不動産投資を始めようと物件を探していると、新築マンションの建設ラッシュが続く地域に目を奪われることがあります。「新しい建物が次々と建つということは、人気のエリアなのでは?」と考えるのは自然なことです。しかし実は、新築供給が過剰な地域には投資家として注意すべきリスクが潜んでいます。この記事では、新築供給の多い地域で不動産投資をする際の判断基準と、長期的に安定した収益を得るためのエリア選びのポイントを詳しく解説します。初心者の方でも理解できるよう、基礎から丁寧に説明していきますので、ぜひ最後までお読みください。
新築供給が多い地域に潜むリスクとは

新築マンションやアパートが次々と建設される地域には、一見すると活気があり将来性を感じるかもしれません。しかし投資家の視点で見ると、供給過多による深刻なリスクが存在します。
最も大きな問題は、需要と供給のバランスが崩れることです。ある地域に住みたいと考える人の数(需要)に対して、提供される物件の数(供給)が大幅に上回ると、必然的に空室率が上昇します。国土交通省の住宅着工統計によると、2025年度の首都圏における新規マンション供給戸数は前年比15%増加しており、特定のエリアでは供給過剰の兆候が見られます。
供給過多の状況では、入居者を確保するための競争が激化します。周辺に新築物件が増えると、設備の新しさや初期費用の割引などで入居者を奪われるリスクが高まります。結果として、家賃を下げざるを得なくなったり、広告費を増やして募集コストが上昇したりと、収益性が大きく低下する可能性があります。
さらに長期的な視点で見ると、新築供給が多い地域では将来的な資産価値の下落リスクも考慮する必要があります。供給が需要を上回り続ければ、物件の市場価値は徐々に下がっていきます。つまり、購入時の価格で売却できない可能性が高くなるのです。
新築供給が多くなる地域の特徴を理解する

新築物件の供給が集中する地域には、いくつかの共通した特徴があります。これらを理解することで、投資判断の精度を高めることができます。
まず挙げられるのは、大規模な再開発が進行中のエリアです。駅前の再開発や工場跡地の住宅地化など、まとまった土地が開発される際には、複数のデベロッパーが同時期に物件を供給する傾向があります。東京都の都市整備局のデータでは、再開発地区における新築供給は周辺地域の3〜5倍に達するケースも報告されています。
次に、交通インフラの整備が予定されている地域も注目を集めます。新駅の開業や路線の延伸が発表されると、その周辺では開発が活発化します。しかし、実際に交通利便性が向上するまでには数年かかることも多く、その間に供給だけが先行してしまうリスクがあります。
また、地価が比較的安価で開発しやすい郊外エリアも、新築供給が集中しやすい特徴があります。デベロッパーにとっては開発コストを抑えられるメリットがある一方、実需が伴わない場合には供給過多に陥りやすい地域といえます。
人口動態も重要な要素です。総務省の人口推計によると、2026年時点で日本の総人口は減少傾向にあり、特に地方都市では顕著です。人口が減少している地域で新築供給が増えれば、需給バランスが崩れるのは必然といえるでしょう。
需給バランスを見極める具体的な方法
投資判断において最も重要なのは、その地域の需給バランスを正確に把握することです。ここでは、初心者でも実践できる具体的な調査方法を紹介します。
最初に確認すべきは、その地域の空室率です。不動産情報サイトや地域の不動産会社に問い合わせることで、おおよその空室率を知ることができます。一般的に、空室率が10%を超える地域は供給過多の傾向があると判断できます。総務省の住宅・土地統計調査では、全国平均の空室率は約13.6%ですが、地域によっては20%を超えるエリアも存在します。
次に、建築確認申請の件数を調べることも有効です。各自治体の建築指導課や都道府県のウェブサイトで、今後建設予定の物件数を確認できます。現在の物件数に対して、今後1〜2年で10%以上の新築供給が予定されている場合は、慎重な判断が必要です。
賃貸物件の募集状況も重要な指標となります。不動産ポータルサイトで該当エリアの賃貸物件を検索し、同じ物件が長期間掲載されていないか、募集条件が頻繁に変更されていないかをチェックしましょう。これらは入居者確保に苦戦している証拠です。
人口動態の分析も欠かせません。総務省の住民基本台帳に基づく人口動態調査では、市区町村別の人口増減率を確認できます。過去5年間で人口が減少傾向にある地域では、新築供給が増えても需要が追いつかない可能性が高いといえます。
さらに、実際に現地を訪れて街の様子を観察することも大切です。既存の賃貸物件に「入居者募集」の看板が多数掲げられていたり、新築物件の完成後も空室が目立つようであれば、供給過多のサインと考えられます。
新築供給が多くても投資価値がある地域の条件
新築供給が多いからといって、必ずしもその地域への投資を避けるべきとは限りません。重要なのは、供給増加を上回る需要の伸びが見込めるかどうかです。
最も重要な条件は、継続的な人口流入が期待できることです。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によると、東京都心部や政令指定都市の中心部など、一部の地域では2040年まで人口増加が予測されています。こうした地域では、新築供給が増えても需要が追いつく可能性が高いといえます。
雇用環境の充実も見逃せないポイントです。大企業の本社や研究施設、大学などが集積する地域では、安定した賃貸需要が見込めます。経済産業省の工場立地動向調査では、企業の新規立地や拡張計画を確認できるため、将来的な雇用増加を予測する材料となります。
交通利便性の向上が確実に見込める地域も、投資価値が高いといえます。ただし、計画段階ではなく、既に工事が始まっている、または開業時期が明確に決まっているプロジェクトであることが重要です。国土交通省の都市鉄道整備事業では、具体的な整備計画を公表しています。
また、単身世帯の増加が顕著な地域も注目に値します。総務省の国勢調査によると、日本全体で単身世帯の割合は増加傾向にあり、特に都市部では顕著です。単身者向けの賃貸需要は比較的安定しているため、適切な間取りの物件であれば、新築供給が多くても競争力を維持できる可能性があります。
さらに、再開発によって街全体の魅力が向上する場合も、投資価値を見出せます。商業施設や公共施設の整備、緑地の創出など、住環境の質的向上が伴う開発であれば、新築供給増加以上に需要を喚起できる可能性があります。
既存物件との競争力を維持するための戦略
新築供給が多い地域で投資する場合、または既に物件を所有している場合には、競争力を維持するための明確な戦略が必要です。
差別化の第一歩は、ターゲット層を明確にすることです。新築物件は一般的に幅広い層をターゲットにしますが、既存物件や中古物件では特定のニーズに特化することで競争優位性を確保できます。例えば、ペット可物件、楽器演奏可能な防音物件、リモートワークに適した広めの間取りなど、特定の需要に応える工夫が効果的です。
設備のアップグレードも重要な戦略です。無料インターネット回線の導入、宅配ボックスの設置、防犯カメラの増設など、比較的少額の投資で入居者の満足度を高められる設備があります。国土交通省の民間賃貸住宅に関する調査では、入居者が重視する設備として、インターネット環境や宅配ボックスが上位にランクインしています。
リノベーションによる価値向上も検討に値します。内装を現代的なデザインに刷新したり、水回りを最新設備に交換したりすることで、築年数のハンディキャップを克服できます。ただし、投資額と家賃上昇分のバランスを慎重に検討する必要があります。
管理体制の充実も差別化要因となります。迅速な修繕対応、定期的な清掃、丁寧なコミュニケーションなど、管理の質を高めることで入居者の満足度と定着率を向上させられます。入居者の入れ替わりが少なければ、空室期間を最小限に抑えられ、長期的な収益安定につながります。
柔軟な契約条件の提供も効果的です。初期費用の分割払い、短期契約の受け入れ、法人契約への対応など、入居者のニーズに合わせた柔軟性を持つことで、新築物件にはない魅力を提供できます。
長期的視点で見る不動産投資のエリア選び
不動産投資で成功するためには、目先の利回りだけでなく、10年、20年先を見据えたエリア選びが不可欠です。
人口動態の長期予測は、最も重要な判断材料の一つです。国立社会保障・人口問題研究所が公表している地域別将来推計人口では、2045年までの人口推移を市区町村単位で確認できます。人口が維持または増加する地域を選ぶことが、長期的な賃貸需要を確保する基本となります。
産業構造の変化にも注目すべきです。特定の産業に依存している地域では、その産業の衰退とともに人口流出が起こるリスクがあります。一方、多様な産業が集積し、新しい産業の誘致にも積極的な地域は、経済的な安定性が高いといえます。経済産業省の地域経済分析システム(RESAS)では、地域の産業構造や企業立地の動向を詳しく分析できます。
災害リスクの評価も長期投資では重要です。国土交通省のハザードマップポータルサイトでは、洪水、土砂災害、津波などのリスクを地域ごとに確認できます。災害リスクの高い地域では、将来的に資産価値が下落したり、保険料が上昇したりする可能性があります。
都市計画や再開発の方向性も確認しておきましょう。各自治体の都市計画マスタープランや立地適正化計画では、今後の街づくりの方向性が示されています。居住誘導区域に指定されている地域は、行政が人口集積を促進する方針を持っているため、長期的な需要が期待できます。
インフラの老朽化対策も見逃せません。上下水道や道路などの基幹インフラが適切に維持管理されている地域は、長期的な居住環境の質を保てます。自治体の財政状況が健全であることも、インフラ維持の観点から重要な要素です。
まとめ
新築供給が多い地域での不動産投資は、慎重な判断が求められます。供給過多による空室率の上昇、家賃下落、資産価値の低下といったリスクを十分に理解することが重要です。
しかし、新築供給が多いからといって、必ずしも投資を避けるべきではありません。継続的な人口流入、雇用環境の充実、交通利便性の向上など、需要の伸びが供給増加を上回る条件が揃っていれば、投資価値は十分にあります。重要なのは、空室率、建築確認申請件数、人口動態などのデータを丁寧に分析し、需給バランスを正確に把握することです。
既に物件を所有している場合や、新築供給が多い地域で投資する場合には、明確な差別化戦略が必要です。ターゲット層の明確化、設備のアップグレード、リノベーション、管理体制の充実など、新築物件にはない価値を提供することで、競争力を維持できます。
最も大切なのは、長期的な視点を持つことです。目先の利回りだけでなく、10年、20年先の人口動態、産業構造、都市計画などを総合的に考慮し、持続可能な賃貸需要が見込める地域を選びましょう。
不動産投資は長期戦です。焦らず、丁寧に情報を収集し、自分なりの判断基準を持って物件選びを進めてください。この記事で紹介した視点を参考に、あなたの不動産投資が成功することを願っています。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅着工統計 – https://www.mlit.go.jp/statistics/details/jutaku_list.html
- 東京都都市整備局 再開発の推進 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/
- 総務省 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/
- 総務省 住民基本台帳に基づく人口動態調査 – https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei02_02000000.html
- 国立社会保障・人口問題研究所 日本の地域別将来推計人口 – https://www.ipss.go.jp/
- 経済産業省 工場立地動向調査 – https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kougyo/index.html
- 国土交通省 都市鉄道整備事業 – https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk2_000001.html
- 経済産業省 地域経済分析システム(RESAS) – https://resas.go.jp/
- 国土交通省 ハザードマップポータルサイト – https://disaportal.gsi.go.jp/