不動産の税金

相続したマンションを売却する手順と注意点を解説

親や配偶者が亡くなり、マンションを相続することになったとき、「何から手をつければいいのか分からない」と戸惑う方は少なくありません。相続手続きと不動産売却は、それぞれ専門知識が必要な分野であり、組み合わさると複雑さが増します。しかも、期限が定められている手続きが複数あるため、知らないうちに期限を過ぎてしまうリスクもあります。この記事では、相続したマンションを売却するまでの手順を、初心者の方にも分かりやすく順を追って解説します。税金や登記の注意点も含めて整理しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

まず確認すべき相続の基本と相続人の確定

まず確認すべき相続の基本と相続人の確定のイメージ

相続手続きを進めるうえで、最初に押さえておきたいのは「誰が相続人になるのか」という点です。国税庁の情報(令和7年4月1日現在法令等)によると、配偶者は常に相続人となり、それ以外の方は第1順位が子、第2順位が直系尊属(父母や祖父母など)、第3順位が兄弟姉妹という順序で相続人になります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4132.htm)。

相続人が複数いる場合、マンションを含む相続財産は遺産分割が完了するまで共有状態になります(民法第898条 / e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)。つまり、誰か一人が勝手に売却を進めることはできません。全員で話し合い、遺産分割協議をまとめることが、売却への第一歩となります。

また、遺言書が残されている場合は、その内容によって手続きが変わります。自筆証書遺言を発見した場合は、原則として家庭裁判所への検認請求が必要です。ただし、公正証書遺言と法務局に保管されている自筆証書遺言については、検認は不要とされています(裁判所 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html)。遺言書の種類を確認してから、次のステップへ進みましょう。

さらに、被相続人に多額の借金や連帯保証債務がある場合は注意が必要です。売却準備を始める前に、相続放棄や限定承認を検討する必要があります。この申述は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから原則3か月以内に行わなければならないと定められています(裁判所 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html)。期限を過ぎると自動的に相続を承認したとみなされるため、早めの判断が重要です。

相続登記の義務化と手続きの流れ

相続登記の義務化と手続きの流れのイメージ

相続したマンションを売却するには、原則として相続登記が必要です(法務省 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html)。相続登記とは、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する手続きのことで、これが完了していないと買主への所有権移転ができません。

重要なのは、2024年4月1日から相続登記が義務化されたという点です。相続開始と不動産取得を知った日から3年以内に申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます(法務省 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html)。また、2024年4月1日より前に開始した相続で未登記のものも義務化の対象となっており、原則として2027年3月31日までに相続登記が必要です(法務省 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html)。

遺産分割協議が3年以内にまとまらない場合でも、「相続人申告登記」という制度を活用することで義務を履行したとみなされます。これは、戸籍等を添付して自分が相続人であることを法務局へ申し出る手続きです(法務省 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00602.html)。ただし、相続人申告登記はあくまで義務履行のための制度であり、不動産の権利関係を公示するものではないため、効果は限定的です(法務省 https://www.moj.go.jp/KANBOU/KOHOSHI/no84/1.html)。売却を進めるためには、最終的に正式な相続登記が必要になります。

相続登記にかかる登録免許税は、原則として固定資産課税台帳価格の0.4%です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)。また、被相続人名義の不動産を把握しやすくするための「所有不動産記録証明制度」や、戸籍謄本等の提出を一度にまとめられる「法定相続情報証明制度」も活用すると、手続きの負担を軽減できます(法務省 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00740.html、法務局 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000015.html)。

マンション売却の具体的な手順

相続登記が完了したら、いよいよ売却の手続きに入ります。国土交通省の資料によると、不動産売却の基本的な流れは、物件調査・価格査定・媒介契約の締結・買主探索・交渉・売買契約の締結・決済と引渡しという順序が目安とされています(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/01/010418/houkokusho.pdf)。

まず、複数の不動産会社に査定を依頼し、相場を把握することから始めましょう。マンションの場合は、管理規約や修繕積立金の状況なども売却価格に影響します。管理会社や管理組合に早めに連絡を取り、必要な資料を準備しておくことが大切です。国土交通省のマンション標準管理委託契約書では、売却の媒介業務のために管理規約等の開示を求めてきた宅建業者に対して、管理会社が情報を提供することが定められています(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000271.html)。

次に、不動産会社と媒介契約を結びます。媒介契約には、専属専任媒介・専任媒介・一般媒介の3種類があり、それぞれ特徴が異なります(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001753240.pdf)。宅建業者は契約締結時に3種類の違いを十分に説明する義務があるため、疑問点は遠慮なく確認しましょう。どの契約形態が自分に合っているかは、売却を急いでいるか、複数社に依頼したいかなど、状況によって異なります。

買主が見つかり交渉がまとまったら、売買契約を締結し、最終的に決済と引渡しを行います。相続人が複数いる場合は、売却代金の分配方法についても事前に全員で合意しておくことが重要です。遺産分割協議書に売却後の分配方法まで明記しておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。

売却時に関わる税金と節税のポイント

相続したマンションを売却すると、譲渡所得税が発生する可能性があります。ここで実は重要なのが、取得費の計算方法です。国税庁の情報(令和7年4月1日現在法令等)によると、相続や贈与によって取得した不動産の取得費は、被相続人が購入したときの代金や手数料をもとに計算します。また、相続人が支払った登記費用や不動産取得税も取得費に含めることができます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm)。

取得費が分からない場合は、売却額の5%を概算取得費として使うことができます。ただし、この場合は相続人が支払った登記費用などを取得費に追加することはできないため、できる限り被相続人の購入時の資料を探すことをおすすめします(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm)。

また、譲渡所得の長期・短期の判定では、被相続人の取得時期をそのまま引き継ぐことができます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm)。つまり、被相続人が長年所有していたマンションであれば、相続後すぐに売却しても長期譲渡所得として扱われる可能性があります。一般的に、長期譲渡所得は短期譲渡所得より税率が低くなるため、この点は有利に働くことが多いです。

さらに、相続税を支払っている場合は「取得費加算の特例」を検討する価値があります。相続開始翌日から相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日までの間に売却した場合、支払った相続税額の一部を取得費に加算できる制度です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm)。なお、相続税の申告・納税期限は被相続人の死亡日の翌日から10か月以内であり(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4102.htm)、相続登記の完了を待っていても申告期限は延びないため注意が必要です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205_qa.htm)。

なお、空き家の3,000万円特別控除(空き家特例)については、区分所有建物登記がされている建物は要件から外れているため、通常の分譲マンションには適用できない可能性が高いです(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)。適用可否については、税理士などの専門家に個別に確認することをおすすめします。

まとめ

相続したマンションの売却は、相続人の確定・遺産分割協議・相続登記・売却活動・税務申告と、複数のステップを順番に進める必要があります。特に、相続放棄の検討は原則3か月以内、相続税の申告は10か月以内、相続登記は3年以内という期限があるため、早めに動き出すことが大切です。

手続きが複雑に感じられる場合は、司法書士・税理士・不動産会社など、それぞれの専門家に相談しながら進めることを強くおすすめします。一つひとつの手順を丁寧に確認していけば、初めての方でも着実に売却を完了させることができます。焦らず、しかし期限を意識しながら、計画的に進めていきましょう。

参考文献・出典

  • 法務省:相続登記の申請義務化について — https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
  • 法務省:相続登記の申請義務化に関するQ&A — https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html
  • 法務省:相続人申告登記について — https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00602.html
  • 法務省:所有不動産記録証明制度について — https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00740.html
  • 法務局:主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例 — https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000015.html
  • 法務省だより あかれんが vol.84 — https://www.moj.go.jp/KANBOU/KOHOSHI/no84/1.html
  • 裁判所:遺言書の検認 — https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html
  • 裁判所:相続の放棄の申述 — https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
  • 民法 | e-Gov 法令検索 — https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
  • 国税庁:No.4132 相続人の範囲と法定相続分 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4132.htm
  • 国税庁:No.4102 相続税がかかる場合 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4102.htm
  • 国税庁:No.4205 相続税の申告と納税 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205_qa.htm
  • 国税庁:No.7191 登録免許税の税額表 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
  • 国税庁:No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm
  • 国税庁:No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
  • 国税庁:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
  • 国土交通省:不動産流通業務のあり方に関する研究会取りまとめ — https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/01/010418/houkokusho.pdf
  • 国土交通省:マンション標準管理委託契約書 — https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000271.html
  • 国土交通省:宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 — https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001753240.pdf

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