不動産の税金

一棟マンション 建築費を正しく見積もる5つの視点

不動産投資を検討し始めたばかりの方にとって、「一棟マンション 建築費」がどれほど膨らむのかは最大の関心事でしょう。建設コストが読めなければ、融資の計画も収支シミュレーションも立てられません。また、近年の資材高騰や人手不足で相場は動き続けています。本記事では最新の公的データを踏まえつつ、費用の内訳から資金計画、税制優遇までを体系的に解説します。読み終えたとき、概算を自分で試算できるだけでなく、コストを抑える具体策も見えてくるはずです。

一棟マンション建築費の内訳と相場感

一棟マンション建築費の内訳と相場感のイメージ

まず押さえておきたいのは、建築費の大部分が「本体工事費」と「付帯工事費」に分かれる点です。本体工事費は構造体や内装、設備に直接かかる費用で、一般的に総額の70〜80%を占めます。残りの20〜30%が外構や上下水道引き込み、地盤改良などの付帯工事費です。

国土交通省の「建築着工統計」2025年版によると、RC造(鉄筋コンクリート)賃貸マンションの平均本体工事単価は1㎡あたり25万円前後、延床1,000㎡の物件なら本体だけで約2億5,000万円となります。一方、同規模の鉄骨造では20万円前後とされ、構造選択がそのまま総額に跳ね返ります。つまり、構造・規模・立地の三つが相場を決める主役なのです。

次に諸費用ですが、設計監理料、確認申請手数料、ローン手数料、火災保険料などで総建築費の5〜8%が目安です。仮に総建築費が3億円なら諸費用は1,500万〜2,400万円程度になります。ここを見落とすと資金繰りが狂うため、最初から総額に上乗せして計画しましょう。

コストを左右する三大要因

コストを左右する三大要因のイメージ

ポイントは「立地条件」「建物仕様」「施工時期」の三つが互いに作用し、最終コストが確定することです。立地条件では都市部ほど土地が狭く、地下階やタワークレーンが必要になるため工事難易度が上がります。結果として坪単価は郊外より5〜10万円高いのが通例です。

建物仕様も無視できません。同じRC造でも断熱等級やZEH-M(ネット・ゼロ・エネルギー・マンション)対応にすると、設備と建材のグレードアップが必要です。住宅性能表示制度の等級5を取得すれば入居者募集で有利になりますが、1戸あたり50〜80万円ほど上乗せになることもあります。一方で省エネ性能が高いと長期的な修繕費・光熱費を抑えられるため、ライフサイクルコストで見れば得をするケースも少なくありません。

加えて施工時期です。建設物価調査会の資材価格指数では、2023〜2025年に鋼材が前年同期比で平均7%上昇しました。資材市況が落ち着くタイミングを見極めると、総額で数千万円の差が生まれることも珍しくありません。投資の機会損失と比較しながら、発注時期を戦略的にずらすことが重要です。

建築費高騰を乗り切る資金計画

重要なのは、建築費の上振れを吸収できる資金計画を組むことです。自己資金を総事業費の25%程度確保し、残りを金融機関からの長期融資でまかなうのが主流となっています。日本政策金融公庫の不動産投資向け融資では、2025年12月現在、固定金利が1.8〜2.2%台です。民間銀行より若干高めですが、審査が柔軟というメリットがあります。

一方で都市銀行や信託銀行は0.9〜1.3%の金利提案があるものの、自己資金3割や法人実績を求められることが多いです。こうした条件を踏まえ、複数シナリオを作り込むことが欠かせません。空室率15%、金利上昇1.5%といった厳しめの想定を加えると、キャッシュフローの安全域が明確になります。

また、施主支給による設備コスト削減や、一括発注ではなく専門工事ごとの分離発注を取り入れるとコストを3〜8%圧縮できる例もあります。ただし、分離発注は工程管理が複雑化するため、CM方式(コンストラクション・マネジメント方式)の実績がある建築士を選ぶことが前提となります。

建築費を抑える具体策と注意点

実は、設計段階で工夫できる余地はまだあります。代表的なのが平面計画の最適化です。共用廊下を内廊下にすると入居者満足度は上がりますが、延床面積が増えるため建築費も跳ね上がります。外廊下を採用し、仕上げ材で高級感を演出すると、コストを抑えつつ差別化が可能です。

設備選定も重要です。例えば給湯器はエコジョーズを標準採用し、将来的に給湯器交換が容易なPS(パイプスペース)設計にすると保守費用まで下げられます。国土交通省の調査では、給湯器交換費用は1台あたり平均22万円ですが、PSの余裕を確保すると工事時間が短縮でき、1割程度安く済むケースがあります。

ただし、安さを追い求めるあまり、遮音性能や耐久性を犠牲にしては本末転倒です。特に二重床・二重天井を省略すると後々クレームにつながり、入居率低下を招くリスクがあります。費用削減の判断は、長期的な賃料と修繕コストをセットで考えることが肝心です。

2025年度に活用できる税制・補助制度

まず、2025年度も継続が決定している「不動産取得税の特例措置」は押さえておきたいところです。賃貸住宅の場合、住宅用家屋としての要件を満たせば課税標準から1,200万円が控除されます。また、固定資産税については新築の賃貸住宅が一定面積以下なら3年間、税額が1/2に軽減される制度が存続しています。

さらに、2025年度の省エネ基準適合による補助金として「高性能建材導入支援事業」が利用可能です。賃貸マンションも対象で、高性能断熱材や高効率空調を採用した場合、工事費の1/3、上限2,000万円まで補助されます。期限は2026年2月末交付申請分までなので、スケジュールを逆算して設計を進める必要があります。

最後に融資面では、住宅金融支援機構の「賃貸住宅建設融資」が2025年度も継続し、ZEH-M仕様なら金利を0.25%優遇するメニューが設けられています。これらを組み合わせることで、建築費の実質負担を大幅に軽減できる可能性があります。

まとめ

一棟マンション 建築費は、本体工事費と付帯工事費、諸費用が積み重なり、立地・仕様・時期の三要素で大きく変動します。自己資金25%を確保し、厳しめのシミュレーションで融資条件を検討することで、資金計画の安全域を広げられます。また、省エネ仕様や税制特例を上手に活用すれば、コスト高騰を相殺できる余地があります。すぐにできる第一歩として、複数の建設会社に概算見積もりを取り、仕様比較表を作成してみてください。比較を通じて、投資目的に最適なコストバランスが見えてくるはずです。

参考文献・出典

  • 国土交通省 建築着工統計調査報告 2025年版 – https://www.mlit.go.jp/toukeijouhou
  • 建設物価調査会 資材価格指数 2025年12月 – https://www.kensetu-bukka.or.jp
  • 不動産経済研究所 新築マンション市場動向 2025年 – https://www.fudousankeizai.co.jp
  • 日本政策金融公庫 金利情報 2025年12月 – https://www.jfc.go.jp
  • 住宅金融支援機構 賃貸住宅建設融資 2025年度概要 – https://www.jhf.go.jp

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