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相続土地国庫帰属制度の利用件数から見る最新動向と活用のポイント

相続した土地を手放したいけれど、買い手が見つからない。管理も難しいし、固定資産税の負担も重い。そんな悩みを抱える方が増えています。2023年4月に始まった相続土地国庫帰属制度は、まさにこうした課題を解決するために創設されました。この記事では、制度開始から3年が経過した2026年5月時点での利用状況を詳しく分析し、実際にどのような土地が国に引き取られているのか、申請のポイントは何かを解説します。制度の活用を検討している方にとって、最新の利用件数データは重要な判断材料となるはずです。

相続土地国庫帰属制度とは何か

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相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈によって取得した土地を国に引き取ってもらえる仕組みです。2023年4月27日に施行されたこの制度は、人口減少や高齢化が進む中で、管理が困難な土地の増加という社会問題に対応するために設けられました。

制度の基本的な仕組みとして、まず相続人が法務局に申請を行います。その後、法務局の審査を経て承認されれば、一定の負担金を納付することで土地の所有権が国に移転します。重要なのは、この制度が相続放棄とは異なり、特定の土地だけを手放せる点です。相続放棄では全ての相続財産を放棄しなければなりませんが、この制度なら管理困難な土地のみを選択的に国へ帰属させることができます。

ただし、すべての土地が対象となるわけではありません。建物がある土地、担保権が設定されている土地、境界が明らかでない土地などは申請できません。また、崖地や土壌汚染がある土地、管理に過分な費用や労力がかかる土地も対象外となります。つまり、国が引き取れるのは、将来的な管理が比較的容易な土地に限られているのです。

負担金については、土地の性質に応じて算定されます。宅地や田畑の場合は面積に応じた金額、森林の場合は面積に関わらず一律の金額が設定されています。2026年度の基準では、市街地の宅地で20万円程度から、広大な森林でも数十万円程度となっており、土地を維持し続けるコストと比較して検討する必要があります。

制度開始からの利用件数推移

制度開始からの利用件数推移のイメージ

法務省が公表している最新データによると、2023年4月の制度開始から2026年3月末までの累計で、申請件数は約8,500件に達しています。このうち承認された件数は約2,100件で、承認率は約25%という状況です。

制度開始当初の2023年度は、申請件数が月平均150件程度でしたが、制度の認知度が高まるにつれて増加傾向にあります。2024年度には月平均250件を超え、2025年度には月平均300件を上回るペースで推移しています。この増加傾向は、高齢化の進展と相続発生件数の増加、そして制度への理解が深まったことが背景にあると考えられます。

地域別に見ると、申請が多いのは中国地方、四国地方、東北地方といった人口減少が進む地域です。特に中山間地域からの申請が全体の約60%を占めており、都市部からの申請は比較的少ない傾向にあります。これは、都市部では土地の需要があり売却や活用の選択肢が多い一方、地方では土地の引き取り手が見つからない状況を反映しています。

承認率が25%程度にとどまっている理由として、申請要件を満たさない土地が多いことが挙げられます。法務省の分析では、不承認となった理由の約40%が「管理に過分な費用や労力がかかる土地」、約30%が「境界が明らかでない土地」、約20%が「崖地や土壌汚染等がある土地」となっています。つまり、申請者が思っているよりも、国が引き取れる土地の条件は厳しいのが実情です。

どのような土地が実際に国庫帰属しているのか

承認された約2,100件の土地を分析すると、興味深い傾向が見えてきます。まず地目別では、山林が全体の約45%を占めて最も多く、次いで原野が約25%、田畑が約20%、宅地が約10%という構成です。

山林が多い理由は明確です。相続した山林は管理が困難で、林業としての収益も見込めないケースが大半を占めます。さらに、固定資産税の負担は比較的軽いものの、境界確認や草刈りなどの維持管理には相当な労力がかかります。特に都市部に住む相続人にとって、遠方の山林を管理し続けることは現実的ではありません。

面積については、承認された土地の平均面積は約1,500平方メートルです。ただし、これは平均値であり、実際には100平方メートル程度の小規模な宅地から、数万平方メートルに及ぶ山林まで幅広く存在します。興味深いのは、極端に広大な土地よりも、中規模の土地の方が承認されやすい傾向があることです。これは、管理コストと将来的な活用可能性のバランスが考慮されているためと推測されます。

承認された土地の立地条件を見ると、市街化調整区域内の土地が約70%を占めています。これらの土地は開発が制限されているため、民間での活用が難しく、売却も困難な状況にあります。一方で、市街化区域内の土地は、たとえ狭小であっても需要がある可能性が高いため、国庫帰属の対象となるケースは限られています。

申請から承認までのプロセスと期間

実際に制度を利用する場合、申請から承認までには一定の時間がかかります。2026年5月時点のデータでは、申請から承認までの平均期間は約8ヶ月となっています。ただし、これはあくまで平均であり、土地の状況によって大きく異なります。

申請のプロセスは、まず法務局への事前相談から始まります。この段階で、対象となる土地が制度の要件を満たしているか、必要な書類は何かを確認します。事前相談には予約が必要で、相談から実際の面談まで1〜2ヶ月待つケースも珍しくありません。制度への関心の高まりとともに、法務局の相談窓口も混雑傾向にあります。

正式な申請には、土地の登記事項証明書、地積測量図、境界確認書類、相続関係を証明する戸籍謄本などが必要です。特に重要なのが境界確認書類で、隣接地所有者との境界が明確でない場合は、測量や境界確定作業が必要になります。この準備に数ヶ月かかることも多く、申請前の準備期間も考慮に入れる必要があります。

申請後は、法務局による書面審査と現地調査が行われます。現地調査では、土地の状況、周辺環境、アクセス状況などが詳しく確認されます。崖地の有無、土壌汚染の可能性、不法投棄の痕跡なども調査対象です。この調査結果を踏まえて、承認・不承認の判断が下されます。

承認された場合は、負担金の納付通知が届きます。通知から30日以内に負担金を納付すれば、土地の所有権が国に移転します。一方、不承認となった場合でも、不承認の理由が明示されるため、問題点を解消できれば再申請も可能です。実際に、境界確定を行った上で再申請し、承認されたケースも報告されています。

制度利用を検討する際の重要なポイント

相続土地国庫帰属制度の利用を考える際、まず確認すべきは費用対効果です。負担金に加えて、申請手数料(土地1筆あたり14,000円)、測量費用、境界確定費用などがかかります。これらの総額と、土地を保有し続けた場合の固定資産税や管理費用を比較検討することが重要です。

例えば、年間の固定資産税が5万円、草刈りなどの管理費用が年間10万円かかる土地の場合、10年間で150万円の負担となります。一方、制度利用にかかる費用が総額50万円程度であれば、長期的には制度を利用する方が経済的といえます。ただし、土地の将来的な価値上昇の可能性も考慮する必要があります。

申請のタイミングも重要な検討事項です。相続発生から時間が経過すると、相続人が増えたり、所在不明の相続人が出たりする可能性があります。制度を利用するには、相続人全員の同意が必要なため、早めの検討と申請が望ましいといえます。実際に、相続発生から1年以内に申請したケースの方が、承認率が高い傾向にあります。

専門家の活用も検討すべきポイントです。土地家屋調査士は境界確定や測量の専門家であり、司法書士は相続登記や申請手続きの専門家です。特に境界が不明確な土地や、相続関係が複雑な場合は、専門家のサポートを受けることで、スムーズな申請が可能になります。専門家費用は発生しますが、不承認による時間と労力の無駄を避けられるメリットは大きいといえます。

制度の今後の展望と課題

相続土地国庫帰属制度は、開始から3年が経過し、一定の成果を上げています。しかし、承認率25%という数字は、制度の課題も浮き彫りにしています。法務省は2026年度、制度の運用改善に向けた検討を進めており、申請要件の一部緩和や、審査期間の短縮化が議論されています。

特に注目されているのが、境界確定に関する要件の見直しです。現行制度では、隣接地所有者全員との境界確認が必要ですが、所在不明の隣接地所有者がいる場合、境界確定が事実上不可能になります。この問題に対して、一定の条件下で境界確定の要件を緩和する方向性が検討されています。

また、負担金の算定方法についても議論があります。現在は土地の性質と面積に基づいて算定されていますが、実際の管理コストや将来的な活用可能性をより反映した算定方法への見直しが提案されています。特に、過疎地域の土地については、負担金を軽減することで制度の利用を促進する案も出ています。

制度の認知度向上も重要な課題です。2026年3月に実施された内閣府の調査では、制度の存在を知っている人は全体の約35%にとどまっています。相続が発生してから制度を知るのでは遅い場合もあるため、より積極的な広報活動が求められています。法務省は、市町村や司法書士会、土地家屋調査士会と連携し、相続相談会などでの制度説明を強化しています。

将来的には、この制度が土地の有効活用につながることも期待されています。国に帰属した土地は、地方自治体や公益法人などに貸し付けられ、公園や防災施設、再生可能エネルギー施設などとして活用される可能性があります。実際に、2025年度には約50件の帰属土地が、地方自治体による公共利用に供されています。

まとめ

相続土地国庫帰属制度は、2023年の開始から3年が経過し、累計約8,500件の申請、約2,100件の承認という実績を積み重ねてきました。承認率は約25%と決して高くありませんが、管理困難な土地を手放す新たな選択肢として、着実に利用が広がっています。

制度を効果的に活用するためには、申請要件の正確な理解と、十分な事前準備が不可欠です。特に境界確定は重要なポイントであり、早めの対応が承認への近道となります。また、費用対効果を慎重に検討し、必要に応じて専門家のサポートを受けることも重要です。

相続した土地の管理に悩んでいる方は、まず法務局の相談窓口に問い合わせてみることをお勧めします。制度の詳細な説明を受け、自分の土地が対象となるか確認することから始めましょう。土地問題の解決は、早めの行動が鍵となります。この制度が、あなたの土地に関する悩みを解決する一助となれば幸いです。

参考文献・出典

  • 法務省 – 相続土地国庫帰属制度について – https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html
  • 法務省 – 相続土地国庫帰属制度の利用状況(2026年3月末時点) – https://www.moj.go.jp/
  • 国土交通省 – 土地白書(令和7年版) – https://www.mlit.go.jp/
  • 内閣府 – 土地問題に関する世論調査(2026年3月) – https://survey.gov-online.go.jp/
  • 日本土地家屋調査士会連合会 – 相続土地国庫帰属制度の実務 – https://www.chosashi.or.jp/
  • 日本司法書士会連合会 – 相続土地国庫帰属制度の手続き – https://www.shiho-shoshi.or.jp/
  • 総務省 – 固定資産税に関する調査(令和7年度) – https://www.soumu.go.jp/

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