投資用物件を複数比較しようとしたとき、「どの物件が本当にお得なのか、数字で判断できない」と感じたことはないでしょうか。不動産投資の初心者にとって、利回りや収支を自分で計算するのはハードルが高く感じられるものです。しかし実は、無料で使えるエクセルテンプレートを活用すれば、専門知識がなくても複数の物件を客観的に比較できます。この記事では、無料テンプレートの選び方から具体的な使い方、比較時に押さえるべき指標まで、初心者にもわかりやすく解説します。
投資用物件の比較にエクセルが選ばれる理由

不動産投資の物件比較において、エクセルが多くの投資家に選ばれているのには明確な理由があります。専用ソフトと違い、エクセルは自分の条件に合わせて自由にカスタマイズできる点が最大の強みです。
物件を比較する際には、表面利回りだけでなく、空室率・修繕費・ローン返済額・税金など、さまざまな変数を同時に考慮する必要があります。エクセルであれば、これらの数値を一つのシートにまとめて、条件を変えながら何度でも試算できます。また、グラフ機能を使えば収支の推移を視覚的に確認することも可能です。
さらに、エクセルには不動産投資の計算に役立つ標準関数が備わっています。たとえば、Microsoftのサポートページによれば、PMT関数は「一定利率の支払いが定期的に行われる場合のローンの定期支払額を算出する」財務関数です(Microsoft サポート)。また、XIRR関数を使えば「定期的でないキャッシュフローに対する内部利益率」も計算できます(Microsoft サポート)。これらの関数を組み込んだ無料テンプレートを使えば、難しい計算式を自分で組む必要がありません。
無料テンプレートはコストゼロで始められるため、まず試してみるという姿勢で取り組みやすいのも大きなメリットです。有料ツールへの移行を検討する前に、無料テンプレートで不動産投資の数字感覚を身につけることが、長期的な成功への近道といえます。
無料で使えるエクセルテンプレート4選

実際にどのようなテンプレートが無料で入手できるのか、リサーチ結果をもとに代表的なものを紹介します。それぞれ特徴が異なるため、自分の目的に合ったものを選ぶことが大切です。
まず、不動産会社と投資家をつなぐプラットフォーム「プロパリー」が配布するテンプレートは、マクロなし・入力欄が少なく、初心者でも簡単にキャッシュフローの計算ができる設計になっています(プロパリー)。ファイルサイズも30.1KBと軽量で、パソコンへの負担が少ない点も安心です。同サイトでは、空室率0%・10%・20%・30%ごとの課税所得額を一目で確認できる「キャッシュフロー計算ソフト」(63KB・マクロなし)も紹介されており、ローン返済額の元金分と利息分を分けて把握できる機能も備わっています。
次に、マネーフォワードが提供する「不動産賃貸 収支シミュレーション」は、購入後35年までのキャッシュフロー・売上・経費・所得・CCR・利回りをエクセルで確認できる本格的なツールです(マネーフォワード)。数値を入力するだけでシミュレーション表とグラフが自動生成される点が魅力ですが、ダウンロードには無料の会員登録が必要です。
BFコンサルティングが配布するテンプレートは、表面利回り・実質利回り(FCR)・ROI・IRR・損益分岐点・税引き前キャッシュフローまで自動算出できる高機能なシートです(BFコンサルティング)。自己資金比率・借入金利・返済期間・固定資産税・管理費・修繕費・減価償却費・空室率・家賃下落・金利上昇・DSCRまで反映できるため、より詳細なシミュレーションを行いたい方に向いています。
「投資僧」が提供するエクセルシートは、簡単な項目を入力するだけで「物件概要」「収支」「キャッシュフロー表」が自動作成できるうえ、銀行融資相談時の提出資料(3点セット)も自動で作れる点が特徴的です(投資僧)。販売資料に記載されていない敷地面積・土地持分・評価額・修繕費なども仮計算で概算判断できるため、物件検討の初期段階から活用できます。
テンプレートで比較すべき重要指標
エクセルテンプレートを使いこなすためには、どの指標を比較すべきかを理解しておくことが重要です。数字を入力するだけでなく、各指標の意味を把握することで、物件の良し悪しを正確に判断できるようになります。
まず押さえておきたいのは「表面利回り」と「実質利回り(FCR)」の違いです。表面利回りは年間家賃収入を物件価格で割った単純な数値ですが、実質利回りは管理費・修繕費・固定資産税などの諸経費を差し引いた実態に近い収益率です。エスリードJOURNALによれば、物件比較テンプレートで最低限チェックすべき変数として「空室率・家賃下落率・金利・修繕費・売却価格」が挙げられており、これらを変えて試算することで収支悪化への対応策や出口戦略を検討しやすくなるとされています(エスリードJOURNAL)。
次に重要なのが「キャッシュフロー」です。キャッシュフローとは、家賃収入からローン返済・諸経費・税金を差し引いた手元に残る実際のお金のことです。毎月のキャッシュフローがプラスであっても、空室が続いたり金利が上昇したりすると一気にマイナスに転じる可能性があります。そのため、空室率を0%・10%・20%・30%と変えながら複数のシナリオで確認することが大切です。
また、「DSCR(Debt Service Coverage Ratio:借入返済カバー率)」も融資審査で重視される指標です。これは純営業収益(NOI)をローン返済額で割った値で、1.0を下回ると収入でローンを返済できない状態を意味します。さらに「IRR(内部収益率)」は、物件の購入から売却までの全期間を通じた投資効率を示す指標で、複数物件の長期的な収益性を比較する際に役立ちます。
テンプレート選びで失敗しないためのチェックポイント
無料テンプレートは種類が多いため、選び方を間違えると正確なシミュレーションができなくなることがあります。BFコンサルティングは、「一部のテンプレートではマクロが組み込まれていて編集が困難だったり、古い金利や空室率などの想定数値が更新されていないケースもある」と指摘しており、「関数ベースでカスタマイズ可能なテンプレートを選び、指標や試算条件を定期的に見直すべき」としています(BFコンサルティング)。
テンプレートを選ぶ際の第一のポイントは、マクロの有無です。マクロが組み込まれたファイルはセキュリティリスクがあるうえ、数式の中身が見えにくく、自分でカスタマイズするのが難しくなります。初心者には、マクロなしで関数ベースのシートを選ぶことをおすすめします。
第二のポイントは、前提値の更新しやすさです。金利・空室率・家賃下落率などの前提値が固定されていると、現在の市況に合わせた試算ができません。これらの数値を自由に変更できるセルが設けられているかどうかを確認しましょう。また、テンプレートの配布日や更新日も確認しておくと、前提値の鮮度を判断する参考になります。
第三のポイントは、税務上の扱いを正しく反映しているかどうかです。たとえば、国税庁によれば「土地は減価償却資産ではなく、建物等の取得価額は取得時に全額必要経費にはできず、使用可能期間に配分して経費化する」とされています(国税庁)。また、「業務用借入金の利息は必要経費になる一方、所得税や住民税は必要経費にならない」という点も重要です(国税庁)。さらに、賃貸用不動産の購入時仲介手数料は「土地・建物それぞれの取得価額に算入され、支払った年に全額を必要経費にすることはできない」とされています(国税庁)。これらの税務ルールを正しく反映しているテンプレートを選ぶことで、より正確な収支計算が可能になります。
融資条件の入力に役立つ金融機関情報
エクセルテンプレートでシミュレーションを行う際、融資条件の入力値に迷うことがあります。実際の金融機関の条件を参考にすることで、より現実的な試算が可能になります。
たとえば、オリックス銀行の不動産投資ローンは、借入額2,000万円以上2億円以下で、保証料不要・団体信用生命保険つき・口座開設不要という条件を打ち出しています(オリックス銀行)。変動金利型は短期プライムレートを基準に年2回(4月1日・10月1日)見直しが行われ、返済額の増額は1.25倍を上限としています(オリックス銀行)。また、取扱事務手数料は借入金の一定割合とされており、別途印紙代・登記費用・火災保険料が必要です(オリックス銀行)。
一方、住宅金融支援機構の賃貸住宅融資は、35年固定金利または15年固定金利の2タイプで、最長40年の融資期間が設定されています(住宅金融支援機構)。ただし、同機構が公表している金利はあくまで「参考金利」であり、実際の借入金利は申込受付月の約2か月後に決定されるとされています(住宅金融支援機構)。そのため、テンプレートに入力する際は確定値ではなく参考値として扱うことが重要です。
AGビジネスサポートの不動産投資ローンは、法人・個人事業主・新たに事業として不動産投資を行う方を対象に、融資額や金利、事務手数料、返済期間などの条件を示しています(AGビジネスサポート)。金融機関によって条件は大きく異なるため、テンプレートで複数の金利シナリオを試算しながら、実際の融資相談に臨むことをおすすめします。
まとめ
投資用物件の比較には、無料のエクセルテンプレートが非常に有効なツールです。プロパリー・マネーフォワード・BFコンサルティング・投資僧など、それぞれ特徴の異なるテンプレートが無料で入手できます。重要なのは、表面利回りだけでなく、空室率・金利・修繕費・売却価格などの変数を変えながら複数シナリオで比較することです。また、マクロなし・関数ベースで前提値を更新しやすいテンプレートを選ぶことで、現在の市況に合った正確なシミュレーションが可能になります。税務上の扱いや融資条件も正しく反映させることで、より実態に近い収支計算ができます。まずは一つのテンプレートをダウンロードして、気になる物件の数字を入力してみることが、不動産投資の第一歩です。
参考文献・出典
- プロパリー「不動産投資の無料エクセルテンプレート3選!利回りや収支を簡単計算」 – https://propally.co.jp/journal/property-investment-excel-template/
- エスリードJOURNAL「不動産投資の利回り・収支計算に使える無料Excelテンプレート・アプリ7選」 – https://www.eslead.co.jp/media/real-estate-investment-basics/useful-for-calculating-real-estate-investment-yields-and-cash-flow/
- BFコンサルティング「不動産投資シミュレーションのエクセルテンプレート」 – https://bf-consulting.jp/real-estate-investment-simulation/
- マネーフォワード クラウド「不動産業向けお役立ち資料」 – https://biz.moneyforward.com/establish/topics/7702/
- 投資僧「簡単入力で全て自動で計算!不動産投資計算エクセルシートの使い方」 – https://fudousan.click/marvelous-sheet/
- Microsoft サポート「PMT 関数」 – https://support.microsoft.com/ja-jp/excel/functions/pmt-function
- Microsoft サポート「XIRR 関数」 – https://support.microsoft.com/ja-jp/excel/functions/xirr-function
- 国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
- 国税庁「No.2210 必要経費の知識」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
- 国税庁「賃貸用の土地建物を購入した際に支払った仲介手数料の取扱いについて」 – https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/31.htm
- オリックス銀行「不動産投資ローン」 – https://www.orixbank.co.jp/personal/property/
- オリックス銀行「借入金利と返済方法」 – https://www.orixbank.co.jp/personal/property/repayment.html
- オリックス銀行「借り入れに必要な諸費用」 – https://www.orixbank.co.jp/personal/property/charges.html
- 住宅金融支援機構「賃貸住宅融資金利」 – https://www.jhf.go.jp/kinri/chintai.html
- 住宅金融支援機構「賃貸住宅を建設する場合 令和8年8月の参考金利のお知らせ」 – https://www.jhf.go.jp/files/topics/5378_ext_99_0.pdf
- AGビジネスサポート「不動産投資ローン」 – https://www.aiful-bf.co.jp/affiliate/investment2LP.html