不動産投資を始めようとしたとき、多くの方が「固定金利と変動金利、どちらを選べばいいのか」という疑問にぶつかります。金利タイプの選択は毎月のキャッシュフローに直結するだけでなく、長期的な収益性を大きく左右する重要な判断です。しかし、それぞれのデメリットをきちんと理解せずに選んでしまうと、後から「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースも少なくありません。この記事では、固定金利と変動金利それぞれの仕組みとデメリットを丁寧に解説し、自分に合った選択をするためのポイントをお伝えします。
固定金利と変動金利の基本的な仕組み

まず押さえておきたいのは、固定金利と変動金利がそれぞれどのような仕組みで動いているかという点です。この基本を理解することで、それぞれのデメリットがなぜ生じるのかが自然と見えてきます。
変動金利とは、市場の金利動向に連動して借入期間中に金利が変わるタイプのローンです。一般的には短期プライムレートなどの指標金利をもとに定期的に見直しが行われます。金利が低い局面では返済額を抑えられるため、多くの不動産投資ローンで採用されています。たとえばオリックス銀行の不動産投資ローンでは、2026年8月3日現在の変動金利レンジが年2.425%〜年4.425%となっており(オリックス銀行)、金融機関によって幅があることがわかります。
一方、固定金利とは借入期間中または一定期間中、金利が変わらないタイプのローンです。返済額が安定するため収支計画を立てやすいという特徴があります。ただし、変動金利と比べると金利水準が高めに設定されることが多く、金融機関によって異なる金利設定が行われています。この差が毎月の返済額に与える影響は決して小さくありません。
なお、「固定金利」と一口に言っても、全期間固定と固定期間特約付きの商品では性質が大きく異なります。固定期間特約付きの商品の場合、初回の固定期間が終了した後は再度金利タイプを選択する必要があります。申し込みをしなかった場合は別の金利タイプに移行する仕組みになっていることもあり、「固定だから安心」と思い込んでいると想定外の事態が起こりえます。
変動金利のデメリットを正しく理解する

変動金利の最大のデメリットは、金利上昇リスクを借り手が負うという点です。市場環境が変化して金利が上昇した場合、毎月の返済額が増加し、当初想定していたキャッシュフローが崩れる可能性があります。
特に注意が必要なのは、急激な金利上昇が起きた場合の影響です。オリックス銀行の公式資料には、「急激な金利上昇により、毎月の返済全額が利息のみとなり、元金の返済額がゼロになることがある」と明記されています(オリックス銀行)。これは元金が一向に減らない状態を意味しており、長期的に見ると総返済額が大幅に膨らむリスクがあります。不動産投資は数十年単位の長期投資であるため、この点は軽視できません。
また、変動金利には繰上返済時のコストも発生することがあります。金融機関によっては、変動金利期間中の繰上返済に解約金が設定されており、借入日からの経過期間に応じて異なる料率が適用される場合があります。「金利が上がったから早めに返済しよう」と思っても、タイミングによっては追加コストが発生する点を事前に把握しておく必要があります。
さらに、変動金利は心理的な負担も見逃せないデメリットです。金利動向を常に気にしながら投資を続けることは、精神的なストレスにもなりえます。特に複数物件を保有している場合、金利上昇の影響が積み重なって収支全体に大きなダメージを与えることもあります。
固定金利のデメリットを正しく理解する
固定金利のデメリットとして最初に挙げられるのは、変動金利と比べて金利水準が高いため、毎月のキャッシュフローが圧迫されやすいという点です。不動産投資では家賃収入から返済額や諸経費を差し引いた手残りが収益の源泉となりますが、固定金利を選ぶと返済額が増える分、手残りが少なくなります。
金融機関によって異なりますが、固定金利と変動金利の間に金利差が存在することが一般的です。仮に3,000万円を30年で借り入れた場合、金利が2%と4%では毎月の返済額に数万円単位の差が生じます。この差が積み重なると、投資初期の段階でキャッシュフローがマイナスになるリスクも出てきます。
また、固定金利を選択した後の柔軟性の低さも重要なデメリットです。金融機関によっては、一度固定金利型に変更すると再度変動金利型に戻すことができないと定めている場合があります。市場金利が大きく下落した局面でも固定金利のまま高い返済を続けなければならないため、将来の柔軟性を失うというデメリットがあります。
さらに、固定金利には「固定期間終了後のリスク」も存在します。全期間固定ではない商品の場合、固定期間が終わった後に金利が大幅に上昇していると、その時点から返済負担が一気に重くなる可能性があります。「固定期間中は安心」という認識だけで選ぶと、期間終了後に想定外の事態に直面することがあるため注意が必要です。
金融機関ごとの金利設計の違いを知る
実際に不動産投資ローンを検討する際は、金融機関によって金利タイプの選択肢や条件が大きく異なることを理解しておくことが大切です。
たとえばりそな銀行の法人向け「不動産購入ローン」は、2026年8月3日現在で変動金利のみの提供となっており、年2.70%〜年3.75%のレンジが設定されています(りそな銀行)。固定金利の選択肢がそもそも存在しないため、金利タイプを選ぶ余地がありません。一方、複数の金融機関では固定金利型と変動金利型の両方を用意しており、金利レンジは金融機関によって異なります。上限が高めに設定されている商品もあるため、審査結果によっては相当な金利負担になる可能性もあります。
また、日本政策金融公庫の国民生活事業では、契約時の利率が完済まで適用される固定金利が採用されています(日本政策金融公庫)。ただし、これは一定の要件を満たす不動産賃貸業を営む方を対象とした制度であり、誰でも利用できる一般的な投資家向けローンとは性質が異なります。利用を検討する場合は、公庫の公式サイトで最新の条件を確認することをおすすめします。
セゾンファンデックスのように、銀行では対応が難しい築古物件や借地権付き物件にも相談できる金融機関もあります。ただし、その分金利は高めで、2026年5月時点では団信なしで変動4.4%〜5.2%、団信ありで4.9%〜5.8%という水準です(セゾンファンデックス)。利用しやすさと金利水準はトレードオフの関係にあることを念頭に置いておきましょう。
自分に合った金利タイプを選ぶための考え方
重要なのは、固定金利と変動金利のどちらが「正解」かではなく、自分の投資スタイルやリスク許容度に合った選択をすることです。
まず確認すべきは、毎月のキャッシュフローに余裕があるかどうかです。固定金利を選ぶ場合、変動金利より高い返済額を毎月負担することになります。家賃収入から返済額・管理費・修繕積立金などを差し引いても十分な手残りが確保できるかを、保守的な数字でシミュレーションしておくことが大切です。
次に、金利上昇に対する耐性を確認しましょう。変動金利を選ぶ場合は、金利が1〜2%上昇した場合でもキャッシュフローが維持できるかを事前に試算しておくことが重要です。また、オリックス銀行の事例のように、急激な金利上昇で元金返済がゼロになるリスクも念頭に置いておく必要があります(オリックス銀行)。
さらに、投資期間と出口戦略も判断材料になります。短期で売却を予定している場合は、繰上返済時のコストや金利タイプの変更制限といった制約が足かせになることがあります。一方、長期保有を前提とするなら、返済額の安定性を重視して固定金利を選ぶという考え方も合理的です。どちらの金利タイプにも固有のデメリットがある以上、自分の投資計画全体を見渡したうえで判断することが求められます。
まとめ
固定金利と変動金利にはそれぞれ明確なデメリットがあり、どちらを選ぶかは投資の成否を左右する重要な判断です。変動金利は金利上昇リスクと元金返済がゼロになる可能性を抱えており、固定金利は高い金利水準によるキャッシュフローの圧迫と将来の柔軟性の喪失というリスクがあります。また、金融機関によって選択できる金利タイプや条件は大きく異なるため、複数の金融機関を比較検討することが不可欠です。大切なのは、楽観的なシナリオだけでなく、金利上昇や空室増加といった厳しい条件でも耐えられる収支計画を立てることです。この記事を参考に、自分のリスク許容度と投資目標に合った金利タイプを慎重に選んでください。
参考文献・出典
- オリックス銀行「不動産投資ローン」 — https://www.orixbank.co.jp/personal/property/
- オリックス銀行「不動産投資ローン 商品説明書」 — https://www.orixbank.co.jp/personal/property/account.html
- オリックス銀行「借入金利と返済方法」 — https://www.orixbank.co.jp/personal/property/repayment.html
- SMBC信託銀行プレスティア「不動産投資ローン 金利プランのご案内」 — https://www.smbctb.co.jp/loan/products/pdf/investment_loan_interest.pdf
- SMBC信託銀行プレスティア「不動産投資ローン(固定金利型)商品説明書」 — https://www.smbctb.co.jp/loan/products/pdf/housing_loan02.pdf
- SMBC信託銀行プレスティア「不動産投資ローン(変動金利型)商品説明書」 — https://www.smbctb.co.jp/loan/products/pdf/housing_loan02_floating.pdf
- りそな銀行「りそなビジネスローン『不動産購入ローン』」 — https://www.resonabank.co.jp/hojin/service/kakushu/real_estate/
- AGビジネスサポート「不動産投資ローン」 — https://www.aiful-bf.co.jp/products/mortgage_loan/investment.html
- セゾンファンデックス「不動産投資ローン」 — https://www.fundex.co.jp/personal/investment/
- 日本政策金融公庫「国民生活事業をはじめてご利用の方へ」 — https://www.jfc.go.jp/n/finance/first/kokumin.html
- 日本政策金融公庫「融資制度一覧(国民生活事業)」 — https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/index_k_02.html