ランニングコスト削減が即キャッシュフロー改善につながります。こうした小規模改修は固定資産計上ではなく修繕費処理できるため、当期費用で落とせる点も魅力です。
加えて、名古屋特有の夏場の高湿度対策を怠るとカビ発生による退去リスクが高まります。24時間換気システムのフィルター交換や浴室乾燥機の定期点検を管理会社に義務付けることで、トラブル報告件数を半減させた事例もあります。物件の保全と入居者満足は表裏一体であると意識しましょう。
まとめ
ここまで、名古屋で失敗しない不動産投資のために、市場動向の把握、エリア選定の三つの指標、物件タイプの見極め、融資交渉のコツ、そして運用管理術を順に解説しました。結論として、名古屋は全体需要が底堅いものの、区ごとの空室率と再開発計画を読み解く力が欠かせません。データに裏打ちされた資金計画と、入居者目線の管理を徹底すれば、長期にわたり安定収益を得られるでしょう。まずは転入超過が続く中村区や再開発が進む栄周辺で、利回りと将来性を兼ね備えた物件を探し、地元金融機関との関係構築からスタートしてみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅着工統計 2025年版 – https://www.mlit.go.jp/
- 名古屋市住宅都市局 空家・空室率調査 2025 – https://www.city.nagoya.jp/
- 愛知県住宅供給公社 住宅市場レポート 2025 – https://www.aichi-jks.or.jp/
- 中部圏社会経済白書 2025年度版 – https://www.cbr.meti.go.jp/
- 財務省 税制改正の手引き 2025年度 – https://www.mof.go.jp/