不動産投資を始めたばかりの方にとって、減価償却の計算は最初の難関となることが多いです。特に1年目は物件を取得した月から計算を始めるため、月割り計算が必要になります。「どの月から計算するの?」「1年分計上できないの?」といった疑問を持つ方も少なくありません。この記事では、減価償却1年目の月割り計算について、基礎知識から具体的な計算方法、実務での注意点まで、初心者の方でも理解できるよう丁寧に解説していきます。確定申告で正しく減価償却費を計上するために、ぜひ最後までお読みください。
減価償却の基本的な仕組みとは

減価償却とは、建物などの固定資産を購入した際、その取得費用を一度に経費計上するのではなく、使用可能な期間にわたって分割して経費計上する会計処理のことです。不動産投資において、この仕組みを理解することは節税効果を最大化するために欠かせません。
建物は時間の経過とともに価値が減少していくという考え方に基づいています。たとえば3000万円で購入した木造アパートを、法定耐用年数の22年間で均等に費用化していくイメージです。毎年約136万円ずつ経費として計上できるため、課税所得を減らし税負担を軽減できます。
重要なのは、土地は減価償却の対象にならないという点です。土地は時間が経過しても価値が減少しないと考えられているため、建物部分のみが減価償却の対象となります。物件を購入する際は、売買契約書で建物と土地の価格を明確に区分しておく必要があります。
減価償却には定額法と定率法の2つの方法がありますが、平成28年4月1日以降に取得した建物については定額法のみが認められています。定額法は毎年同じ金額を経費計上する方法で、計算がシンプルなため初心者にも理解しやすい特徴があります。
1年目に月割り計算が必要な理由

不動産を年の途中で取得した場合、その年の減価償却費は1年分ではなく、取得した月から年末までの月数分だけ計上することになります。これが月割り計算と呼ばれる処理です。なぜこのような計算が必要なのか、その理由を理解しておきましょう。
減価償却は資産を使用した期間に応じて費用を配分する考え方に基づいています。たとえば7月に物件を取得した場合、その年に実際に使用したのは7月から12月までの6ヶ月間です。まだ所有していない1月から6月までの期間について減価償却費を計上することは、会計上の原則に反します。
国税庁の定める所得税法では、減価償却資産を年の中途で取得した場合、その年分の償却費はその資産を使用した月数で月割り計算することが明確に規定されています。この規定に従わないと、確定申告で税務署から指摘を受ける可能性があります。
月割り計算を正しく行うことで、初年度の税負担を適切にコントロールできます。取得時期によって初年度の減価償却費が変わるため、物件購入のタイミングを検討する際の重要な判断材料にもなります。たとえば年初に取得すれば12ヶ月分、年末に取得すれば1ヶ月分しか計上できないという違いが生じます。
月割り計算の具体的な手順
減価償却1年目の月割り計算は、基本的な手順を理解すれば誰でも正確に行うことができます。ここでは実際の計算プロセスを段階的に説明していきます。
まず建物の取得価額を確定させます。取得価額には物件本体の価格だけでなく、購入時にかかった諸費用の一部も含まれます。具体的には、不動産取得税、登録免許税、司法書士報酬、仲介手数料などが該当します。ただし、これらすべてが必ず含まれるわけではなく、資産の取得に直接要した費用のみが対象となります。
次に建物の構造に応じた法定耐用年数を確認します。木造は22年、鉄骨造は骨格材の厚みにより19年から34年、鉄筋コンクリート造は47年と定められています。中古物件の場合は、残存耐用年数を計算する必要があり、計算式は「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2」となります。
償却率は耐用年数に応じて国税庁が定めた数値を使用します。たとえば耐用年数22年の場合、償却率は0.046となります。この償却率に取得価額を掛けることで、1年分の減価償却費が算出されます。
最後に使用月数で月割り計算を行います。使用月数の数え方には注意が必要で、取得した月は1ヶ月として計算します。たとえば7月15日に取得した場合でも、7月は1ヶ月とカウントし、7月から12月までの6ヶ月分を計上することになります。
実際の計算例で理解を深める
具体的な数字を使って計算してみることで、月割り計算の理解が深まります。ここでは典型的なケースを例に、実際の計算プロセスを見ていきましょう。
2026年7月に木造アパートを購入したケースを考えます。建物価格は2000万円、諸費用として登録免許税20万円、司法書士報酬10万円、不動産取得税30万円がかかったとします。まず取得価額を計算すると、2000万円+20万円+10万円+30万円=2060万円となります。
木造建物の法定耐用年数は22年なので、償却率は0.046です。1年分の減価償却費は、2060万円×0.046=94万7600円となります。この金額が、物件を1年間所有した場合に計上できる減価償却費です。
しかし実際には7月に取得しているため、2026年に使用したのは7月から12月までの6ヶ月間です。したがって月割り計算を行うと、94万7600円×6ヶ月÷12ヶ月=47万3800円が、2026年分の確定申告で計上できる減価償却費となります。
翌年以降は1年間所有しているため、2027年から2047年までは毎年94万7600円を計上できます。最終年度は端数調整が必要になりますが、基本的には同じ金額を継続して計上していくことになります。このように初年度だけ月割り計算を行い、2年目以降は通常の計算に戻ります。
中古物件の耐用年数計算方法
中古物件を購入した場合、新築物件とは異なる耐用年数の計算が必要になります。この計算を正しく行うことで、より大きな減価償却費を計上できる可能性があります。
中古物件の耐用年数は、法定耐用年数をすべて経過している場合と、まだ経過していない場合で計算方法が異なります。法定耐用年数をすべて経過している場合は、「法定耐用年数×0.2」で計算します。たとえば築25年の木造物件(法定耐用年数22年)の場合、22年×0.2=4.4年となり、端数を切り捨てて4年が耐用年数となります。
法定耐用年数の一部を経過している場合は、「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2」で計算します。築10年の木造物件であれば、(22年-10年)+10年×0.2=14年となります。この計算により、新築よりも短い期間で減価償却できるため、毎年の償却額が大きくなります。
計算結果に1年未満の端数が出た場合は切り捨てます。また、計算結果が2年未満になった場合は、一律2年として扱います。これは税法で定められた最低限の耐用年数です。
中古物件の耐用年数を短くできることは、不動産投資における大きなメリットです。同じ取得価額でも、耐用年数が短いほど償却率が高くなり、毎年計上できる減価償却費が増えます。ただし、償却期間が短くなるため、早期に減価償却が終了する点には注意が必要です。
月数の数え方と注意すべきポイント
月割り計算で最も間違いやすいのが、使用月数の数え方です。正確な月数を把握することが、正しい減価償却費の計算につながります。
使用月数は、物件を取得した月から年末までの月数で計算します。重要なのは、取得した日が月の何日であっても、その月は1ヶ月として計算する点です。たとえば12月28日に物件を取得した場合でも、12月は1ヶ月としてカウントします。つまり、その年の減価償却費は1ヶ月分を計上できることになります。
一方で、月の初日である1日に取得した場合も、月末の31日に取得した場合も、同じく1ヶ月として扱われます。この点を考慮すると、月末近くに物件を取得する場合は、翌月初めまで待つよりも、その月のうちに取得した方が税務上は有利になります。
引渡し日と登記日が異なる場合、どちらを基準にするかという疑問が生じることがあります。原則として、物件の引渡しを受けた日、つまり実際に使用を開始できる状態になった日が取得日となります。ただし、登記日を取得日として継続的に処理している場合は、その方法も認められます。重要なのは、一度決めた基準を継続して適用することです。
年をまたぐ取引の場合は特に注意が必要です。たとえば12月に契約して1月に引渡しを受けた場合、減価償却は引渡しを受けた1月から開始します。契約日ではなく、実際に物件を使用できる状態になった日が基準となることを覚えておきましょう。
定額法による計算の実務
平成28年4月1日以降に取得した建物は、定額法のみで減価償却を行うことが義務付けられています。定額法の計算方法と実務上の処理について詳しく見ていきましょう。
定額法は毎年同じ金額を減価償却費として計上する方法です。計算式は「取得価額×償却率」となり、非常にシンプルです。償却率は耐用年数ごとに国税庁が定めた数値を使用します。たとえば耐用年数22年の場合は0.046、47年の場合は0.022という具合です。
償却率は国税庁のウェブサイトで公開されている「減価償却資産の償却率表」で確認できます。この表には耐用年数2年から50年までの償却率が記載されており、定額法と定率法の両方の数値が掲載されています。建物の場合は定額法の欄を参照します。
減価償却は備忘価額として1円を残すまで行います。つまり、取得価額が2000万円の建物であれば、最終的に1999万9999円まで償却することになります。最終年度は通常の償却額ではなく、残存簿価から1円を引いた金額を償却します。
実務では、会計ソフトや確定申告ソフトを使用することで、自動的に計算してくれる場合がほとんどです。ただし、入力する基礎データ(取得価額、耐用年数、取得年月)が正確でなければ、正しい計算結果は得られません。ソフトに頼りきりにせず、基本的な計算方法を理解しておくことが重要です。
取得価額に含めるべき費用の判断
減価償却の計算において、取得価額を正確に把握することは非常に重要です。どの費用を取得価額に含めるべきか、正しく判断する必要があります。
取得価額に含めるべき費用は、資産の取得に直接要した費用です。具体的には、物件本体の価格、不動産取得税、登録免許税、司法書士報酬、仲介手数料などが該当します。これらは物件を取得するために必ず発生する費用であり、取得価額に算入することが原則となります。
一方で、取得後に発生する費用は取得価額に含めません。たとえば、購入後のリフォーム費用、火災保険料、固定資産税の精算金などは、取得価額とは別に処理します。リフォーム費用は資本的支出として別途減価償却の対象となる場合があり、保険料は支払時の経費として処理します。
借入金の利息については、物件取得前に発生した利息は取得価額に算入できますが、取得後の利息は支払利息として経費計上します。この区分を明確にしておくことで、適切な会計処理が可能になります。
仲介手数料については、売買契約書に明記されている場合は取得価額に含めることが一般的です。ただし、賃貸募集のための仲介手数料は取得価額には含めず、支払時の経費として処理します。同じ仲介手数料でも、その目的によって処理方法が異なる点に注意が必要です。
確定申告での記載方法と必要書類
減価償却費を確定申告で正しく申告するためには、適切な書類の準備と記載方法の理解が必要です。ここでは実務的な手続きについて説明します。
確定申告では「収支内訳書」または「青色申告決算書」に減価償却費を記載します。青色申告の場合は「減価償却費の計算」という専用の明細書があり、そこに物件ごとの詳細を記入します。物件の名称、取得年月、取得価額、耐用年数、償却率、本年分の償却額などを記載する必要があります。
必要な書類としては、まず売買契約書が最も重要です。建物と土地の価格が明確に区分されていることを確認してください。区分されていない場合は、固定資産税評価額の比率などで按分する必要があります。また、登記事項証明書も建物の構造や床面積を確認するために必要です。
諸費用の領収書も保管しておきましょう。不動産取得税の納税通知書、登録免許税の領収書、司法書士からの請求書、仲介手数料の領収書などが該当します。これらは税務調査の際に取得価額の根拠として提示を求められる可能性があります。
電子申告(e-Tax)を利用する場合、これらの書類は提出を省略できますが、5年間の保管義務があります。紙で申告する場合は、減価償却の明細書を添付して提出します。いずれの方法でも、計算の根拠となる書類は大切に保管しておくことが重要です。
よくある間違いと対処法
減価償却1年目の月割り計算では、初心者が陥りやすい間違いがいくつかあります。これらを事前に知っておくことで、正確な申告が可能になります。
最も多い間違いは、取得した年に1年分の減価償却費を計上してしまうケースです。年の途中で取得した場合は必ず月割り計算が必要であることを忘れないでください。たとえば10月に取得した物件について、12ヶ月分ではなく3ヶ月分(10月、11月、12月)のみを計上します。
土地の価格まで減価償却の対象に含めてしまう間違いも見られます。減価償却できるのは建物部分のみで、土地は対象外です。売買契約書で建物と土地の価格が区分されていない場合は、固定資産税評価額の比率で按分するなど、適切な方法で区分する必要があります。
中古物件の耐用年数計算を誤るケースも少なくありません。新築時の法定耐用年数をそのまま使用してしまうと、本来計上できる減価償却費よりも少なくなってしまいます。中古物件は必ず残存耐用年数を計算し、正しい償却率を適用しましょう。
もし過去の申告で間違いに気づいた場合は、更正の請求または修正申告を行うことができます。減価償却費を少なく計上していた場合は更正の請求、多く計上していた場合は修正申告となります。気づいた時点で速やかに税務署に相談することをお勧めします。
2年目以降の減価償却の流れ
1年目の月割り計算を終えた後、2年目以降はどのように処理するのか理解しておくことで、長期的な資金計画が立てやすくなります。
2年目以降は、物件を1年間所有しているため、月割り計算は不要になります。毎年同じ金額の減価償却費を計上し続けることになります。たとえば1年分の減価償却費が100万円であれば、2年目から最終年度の前年まで、毎年100万円を計上します。
最終年度だけは特別な処理が必要です。減価償却は備忘価額として1円を残すまで行うため、最終年度は通常の償却額ではなく、残存簿価から1円を引いた金額を償却します。たとえば最終年度の期首簿価が50万円であれば、49万9999円を償却し、1円を残します。
物件を売却した場合は、その時点で減価償却を終了します。売却した年の減価償却費は、1年目と同様に月割り計算を行います。売却した月までの月数分だけを計上することになります。
減価償却が終了した後も、物件を保有し続けることは可能です。ただし、減価償却費を計上できなくなるため、税務上のメリットは減少します。この点を考慮して、物件の保有期間や売却時期を検討することが、不動産投資の戦略として重要になります。
まとめ
減価償却1年目の月割り計算は、不動産投資における重要な税務処理です。取得した月から年末までの月数分だけを計上するという基本ルールを理解し、正確な計算を行うことで、適切な節税効果を得ることができます。
計算の手順は、取得価額の確定、法定耐用年数の確認、償却率の適用、そして使用月数での月割り計算という流れになります。特に中古物件の場合は耐用年数の計算に注意が必要で、正しく計算することでより大きな減価償却費を計上できる可能性があります。
取得価額には物件本体の価格だけでなく、取得に直接要した諸費用も含まれます。どの費用を含めるべきか正しく判断し、必要な書類を適切に保管しておくことが、確定申告をスムーズに進めるポイントです。
初めての確定申告では戸惑うことも多いかもしれませんが、基本的な計算方法を理解していれば、会計ソフトなども効果的に活用できます。不明な点があれば税理士に相談することも検討し、正確な申告を心がけましょう。減価償却を正しく理解し活用することで、不動産投資の収益性を高めることができます。
参考文献・出典
- 国税庁 – 減価償却資産の償却率表 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2106.htm
- 国税庁 – 中古資産の耐用年数 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404.htm
- 国税庁 – 減価償却のあらまし – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
- 国税庁 – 不動産所得の計算 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
- 国税庁 – 取得価額に含めないことができる付随費用 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2109.htm
- 国土交通省 – 不動産取引に関する情報 – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000001.html
- 一般財団法人 資産評価システム研究センター – 固定資産税評価額について – https://www.recpas.or.jp/