マンションやアパートのオーナーにとって、共用部の電気代上昇は見過ごせない問題です。2022年以降、電気料金は大幅に値上がりし、エントランスや廊下、エレベーターなどの共用部にかかる電気代が経営を圧迫するケースが増えています。実は、この問題は適切な対策を講じることで、負担を軽減できる可能性があります。この記事では、共用部の電気代上昇がオーナーの収益に与える影響を分析し、具体的な対策方法から長期的な経営戦略まで、実践的な解決策をご紹介します。
共用部の電気代上昇の実態と収益への影響

近年の電気料金の値上がりは、不動産オーナーの経営に深刻な影響を及ぼしています。資源エネルギー庁のデータによると、2022年から2023年にかけて電気料金は平均で約30〜40%上昇しました。この上昇幅は地域や契約内容によって異なりますが、多くのオーナーが予想外の負担増に直面しています。
共用部の電気代は、物件の規模や設備によって大きく変動します。例えば、10戸程度の小規模アパートでは月額1万円から2万円程度だったものが、値上がり後は1.5万円から3万円に跳ね上がるケースも珍しくありません。一方、エレベーターや機械式駐車場を備えた中規模マンションでは、月額10万円を超える電気代が15万円以上になることもあります。
この負担増が収益に与える影響は決して小さくありません。年間で見ると、小規模物件でも6万円から12万円、中規模物件では60万円以上のコスト増となります。利回り10%の物件であれば、この増加分を補うために60万円から120万円分の家賃収入が必要になる計算です。つまり、電気代の上昇は実質的な利回りの低下を意味し、長期的な投資計画にも影響を及ぼす可能性があります。
さらに重要なのは、この傾向が一時的なものではないという点です。世界的なエネルギー情勢の変化や脱炭素化の流れを考えると、電気料金は今後も高止まりする可能性が高いと言えます。したがって、オーナーは短期的な対症療法だけでなく、中長期的な視点での対策を検討する必要があります。
電気代上昇の主な原因を理解する

電気代が上昇している背景には、複数の要因が複雑に絡み合っています。まず最も大きな要因として挙げられるのが、燃料費の高騰です。2022年以降、ロシア・ウクライナ情勢の影響で天然ガスや石炭などの化石燃料価格が急騰しました。日本の電力会社は発電の多くを火力発電に依存しているため、この影響を直接受けることになります。
次に、再生可能エネルギー発電促進賦課金の増加も見逃せません。これは再生可能エネルギーの普及を促進するために、すべての電気利用者が負担する費用です。2026年度現在も一定の水準で推移しており、電気料金の一部を構成しています。この賦課金は使用量に応じて課金されるため、共用部の電気使用量が多い物件ほど影響を受けやすくなります。
また、電力需給のバランスも料金に影響を与えています。夏場や冬場の電力需要が高まる時期には、電力会社は高コストの発電設備を稼働させる必要があり、これが料金上昇につながります。特に、原子力発電所の稼働停止が続いている現状では、この傾向が顕著になっています。
さらに、送配電網の維持管理コストの増加も要因の一つです。老朽化した電力インフラの更新や、災害対策のための設備強化には多額の費用がかかります。これらのコストは最終的に電気料金に転嫁されることになります。
これらの要因を理解することで、電気代上昇が一時的な現象ではなく、構造的な問題であることが分かります。したがって、オーナーは長期的な視点で対策を講じる必要があるのです。
共用部の電気代を削減する具体的な方法
電気代の削減には、すぐに実行できる対策から中長期的な投資が必要な対策まで、様々なアプローチがあります。まず最も効果的なのが、LED照明への切り替えです。従来の蛍光灯や白熱電球と比較して、LEDは消費電力が約50〜80%削減できます。初期投資は必要ですが、2〜3年で回収できるケースが多く、その後は継続的なコスト削減効果が得られます。
人感センサーの導入も有効な対策です。廊下や階段などの共用部に人感センサー付き照明を設置することで、人がいない時間帯の無駄な電力消費を防げます。特に、深夜から早朝にかけての時間帯では大きな削減効果が期待できます。センサーの精度も向上しており、誤作動のリスクも少なくなっています。
タイマー制御の活用も検討すべき選択肢です。エントランスや駐車場の照明を、時間帯に応じて自動的にオン・オフできるようにすることで、管理の手間を省きながら電力消費を最適化できます。例えば、深夜2時から5時までは照明を間引きするといった設定が可能です。
電力会社の契約プランの見直しも重要です。2016年の電力自由化以降、様々な電力会社が多様なプランを提供しています。物件の電力使用パターンに合わせて最適なプランを選ぶことで、同じ使用量でも料金を削減できる可能性があります。複数の電力会社から見積もりを取り、比較検討することをお勧めします。
さらに、共用部の設備そのものを見直すことも効果的です。古いエレベーターを省エネタイプに更新したり、機械式駐車場の稼働時間を最適化したりすることで、大幅な電力削減が可能になります。これらは初期投資が大きくなりますが、長期的には確実にコスト削減につながります。
電力会社の選び方と契約見直しのポイント
電力自由化により、オーナーは複数の電力会社から自由に選択できるようになりました。しかし、選択肢が多すぎて迷ってしまうという声も少なくありません。まず重要なのは、物件の電力使用パターンを正確に把握することです。過去1年分の電気使用量データを月別に分析し、ピーク時期や平均使用量を確認しましょう。
電力会社を選ぶ際は、単純に基本料金や従量料金だけでなく、総合的なコストを比較する必要があります。例えば、基本料金が安くても従量料金が高い場合、使用量が多い物件では結果的に割高になることがあります。逆に、使用量が少ない小規模物件では、基本料金の安さが重要になります。
また、契約期間や解約条件も確認が必要です。一部の電力会社では、契約期間中の解約に違約金が発生する場合があります。将来的に物件を売却する可能性がある場合は、柔軟に解約できるプランを選ぶことが賢明です。一方、長期契約を結ぶことで割引が受けられるプランもあるため、物件の保有計画に応じて選択しましょう。
電力会社の信頼性も重要な判断基準です。新規参入の電力会社の中には、経営基盤が不安定なところもあります。万が一、契約している電力会社が事業を停止した場合でも電力供給は継続されますが、手続きの手間が発生します。大手電力会社や実績のある新電力会社を選ぶことで、このようなリスクを回避できます。
さらに、再生可能エネルギーを重視するプランも選択肢の一つです。環境に配慮した電力を使用することで、物件の価値向上につながる可能性があります。特に、環境意識の高い入居者をターゲットにする場合、このような取り組みは差別化要因になります。
長期的な視点での省エネ投資戦略
電気代の上昇に対応するには、短期的な節約だけでなく、長期的な投資戦略が不可欠です。まず検討すべきは、太陽光発電システムの導入です。屋上や駐車場の屋根に太陽光パネルを設置することで、共用部の電力を自家発電で賄える可能性があります。初期投資は200万円から500万円程度と高額ですが、10年から15年で回収できるケースが多く、その後は実質的に電気代がゼロになります。
蓄電池の併用も効果的な選択肢です。太陽光発電で得た電力を蓄電池に貯めておくことで、夜間や雨天時にも自家発電の電力を使用できます。また、電力会社の時間帯別料金プランと組み合わせることで、安い深夜電力を蓄電して昼間に使用するといった運用も可能です。蓄電池の価格は下がり続けており、2026年現在では以前よりも導入しやすくなっています。
建物全体の断熱性能を向上させることも、間接的に電気代削減につながります。共用部の空調設備がある場合、断熱性能が高ければ冷暖房の効率が上がり、電力消費を抑えられます。窓ガラスを複層ガラスに交換したり、外壁に断熱材を追加したりする工事は、大規模修繕のタイミングで実施すると効率的です。
スマートメーターやエネルギー管理システム(EMS)の導入も検討価値があります。これらのシステムを使えば、リアルタイムで電力使用状況を把握でき、無駄な電力消費を発見しやすくなります。また、データを分析することで、さらなる省エネ対策のヒントが得られます。クラウド型のシステムであれば、遠隔地からでも管理できるため、複数の物件を所有するオーナーにとって特に便利です。
これらの投資は、単に電気代を削減するだけでなく、物件の資産価値向上にもつながります。省エネ性能の高い物件は、環境意識の高い入居者からの需要が高く、空室リスクの低減にも寄与します。また、将来的に物件を売却する際も、省エネ設備が整っていることはプラス評価につながります。
入居者とのコミュニケーションと管理費の見直し
共用部の電気代上昇に対応する際、入居者との適切なコミュニケーションも重要です。管理費や共益費の値上げを検討する場合、その理由を丁寧に説明することで、入居者の理解を得やすくなります。電気料金の推移を示すグラフや、具体的な使用量のデータを提示することで、値上げの必要性を客観的に伝えられます。
管理費の見直しを行う際は、段階的なアプローチが効果的です。一度に大幅な値上げを行うと入居者の反発を招く可能性があるため、まずは省エネ対策を実施し、それでも不足する分を少しずつ調整していく方法が望ましいでしょう。例えば、LED化などの省エネ投資を先行して行い、その効果を入居者に報告した上で、必要最小限の値上げを提案するといった流れです。
入居者に省エネへの協力を求めることも一つの方法です。共用部の照明をこまめに消すよう呼びかけたり、エレベーターの使用を控えて階段を使うことを推奨したりすることで、わずかながらも電力消費を抑えられます。ただし、入居者の利便性を大きく損なうような要求は避けるべきです。あくまでも協力をお願いする姿勢が大切です。
管理会社との連携も欠かせません。管理会社は複数の物件を管理しているため、省エネ対策のノウハウや電力会社との交渉経験を持っている場合があります。定期的に情報交換を行い、他の物件での成功事例を自分の物件にも応用できないか検討しましょう。また、管理会社によっては、一括で電力会社と契約することで割引を受けられるサービスを提供している場合もあります。
透明性の高い情報開示も信頼関係の構築に役立ちます。年に一度、共用部の電気使用量と料金の推移を入居者に報告することで、オーナーが適切な管理を行っていることを示せます。このような取り組みは、入居者の満足度向上にもつながり、長期的な入居につながる可能性があります。
まとめ
共用部の電気代上昇は、不動産オーナーにとって避けられない課題となっています。しかし、適切な対策を講じることで、この負担を軽減し、むしろ物件の価値を高める機会に変えることができます。LED照明への切り替えや人感センサーの導入といった即効性のある対策から、太陽光発電システムの導入のような長期的な投資まで、物件の規模や予算に応じて最適な方法を選択することが重要です。
電力会社の契約見直しや管理費の適正化も、収益性を維持するための重要な施策です。入居者との良好なコミュニケーションを保ちながら、透明性の高い管理を行うことで、必要な値上げにも理解を得やすくなります。また、省エネ投資は単なるコスト削減だけでなく、環境に配慮した物件として差別化を図る機会にもなります。
電気代の上昇は一時的な現象ではなく、今後も続く可能性が高い構造的な問題です。だからこそ、短期的な対症療法だけでなく、中長期的な視点での戦略的な対応が求められます。この記事で紹介した対策を参考に、自分の物件に最適な方法を見つけ、持続可能な不動産経営を実現してください。早めの対策が、将来的な収益の安定につながります。
参考文献・出典
- 資源エネルギー庁「電力・ガス価格激変緩和対策事業」 – https://www.enecho.meti.go.jp/
- 経済産業省「電力自由化について」 – https://www.meti.go.jp/
- 国土交通省「建築物省エネ法」 – https://www.mlit.go.jp/
- 環境省「再生可能エネルギー固定価格買取制度」 – https://www.env.go.jp/
- 総務省統計局「消費者物価指数」 – https://www.stat.go.jp/
- 一般社団法人日本エレベーター協会「省エネルギー対策」 – https://www.n-elekyo.or.jp/
- 公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会 – https://www.zenchin.com/