不動産投資を始めると、「減価償却」という言葉に必ず出会います。節税効果があると聞いたことはあっても、具体的にどのくらいの期間で経費計上できるのか、中古物件の場合はどう計算するのか、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。実は、この減価償却の期間(耐用年数)を正しく理解しているかどうかで、毎年の税負担が大きく変わってきます。この記事では、不動産投資における減価償却の基本的な仕組みから、新築・中古それぞれの耐用年数の計算方法、さらに売却時への影響まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。
減価償却とは何か、なぜ不動産投資で重要なのか

まず押さえておきたいのは、減価償却とは建物の取得費用を一度に経費にするのではなく、使用可能な期間にわたって少しずつ経費として計上していく仕組みだということです。国税庁の説明によると、「減価償却資産の取得に要した金額は、取得した時に全額必要経費になるのではなく、その資産の使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費としていくべきもの」とされています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm)。
不動産投資において、この仕組みが重要な理由は節税効果にあります。毎年一定額を経費として計上できるため、帳簿上の利益を圧縮し、所得税や住民税の負担を軽減することができます。実際には現金が出ていかないにもかかわらず経費として認められるため、キャッシュフローを維持しながら税負担を減らせる点が、不動産投資ならではの大きなメリットです。
ただし、重要なのは「建物」だけが減価償却の対象であり、土地は対象外だという点です。不動産を購入する際は、土地と建物の価格を分けて把握しておく必要があります。また、建物附属設備(エレベーターや給排水設備など)も減価償却資産となりますが、建物本体とは別の耐用年数が設定されています。この区分を正確に理解しておくことが、適切な節税計画の出発点となります。
新築物件の耐用年数は構造によって決まる

新築物件の減価償却期間は、建物の構造と用途によって「法定耐用年数」として財務省令に定められています。国税庁の資料(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/034.pdf)によると、住宅用途の主な構造別耐用年数は以下のとおりです。
- 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造(RC造):47年
- 木造・合成樹脂造:22年
たとえば、RC造のマンションを新築で購入した場合、建物部分の取得費用を47年間にわたって毎年均等に経費計上していくことになります。一方、木造アパートであれば22年間での計上となるため、同じ建物価格でも毎年の経費額は木造のほうが大きくなります。これは短期間で多くの経費を計上できることを意味し、投資初期の節税効果が高いという特徴があります。
償却方法については、個人が不動産所得を計算する場合、一般的には定額法が用いられます。定額法とは、毎年同じ金額を経費計上していく方法で、「建物の取得価額 × 定額法の償却率」で計算します。国税庁の住宅の構造別耐用年数表によると、償却率は耐用年数によって異なり、木造22年の場合は0.046、鉄骨鉄筋コンクリート造47年の場合は0.022となります。
中古物件の耐用年数の計算方法
中古物件を購入した場合、法定耐用年数をそのまま使うのではなく、購入後の使用可能期間を耐用年数として使うことができます。これが中古資産の耐用年数の考え方であり、国税庁も「その事業の用に供した時以後の使用可能期間として見積もられる年数によることができる」と定めています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404_qa.htm)。
使用可能期間を合理的に見積もることが困難な場合は、「簡便法」と呼ばれる計算式を使います。国税庁によると、計算方法は次の2パターンです(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404.htm)。
- 法定耐用年数の一部が経過している場合:(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%
- 法定耐用年数を全部経過している場合:法定耐用年数 × 20%
なお、計算結果に1年未満の端数がある場合は切り捨て、2年未満となった場合は2年として扱います。
具体的なイメージをつかむために、木造住宅(法定耐用年数22年)を例に考えてみましょう。築15年の木造物件を購入した場合、「(22 − 15)+ 15 × 0.2 = 7 + 3 = 10年」となり、耐用年数は10年です。また、法定耐用年数をすでに超えた築25年の木造物件であれば、「22 × 0.2 = 4.4 → 4年」となります。このように、築年数が古い中古物件ほど耐用年数が短くなり、毎年の経費計上額が大きくなる傾向があります。
中古物件の耐用年数計算で注意すべきポイント
中古物件の耐用年数を計算する際には、いくつか注意が必要な点があります。まず重要なのは、購入した中古物件に対して大規模なリフォームや改修工事(資本的支出)を行った場合の扱いです。
国税庁の規定によると、取得した中古資産に対して行った資本的支出の金額が、その中古資産の取得価額の50%を超える場合には、簡便法による耐用年数の算定はできなくなります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404_qa.htm)。つまり、大規模リノベーションを行った物件では、法定耐用年数を適用して計算しなければならないケースが生じます。購入前に改修費用の規模を把握しておくことが大切です。
また、もともと自宅として使っていた建物を賃貸に転用する場合も、耐用年数の計算が必要になります。国税庁によると、業務用に転用した後の耐用年数は、今後の使用可能期間を合理的に見積もれる場合はその年数、困難な場合は簡便法で計算するとされています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2108.htm)。さらに、相続で取得した賃貸用建物については、中古資産の見積耐用年数をそのまま使えない場合があるとされており(国税庁 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/30.htm)、専門家への相談が特に重要です。
売却時に減価償却が影響する仕組み
減価償却は保有期間中の節税だけでなく、物件を売却するときにも大きく影響します。実は、毎年経費として計上してきた減価償却費の累計額は、売却時の「取得費」から差し引かれるという点を理解しておく必要があります。
具体的には、建物の取得費は「購入時の建物価格 − 所有期間中の減価償却費相当額の累計」として計算されます。取得費が低くなるほど売却益(譲渡所得)が大きくなり、譲渡所得税の課税対象が増えることになります。つまり、保有中に節税できた分は、売却時に課税されるかたちで「繰り延べ」されているとも言えます。なお、取得費が不明な場合は売買代金の5%を概算取得費として使うことができます(公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会 https://www.fudousan.or.jp/tools/tax/sale01.html)。
このような仕組みを踏まえると、減価償却の節税効果を最大限に活かすためには、保有期間中の節税額と売却時の税負担を総合的に考えた長期的な計画が欠かせません。短期間で売却する場合と長期保有する場合では、最終的な手取り額が大きく変わることがあります。投資計画を立てる際には、出口戦略まで含めたシミュレーションを行うことをおすすめします。
まとめ
不動産投資における減価償却期間(耐用年数)は、新築物件であれば構造によって法定耐用年数が決まり、RC造は47年、木造は22年が基本です。中古物件の場合は簡便法を使って耐用年数を短縮できるため、毎年の経費計上額が大きくなり、節税効果が高まる傾向があります。ただし、大規模リフォームや相続取得など、特殊なケースでは計算方法が異なるため注意が必要です。また、保有中の節税効果は売却時の譲渡所得税に影響するため、長期的な視点で計画を立てることが成功への鍵となります。減価償却の仕組みを正しく理解し、税理士などの専門家とも連携しながら、賢い不動産投資を進めていきましょう。
参考文献・出典
- 国税庁 No.2100 減価償却のあらまし — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
- 国税庁 令和7年分 収支内訳書(一般用)の書き方 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/034.pdf
- 国税庁 No.5404 中古資産の耐用年数 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404.htm
- 国税庁 No.2108 中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2108.htm
- 国税庁 相続により取得した減価償却資産の耐用年数 — https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/30.htm
- 公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会 住まいの税金[売る:1.譲渡所得税・住民税の計算] — https://www.fudousan.or.jp/tools/tax/sale01.html