マンション投資は家賃収入という安定したイメージから、資産形成を目指す初心者に人気です。しかし実際に物件を購入してみると、「思ったほど利益が残らない」「空室が続いて返済が苦しい」といった悩みが多く聞かれます。本記事では、そうした失敗を招く具体的なデメリットを整理し、回避するための考え方や最新の制度情報を丁寧に解説します。最後まで読めば、自分に合った戦略が見え、無理のない投資判断ができるようになるでしょう。
マンション投資の基本と表面的な魅力

まず押さえておきたいのは、マンション投資が「区分所有」と呼ばれる方式で、一部屋単位の購入が可能な点です。新築・中古を問わず、少ない自己資金でも始めやすく、家賃がローン返済を肩代わりしてくれる構図が人気の理由となっています。
一方、東京23区の2025年新築マンション平均価格は7,580万円と不動産経済研究所が公表しており、物件価格そのものは年々上昇傾向にあります。つまり家賃収入の伸びよりも価格上昇の方が速いケースも多く、利回りは相対的に低下しているのが実情です。また金融機関の融資姿勢も、実需向けより厳格な審査基準が適用されます。
重要なのは、家賃収入だけでなく、購入諸費用や維持コストまで含めてキャッシュフローを把握することです。物件取得時に5〜8%発生する仲介手数料や登記費用、さらに毎年の固定資産税がランニングコストを押し上げます。このように「買えば自動的に儲かる」という単純な構図ではない点が、初心者が見落としやすい最初の壁になります。
キャッシュフローを圧迫する見えないコスト

ポイントは、家賃収入から実際に手元に残る金額を正確に計算することです。家賃8万円のワンルームを例に取ると、管理費と修繕積立金で月1万8,000円、ローン返済で5万円、固定資産税を月割りにすると約4,000円かかります。
すると月々のキャッシュフローはわずか1万2,000円に過ぎません。ここに入居募集広告費や火災保険更新などの臨時費用が乗れば、一気に赤字となる可能性があります。また2025年時点で都心ワンルームの表面利回りは4%台が一般的で、金利1.5%のローンでも返済比率が高くなりがちです。
実は、購入前に「実質利回り」を試算することで、赤字リスクをかなり減らせます。実質利回りとは、賃料収入から諸費用を差し引き、購入価格で割り返して算出する指標です。最低でも6%を確保できれば、空室や金利上昇に一定の耐性を持てるとされています。
さらに、金融機関との交渉で金利を0.3%下げられれば、30年返済で総支払額は数百万円変わります。つまり購入前のシミュレーションと融資条件の最適化こそ、キャッシュフローを守る有効な手段となるのです。
空室リスクと賃貸需要の見極め方
基本的に、マンション投資最大のデメリットは空室による収入ゼロ期間が突然訪れる点です。国土交通省「住宅市場動向調査2025」によると、首都圏ワンルームの平均空室期間は1.9か月ですが、エリア格差が大きいことが分かります。
都心5区は学生や単身ビジネス層の流入が多く、1か月以内に次の入居が決まる例が半数近くを占めます。しかし郊外では3か月を超えるケースも珍しくありません。また賃貸ポータルサイトで掲載件数が多過ぎる地域は、競合が激しく家賃下落圧力も高まります。
言い換えると、同じ物件価格でも「募集開始から成約までのスピード」が短い地域を選ぶことが、長期的なリスク低減につながります。特に駅徒歩5分以内・築10年以内・専有面積25㎡以上のワンルームは、法人契約が付きやすく、平均空室期間が1か月以下とのデータもあります。
また2025年度から開始された東京都の「住宅DX空室改善支援事業」は、IoT設備を導入して空室募集情報を自動配信するオーナーに対し、初期費用の一部を補助しています(事業規模により上限20万円・2026年3月申請締切)。こうした制度を活用することで、空室期間の短縮と募集コストの削減を同時に狙えます。
修繕積立金の値上げと大規模修繕の負担
実は、多くのオーナーが後回しにしがちな負担が、マンション全体の大規模修繕費です。国土交通省のガイドラインでは、築12年目と24年目に外壁や設備の入れ替えを推奨しており、区分所有者は修繕積立金の増額を議決される可能性があります。
たとえば築15年の中古ワンルームを購入した場合、将来の修繕積立金値上げがすでに予定されているケースもあります。年間で6万円の増額はキャッシュフローに直結し、利回りを0.5ポイント押し下げることも珍しくありません。またエレベーターや給排水管更新となれば、追加一時金を求められる場合もあります。
ポイントは、重要事項調査報告書で過去の修繕履歴と積立金残高を必ず確認することです。積立金残高が不足しがちな管理組合では、一時金徴収や修繕の先送りが発生し、物件価値の下落につながります。これを避けるため、購入前に管理組合の総会議事録を読み、今後3〜5年の修繕計画を把握する姿勢が欠かせません。
さらに2025年度税制改正で、一定の省エネ改修工事を行った場合に固定資産税を3年間最大1/3軽減する措置が延長されています。ただし工事費100万円以上・2027年3月までの完了が条件です。大規模修繕と合わせて利用できれば、ランニングコストの上昇を部分的に抑えることが可能です。
税制と出口戦略を踏まえた長期視点
重要なのは、保有期間中の収支だけでなく「いつ売るか」という出口戦略を持つことです。2025年度の所得税法では、所有期間5年超で譲渡した場合の長期譲渡所得税率は20.315%で据え置かれています。購入から6年目以降に売却すれば、短期譲渡(39.63%)より税負担が大幅に軽くなる点を理解しましょう。
また相続税対策として評価額が下がる区分所有は人気ですが、相続人が引き継いでも空室リスクは続きます。家族が収支を把握できていないと、結果的に負動産となる恐れもあります。そのため、家族信託や賃貸管理会社への委託契約を早めに整えておくことが得策です。
結論として、マンション投資は「長期で持ち続ける前提」と「売却益を得る前提」でシミュレーション結果が大きく異なります。想定利回りが4%台なら、10〜15年後の売却益込みで総合収益を確保する計画が現実的です。一方、短期でキャッシュフローを重視するなら、郊外の中古高利回り物件も選択肢に入りますが、空室と修繕費のリスクがより高まります。
最後に、2025年度住宅ローン減税は居住用限定で投資用には適用されません。住まいと投資を混同せず、出口まで見通した計画を作成することが、デメリットを最小化する鍵となります。
まとめ
本記事では、マンション投資の代表的なデメリットとして①キャッシュフローを圧迫する諸費用②空室リスク③修繕積立金の増額④税制や出口戦略の複雑さを取り上げました。最も大切なのは、購入前に実質利回りを試算し、管理組合の健全性とエリアの賃貸需要をチェックする姿勢です。さらに2025年度の補助金や税制優遇を上手に活用し、金利交渉やIoT導入でランニングコストを抑えれば、リスクをコントロールしながら安定した投資が可能になります。まずは試算シートを作成し、融資条件と出口戦略を具体的に検証するところから始めてみましょう。
参考文献・出典
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 国土交通省 住宅市場動向調査2025 – https://www.mlit.go.jp
- 東京都 住宅DX空室改善支援事業概要 – https://www.metro.tokyo.lg.jp
- 国土交通省 マンションの大規模修繕に関するガイドライン – https://www.mlit.go.jp/common/001500438.pdf
- 財務省 税制改正の解説2025 – https://www.mof.go.jp