多くの投資家が「築浅」と聞くと、設備が新しく空室も少なそうだと感じます。しかし一方で、価格が高く利回りが伸びにくいのではと迷う人も多いはずです。本記事では、築浅物件の長所と短所を具体的なデータと実例を交えながら整理します。読み終えるころには、自分の投資目的に築浅が合うかどうか判断できるようになりますので、ぜひ最後までお付き合いください。
築浅物件とは何か

まず押さえておきたいのは、築浅という言葉の定義です。一般的には築後10年以内の物件を指すことが多く、税務上の耐用年数や金融機関の評価基準とも関連します。国土交通省の住宅市場動向調査によると、築10年未満物件の平均空室率は全国で4%台にとどまり、築20年超の約9%に比べて優位性があると示されています。
次に、築浅物件は構造や設備の規格が最新の基準を満たしている点が特徴です。耐震性能は2000年の建築基準法改正以降であれば震度6強にも耐えられる水準にあり、投資家にとってリスクヘッジになります。また、新しい設備は賃料を維持しやすく、退去時の原状回復費も抑えられる可能性が高まります。
一方で、立地が同条件の築古と比べると価格が2〜3割高いケースが目立ちます。ローン返済比率が上がればキャッシュフローが圧迫されるため、収益計算を精密に行う必要があります。言い換えると、築浅は安全性と利回りのバランスをどう取るかが重要です。
築浅のメリットを数字で確認

重要なのは、築浅の利点を感覚ではなく数値で把握することです。日本賃貸住宅管理協会の2025年調査によれば、築5年未満の平均入居期間は53.4か月で、築20年以上の約39か月を大きく上回ります。つまり、入居者の長期化により募集コストを低減できるのが大きな魅力です。
さらに、修繕積立金と大規模修繕の時期が重ならない点も収支にプラスです。築浅マンションでは10〜12年目に初回の外壁塗装が予定されるケースが多く、購入後しばらくは大きな支出を避けられます。これにより、自己資金を別の投資に回す選択肢が広がります。
2025年度の住宅ローン控除は、新築と同様に築浅物件でも適用されるため、条件を満たせば最大控除期間13年を享受できます。控除額が家賃収入の税負担を軽減し、手残りを押し上げる効果があります。また、エネルギー効率の高い設備を備えた「ZEH(ゼッチ)水準」物件なら、金融機関が金利優遇を提示する例も増えています。
これらの要素を合算すると、表面利回りが築古より低くても実質利回りで逆転するケースがあります。空室損失と修繕費を加味したネット利回りを比較し、キャッシュフローが黒字で推移するかを確認することがポイントです。
築浅のデメリットに潜む落とし穴
一方で、築浅には注意すべき短所も存在します。最初に挙げられるのは取得価格の高さです。同一エリアで築25年のRCマンションが坪単価100万円の場合、築5年ならおおむね140万円前後になることが多く、利回りが2〜3%下がる傾向があります。
また、固定資産税評価額がまだ高水準にある点も見逃せません。取得後数年間は償却メリットが小さく、減価償却費による節税を狙う戦略は取りにくいです。法人で節税を狙う投資家には、築古の方が有利に働くことが多いという事実を把握しておきましょう。
市場調整が短期間で起こるリスクもデメリットの一つです。2024〜2025年は金利上昇局面にあり、長期金利が1.2%を超えると試算利回りの低い築浅は価格調整を受けやすいと指摘されています。売却出口を想定する際に、金利と価格変動の相関を想定しておく必要があります。
さらに、最新設備が逆にメンテナンスコストを押し上げる場合もあります。IoT対応のスマートキーや宅配ボックスは人気ですが、故障時に専門業者を呼ぶと修理費が高額になりやすいです。導入メリットと長期コストを両面から評価する視点が欠かせません。
築浅を選ぶときのチェックポイント
ポイントは、数字と現場感の両輪で物件を評価することです。まず家賃とローン返済の差額であるキャッシュフローが月1万円以上確保できるかを試算します。次に、入居付けの強さを確かめるため、管理会社に直近の募集期間と想定賃料をヒアリングしましょう。
周辺の供給過多にも注意が必要です。同エリアで同スペックの新築が大量に建設されると、築浅でも相対的に古く見える懸念があります。都市計画課の開発許可リストを閲覧し、3年先までの供給予定を確認しておくと安心です。
資金計画では、自己資金を物件価格の25%程度入れると返済比率が抑えられ、金融機関の金利優遇を受けやすくなります。余剰資金が少ない場合は、家賃保証を付けるより手元資金の確保を優先し、空室リスクに備える方法が堅実です。
最後に、出口戦略として5年後と10年後の売却価格を複数シナリオで試算しましょう。地価公示価格の過去10年推移を参考に、年1%下落パターンと横ばいパターンを設定することで、リスクの幅が見えやすくなります。これらを踏まえると、築浅であっても油断せず、総合的な視点で意思決定する姿勢が求められます。
築浅と築古の使い分け
実は、築浅と築古は二者択一ではなく、ポートフォリオで併用する考え方が有効です。築浅で安定したキャッシュフローを確保し、築古で高い減価償却メリットを得るという組み合わせが、税負担とリスクの分散に役立ちます。
総務省の家計調査によると、40代共働き世帯の可処分所得は平均で月37万円前後です。この層がターゲットになる都市圏ファミリータイプは、築浅でも賃料下落が緩やかです。一方、ワンルーム需要が強い学生街などでは築古でも客付けが容易なため、利回りを追求する投資に向いています。
物件を増やす順序も重要です。初期は築浅で資金繰りを安定させ、3棟目以降に築古を加えると、金融機関の評価と自己資金のバランスが取りやすくなります。こうした段階的な戦略が、長期で見ると資産規模を拡大する近道となります。
結論として、築浅 メリット・デメリットを正しく理解し、自分のリスク許容度に応じて戦略的に組み込むことが、2025年以降の不動産投資で成功する鍵と言えるでしょう。
まとめ
築浅物件は、空室率の低さや修繕費の先送りといった魅力があり、安定収益を求める投資家に適しています。ただし取得価格の高さや税務メリットの小ささが収益を圧迫する可能性もあります。ネット利回り、金利動向、将来の供給計画を総合評価し、シミュレーションで耐性を確認することが大切です。本記事を参考に、自身の投資方針と照らし合わせて行動に移してみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅市場動向調査2025 – https://www.mlit.go.jp
- 日本賃貸住宅管理協会 賃貸住宅市場景況感調査2025 – https://www.jpm.jp
- 総務省 家計調査 2025年版 – https://www.stat.go.jp
- 不動産流通推進センター 不動産業統計集2025 – https://www.retpc.jp
- 住宅金融支援機構 フラット35利用動向2025 – https://www.jhf.go.jp