賃貸トラブル・退去

賃貸の網戸が破れたら誰が負担?劣化と修理費を解説

賃貸物件で暮らしていると、網戸が破れたり、長年の使用で網が傷んできたりすることがあります。「これは自分で直すべきなの?」「退去時に費用を請求されるのでは?」と不安に感じる方は少なくありません。実は、網戸の修繕費用を誰が負担するかは、破れた原因や状況によって大きく変わります。この記事では、賃貸の網戸の劣化や破れの費用負担について、国土交通省のガイドラインや修理費用の相場をもとにわかりやすく解説します。入居中や退去時のトラブルを防ぐためにも、ぜひ参考にしてください。

賃貸の原状回復とはどういう意味か

網戸の費用負担を理解するうえで、まず押さえておきたいのが「原状回復」という考え方です。この言葉の意味を正しく知らないと、本来払う必要のない費用を請求されても気づけないことがあります。退去時のトラブルを避けるためにも、基本的な仕組みから確認していきましょう。

原状回復とは、入居前の状態に完全に戻すことではありません。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(https://www1.mlit.go.jp/common/000991390.pdf)によると、借主が通常の住まい方をしていても発生する「経年変化」や「通常損耗」は、賃貸借契約期間中の賃料でカバーされてきたものと整理されています。つまり、普通に生活していて自然に生じた傷みや汚れの修繕費は、借主が負担する必要はないという考え方です。

一方で、借主の故意や過失によって生じた損傷は事情が異なります。国民生活センターの案内でも、原状回復とは借主の故意・過失によって生じたキズや汚れ、通常の使用方法とはいえない使い方によって生じた損傷を元に戻すことだと説明されています(https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20230201_2.html)。壁に落書きをしたり、フローリングに深い傷をつけたりした場合がこれにあたり、網戸についても同じ考え方が適用されます。

重要なのは、年月の経過による損耗や、普通の使い方で生じる汚れやキズの修繕費は、原則として借主が負担しなくてよいという点です。国民生活センターもこの考え方をあらためて案内しています(https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260217_1.html)。長年の使用で自然に傷んだ部分の費用は、原則として貸主が負担するのが基本だと理解しておきましょう。

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網戸の破れ・劣化は誰が負担するのか

網戸の費用負担は、「どのような状態で破れたのか」によって変わります。ここが最も混乱しやすいポイントですので、状況ごとに整理してみましょう。ポイントは、自然な劣化なのか、借主による破損なのかという区別です。

まず、特に破損がない網戸を張り替える場合についてです。国土交通省のガイドラインでは、破損等はしていないものの次の入居者確保のために行う網戸の張り替えは、入居者の入れ替わりによる維持管理上の問題であり、賃貸人の負担とするのが妥当だと整理されています。国交省の相談対応事例集(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001493363.pdf)でも、特に破損等のない網戸の張り替えは、次の入居者を確保するための化粧直しやグレードアップに相当し、原状回復費用の支払いは不要だと明記されています。網戸の寿命は一般的に5年から10年程度とされており、こうした自然な劣化による張り替えは貸主負担が原則です。

一方、借主が不注意で網戸を破ってしまった場合は事情が変わります。この場合は借主が修繕費用を負担することになりますが、ここで知っておきたいのが、その負担範囲の考え方です。国交省のガイドラインQ&A(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000024.html)では、不注意でキズをつけたものは修理が必要としつつも、各部位の経過年数を考慮したうえで「最低限可能な施工単位」で修理するのが妥当だとされています。つまり、破いた網戸を含む一面分の張り替えまではやむを得ない場合があるものの、必要以上に広い範囲の一式請求がそのまま通るとは限らないのです。

整理すると、自然な劣化は貸主負担、借主が破った場合は借主負担というのが基本です。ただし、自然な劣化と借主による破損の境界線は、実際には判断が難しいケースもあります。そのため、入居時に網戸の状態を写真で記録しておくことが、後々のトラブル防止につながります。

網戸の修理・張替えにかかる費用の相場

実際に借主が費用を負担することになった場合、いくらぐらいかかるのかは気になるところです。網戸の修理費用は、張り替えるのか本体ごと交換するのか、また自分でやるのか業者に頼むのかによって幅があります。ここでは各社の公表価格をもとに、おおよその目安を見ていきましょう。

まず、比較的安く済むのがホームセンターでの網の張り替えです。ホームセンターDCMのリフォーム案内では、網の張り替え工賃をサイズ別に、小2,000円、中3,000円、大4,000円、特大5,000円と掲載しています。ただし、これに加えて出張料が3,000円、網戸の脱着が必要な場合は1か所あたり1,000円が加算されます。コーナンの案内でも、張り替えサービスの作業費は1物件あたり3,850円とされており、業者に頼む場合でも数千円程度から利用できることがわかります。

費用を抑えたいなら、自分で張り替えるという選択肢もあります。コーナンの案内によると、DIYで張り替える場合の材料費は、網戸ネットが約380円から2,000円、必要な道具が数百円から1,000円程度が目安です。手先の器用さに自信があれば、業者に頼むよりも安く済ませられます。ただし、賃貸の場合は自分で修理する前に、まず管理会社への確認が必要な点に注意してください。

一方、網ではなく本体そのものを交換する場合や、メーカーに修理を依頼する場合は費用が上がります。YKK APのメーカー修理目安では、網が破れたときの網張り替えが腰窓で19,800円から31,900円、掃き出し窓・テラス窓で36,300円から50,600円、本体交換になると20,900円から78,100円とされています。LIXILの修理費用の目安でも、引違い網戸の網張り替えは窓で20,000円から26,000円、掃き出し窓等で22,000円から40,000円、本体交換は22,000円から72,000円と、おおむね近い水準です。なお、これらは戸建て木造住宅向けの参考値であり、商品や現場の状況によって変動し、足場設置などが必要な場合は別途費用がかかります。

契約書の特約には要注意

原状回復の原則を理解したら、もう一つ必ず確認しておきたいのが賃貸借契約書の内容です。ガイドラインはあくまで指針であり、実際の負担は契約書の内容に左右されることがあります。ここを見落とすと、原則では貸主負担のはずの費用を請求されるケースもあるため注意しましょう。

国交省のガイドラインには、通常の使用による減耗や汚損の原状回復費用まで借主に負担させたい場合、貸主は契約条項で特約を明確に定め、借主の同意を得たうえで契約すべきだという裁判例の考え方が収録されています。逆にいえば、契約書に「網戸の張り替えは借主負担とする」といった特約が明記され、借主が合意していれば、自然劣化であっても借主が負担する可能性があるということです。

ただし、こうした特約が常に有効になるわけではありません。国交省の相談対応事例集には、通常損耗まで借主負担とする特約が有効になるには、通常損耗の範囲や借主の負担内容が契約条項自体に具体的に明記されているか、借主が明確に認識して合意している必要があるという最高裁の要旨が掲載されています。あいまいな記載だけで、借主に予期しない特別の負担を課すことは認められにくいのです。

だからこそ、入居前に契約書をよく読み込み、網戸や設備に関する特約がないかを確認することが大切です。不明な点があれば、契約前に不動産会社や管理会社に確認しておくと安心です。あわせて入居時に室内全体の状態を写真や動画で記録し、管理会社と共有しておけば、退去時のトラブルを未然に防ぎやすくなります。

入居中に網戸が破れたときの対処法

実際に入居中に網戸が破れてしまったら、どう動けばよいのでしょうか。焦って自分で直す前に、まず取るべき手順を確認しておきましょう。正しい順序で対応することが、無用な負担やトラブルを避けることにつながります。

最初にすべきことは、管理会社または大家さんへの連絡です。国民生活センターも、入居時に設置されていた設備に不具合や故障が起きた場合は、すぐに貸主側に連絡して相談し、無断で修繕しないよう注意を促しています。賃貸住宅の使用に必要な修繕は、原則として貸主側に義務があるためです。実際、賃貸住宅標準契約書でも、借主が要修繕箇所を見つけたときは、まず貸主に通知して修繕の必要性を協議するという手続きが基本とされています。

連絡の際には、いつ、どのように破れたのかを正直に伝え、あわせて破れた状態を写真で記録しておきましょう。記録があると、退去時に「入居中に破れた」という事実や、自分の不注意ではなく経年劣化だと思われる状況を説明しやすくなります。写真は重要な証拠になります。

なお、貸主に通知しても相当の期間内に修繕が行われない場合や、急迫の事情がある場合には、民法上、借主が自ら修繕できるというルールも定められています。とはいえ基本は貸主との協議が先です。修理の方法や費用負担は管理会社と話し合いながら決め、借主の過失による破損の場合でも、請求された金額が適正かどうかを確認しましょう。前述の相場を参考に、不安なときは複数の業者から見積もりを取るのも一つの方法です。

トラブルになったときの相談先

万が一、退去時に網戸の修繕費用をめぐってトラブルになった場合は、一人で抱え込まず専門機関に相談することが大切です。適切な相談先を知っておくだけで、問題解決はぐっとスムーズになります。

身近な窓口としては、各都道府県や市区町村の消費生活センターがあります。専門の相談員が賃貸トラブルの相談に対応してくれるため、具体的なアドバイスをもらいやすいでしょう。どこに相談すればよいか迷う場合は、まず最寄りの消費生活相談窓口につないでもらえる仕組みを利用するのが便利です。さらに法的な問題に発展しそうなときは、弁護士や司法書士への相談も視野に入れてください。

重要なのは、不当な請求だと感じたときに泣き寝入りしないことです。国交省のガイドラインや契約書の内容を確認したうえで、根拠を持って交渉することが、適正な解決への近道となります。網戸の張り替えが自然劣化によるものであれば、原則は貸主負担だという事実を知っているだけでも、交渉の際の大きな支えになります。

まとめ

賃貸の網戸の費用負担は、「自然な劣化か、借主による破損か」で大きく異なります。国土交通省のガイドラインでは、破損のない網戸の張り替えは貸主負担、借主が破った場合は借主負担が原則とされ、しかも借主負担でも最低限の施工単位が基本です。ただし契約書に有効な特約がある場合はその内容が優先されるため、入居前の確認が欠かせません。

費用の目安としては、網の張り替えなら数千円程度から、本体交換やメーカー修理では数万円かかることもあります。トラブルを防ぐには、入居時の状態を写真で記録し、破れた際はすぐに管理会社へ連絡して協議するという習慣が有効です。もし退去時に不当な請求を受けたと感じたら、消費生活センターなどに相談しましょう。正しい知識を持つことで、賃貸生活をより安心して送ることができます。

参考文献・出典

  • 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」 — https://www1.mlit.go.jp/common/000991390.pdf
  • 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)のQ&A」 — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000024.html
  • 国土交通省「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版)」 — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001493363.pdf
  • 国土交通省「賃貸住宅標準契約書(改訂版)」 — https://www.mlit.go.jp/common/001319685.pdf
  • 国民生活センター「賃貸住宅の原状回復トラブルにご注意!」 — https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260217_1.html
  • 国民生活センター「賃貸住宅の『原状回復』トラブルにご注意」 — https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20230201_2.html
  • ホームセンターコーナン「網戸特集」 — https://www.kohnan-eshop.com/shop/pages/amido.aspx
  • DCMリフォーム「網戸の張替え」 — https://reform.dcm-hc.co.jp/blogs/取付-交換/網戸の張替え
  • YKK AP「網戸 修理料金の目安」 — https://www.ykkap.co.jp/consumer/support/tec/price/window/screen/
  • LIXIL「お客さまサポート 修理費用の目安」 — https://www.lixil.co.jp/support/repair-cost/

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