不動産の税金

戸建て賃貸を法人化するメリットと注意点を徹底解説

戸建て賃貸を始めたものの「税金が思った以上に重い」「融資枠がすぐに頭打ちになる」と感じていませんか。実は、一定の規模を超えた時点で法人化を検討すると、手取りキャッシュが増え、次の物件取得もスムーズになる可能性があります。本記事では、個人と法人の違いを数字で比較しながら、2025年12月時点で有効な制度や銀行の融資姿勢を踏まえて解説します。最後まで読むことで、戸建て賃貸の法人化が自分にとって本当に得策かどうか、判断材料を得られるはずです。

法人化の基本を押さえる

法人化の基本を押さえるのイメージ

まず押さえておきたいのは、個人と法人では課税の仕組みも収支の見え方も大きく異なる点です。国税庁の統計によると、所得税の最高税率は住民税を含め55%ですが、資本金1億円以下の中小法人の実効税率は約23.2%にとどまります。つまり、キャッシュを内部に残して再投資するなら法人のほうが有利になりやすいわけです。

さらに、法人は決算期を自由に選べるため、繁忙期に設備投資や修繕費を集中させて利益を圧縮する戦略も取れます。一方、個人の場合は暦年で課税が確定するので、支出のタイミングを調整しにくいデメリットがあります。この違いを理解するだけでも、法人化のイメージがつかみやすくなります。

ただし、設立コストや毎年の法人住民税均等割(東京都なら7万円)が発生する点には注意が必要です。節税額より維持費が上回ると逆効果になるため、年間所得が概ね500万円を超える段階で検討するのが目安といえるでしょう。

税制メリットと落とし穴

税制メリットと落とし穴のイメージ

ポイントは、法人化によって経費計上の幅が広がることです。例えば、自宅の一室をオフィスとして使い、家賃や光熱費を按分して法人経費にできるようになります。個人でも按分は可能ですが、法人のほうが税務調査で説明しやすい傾向にあります。

また、2025年度も継続する中小企業経営強化税制を活用すれば、宅配ロッカーや高効率給湯器などの設備投資に対して即時償却か10%税額控除を選択できます。戸建て賃貸の競争力を高めながら税負担を抑えられるのは魅力的です。ただし、対象設備の細かな要件を満たさないと認められないので、購入前に税理士へ確認することが欠かせません。

一方で、個人から法人へ物件を移す際に不動産取得税や登録免許税が発生します。時価での譲渡とみなされると譲渡所得税までかかるため、士業と連携してスキームを設計することが重要です。短期的な節税額だけに目を奪われると、移行コストで赤字になるケースも少なくありません。

融資戦略で広がる選択肢

実は、法人化すると金融機関の融資メニューが増え、借入期間も長く取れることがあります。地方銀行や信用金庫では、決算書2期分を提出できれば30年融資を提案される例もあり、戸建て賃貸のキャッシュフローを安定させやすくなります。個人の場合、賃貸用住宅は最長22年程度に制限されるケースが多く、毎月返済が重くなりがちです。

さらに、法人向け融資では金利が0.2%ほど低く提示されることも珍しくありません。金融庁の「金融モニタリングレポート2025」によると、中小法人向け平均貸出金利は1.05%で、個人の投資用ローン平均1.27%より抑えられています。わずかな差に見えても、3000万円を25年借りれば総返済額で約100万円の差になるため、長期的には大きなメリットです。

一方で、法人代表者として連帯保証を求められることは避けられません。加えて、決算書の内容が悪化すると翌期の融資条件が厳しくなるため、収益管理を徹底する責任が重くなります。法人化によるレバレッジ拡大は魅力的ですが、資金繰り計画を緻密に立てる必要があります。

リスク管理と資産保護の視点

重要なのは、法人化がリスクヘッジにもつながる点です。法人を通じて物件を保有すると、賃貸経営に伴う損害賠償や訴訟リスクが法人に留まり、個人資産への直接的な波及を抑えられます。とくに築古戸建てを再生して貸し出す場合、設備トラブルや近隣クレームが想定以上に発生するため、リスク分散という観点からも法人保有は合理的です。

また、相続対策として持株会社を活用する方法もあります。株式を後継者に贈与すれば、物件そのものを移転せずに賃貸収益を承継できるため、登録免許税や不動産取得税の負担を回避できます。総務省の統計では、固定資産評価額が高い都市部ほどこの効果が大きいと示されています。

ただし、法人に利益を溜め込みすぎると、いわゆる「留保金課税」の対象になる恐れがあります。2025年度税制では中小法人の特例が残っているものの、将来改正リスクを踏まえ、適度に役員報酬や配当で利益を流すバランスが求められます。

2025年度に活用できる支援策

まず知っておきたいのは、国土交通省が2025年度も継続する「賃貸住宅省エネ改修推進事業」です。一定の断熱改修や高効率設備を導入すると、1戸あたり上限90万円の補助が受けられます。法人が申請主体となれますので、複数戸をまとめて改修すればスケールメリットが出やすくなります。

一方、中小企業庁の「IT導入補助金2025」では、家賃管理クラウドやオンライン内見システムも対象に含まれています。補助率は2分の1、上限は350万円で、DXを進めたいオーナーには追い風です。これらの制度は年度ごとに予算枠が変わるため、申請時期を逃さないようにしましょう。

なお、住宅取得支援策である「住宅ローン減税」はあくまで個人向けで、法人の物件には適用されません。制度の名称が似ている補助金もありますが、対象外のものに誤って申請しないよう注意が必要です。情報を整理して活用することで、法人化のメリットを最大化できるでしょう。

まとめ

戸建て賃貸を法人化すると、税率の低減や融資条件の改善、リスク分散など多角的なメリットが得られます。ただし、設立コストや移行時の税負担、決算管理の手間も増えるため、年間所得と今後の投資計画を照らし合わせて慎重に判断することが大切です。この記事で紹介した税制や補助金は2025年度時点で有効なものに限定していますが、制度は毎年見直されます。まずは信頼できる税理士や金融機関に相談し、自分の投資スタイルに合った最適な形で法人化を進めてみてください。行動を先延ばしにせず、今こそキャッシュフローを強化するチャンスをつかみましょう。

参考文献・出典

  • 国税庁 – https://www.nta.go.jp
  • 金融庁「金融モニタリングレポート2025」 – https://www.fsa.go.jp
  • 国土交通省「賃貸住宅省エネ改修推進事業」 – https://www.mlit.go.jp
  • 中小企業庁「中小企業経営強化税制」 – https://www.chusho.meti.go.jp
  • 総務省統計局 – https://www.stat.go.jp

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