不動産の税金

家族信託の登記費用と登録免許税、2026年の軽減税率も解説

家族信託を検討しているとき、「登記にどれくらいお金がかかるの?」という疑問は多くの方が最初にぶつかる壁です。信託契約書の作成費用は調べられても、登記に関わる登録免許税や司法書士報酬まで含めた全体像がつかみにくいと感じている方も多いのではないでしょうか。この記事では、家族信託の登記にかかる費用の仕組みを基礎から整理し、2026年時点で適用される登録免許税の軽減措置や、費用を正しく計算するためのポイントをわかりやすく解説します。制度の詳細は公的機関の最新情報を必ずご確認いただく前提で、まずは全体像を把握することから始めましょう。

家族信託の登記とはどういうものか

家族信託の登記とはどういうものかのイメージ

家族信託を組む際に不動産が含まれる場合、その不動産を信託財産として登記する手続きが必要になります。これを「信託登記」と呼び、具体的には「所有権移転登記」と「信託の登記」の2つをセットで申請するのが一般的です。

所有権移転登記とは、不動産の名義を委託者(財産を預ける人)から受託者(財産を管理する人)へ移す手続きです。一方、信託の登記は、その不動産が信託財産であることを第三者に対して公示するための登記です。この2つを同時に申請することで、「この不動産は信託財産として受託者が管理しているが、受益者のために使われるものだ」という事実が法的に明確になります。

登記を行うことで、受託者が勝手に不動産を売却したり担保に入れたりすることへの歯止めにもなります。また、信託の内容が登記簿に記録されるため、金融機関や取引相手も信託の存在を確認できるようになります。家族信託において不動産が絡む場合、この登記手続きは避けて通れない重要なステップです。

登録免許税の計算方法と2026年の軽減措置

登録免許税の計算方法と2026年の軽減措置のイメージ

家族信託の登記にかかる費用の中で、最も金額が大きくなりやすいのが登録免許税です。登録免許税とは、登記を申請する際に国に納める税金のことで、不動産の価額を基準に計算されます。

まず押さえておきたいのは、課税の基準となる「不動産の価額」の考え方です。法務局のFAQ(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page_000001_00057.html)によると、課税価格は基本的に固定資産課税台帳に登録された価格を使います。ここで注意が必要なのは、固定資産課税明細書に記載されている「固定資産税課税標準額」ではなく、「価格」または「評価額」と表記されている数字を使う点です(法務局手引き https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001437202.pdf)。この2つは金額が異なることが多く、間違えると登録免許税の計算が狂ってしまうため、特に注意が必要です。

税率については、国税庁の案内(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0020003-124_01.pdf)によると、所有権の信託の登記の本則税率は不動産価額の0.4%です。ただし、土地に関する所有権の信託の登記については、租税特別措置法による軽減措置が設けられており、令和11年3月31日までの間は0.3%の軽減税率が適用されます。つまり2026年8月現在は、建物が0.4%、土地が0.3%という整理になります。

複数の不動産をまとめて申請する場合は、それぞれの固定資産課税台帳価格を合計し、1,000円未満の端数を切り捨てた金額が課税価格となります(法務局手引き)。たとえば土地の評価額が2,000万円、建物の評価額が1,000万円の場合、土地の登録免許税は2,000万円×0.3%=6万円、建物は1,000万円×0.4%=4万円となり、合計10万円が登録免許税の目安になります。ただしこれはあくまで計算例であり、実際の金額は固定資産課税台帳の価格や物件の状況によって異なります。

信託終了時の登記と登録免許税の注意点

信託を組むときだけでなく、信託が終了するときにも登記が必要になります。信託終了時には、受託者から受益者へ不動産の所有権を移す登記を行いますが、このときの登録免許税の扱いは少し複雑です。

東京国税局の文書回答(https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/sonota/03/besshi.htm)によると、登録免許税法第7条第2項の特例を使えるかどうかは、受益者が信託の効力が生じた時点における委託者の相続人にあたるかどうかなどの要件によって判断されます。この特例が使えるかどうかで税率が変わるため、信託終了時の登記については個別の事情を専門家に確認することが不可欠です。

実は、信託終了時の登録免許税については、受益者の構成や残余財産の帰属先の設定によって結論が変わるケースがあります。一般的な解説だけを参考にして手続きを進めると、想定外の税負担が生じる可能性もあります。信託契約を設計する段階から、終了時の登記コストも含めて専門家と相談しておくことが、長期的なコスト管理につながります。

司法書士報酬と公正証書費用の相場感

登録免許税のほかに、家族信託の登記にかかる費用として忘れてはならないのが司法書士への報酬です。登記申請は本人が行うことも制度上は可能ですが、信託登記は通常の相続登記より複雑なため、専門家に依頼するのが現実的です。

司法書士報酬については、公的機関が全国共通の標準額を定めているわけではなく、事務所ごとに異なります。複数の事務所の料金表を参考にすると、不動産の所有権移転および信託登記の報酬として数十万円程度を設定しているところが見られます。また、信託組成全体のコンサルティング費用を含めると、信託財産の評価額に応じてさらに費用が加わるケースが一般的です。

公正証書の作成費用も重要なコスト項目です。日本公証人連合会の手数料表によると、信託の場合の手数料は目的価額に応じて異なり、さらに書面の枚数が3枚を超える場合は1枚ごとに300円、役場外での執務には日当や交通費が別途かかります。

家族信託普及協会の費用案内(https://h-kazoku.jp/price)では、5,000万円の不動産を家族信託した場合の総額例として97万円という数字が示されています。これはコンサルタント料・公正証書費用・登記費用などを含んだ目安であり、実際の費用は物件の内容や依頼先によって大きく変わります。

費用を正しく把握するための実務的なポイント

家族信託の登記費用を正確に把握するためには、いくつかの実務的な確認作業が必要です。まず手元に用意すべきなのは、対象不動産の固定資産課税明細書です。先述のとおり、登録免許税の計算に使う価格は「固定資産税課税標準額」ではなく「価格」または「評価額」の欄の数字であることを必ず確認してください。

また、登記の事前確認として登記事項証明書(登記簿謄本)を取得することも有用です。法務省の手数料案内(https://www.moj.go.jp/MINJI/TESURYO/index.html)によると、書面請求の場合は1通600円、オンライン請求で郵送の場合は520円、オンライン請求で窓口受取の場合は490円です。これは小さな金額ですが、複数の不動産が絡む場合は積み重なるため、費用の見積もりに含めておくと安心です。

さらに、住民票や印鑑証明書などの付随書類の取得費用は自治体によって異なります。全国共通の金額を一概に示すことはできないため、お住まいの市区町村の窓口やウェブサイトで確認することをお勧めします。費用の全体像を把握するには、登録免許税・司法書士報酬・公正証書費用・付随書類の取得費用をすべて合算して見積もることが大切です。

まとめ

家族信託の登記にかかる費用は、登録免許税・司法書士報酬・公正証書費用・付随書類の取得費用など複数の項目から成り立っています。登録免許税については、2026年8月現在、土地の信託登記に0.3%の軽減税率が令和11年3月31日まで適用されており、建物は0.3%ではなく0.4%が適用される点に注意が必要です。また、課税価格の計算には「固定資産税課税標準額」ではなく「価格・評価額」を使うという基本ルールも見落とさないようにしましょう。信託終了時の登記については個別事情によって税率が変わるため、専門家への相談が欠かせません。費用の全体像を早めに把握し、信頼できる司法書士に相談することが、家族信託を安心してスタートさせる第一歩になります。

参考文献・出典

  • 国税庁「登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」 — https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0020003-124_01.pdf
  • 法務局「登記申請を御自身ですることを検討されている方からよくある質問」 — https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page_000001_00057.html
  • 法務局「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」 — https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001437202.pdf
  • 国税庁(東京国税局)「不動産信託における「信託の併合」に係る登記の登録免許税について」 — https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/sonota/01/081027_1.htm
  • 国税庁(東京国税局)「信託契約の終了に伴い受益者が受ける所有権の移転登記に係る登録免許税法第7条第2項の適用関係について」 — https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/sonota/03/besshi.htm
  • 法務省「登記手数料について」 — https://www.moj.go.jp/MINJI/TESURYO/index.html
  • 日本公証人連合会「公証人手数料令」 — https://www.koshonin.gr.jp/pdf/commission.pdf
  • 一般社団法人家族信託普及協会「費用のご案内」 — https://h-kazoku.jp/price

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