アパート経営を始めようと考えたとき、「どこから融資を受ければいいのか」「金利はどのくらいかかるのか」と悩む方は多いのではないでしょうか。民間銀行のアパートローンは種類が多く、金利も変動するため、初心者には比較が難しいのが現実です。そこで注目したいのが、住宅金融支援機構が提供する賃貸住宅融資です。固定金利で長期返済が可能なこの融資は、安定した資金計画を立てたい投資家にとって有力な選択肢となります。この記事では、住宅金融支援機構のアパートローン金利の仕組みや特徴、民間ローンとの違いまでわかりやすく解説します。
住宅金融支援機構の賃貸住宅融資とは

住宅金融支援機構は、国が設立した政策金融機関であり、民間金融機関では対応しにくい長期・固定金利の融資を提供することを目的としています。個人向けの住宅ローン「フラット35」が有名ですが、賃貸住宅の建設・取得を対象とした融資商品も用意されています。
この賃貸住宅融資の最大の特徴は、全期間固定金利である点です。民間のアパートローンの多くは変動金利を採用しており、将来の金利上昇リスクを借り手が負う構造になっています。一方、住宅金融支援機構の融資では、借入時に決まった金利が返済終了まで変わらないため、長期にわたる収支計画が立てやすくなります。
融資の対象は、賃貸住宅の建設資金が中心です。返済期間は最長40年(サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資の場合は最長35年)と非常に長く設定されており、月々の返済負担を抑えながら経営を続けられる点も魅力のひとつです(住宅金融支援機構 https://www.jhf.go.jp/files/topics/5378_ext_99_0.pdf)。
また、融資手数料・繰上返済手数料・返済方法変更手数料が不要という点も見逃せません。ただし、保証機関の保証を利用する場合は別途保証料が必要になります。担保として敷地および建物への第1順位の抵当権設定と、機構が定める要件を満たす火災保険への加入が求められます(住宅金融支援機構 https://www.jhf.go.jp/files/topics/5378_ext_99_0.pdf)。
2026年6月時点の参考金利と金利タイプの仕組み
住宅金融支援機構の賃貸住宅融資には、「35年固定金利」と「15年固定金利」の2タイプがあります。さらに、繰上返済制限制度の利用の有無によって金利が異なるため、合計4通りの金利設定が存在します(住宅金融支援機構 https://www.jhf.go.jp/loan/kinri/chintai.html)。
2026年6月の参考金利を見ると、主力商品群では35年固定が繰上返済制限制度あり3.94%・なし4.10%、15年固定が繰上返済制限制度あり3.19%・なし3.64%という水準が掲示されています(住宅金融支援機構 https://www.jhf.go.jp/files/topics/5378_ext_99_0.pdf)。繰上返済制限制度を利用すると金利が低くなる仕組みになっており、一定期間は繰上返済を制限する代わりに有利な金利が適用されます。
一方、サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資(施設共用型)については、同じ2026年6月時点で35年固定4.43%・4.59%、15年固定3.68%・4.13%(繰上返済制限制度あり・なし)と、通常の賃貸住宅融資より高めの金利が設定されています(住宅金融支援機構 https://www.jhf.go.jp/files/topics/5378_ext_99_0.pdf)。これは施設の特性上、リスク評価が異なるためと考えられます。
ここで重要な注意点があります。これらはあくまで「参考金利」であり、実際の借入金利は申込受付月の約2か月後の月末に、住宅金融支援機構債券の利回りその他のコストを勘案して決定されます。金融情勢の変化によって参考金利と異なる場合があるため、資金計画を立てる際は最新情報を必ず確認してください(住宅金融支援機構 https://www.jhf.go.jp/files/topics/5378_ext_99_0.pdf)。
金利引下げ制度を活用してコストを抑える方法
住宅金融支援機構の賃貸住宅融資には、一定の基準を満たすことで金利が引き下げられる優遇制度が設けられています。これをうまく活用することで、実質的な借入コストを大幅に削減できる可能性があります。
具体的には、長期優良住宅の基準に適合する賃貸住宅の場合、当初15年間は上記金利から年0.3%の引下げが受けられます。また、機構が定めるZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)基準に適合する賃貸住宅では当初15年間に年0.2%の引下げ、子育て配慮賃貸住宅の基準に適合する場合も当初15年間に年0.2%の引下げが適用されます(住宅金融支援機構 https://www.jhf.go.jp/files/topics/5378_ext_99_0.pdf)。
さらに、これらの引下げは組み合わせることも可能です。たとえば長期優良住宅かつZEH基準適合であれば最大0.5%、長期優良住宅かつ子育て配慮基準適合であれば最大0.4%の引下げが受けられます。当初15年間という限定的な期間ではありますが、返済初期の負担を軽減できる効果は非常に大きいといえます。
省エネ性能や子育て対応といった社会的ニーズに応える物件を建設することが、金利面でも有利に働く仕組みになっています。これは単なるコスト削減にとどまらず、入居者にとって魅力的な物件づくりにもつながるため、長期的な空室対策としても有効な視点です。
民間アパートローンとの金利比較
住宅金融支援機構の賃貸住宅融資の特徴をより深く理解するために、民間のアパートローンと比較してみましょう。民間金融機関が提供するアパートローンの金利は、金融機関や商品によって異なります。
たとえば、もみじ銀行のアパートローンでは、2026年6月1日時点の基準金利として変動3.375%、固定3年4.050%、固定5年4.300%、固定10年4.850%が公表されています(もみじ銀行 https://www.momijibank.co.jp/outline/rates/loan/)。また、L&Fアセットファイナンスの変動型アパートローンは、2025年4月1日改定で団信なし3.30%〜4.80%、団信あり3.70%〜5.20%という水準です(L&Fアセットファイナンス https://www.agent-hp.com/wp-content/uploads/2025/04/2025%E5%B9%B44%E6%9C%881%E6%97%A5%E9%87%91%E5%88%A3%E6%94%B9%E5%AE%9A.pdf)。
これらの数値と比較すると、住宅金融支援機構の参考金利は民間の水準と大きく変わらないように見えるかもしれません。しかし、重要な違いは「全期間固定」という点にあります。民間の変動金利は現時点では低く見えても、将来の金利上昇リスクを常に抱えています。一方、機構の固定金利は返済終了まで金利が変わらないため、長期的な収支の安定性という観点では大きなメリットがあります。
また、民間ローンの多くは審査後に個別の優遇金利が適用されるため、公表されている基準金利がそのまま適用されるわけではありません。実際の借入条件は金融機関との交渉や審査結果によって異なります。住宅金融支援機構の融資も含め、複数の選択肢を比較検討することが賢明です。
融資を受ける際に押さえておきたい注意点
住宅金融支援機構の賃貸住宅融資を検討する際には、いくつかの重要な点を事前に確認しておく必要があります。まず、融資の対象は主に賃貸住宅の建設資金であり、既存物件の購入資金とは異なる場合があります。自分の計画に合った商品かどうかを、機構の公式サイトや窓口で確認することが大切です。
金利については、先述のとおり参考金利はあくまでも目安です。実際の適用金利は申込受付月の約2か月後に決定されるため、申込時点の参考金利が必ずしも適用されるとは限りません。資金計画を立てる際は、金利が多少変動しても対応できる余裕を持たせることが重要です。
担保設定については、敷地および建物への第1順位の抵当権設定が必要です。これは他の金融機関との兼ね合いで制約になる場合もあるため、既存の借入がある場合は事前に整理しておく必要があります。また、返済終了まで機構が定める要件を満たす火災保険への加入が義務付けられている点も覚えておきましょう(住宅金融支援機構 https://www.jhf.go.jp/files/topics/5378_ext_99_0.pdf)。
さらに、日本政策金融公庫も不動産投資に活用できる公的融資機関のひとつです。国民生活事業では無保証人での融資が多く、契約時の利率が完済まで適用される固定金利という特徴があります(日本政策金融公庫 https://www.jfc.go.jp/n/finance/first/kokumin.html)。住宅金融支援機構と合わせて比較検討することで、自分の状況に最適な融資先を見つけやすくなります。
まとめ
住宅金融支援機構の賃貸住宅融資は、全期間固定金利・最長40年という長期安定型の融資として、アパート経営を始める方にとって有力な選択肢のひとつです。2026年6月の参考金利では35年固定3.94%〜4.10%、15年固定3.19%〜3.64%という水準が示されており、長期優良住宅やZEH基準への適合によって当初15年間の金利引下げも受けられます。
民間のアパートローンと比較する際は、金利の水準だけでなく、固定か変動か、手数料の有無、担保条件なども含めて総合的に判断することが大切です。また、参考金利はあくまでも目安であり、実際の適用金利は申込後に決定される点を忘れないようにしましょう。
不動産投資は長期にわたる取り組みです。焦らず複数の金融機関を比較し、自分の資金計画に合った融資を選ぶことが成功への第一歩となります。まずは住宅金融支援機構の公式サイトや最寄りの窓口に相談してみることをおすすめします。
参考文献・出典
- 住宅金融支援機構「賃貸住宅を建設する場合 令和8年6月の参考金利のお知らせ」 – https://www.jhf.go.jp/files/topics/5378_ext_99_0.pdf
- 住宅金融支援機構「賃貸住宅融資金利」 – https://www.jhf.go.jp/loan/kinri/chintai.html
- 住宅金融支援機構「まちづくり融資(初動期・分譲事業、賃貸事業、高齢者向け返済特例)融資金利」 – https://www.jhf.go.jp/kinri/machidukuri.html
- 住宅金融支援機構「賃貸住宅経営に固定金利の安心『機構 すまい・る賃貸ローン』」 – https://www.jhf.go.jp/lp/rent-build/index.html
- 日本政策金融公庫「国民生活事業をはじめてご利用の方へ」 – https://www.jfc.go.jp/n/finance/first/kokumin.html
- 日本政策金融公庫「融資業務」 – https://www.jfc.go.jp/n/company/sme/loan_finance.html
- パナソニック ホームズ「住宅金融支援機構の金融商品で賃貸住宅経営は可能?制度と条件を解説」 – https://homes.panasonic.com/column/00246/
- もみじ銀行「ローン金利」 – https://www.momijibank.co.jp/outline/rates/loan/
- もみじ銀行「商品概要説明書(アパートローン(中総信保証))」 – https://www.momijibank.co.jp/personal/borrow/house/lease/pdf/manual.pdf
- L&Fアセットファイナンス「金利改定のお知らせ(2025年4月1日)」 – https://www.agent-hp.com/wp-content/uploads/2025/04/2025%E5%B9%B44%E6%9C%881%E6%97%A5%E9%87%91%E5%88%A3%E6%94%B9%E5%AE%9A.pdf