渋谷区で収益物件を探す投資家の多くが、「価格が高すぎて利回りが取れないのでは」という不安を抱いています。確かに都心部の物件価格は上昇していますが、人口増加と賃料相場の安定性を正しく理解すれば、長期的なキャッシュフローを確保できる可能性が見えてきます。本記事では、渋谷区の収益物件市場を取引データと最新統計で読み解き、駅別・地域別の傾向から融資戦略、税制改正の影響、リスク管理までを網羅的に解説します。読み終えるころには、高価格帯でも勝てる物件を見極める視点と、投資を始めるための具体的なステップが明確になっているはずです。
渋谷区収益物件の市場概況

まず押さえておきたいのは、渋谷区の人口動態と不動産価格の推移です。東京都総務局統計部の住民基本台帳によると、令和7年1月1日時点で渋谷区の総人口は231,402人、世帯数は143,626世帯となり、前年末から微増を続けています。10年前と比較すると約6%の人口増加が確認されており、単身世帯や共働きファミリーの流入が主要因です。このように安定した人口増加が、賃貸需要の底堅さを支えています。
次に不動産価格の水準を見てみましょう。国土交通省の不動産取引価格情報提供制度をもとに集計したデータでは、渋谷区の収益物件平均坪単価は1,053.39万円/坪に達しています。さらに国土交通省が公表する不動産価格指数では、東京都区部の区分所有マンション指数が229.6(季節調整値、2020年=100)、1棟アパート指数が171.9と高水準で推移しており、価格上昇トレンドが続いていることが分かります。一方で東京都住宅供給公社の賃料相場データによれば、2025年上期の平均賃料は前年同期比1.8%上昇しており、急騰ではなく緩やかな右肩上がりのため、長期保有に適した環境が整っています。
重要なのは、再開発による将来性です。JR渋谷駅周辺では2023年以降、大規模再開発でオフィス・商業床が順次供給され、IT企業を中心に高所得層の単身者が流入しています。つまり、ワンルームや1LDKの需要が持続的に高く、駅徒歩圏内の物件では空室期間を短く抑えられる強みがあります。一方、代々木や笹塚といった駅距離がある住宅地でも、2024年の京王線ダイヤ改正で都心直通が増え、ファミリー層の転入が見られました。このようにエリアごとの成長力を冷静に数字で把握することが、投資判断の第一歩になります。
駅別・地域別の取引動向を読み解く

渋谷区内でも、駅や地域によって取引件数や価格帯は大きく異なります。不動産ポータルサイトの集計によると、駅別の取引件数ランキングでは幡ケ谷駅が48件でトップ、次いで恵比寿駅が42件、代々木駅が36件と続いています。幡ケ谷エリアは利便性の割に物件価格が抑えられており、初めて一棟物件を取得する投資家に人気です。実際、駅徒歩10分圏内の木造アパートが1億円前後から流通しており、表面利回り5%台前半を確保できるケースもあります。
一方、地域別の取引件数を見ると、本町が55件で最多、代々木が32件、恵比寿が28件となっています。本町エリアは住宅地としての落ち着きと都心へのアクセスを兼ね備え、ファミリー向け賃貸マンションの需要が高い点が特徴です。さらに恵比寿エリアでは、商業施設が充実しているため単身者だけでなくDINKS世帯の入居も期待でき、賃料単価を高く設定できる傾向があります。このように駅別・地域別のデータを比較することで、自分の投資戦略に合ったエリアを絞り込めます。
ただし、駅近物件ほど坪単価が高く、利回りが抑えられる点には注意が必要です。恵比寿駅徒歩5分以内の区分マンションでは、坪単価1,200万円を超える事例も珍しくありません。そのため、初期投資額を抑えたい場合は、駅徒歩10分圏内や京王線沿線の住宅地エリアに目を向けると、実質利回りとのバランスが取りやすくなります。次章では、物件タイプごとの特徴と想定利回りを整理し、適切な投資判断に役立つ視点を示します。
物件タイプ別の特徴と想定利回り
渋谷区の収益物件には、区分マンション、一棟木造アパート、一棟RC(鉄筋コンクリート)マンションという主要な選択肢があります。まず区分ワンルームは、3千万円前後から取得可能で金融機関の融資も組みやすい点がメリットです。空室期間が短い一方、修繕積立金や管理費が毎月固定費として発生するため、収支が読みやすい反面、家賃下落に対する打ち手が少ない点が弱点です。実質利回りは2.5〜3.5%程度に収まるケースが多く、長期的な資産形成を目的とする投資家に適しています。
次に一棟木造アパートですが、渋谷区内では1億円前後から物件が流通しており、土地値の下支えが期待できます。建物寿命を踏まえれば、築10年以内なら減価償却を活用しつつキャッシュフローを厚くする戦略が取れます。ただし入居者属性が多様なため、管理会社選定が収益安定のカギを握ります。管理委託料は家賃の5%前後、共用部電気代や清掃費が年間30万円程度かかるため、購入前に詳細なシミュレーションが不可欠です。表面利回りは4.5〜5.5%程度ですが、運営コストを織り込むと実質利回りは3.5〜4.5%程度に落ち着きます。
最後に一棟RCマンションは、価格が3億円を超えるケースもありますが、耐用年数が長く固定資産税評価額の割合が低下しにくい点が特徴です。賃料単価も高い半面、修繕費が大きくなるため長期修繕計画の精緻さがリスクを左右します。国土交通省の「賃貸住宅の修繕費ガイドライン」では、RCマンションの大規模修繕が12年ごとに㎡あたり1.2万円とされており、延床1,000㎡の物件なら将来1,200万円を要します。家賃収入から年間100万円ずつプールすれば12年周期にも対応できる計算です。実質利回りは3〜4%程度ですが、土地値の安定性と長期保有によるインカムゲインの積み上げを重視する投資家に向いています。
実質利回りの計算と注意点
収益物件を選ぶ際、表面利回りだけで判断すると資金繰りを誤る可能性があります。重要なのは、運営コストを考慮した実質利回りを基準に物件を比較することです。例えば、区分マンションを3,200万円で購入し月額賃料が11万円の場合、表面利回りは4.1%です。しかし、ここに管理費・修繕積立金(月1.7万円)、固定資産税(年7万円)、空室損失4%を織り込むと、実質利回りは約2.9%まで下がります。つまり、家賃水準だけで判断すると想定外の支出に悩まされる恐れがあります。
一棟アパートの場合は、管理委託料に加えて共用部電気代や清掃費が年間30万円程度かかります。さらに2025年度から強化された省エネ基準に合わせた設備更新を行うと、年間想定純利回りが0.3〜0.5ポイント低下するケースもあります。東京都は2025年度から賃貸住宅への省エネ性能表示を段階的に義務化する方針を発表しており、既存物件でも断熱性能を示すラベルを掲示しなければなりません。表示が低いと入居者が敬遠する恐れがあり、将来的な空室率上昇につながる可能性があるため、LED照明や高効率給湯器を導入し、省エネ指標を改善することが長期的な競争力を高める施策になります。
利回り低下を補う方法として、賃料改定の余地がある物件を選ぶことが挙げられます。最寄り駅徒歩5分以内で、近隣相場より月3千円ほど安い賃料水準に留まっている築浅物件を取得し、内装グレードを上げて賃料適正化を図ると、実質利回りを0.4ポイント程度押し上げられる事例もあります。築20年を超える区分マンションでも、デザインリノベを実施しIoT鍵や高速インターネット完備にすると、賃料を月1万円引き上げた事例があります。リノベ費用200万円に対し年間賃料アップ12万円で、単純回収期間は約17年です。長期保有を前提とすれば、ブランド力の高い渋谷区なら十分に回収可能だといえます。
融資環境と金融機関の選び方
収益物件を取得する際、融資戦略は投資成否を左右する重要な要素です。まず押さえておきたいのは、金融機関ごとの融資姿勢を比較することです。都市銀行は金利が年1%前後と低い反面、自己資金2割以上とエリア実勢利回り4%以上を条件にするケースが一般的です。一方で信用金庫やノンバンクは金利が年1.8〜2.5%と高めながら、自己資金1割でも承認されることがあります。つまり、投下資本回収期間を短縮したい場合は、金利負担と自己資金比率のどちらを優先するかで選択肢が変わります。
さらに注目すべきは、日本銀行の金融政策動向です。2025年1月の金融政策決定会合では政策金利が0.75%に据え置かれましたが、市場では2026年度中に1%程度まで引き上げられる可能性が示唆されています。変動金利型ローンを利用している場合、金利上昇により返済額が増加するリスクがあるため、長期固定金利への借り換えや繰上返済の計画を事前に検討しておく必要があります。金利が1%上昇すると、1億円の借入で年間100万円の負担増となるため、キャッシュフロー試算時には金利上昇シナリオも織り込むことが重要です。
資金計画を組む際は、長期修繕費と突発的な設備更新費を分けて積み立てると安心です。家賃収入から年間100万円ずつプールすれば、12年周期の大規模修繕にも対応できる計算になります。また、2025年度税制改正で継続している「住宅ローン控除(投資用は対象外)」と混同しないよう注意が必要です。投資用物件では減価償却費を活用し、課税所得を圧縮することでキャッシュフローを最大化できます。平均的な木造アパートなら法定耐用年数22年、購入時築年数を引いて残存17年で計上するだけでも、年間200万円超の非現金費用になる事例があります。
税制改正が収益物件投資に与える影響
税制面での最新動向も見逃せません。令和8年度税制改正大綱では、相続税評価額の算定方法に大きな変更が加えられました。従来は相続開始直前に取得した賃貸不動産も通常の評価方法で計算されていましたが、2027年1月以降に取得した物件については、取得後5年以内に相続が発生した場合、評価額は時価の80%を下限とする「5年ルール」が適用されます。つまり、相続税対策を目的とした短期間の不動産購入に対する節税効果が大幅に制限されることになります。
この改正により、相続税対策として収益物件を活用する場合は、長期保有を前提とした戦略が求められます。5年超の保有期間を設けることで通常の評価方法が適用されるため、相続税負担を抑えながら安定したインカムゲインを得る設計が重要です。さらに、不動産所得の課税についても、経費計上の厳格化が進んでおり、減価償却費の適切な計上や修繕費と資本的支出の区分を正確に行う必要があります。税理士との連携を密にし、毎年のキャッシュフロー試算と税務申告を適切に行うことが、長期的な投資成功の鍵を握ります。
また、固定資産税・都市計画税の評価方法も年々見直されており、再開発エリアでは路線価上昇に伴い税負担が増加する傾向があります。渋谷駅周辺の商業地では、過去5年間で路線価が20%以上上昇した地点もあり、保有コストの増加を織り込んだ収支計画が欠かせません。購入時だけでなく保有期間中の税負担も含めて、実質利回りを計算することが求められます。
リスク管理と長期保有戦略
渋谷区の収益物件でも、空室リスクだけでなく法規制リスクや災害リスクへの備えが重要です。まず省エネ性能表示の義務化について触れました通り、既存物件でも断熱性能を示すラベルを掲示しなければなりません。表示が低いと入居者が敬遠する恐れがあり、将来的な空室率上昇につながる可能性があります。そのため、LED照明や高効率給湯器を導入し、省エネ指標を改善することが長期的な競争力を高める施策になります。
災害リスクにも目を向けましょう。渋谷区は地盤が強固な台地が多いものの、神宮前や渋谷川沿いの低地は浸水危険区域に指定されています。東京都建設局のハザードマップでは、最大60cmの浸水想定が示されており、機械式駐車場や地下ピットに電気設備があるビルは特に注意が必要です。保険加入だけでなく、設備の高所移設を検討することで実損失を抑えられます。購入前に自治体のハザードマップを確認し、浸水リスクや地震リスクを踏まえた物件選定を行うことが、長期保有における安心材料となります。
最後に、賃料下落リスクへの対策としてリノベーション資金の確保が欠かせません。築20年を超える区分マンションでも、デザインリノベを実施しIoT鍵や高速インターネット完備にすると、賃料を月1万円引き上げた事例があります。リノベ費用200万円に対し年間賃料アップ12万円で、単純回収期間は約17年です。長期保有を前提とすれば、ブランド力の高い渋谷区なら十分に回収可能だといえます。入居者ニーズに合わせた設備更新を計画的に行うことで、空室期間を短縮し、安定したキャッシュフローを維持できます。
まとめ
ここまで、渋谷区の収益物件投資について市場動向、駅別・地域別の取引データ、物件タイプ別の特徴、実質利回りの計算方法、融資戦略、税制改正の影響、リスク管理まで網羅的に解説しました。人口流入と再開発による賃料の底堅さは大きな魅力ですが、平均坪単価1,053.39万円/坪という高価格帯では実質利回りが下がりやすい点や、省エネ表示義務化といった新しい規制への対応も忘れてはいけません。さらに令和8年度税制改正大綱による相続税評価の「5年ルール」や、日銀の金融政策動向を踏まえた融資戦略が、今後の投資成否を左右します。
まずは自分の投資ゴールを明確にし、利回りだけでなく長期的な賃料維持と修繕計画をセットで把握することが成功への近道です。駅別・地域別のデータを活用して、自分の投資戦略に合ったエリアを絞り込み、実質利回りとリスクのバランスを慎重に検討してください。次の一歩として、信頼できる仲介会社に複数の物件シミュレーションを依頼し、数字と現地確認の両面から納得いく投資判断を行いましょう。長期保有を前提とした戦略と、適切なリスク管理があれば、渋谷区の収益物件は安定したインカムゲインを生み出す強力な資産となります。
参考文献・出典
- 東京都 総務局統計部 – https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/
- 渋谷区 統計情報(人口・世帯数) – https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kusei/tokei_shibuya/jinko/nenbetu.html
- 東京都住宅供給公社 賃料相場データ – https://www.to-kousya.or.jp/
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.re-port.net/article/news/0000079708/
- 国土交通省 不動産取引価格情報提供制度 – https://www.tochi-d.com/syueki/13/13113/
- 国土交通省 賃貸住宅修繕費ガイドライン – https://www.mlit.go.jp/
- 東京都建設局 ハザードマップ – https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/
- 日本銀行 金融政策決定会合 – https://www.ibnews.com/jp/2026/01/24/3633.html
- デロイト トーマツ 令和8年度税制改正大綱 – https://www.deloitte.com/jp/ja/services/deloitte-private/perspectives/jp-fc-newsletter-jan2026.html
- 全国賃貸住宅新聞 税制改正解説 – https://www.zenchin.com/news/content-5089.php
- 不動産経済研究所 首都圏新築マンション市場動向 – https://www.fudousankeizai.co.jp/