親が亡くなったり施設に入ったりして、実家が空き家になってしまった——そんな状況に直面している方は、今の日本に非常に多くいます。「いつか片付けよう」「とりあえず様子を見よう」と思いながら、気づけば何年も放置してしまうケースは珍しくありません。しかし、空き家を放置し続けることには、資産価値の低下や税負担の増加など、見過ごせないリスクが潜んでいます。この記事では、実家の空き家を放置することで生じる具体的なリスクと、売却を含めた解決策をわかりやすく解説します。早めに動くことで、将来の後悔を防ぐことができます。ぜひ最後までお読みください。
実家の空き家を放置すると何が起きるのか

まず押さえておきたいのは、空き家の放置は「何もしていない」ではなく、「リスクを積み上げている」状態だということです。国土交通省の空き家対策特設サイト(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiya-taisaku/index.html)でも明確に示されているように、空き家を放置すると資産価値が低下して売買等が困難になるほか、地域に迷惑をかけるおそれがあります。
建物は人が住まなくなると、想像以上に早く傷みます。換気がされないことで湿気がこもり、カビや腐食が進行します。また、庭木が伸び放題になったり、ゴミが不法投棄されたりすることで、近隣住民とのトラブルに発展するケースもあります。さらに、老朽化が進んだ建物は台風や地震の際に倒壊・飛散するリスクがあり、第三者に損害を与えた場合には所有者が責任を問われる可能性もあります。
こうした状態を防ぐためには、定期的な管理が欠かせません。国土交通省が案内する「空き家管理チェックリスト」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001720159.pdf)によると、換気・通水・敷地内の清掃・庭木の剪定・郵便物の確認と整理といった作業を定期的に行うことが重要とされています。遠方に住んでいて管理が難しい場合は、管理業者への委託も選択肢のひとつです。
固定資産税が大幅に増える「特定空家」のリスク

空き家の放置が深刻化すると、税負担が一気に重くなる可能性があります。これは多くの方が見落としがちな、非常に重要なポイントです。
通常、住宅が建っている土地には「住宅用地特例」が適用され、固定資産税が軽減されています。しかし、空家等対策の推進に関する特別措置法(e-Gov法令検索:https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127)に基づき、自治体から「管理不全空家」や「特定空家」として指導を受け、それでも改善しない場合に勧告を受けると、この住宅用地特例による軽減措置が受けられなくなります(国土交通省:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/articles/2024020105.html)。
住宅用地特例が外れると、固定資産税の負担が大幅に増加します。毎年かかる税負担が増え続ける一方で、建物の価値は下がり続けるという二重の損失が生じるわけです。
さらに、特定空家に認定されると、自治体から修繕や解体の命令が出される場合もあります。命令に従わない場合は行政代執行によって強制的に解体され、その費用が所有者に請求されることもあります。放置すればするほど、選択肢が狭まっていくのが空き家問題の怖いところです。
売却前に知っておきたい「3,000万円特別控除」の特例
実家の空き家を売却する際には、税制上の優遇措置を活用できる可能性があります。国税庁が定める「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)がそれです。
この特例では、相続した空き家について一定の要件を満たした場合、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却することで、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。これは非常に大きな節税効果をもたらす制度です。ただし、国税庁の情報(令和7年4月1日現在法令等)によると、令和6年1月1日以後の譲渡で、被相続人居住用家屋および敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は、控除額が2,000万円までとなります。
重要なのは、この特例には「相続開始から一定期間内に売ること」という期限があるという点です。「いつか売ればいい」と先延ばしにしていると、この特例が使えなくなってしまいます。相続が発生したタイミングで、早めに税理士や不動産会社に相談することをおすすめします。なお、特例の適用要件は細かく定められているため、詳細は必ず国税庁の公式サイトや税理士にご確認ください。
空き家の売却方法と選び方のポイント
実際に空き家を売却しようと思ったとき、どのような方法があるのかを知っておくことが大切です。専門家の解説(相続会議:https://souzoku.asahi.com/article/15095406)によると、空き家の売却方法には主に次のような選択肢があります。建物をそのまま売却する方法、リフォームして売却する方法、解体して更地にして売却する方法、買取業者へ売却する方法、不動産マッチングサイトを使う方法、個人間で売買する方法などです。
それぞれの方法にはメリットとデメリットがあります。建物をそのまま売却する場合は費用をかけずに売れる反面、相続後に一度も住んでいない物件では建物の状態を把握しにくいため、後から不備が発覚した際に売主が責任を負う「契約不適合責任」に注意が必要です。一方、解体して更地にして売る場合は買い手が見つかりやすくなる可能性がある反面、解体費用を売主が負担しなければならず、さらに住宅用地特例が外れることで固定資産税が高くなるデメリットもあります。
売却を進める前に、まず「自分がこの空き家をどうしたいのか」を明確にすることが出発点です。SUUMO住まいの売却ガイド(https://suumo.jp/baikyaku/guide/entry/20260628/001)でも指摘されているように、持ち続けて活用したいのか、売って現金にしたいのか、解体したいのかを決めることから始める必要があります。また、境界確定ができていないと仲介業者を介した売買が難しくなる場合があります。測量には費用と一定の期間が必要なため、売却を考え始めた段階で早めに隣地との境界を確認しておくことが重要です。
売却を成功させるための準備と相談先
空き家の売却をスムーズに進めるためには、事前の準備が成否を大きく左右します。焦って動くよりも、段階を踏んで着実に準備を整えることが、結果的に良い条件での売却につながります。
まず取り組むべきは、建物と土地の状況を正確に把握することです。登記情報の確認、境界の確定、建物の劣化状況の把握などを順番に進めましょう。特に境界確定は時間と費用がかかるため、早めに着手することが大切です。また、相続登記が完了しているかどうかも確認が必要です。名義変更が済んでいないと売却手続きを進められないため、法務局や司法書士に相談することをおすすめします。
次に、複数の不動産会社に査定を依頼することが重要です。1社だけの査定では相場観がつかみにくいため、少なくとも2〜3社に依頼して比較することをおすすめします。査定額だけでなく、担当者の対応や売却戦略の提案内容も比較の基準にしましょう。空き家の売却に慣れた会社を選ぶことで、スムーズに手続きが進みやすくなります。
相談先としては、不動産会社のほかに、税理士(税制特例の確認)、司法書士(登記手続き)、弁護士(相続トラブルがある場合)なども活用できます。また、自治体によっては空き家に関する相談窓口を設けているケースもあるため、お住まいの市区町村の窓口に問い合わせてみることも一つの手です。一人で抱え込まず、専門家の力を借りながら進めることが、空き家問題を解決する近道です。
まとめ
実家の空き家を放置することは、資産価値の低下・税負担の増加・近隣トラブルなど、さまざまなリスクを招きます。特に「管理不全空家」や「特定空家」に認定されると、固定資産税の軽減措置が受けられなくなるため、早めの対応が不可欠です。一方で、相続した空き家には譲渡所得の特別控除という税制上の優遇措置もあり、期限内に売却することで大きな節税効果が得られる可能性があります。「いつかやろう」と先延ばしにするほど選択肢は狭まります。まずは不動産会社や税理士に相談し、自分に合った解決策を見つける第一歩を踏み出してみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省|空き家対策 特設サイト — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiya-taisaku/index.html
- 国土交通省|空き家の管理のやり方(空き家管理チェックリスト) — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001720159.pdf
- 国土交通省|空き家対策 法改正ページ(管理不全空家・特定空家と住宅用地特例) — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/articles/2024020105.html
- 国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- e-Gov法令検索|空家等対策の推進に関する特別措置法 — https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127
- 相続会議(朝日新聞)|空き家の売却方法 手続きの流れ・費用・注意点・相談先をプロが解説 — https://souzoku.asahi.com/article/15095406
- SUUMO住まいの売却ガイド|2026最新 空き家査定の方法と流れ — https://suumo.jp/baikyaku/guide/entry/20260628/001