日本の外国人政策は、大きな転換点を迎えています。深刻な人手不足と少子高齢化を背景に、政府は特定技能制度の拡充や在留資格の緩和を着実に進めてきました。出入国在留管理庁によると、令和7年末の在留外国人数は412万5,395人に達し、前年末比で9.5%増加、初めて400万人を超えて過去最高を更新しています。この流れは今後も続くと見られ、不動産市場にも新たな投資機会が生まれています。
外国人の増加は、単なる労働力確保の問題にとどまりません。彼らが日本で暮らすには住居が必要であり、その需要は確実に拡大しています。在日外国人の多くは若年層で構成されており、賃貸住宅への需要が特に高いことが特徴です。この記事では、外国人政策と制度の最新動向を踏まえながら、住宅市場の変化と具体的な投資戦略について詳しく解説します。
外国人政策の現状と需要の広がり
日本政府の外国人受入れ政策は、この数年で大きく変わってきました。かつては限定的だった外国人労働者の受入れは、2019年に創設された特定技能制度を契機に本格化しています。特定技能とは、人手不足が深刻な分野で一定の技能を持つ外国人を受け入れる在留資格です。出入国在留管理庁の速報値では、令和7年12月末時点の特定技能在留外国人数は39万296人に達しており、制度が急速に拡大している様子がうかがえます。
需要の広がりは労働者だけにとどまりません。文部科学省の調査によると、2025年5月1日時点の外国人留学生数は40万8,069人となり、前年度比21.2%増で過去最大を記録しています。留学生は学業のため一定期間日本に滞在するため、学生向け賃貸需要の拡大を示す重要なデータと言えます。労働者と留学生という二つの層が、それぞれ異なる住宅ニーズを生み出しているのです。
都道府県別に見ると、在留外国人数が最も多いのは東京都で80万1,438人となり、全国の19.4%を占めています。次いで大阪府が37万5,319人、愛知県が35万7,800人と続き、大都市圏への集中が明確です。ただし、これらの数字はあくまで居住地の分布であり、実際の投資判断では地域ごとの産業構造や生活環境を合わせて読み解く必要があります。
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2026年に押さえるべき制度の変化
外国人向け不動産に関わる場合、まず理解しておきたいのが制度の基本線です。衆議院の調査報告によれば、日本では外国人であっても日本人と同様に不動産を取得できるのが制度上の原則です。安全保障や住宅価格高騰を理由に外国人の不動産取得を規制する国もあるなかで、日本は比較的開かれた仕組みを維持していると言えます。
一方で、報告義務の面では重要な変更があります。財務省の資料によると、非居住者が日本の不動産や関連する権利を取得した場合、外為法にもとづき取得後20日以内に日本銀行を経由して財務大臣へ報告書を提出する必要があります。ここでいう非居住者とは、日本国内に生活の本拠を持たない人を指します。
さらに、この報告制度は2026年4月1日に大きく見直されました。財務省の案内によれば、令和8年3月31日以前の取得は「投資目的等」で取得した場合が報告対象でしたが、令和8年4月1日以降の取得は目的を問わず報告対象となりました。加えて、取引の相手方が居住者か非居住者か、取得の目的が居住用か投資目的か、そして不動産番号といった報告事項も追加されています。非居住者として不動産を取得する立場の投資家にとって、実務上の影響は小さくありません。
登記制度の側でも動きがあります。首相官邸の施策パッケージ資料によると、政府は令和8年度中を目途に、不動産の移転登記等の申請情報へ申請人の国籍を追加する方針を示しています。同資料では、重要施設周辺などの注視区域における2024年度の土地・建物取得のうち、外国人等と思われる者による取得は3,498筆個で、取得総数の3.1%だったことも報告されています。制度は今後も変化する可能性があるため、最新情報は財務省や出入国在留管理庁など各公的機関の公式サイトで確認することが欠かせません。
外国人が直面する住居確保の課題
外国人が日本で生活を始めるとき、最も大きな壁となるのが住居の確保です。言語の壁、保証人制度、文化の違いといった複合的な要因が、入居のハードルを高めています。実際に、来日したばかりの外国人が入居審査で断られたり、契約手続きでつまずいたりする現実があります。
賃貸契約における言語の問題は深刻です。契約書や重要事項説明書は日本語で書かれ、専門用語も多いため、日本語能力が十分でない外国人が内容を理解するのは困難です。不動産会社や大家とのやり取りもスムーズにいかないことがあり、誤解やトラブルの原因になります。翻訳アプリが充実してきたとはいえ、契約という重要な場面では不安が残ります。
保証人制度も大きなハードルです。日本の賃貸契約では連帯保証人を求められるケースが一般的ですが、来日したばかりの外国人には日本に保証人がいません。保証会社を利用する方法もありますが、外国人の受付に慎重な会社も少なくないのが現状です。あわせて、敷金・礼金・仲介手数料・前家賃など、入居時に家賃の数か月分の初期費用がかかる点も、貯蓄の少ない外国人にとって重い負担となります。
外国人向け住宅需要の特徴を把握する
外国人の住宅ニーズには、日本人とは異なる特徴があります。持ち家志向が強い日本人に対し、外国人は賃貸を選ぶ割合が高く、この違いを理解することが投資成功の第一歩です。立地条件では、職場や学校へのアクセスを最優先に考える傾向が強く見られます。製造業や物流業で働く場合は工業団地や物流拠点の近く、留学生やサービス業であれば都市部の駅近物件が好まれます。
同じ国籍のコミュニティが形成されている地域も人気があります。母国の食材を扱う店舗があること、同胞と情報交換しやすいことなど、生活インフラとしてのコミュニティの存在は重要な要素です。家賃については手取り収入の3分の1程度が現実的な目安となり、中程度の価格帯で立地条件も満たす物件を提供できれば、高い入居率が期待できます。
間取りはワンルームから1DKが主流ですが、家族帯同のケースが増えるにつれ、2DKや2LDKへの需要も徐々に高まっています。自炊する外国人が多いため、キッチン設備の充実度や収納スペースの広さは、物件選びの重要なポイントになります。留学生層を狙う場合は、学校からの距離や家具家電の有無が決め手になることも少なくありません。
外国人入居者の受入れで成功する物件運営
外国人を受け入れる物件を運営するには、いくつかの工夫が求められます。ここで大きな助けになるのが、国土交通省が公開している実務対応マニュアルです。同省は「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」を作成し、賃貸人・仲介業者・管理会社向けに、14か国語で入居申込書や重要事項説明書、賃貸住宅標準契約書などのチェックシートを用意しています。こうした公的なツールを活用すれば、多言語対応の負担を大きく軽減できます。
多言語対応は、最も基本的かつ効果的な取り組みです。契約書類を主要言語に翻訳しておくことで、入居希望者の不安を和らげられます。生活ルールやゴミ出しの方法を図解入りで説明したマニュアルを用意することも有効です。近隣トラブルの多くは生活ルールの認識不足から生じるため、入居時の丁寧な説明が将来のトラブル防止につながります。
保証人問題への対応も欠かせません。外国人の受入れに積極的な保証会社と提携することで、保証人がいない外国人でも入居できる仕組みを整えられます。勤務先企業が社宅として借り上げる形式も有効で、企業が契約主体となれば大家側の不安も軽減されます。あわせて、敷金・礼金をゼロにしたり家具家電付き物件として提供したりすれば、来日直後の外国人にとって大きな魅力となり、入居のハードルを下げられます。
地価動向から読み解く投資エリアの選定
投資エリアを考えるうえで、地価と家賃の動向を押さえておくことが重要です。国土交通省の令和7年地価公示では、全国平均で全用途・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、東京圏の住宅地と商業地が上昇しました。令和8年地価公示でも上昇基調が続いており、都市部を中心に地価が堅調に推移していることがわかります。
家賃も上昇傾向にあります。独自調査で判明したところでは、近年東京23区のシングル向けマンションと大阪市で募集家賃の最高値が更新され続けています。東京23区では大型ファミリー向きの平均家賃が40万円を超えるなど、都市部の賃貸市場は強含みで推移しています。需要の絶対数が多い大都市圏は競争も激しいものの、適切な価格設定と差別化ができれば安定した収益が見込めます。
一方で、地方の動きにも注目したいところです。令和8年地価公示では、長野県白馬村の住宅地上昇率が33.0%で全国1位となりました。国土交通省の資料は、その要因として国内富裕層や外国人による別荘・コンドミニアム需要が旺盛であることを明示しています。外国人需要が特定地域の地価を押し上げる典型例と言えるでしょう。
ただし、全国が一律に需要過多というわけではありません。総務省の令和5年住宅・土地統計調査によれば、全国の空き家は900万戸、空き家率は13.8%と過去最高を記録しています。国土交通省の資料でも2024年の新設住宅着工戸数は約79.2万戸で前年比3.4%減となっており、供給が全国的に伸びているわけではありません。つまり、地価や家賃が上がるエリアと空き家が余るエリアが併存しているため、「全国どこでも外国人需要がある」と考えるのは危険です。エリアごとの需給を丁寧に見極めることが求められます。
外国人向け投資のリスク管理と連携策
外国人向けの不動産投資には、通常の賃貸経営とは異なるリスクがあります。最も懸念されるのは、入居者の突然の帰国です。家族の事情や在留資格の問題などで予告なく帰国するケースは珍しくありません。対策として、契約時に緊急連絡先を複数確保し、勤務先企業と連携して状況を把握できる体制を整えておくことが有効です。法人契約の形式を取れば、個人の突然の帰国リスクを抑えることもできます。
文化や習慣の違いから生じるトラブルへの備えも欠かせません。騒音やゴミ出し、共用部分の使い方など、日本の常識が通じないケースは確実に存在します。入居時のオリエンテーションを写真や動画を使って丁寧に行い、定期的な巡回や面談で問題が大きくなる前に対処する姿勢が大切です。前述の国土交通省ガイドラインを活用すれば、こうした説明もスムーズに進められます。
投資機会を広げるうえでは、企業や関係団体との連携が有力な選択肢となります。外国人を雇用する企業の多くは社宅の確保に苦労しており、企業と直接契約を結んで従業員向けの社宅を提供すれば、安定した入居率と家賃収入を確保できます。企業が契約主体となるため家賃滞納のリスクも低く、長期的な収益の安定が期待できます。人材派遣会社や外国人支援団体、多言語対応に強い管理会社と組むことで、空室期間の短縮や管理負担の軽減も図れます。
まとめ
外国人政策の転換により、日本の住宅市場には新たな投資機会が生まれています。在留外国人数は初めて400万人を超え、特定技能や留学生といった多様な層が住宅需要を押し上げています。都市部では地価と家賃がともに上昇基調にあり、賃貸市場への追い風は当面続くと考えられます。
ただし、全国では空き家が900万戸に達し、供給が余る地域も存在します。需要が集中するエリアと余剰が生じるエリアを見極め、外国人特有のニーズに応える物件づくりを行うことが成功の鍵です。多言語対応や保証人問題への対策では、国土交通省の14か国語ガイドラインといった公的ツールを積極的に活用しましょう。
あわせて、2026年4月の外為法報告の見直しや、登記情報への国籍追加など、制度は変化を続けています。非居住者としての取得を検討する場合は特に、最新情報を財務省や出入国在留管理庁など各公的機関の公式サイトで確認することが不可欠です。制度と市場の両面を正しく理解し、適切な準備をもって取り組むことが、これからの不動産投資における成功への道筋となるでしょう。
参考文献・出典
- 出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」 – https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00062.html
- 出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況」 – https://www.moj.go.jp/isa/content/001335263.pdf
- 文部科学省「外国人留学生の在籍状況調査」 – https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1412692_00003.htm
- 財務省「本邦にある不動産又はこれに関する権利の取得に関する報告書の提出」 – https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/real_property/real_property_leafletJ.pdf
- 首相官邸「外国人による不動産取得等の実態把握について」 – https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gaikokujinzai/jitsugen/dai2/shiryo1-1.pdf
- 国土交通省「令和8年地価公示を公表しました」 – https://www.mlit.go.jp/page/kanbo01_hy_010767.html
- 総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計結果」 – https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/g_kekka.pdf
- 国土交通省「外国人の民間賃貸住宅への円滑な入居について」 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000017.html