不動産の税金

不動産収入と配偶者控除の新ルール|管理費の必要経費を徹底解説

不動産投資を夫婦で行っている方、またはこれから始めようと考えている方にとって、配偶者控除は軽視できない制度です。令和7年度の税制改正により、配偶者控除の所得要件が実際に見直され、すでに令和7年分の所得税から新しいルールが適用されています。この記事では、配偶者控除の基本から改正の内容、不動産収入がある場合の所得計算の仕組み、そして管理費をはじめとする必要経費の正しい取り扱いまでを丁寧に解説します。税制の変化を正確に理解することが、安定した不動産投資を続けるための第一歩です。

配偶者控除の基本と令和7年度改正の内容

配偶者控除とは、配偶者の所得が一定額以下の場合に、納税者本人の課税所得から一定額を差し引ける制度です。この控除を活用することで、世帯全体の税負担を抑えられるため、多くの家庭で節税策として利用されています。

国税庁によると、令和7年分以後の所得税から、配偶者控除の対象となる配偶者の年間合計所得金額の要件が48万円から58万円へ引き上げられました。給与収入のみの場合の目安も、従来の103万円以下から123万円以下へと変わっています。この改正は令和7年12月1日に施行されており、令和7年分の確定申告から新しい基準が適用されます。

控除額は納税者本人の所得によって段階的に変わります。合計所得金額が900万円以下であれば最大38万円、900万円超950万円以下では26万円、950万円超1,000万円以下では13万円となります。また、配偶者控除の適用要件を超えた場合でも、配偶者の合計所得金額が58万円超133万円以下であれば、配偶者特別控除が利用できます。所得が増えるにつれて控除額は段階的に減少しますが、急激な税負担増を緩和するクッション的な役割を果たしています。

重要なのは、この「合計所得金額」には給与だけでなく、不動産所得も含まれるという点です。配偶者が賃貸経営や駐車場経営を行っている場合、その不動産所得も合算して判定されます。不動産所得は「総収入金額から必要経費を差し引いた金額」で計算されるため、経費の管理が所得額に直結します。

不動産所得の計算方法と収入の範囲

国税庁の情報によると、不動産所得は「総収入金額-必要経費=不動産所得の金額」という計算式で求めます。一見シンプルに見えますが、何を総収入金額に含めるかを正確に把握しておくことが大切です。

総収入金額には、家賃や地代だけでなく、共益費などの名目で受け取る電気代・水道代・掃除代なども含まれます。入居者から別途受け取っている管理費名目の収入も、不動産収入として計上しなければなりません。「実費相当だから収入ではない」と誤解しているケースもありますが、受け取った時点で総収入金額に算入するのが原則です。

一方で、こうした費用の支出を経費として計上できれば、収支はプラスマイナスゼロに近づきます。総収入金額が大きく見えても、必要経費をきちんと把握・計上することで、実際の不動産所得は抑えられます。正確な収支管理が、配偶者控除の適用判定においても重要な意味を持つのです。

必要経費として認められるものの範囲

不動産所得の計算で肝となるのが、必要経費の正しい把握です。国税庁は、必要経費として認められるのは「不動産収入を得るために直接必要な費用のうち、家事上の経費と明確に区分できるもの」に限ると定めています。自宅兼賃貸物件の場合などは、費用をあんばいよく按分する必要があります。

具体的には、固定資産税・都市計画税、損害保険料、建物の減価償却費、修繕費、管理委託料、借入金の利子(土地取得に充てた部分を含む)などが必要経費として認められています。また、国税庁の定義によれば、必要経費に算入できる金額は「その年において債務が確定した金額」が基本となります。つまり、実際に支払った金額ではなく、その年に費用として確定したかどうかが判断基準です。

なお、土地の取得に要した借入金の利子は必要経費になりますが、注意点があります。不動産所得が赤字(損失)となった場合、土地取得に係る負債の利子に相当する部分の損失は「生じなかったもの」とみなされ、他の所得との損益通算ができません。この点を見落とすと、確定申告で誤りが生じやすいため気をつけましょう。

管理費の取り扱いを正しく理解する

「管理費」という言葉は、実際には複数の異なる費用を指す場合があります。不動産オーナーが管理会社へ支払う管理委託料(家賃の数パーセント程度)は、業務上直接必要な費用として明確に必要経費に該当します。また、マンションの共用部分の清掃や設備維持にかかる費用も、賃貸運営に直接関わる経費として計上できます。

一方で、分譲マンションを賃貸に出している場合の修繕積立金については、取り扱いが異なります。国税庁によると、修繕積立金は原則として「管理組合への支払期日の属する年分の必要経費には算入されない」とされています。実際に修繕等が行われた年分に初めて必要経費として算入するのが原則的な扱いです。ただし、適正な管理規約に従うなど一定の事実関係が認められる場合には、支払期日の属する年分に必要経費へ算入しても差し支えないとされています。この判断は個別の事情によって異なるため、不安な場合は税理士や所轄税務署に確認することをお勧めします。

修繕費と資本的支出の区分

費用の計上方法において、もう一つ重要な区分が「修繕費」と「資本的支出」の違いです。国税庁の情報によれば、建物や設備の通常の維持管理や修理のために支出した費用は修繕費として、支出した年にまとめて必要経費に算入できます。壁紙の張り替えや設備の修理などが代表的な例です。

これに対して、新たな資産価値を付け加えたり耐用年数を延ばしたりする支出は「資本的支出」として扱われます。資本的支出として分類された金額は、減価償却の方法によって各年分に少しずつ必要経費へ算入していきます。エアコンの新規設置や間取り変更のための大規模工事などは、資本的支出に該当するケースが多いです。この区分を誤ると、ある年の所得が過大または過小になるため、正確な判定が求められます。

不動産収入がある場合の配偶者控除への影響

不動産所得がある配偶者の場合、配偶者控除の適用判定は給与所得者よりも複雑になります。まず基本として、令和7年分以後は合計所得金額が58万円以下であれば配偶者控除の対象となります。不動産所得はその一部ですから、給与所得など他の所得がある場合はすべて合算して判定します。

たとえば、配偶者がパートで給与収入を得ながら小規模な賃貸物件も所有しているケースを考えてみましょう。給与収入が80万円の場合、給与所得控除後の給与所得は55万円(概算)となります。さらに不動産所得が10万円あれば、合計所得金額は65万円となり、58万円の要件を超えます。この場合、配偶者控除は受けられませんが、合計所得が133万円以下であれば配偶者特別控除の適用は検討できます。

また、複数の不動産を所有している場合はすべての不動産所得を合算します。一つの物件が赤字であれば、ほかの物件の黒字と相殺して所得を圧縮できる場合がありますが、先述のとおり土地取得に係る借入金の利子部分は損益通算から除かれる点に注意が必要です。こうした計算の複雑さが、不動産収入と配偶者控除の関係を難しくしている原因のひとつです。

さらに、長期的な視点での所得予測も欠かせません。建物の減価償却費は購入当初は大きく、年数の経過とともに減少していきます。同じ家賃収入でも、取得から10年後・20年後には不動産所得が増加する傾向があります。今は58万円以下に収まっていても、数年後には基準を超える可能性があるため、将来の所得推移をあらかじめシミュレーションしておくことが大切です。

節税のために今から取り組める対策

配偶者控除を適切に活用しながら不動産投資を続けるために、今から実践できる対策がいくつかあります。まず最も基本的なのは、必要経費の正確な把握と記録です。管理委託料・固定資産税・損害保険料・修繕費といった費用を漏れなく計上できるよう、領収書や請求書を体系的に管理する習慣をつけましょう。経費の計上漏れは、所得の過大計上につながります。

次に、青色申告の活用も有効な選択肢です。国税庁によると、不動産所得を生ずべき事業を営み、複式簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書を添付して期限内申告するなどの要件を満たす場合、青色申告特別控除として最大65万円を所得から控除できます。事業的規模(おおむね5棟10室以上が目安)は、不動産貸付けが事業かどうかの判断基準となりますが、65万円控除の直接要件ではありません。これらの要件を満たすことで、収入が多い場合でも所得を大きく抑えられます。青色申告を行うには、事前に税務署への届出が必要なため、早めに準備を進めることをお勧めします。

また、不動産の名義についても検討の余地があります。配偶者名義の物件から生じる所得が基準を超えそうな場合、共有名義への変更を検討することで所得を分散できる可能性があります。ただし、名義変更には贈与税の問題が伴うケースもあるため、安易に実行せず、必ず税理士に相談したうえで判断してください。

税理士への相談が有効な場面

不動産所得と配偶者控除の関係は、個々の状況によって最適な対応が異なります。自分でできる範囲を超えたと感じたら、不動産税務に詳しい税理士への相談を検討しましょう。

特に有効な相談タイミングは、不動産を新規に取得する前の段階です。購入前に将来の所得予測や配偶者控除への影響をシミュレーションしてもらえば、名義の選択など重要な意思決定をより根拠のある形で進められます。また、初めて不動産所得の確定申告を行う際も、必要経費の範囲や修繕費と資本的支出の区分など、専門家の確認を受けることでミスを防げます。

税理士を選ぶ際は、不動産税務の実績が豊富な事務所を選ぶことが大切です。一般的な所得税の知識だけでは対応しきれない論点も多く、経験のある専門家かどうかが相談の質に直結します。初回相談を無料で受け付けている事務所も多いので、複数の事務所を比較検討したうえで依頼先を決めることをお勧めします。

まとめ

令和7年度の税制改正により、配偶者控除の所得要件は48万円から58万円へと引き上げられ、令和7年分の所得税から適用されています。不動産収入がある配偶者の場合、この所得判定には不動産所得も合算されます。不動産所得は「総収入金額-必要経費」で計算され、管理委託料・固定資産税・修繕費・減価償却費などを適切に計上することが、所得管理の要となります。

特に注意したいのは、管理費や修繕積立金の扱いです。管理委託料は明確に必要経費として計上できる一方、マンションの修繕積立金は原則として実際の修繕が行われた年に経費算入するというルールがあります。また、修繕費と資本的支出の区分も誤りやすいポイントです。こうした細部を正確に把握することが、配偶者控除を適切に活用するための基盤になります。

税制はたびたび改正されるため、最新情報は国税庁の公式サイトや税理士への相談で確認するようにしてください。正しい知識と適切な経費管理によって、税制改正後も安定した不動産投資を続けることができるでしょう。

参考文献・出典

  • 国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
  • 国税庁「No.2210 必要経費の知識」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
  • 国税庁「No.1379 修繕費とならないものの判定」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1379.htm
  • 国税庁「賃貸の用に供するマンションの修繕積立金の取扱い」 — https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/12.htm
  • 国税庁「No.1191 配偶者控除」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm
  • 国税庁「No.2070 青色申告特別控除」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
  • 国税庁「令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等関係)Q&A」 — https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0025005-051.pdf

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