マンションを売却しようと考えたとき、「税金はどのくらいかかるのだろう」と不安に感じる方は多いのではないでしょうか。特に購入から日が浅い段階での売却は、税負担が大きくなる可能性があるため、事前の知識が非常に重要です。この記事では、マンション売却にかかる税金の基本的な仕組みから、5年以内に売る場合の税率、さらに使える可能性がある特例まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。売却を検討している方はもちろん、将来の参考としても役立てていただける内容です。
売却益にかかる税金の基本的な仕組み

まず押さえておきたいのは、マンション売却で得た利益(譲渡所得)は、給与所得などとは別に計算される「分離課税」という仕組みが適用される点です。国税庁によると、土地や建物の譲渡所得は「他の所得と区分して計算」されます(国税庁 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_3.htm)。つまり、給与が高くても低くても、不動産売却の税金は独立して計算されるということです。
譲渡所得は「売却価格 − 取得費 − 譲渡費用」という式で計算します。取得費とは購入時の代金や諸費用のことですが、建物部分については所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額が取得費となります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3252.htm)。また、取得費の証拠書類が手元にない場合や、実際の取得費が非常に低い場合は、売却額の5%相当額を取得費として使うことができます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm)。
譲渡費用として認められるのは、仲介手数料や売主が負担した印紙税などです。一方で、修繕費や固定資産税といった維持管理のための費用は譲渡費用には含まれません(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm)。この区別は計算ミスにつながりやすいため、しっかり確認しておきましょう。
5年以内かどうかの判定ルール

重要なのは、「5年以内かどうか」の判定が売却した日ではなく、「売った年の1月1日現在」の所有期間で行われるという点です(国税庁 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_3.htm)。この判定方法を知らないと、思わぬ税負担を招くことがあります。
具体的には、売った年の1月1日時点で所有期間が5年以下であれば「短期譲渡所得」、5年を超えていれば「長期譲渡所得」に分類されます。国税庁の具体例によると、2026年(令和8年)中に売却する場合、取得日が令和2年12月31日以前であれば長期、令和3年1月1日以後であれば短期となります(国税庁 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_3.htm)。
たとえば、2022年(令和4年)3月に購入したマンションを2026年(令和8年)10月に売却した場合、実際の所有期間は4年半ほどですが、2026年1月1日時点でも所有期間は約3年10か月であるため、短期譲渡所得として扱われます。このように、年をまたいで計算するルールを正確に理解しておくことが大切です。
なお、相続や贈与によって取得したマンションの場合は、前の所有者の取得時期を引き継ぐため、5年超か5年以下かの判定でも前所有者の取得時期が重要になります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm)。相続したマンションを売却する際は、この点を特に注意してください。
短期と長期で税率はどれだけ違うのか
ここが最も注目すべきポイントです。短期譲渡所得と長期譲渡所得では、適用される税率が大きく異なります。短期譲渡所得(5年以下)の場合、所得税30%・住民税9%が課税されます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm)。一方、長期譲渡所得(5年超)では所得税15%・住民税5%となります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm)。なお、いずれの場合も別途、復興特別所得税の上乗せがあります。
この差を具体的にイメージすると、仮に譲渡所得が1,000万円だった場合、短期では合計39%(復興特別所得税除く)、長期では合計20%の税率が適用されます。つまり、短期では約390万円、長期では約200万円の税負担となり、その差は約190万円にもなります。売却のタイミングを少し調整するだけで、手元に残る金額が大きく変わることがわかります。
ただし、税率の差だけを理由に売却を先延ばしにすることが必ずしも正解とは限りません。市場環境の変化や物件の状態、ライフプランなど、総合的な観点から売却時期を判断することが大切です。税金の知識はあくまでも判断材料の一つとして活用しましょう。
5年以内でも使える可能性がある「3,000万円特別控除」
実は、マイホームとして使っていたマンションを売る場合、所有期間が5年以内であっても「3,000万円特別控除」が使える可能性があります。国税庁は「所有期間の長短に関係なく」最高3,000万円を譲渡所得から控除できるとしています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)。これは非常に大きな節税効果をもたらす特例です。
この特例が適用されるのは、現在住んでいるマイホームを売る場合だけではありません。以前住んでいたマンションでも、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すれば、対象になり得ます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)。転勤や引越しをした後でも、一定期間内であれば特例を使えるチャンスがあるということです。
ただし、この特例にはいくつかの注意点があります。親子・夫婦など「特別の関係がある人」への売却では使えません。また、別荘のように主として趣味・娯楽・保養のために所有する家屋も対象外です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)。さらに重要なのは、この特例は自動的に適用されるものではなく、一定の書類を添えて確定申告をする必要があるという点です。申告を忘れると特例が受けられませんので、必ず手続きを行いましょう。
確定申告の手続きと相談窓口
マンションを売却して譲渡所得が生じた場合、翌年の確定申告が必要です。申告期限は原則として売却年の翌年2月16日から3月15日となっています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3102.htm)。3,000万円特別控除を使って税額がゼロになる場合でも、特例の適用を受けるためには申告が必要です。
申告の際には、通常の確定申告書に加えて、分離課税用の「申告書第三表」と「譲渡所得の内訳書(土地・建物用)」などを作成する必要があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3102.htm)。書類の準備は早めに始めることをおすすめします。売買契約書や購入時の領収書など、取得費を証明できる書類は大切に保管しておきましょう。
税金に関する一般的な疑問は、国税局の「電話相談センター」(国税相談専用ダイヤル:0570-00-5901)に問い合わせることができます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/denwa-sodan/)。ただし、書類の確認や個別の事実関係が必要な相談は、所轄の税務署での面接相談が対象となります。自分の状況が複雑だと感じる場合は、税理士への相談も検討してみてください。
まとめ
マンションを5年以内に売却する場合、税率は所得税30%・住民税9%と、長期保有の場合に比べて大きな税負担となります。しかし、マイホームとして使っていた物件であれば、所有期間に関わらず3,000万円特別控除が使える可能性があります。重要なのは、「5年以内かどうか」の判定が売却日ではなく「売った年の1月1日現在」で行われる点と、特例を受けるには必ず確定申告が必要な点です。売却を検討している方は、まず国税庁のウェブサイトで最新情報を確認し、必要に応じて税務署や税理士に相談することをおすすめします。正しい知識を持って行動することが、賢いマンション売却への第一歩です。
参考文献・出典
- 国税庁「土地や建物を売ったとき」 – https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_3.htm
- 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- 国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm
- 国税庁「No.3252 取得費となるもの」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3252.htm
- 国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm
- 国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm
- 国税庁「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm
- 国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm
- 国税庁「No.3102 譲渡所得の申告期限」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3102.htm
- 国税庁「国税に関するご相談について」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/denwa-sodan/
- 国税庁「申告書添付書類一覧(譲渡所得・山林所得関係)」 – https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joto/annai/1647_01_01.htm